■「上伊那医師会報」12月号に書いた原稿です。
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第14回上伊那医師会まつり
「亀工房」ハンマー・ダルシマー&アコースティック・ギター コンサート
旦那さんの前澤勝典さんは、知る人ぞ知るフィンガーピッキング・ギターの名手で、押尾コータローとは古くからの友人。さらには、日本爬虫両生類学会に所属する亀専門家でもあり、先達て亡くなった千石先生(TBS『どうぶつ奇想天外!』でエリマキトカゲを初めて紹介した人)は亀友だちで、全国各地を演奏旅行する合間に、その地域の亀の生息状況を実際に小川に入って調査したりしているそうです。もちろん高遠の自宅でも亀をたくさん飼っていて、だから「亀工房」なんですね。
奥さんの朱美さんは、大学1年生の長女から高遠第一保育園年長組に通う次男まで「6人」の子供たちを産み育ててきました。ちょっと紀子さまに似た佇まいと話し方をする上品な雰囲気の女性で、演奏の合間の旦那さんとの掛け合いトークでも、半テンポずれた天然ボケの感じが、自然とその場の空気を微笑ましく和ましてくれるのでした。
でも、ひとたび演奏に入ると、その集中力たるや相当なもので、あの小さな箱に弦がいっぱい張り巡らされた「ハンマー・ダルシマー」という厄介な楽器を、1音1音決してミスタッチすることなく完璧なバチさばきで演奏するのです。しかもこの楽器、小さなバチの裏表で音色がぜんぜん違ってくるし、弦の横に張られたテープによって、わざと弦が響かない設定にも出来たりと、なかなかに小技を効かせてくれるので驚きです。
後半は、童謡「あんたがたどこさ 〜 小さい秋みつけた」に、アイルランド民謡を続けて3曲「バディ・オブライエンズ 〜 スカッター・ザ・マッド 〜 あと曲名不明の1曲」。そして、沖縄の童謡「じんじん」。アップテンポのマイナー調の曲で、聴いていて気分が自然と高揚してきて会場からは大きな手拍子が起こりました。その興奮も覚めやらぬ間にラストは、野口雨情の「しゃぼんだま」。わが娘を喪った時に書かれた、実際は悲しい曲なんだけれど、明日への希望を感じさせる明るい曲調に彼らは仕上げていました。
■土岐麻子『CASSETTEFUL DAYS』のCDを買った。
成田の次兄一家といっしょにやって来た、ミニチュアダックス(雌)の「チョビ」に対して、どう接してよいのか悩んでいる、わが家のシープー「レオン」(雄)。
YouTube: Brigitte Fontaine - Le Nougat
正直これ、あまりにぶっ飛んでて、単なるアブナイ不気味なおばさんじゃないか?。
ネットでググってみたら、「ヌガ」というのは隠語(符牒)で、本当は……
■ピンクの象がいる、銀座のビストロ「ヌガ」のサイトを開くと、いきなりワサブローさんが歌う「ヌガ」が流れる。
http://www.lenougat.jp/floor.html
(この「ヌガ」はCD収録のものとは違うようだ)
YouTube: Brigitte Fontaine - Comme à la radio 1969
で、久しぶりに聴いてみたのが「ラジオのように」
il fait froid dans le monde(世界は寒い)
il fait froid dans le monde(世界は寒い)
il fait froid il fait froid il fait froid
ca commence a se savoir(それはみんなにわかってくる)
et il y des incendies qui s'allument dans certains endroits
(そしてあちこちで 火事が起きる)
parce qu'il fait trop froid(なぜって、あまりに寒いからさ)
traducteurs, traduisez (翻訳家よ、翻訳せよ)
■あぁ、それにしても本当に素晴らしいステージだった。
家に帰ってから、なんか、めちゃくちゃ美味しいフルコースを食べ終わって、幸せで満腹して、満足しきった気分とでも言ったらいいのか、何度も何度も「はぁ〜」って、言葉にならない溜息しか出なかった。凄かったな、ワサブローさん。
月並みだけど、やっぱり「ライヴ」ってのは、CDで聴くのと、ましてや YouTube で見るのとは違う。もう、ぜんぜん違う。
一人の歌い手がいて、聴きに来た聴衆がいる。そこに「場の力」が生まれるのだ。強力な磁石のような互いに引き合う磁場がね。
美しい日本語の文章、作品を残してくれた島村利正さんに対して、高遠で歌を歌うことで何とか恩返しがしたいという、ワサブローさんの「思いのたけ」が、聴いていてこれほどまでに、ずんずんびしびし突き刺さってくるとは。いやはや、ほんと凄かった。
そしてなによりも、ぼくは「シャンソン」という音楽を根本的に間違って理解していたことを思い知らされた。
僕が初めてシャンソンっていいなと思ったのは、ジョルジュ・ムスタキ「私の孤独」だった。たしか、TBSのテレビドラマ「木下啓介アワー・バラ色の人生」の主題歌だったと思う。
ごにょごにょ、ぼそぼそと、ちょうど、ジョアン・ジルベルトがボサノバを囁くように歌うものなのかと。その後も、フランソワ・アルディ「もう森へなんか行かない」とか、クレモンティーヌとか。
ああいうのがフランスが生み出した音楽なのだと思っていたのだ。そして、さらにその後に買ったLPが「金子由香里・銀巴里ライヴ」だったわけで。何十年もフランスで歌い継がれてきた「シャンソン」を、彼女は「字余りの日本語」で平気で歌っていた。それを聴いたぼくも、それがシャンソンなんだって、思っていた。
ところが、ワサブローさんがフランス語で歌った「本物のシャンソン」て、ぜんぜん違うんだよ。「フレンチシャンソンとは音とリズムの万華鏡(カレードスコープ)である」って、ワサブローさんは言っているけれど、なるほど、「フランス語」という言語だけが、シャンソンの音とリズムに合致した「ことば」だったんだね。
それと、「劇的」ということ。英語で言うと「ドラマティック」となってしまうのだが、それでは安っぽいな。ワサブローさんのシャンソンは、日本語で言うところの「劇的」なのだった。
ダイナミックで、めちゃくちゃエネルギッシュで、全身全霊を込めて、心の底から身体の極限を尽くして歌う。そういう姿勢が、ほんと凛として気高くて、これぞ「ホンモノ」なのだと思い知れされたのだった。
「セ・シ・ボン」「さくらんぼの実る頃」「そして今は」、それから「パタム」。そうして、ラストで歌ってくれた「愛の賛歌」。ほんと素晴らしかったなぁ。
あと、驚いたのが「百万本のバラ」。これは日本語で歌われたのだが、ワサブローさんオリジナルの歌詞で、笑いと皮肉とエスプリに満ちた、加藤登紀子も真っ青のぜんぜん違う曲になっていた。
それから、新曲の「俳句。」と「椅子。」伊藤アキラさんが作詞した日本語のオリジナル曲だ。「くっくっく、くっくっく、はいく。くっくっく、くっくっく、はいく。」の部分が印象的で耳に残る。これはいい曲だな。
じつはこの日、ぼくがワサブローさんにどうしても歌ってもらいたい曲があった。YouTube で見つけた「ヌガ」という、不条理でナンセンスな曲。でも、この曲はプログラムには記載されていなかった。う〜む残念。って思ってたら、なんと! アンコールに応えてワサブローさんが歌ってくれたのだ「ヌガ」を。へんてこダンスを踊りながら。うれしかったなぁ、ほんとうれしかった。
実はぜんぜん知らなかったのだが、この曲の詩は、あの、アメリカのアバンギャルド、ジャズ集団「アート・アンサンブル・オブ・シカゴ」といっしょに『ラジオのように』っていうレコードを作った、ブリジッド・フォンテーヌ・作、だったんだね。もうビックリ。だってこの『ラジオのように』は大好きで、レコードでも、CDになってからも、何度も何度も、30年来聴いてきたレコードだったから。
当日は、会場の信州高遠美術館に 150人近くの人が聴きに来てくださった。遠くは京都や東京からも。椅子が足りなくなって追加していたし、2階席にも人がいっぱいだった。
聴衆はみな、ワサブローさんの熱唱に圧倒され、京都弁での軽妙なトークに大笑いし、茨木のり子「わたしが一番きれいだったとき」に涙した。この掛け替えのない時間をいっしょに共有できたことが、ほんとうにうれしい。
ああ、感無量だ。
ワサブローさん、ほんとうにありがとうございました!
■長野日報に電話とメールして、信州高遠美術館での 9月30日(日)の「ワサブロー・コンサート」を是非記事にしてください! って、先週初めにお願いしたのに、いまだ梨の礫(つぶて)だ。返信のメールもなければ、記者からの携帯もかかってこない。
■ワサブローさんは、20代前半に単身フランスに渡り、プロのシャンソン歌手として本場で認められ、以後30年間、フランスに留まり歌手活動を続けてきました。ここ数年は、出身地の京都に戻り、国内と海外とを行ったり来たりの歌手生活をされています。
そんなワサブローさんが、一昨年、友人から「読んでみたら」と薦められた文庫本が、高遠町出身の作家、島村利正の『奈良登大路町・妙高の秋』(講談社文芸文庫)でした。ワサブローさんは、この本を読んで、作家・島村利正に惚れ込んでしまったのです。
http://wasaburo.cocolog-nifty.com/paris/2011/01/post-dc0a.html
ちょうどその頃、僕も自分のブログで「島村利正」の本をはじめて読んだ感想を書いていて、それをワサブローさんが検索で見つけ、
「あなたは高遠町の出身なら、島村利正のお墓が高遠の何処にあるかご存じないですか? ぜひ高遠へ行って、島村利正の墓参りがしたいのです。」
と、僕のブログにコメントをくれたのです。
それが、東日本大震災が起こる前、昨年1月のことでした。
それから暫くして、フランスでの仕事を終えて帰国したワサブローさんは、11月11日(金)NHK総合テレビのお昼の番組「金曜バラエティー」に生出演を終えると、中央本線を「あずさ」で松本に移動。松本在住の友人財津氏とともに、11月13日(日)ついに高遠を訪問しました。
当日は、島村利正氏の実家「カネニ嶋村商店」と菩提寺「蓮華寺」を訪れ、念願の墓参りができたのでした。嶋村商店のご主人は、多忙にもかかわらずワサブローさんを歓待してくださり、ワサブローさんはいたく感激したそうです。
この時、2012年(平成24年)がちょうど「島村利正生誕100年」に当たることがわかり、それなら、これも不思議なご縁だから、ぜひ生誕100年を記念して、高遠でシャンソンを歌いたい、そうワサブローさんが仰ったのでした。
島村利正は、古本愛好家の間でも、知る人ぞ知る渋い地味な小説家ですが、ワサブローさんのように、気にいると入れ込んでしまう読者が多いようです。嶋村商店のご主人の話では、そうした熱烈な愛読者が、年に2〜3人高遠の嶋村商店を訪ねてくるそうです。
島村利正は、戦前戦後にわたって芥川賞候補に4回なり(結局、賞は取れなかったですが)、『青い沼』で平林たい子賞を、『妙高の秋』で読売文学賞を受賞している、神田神保町界隈では非常に有名な作家ですが、残念ながら地元の高遠ではほとんど忘れられた存在となってしまいました。
同い年生まれの新田次郎は、諏訪市で今年さかんに生誕100年関連事業が行われていますが、残念ながら、島村利正に関しては、伊那市では一切記念行事は企画されませんでした。
今回の「ワサブロー。コンサート」は、その唯一の行事です。
本の町プロジェクトの皆様のご好意で、「高遠ブックフェスティバル」の関連イベントとして認めていただきました。
そんなような経緯(いきさつ)があったのです。
■今から30年以上も前の話だが、当時のジャズ専門誌には、老舗雑誌「スィング・ジャーナル」「ジャズ批評」の他に、新興雑誌「ジャズ・ライフ」が頑張っていた。
その読者投稿欄に「ジャズの同時代性について」と題して投稿したのだ。力入ってたし結構自信もあったのだが、あっさりボツにされた。もちろん、未熟で稚拙な文章だったからだが、いまどきコンテンポラリー(同時代性)だなんて「ケッ」と、はなで笑われた感じだった。確かに、時代はバブルで浮かれていたな。
■以下、9月2日夜の、ぼくのツイートより転載。
『NO NUKES JAZZ ORCHESTRA 』 のCDを買った。これ凄いんじゃないか。「いまここ」を表現するのが、JAZZの使命さ。特に3曲目が好き。ミンガスかモンクみたいな2曲目もいいな。スティーヴ・ライヒ的な現代音楽も入ってるし、「ショーロクラブ」の人だから、ブラジリアン・ミュージックもね。
■いよいよ開演「1ヵ月前」となりましたので、こちらでも告知させていただきます。
あの、「ワサブローさん」のコンサートが、高遠で実現することになりました!
■高遠町で生まれた、知る人ぞ知る作家「島村利正」の不思議なご縁で、ぼくはワサブローさんと知り合ったのでした。そのあたりの話は、以前このブログに書いたのだけれど、まとめてまた載せますね。すみません。
・「ワサブローさんのブログ」
■先週の金曜日に、苗場フジロックフェスティバルに出演した「ハンバート・ワイズマン」。なかなかに評判がよかったらしい。アップされた「ブログ記事1」や「ブログ記事2」や「ブログ写真」を見ると、その雰囲気がよく伝わってくるぞ。
YouTube: ハンバートハンバート× COOL WISE MAN - おなじ話@FUJI ROCK '12
■このメンツで、7月3日にNHK「みんなの広場 ふれあいホール」で公開収録されたライヴが、7月29日(日)の深夜に放送された。
これがすっごくよかったので、再放送の際にはぜひ録音したいと思ったのだ。
で、今日の午前中10時〜11時に、NHKFMで再放送されたものを、なんとか無事エアチェックすることができた。よかったよかった。何せ、ラジオ番組を録音するのは、ほぼ30年ぶりなのだ。
■昔は、ラジカセで簡単にエアチェクできたのに、これが今はどうやっていいのか、さっぱりわからない。
「radiko」や、NHKなら「らじる★らじる」を使ってインターネット経由でラジオを聴くことは簡単だ。ところが、macでインターネットラジオを録音するのはちょっと面倒そうなのだ。う〜むどうしたものかといろいろ検索してみたら、iPad でなら簡単に録音できることがわかった。
アプリ「TuneIn Radio Pro」だ。これが本当にスグレものアプリだった。ただ、聞けるラジオ局が国内では超マイナー局に限られていて、radikoで聴けるメジャーな局はほとんどカバーしていないのが欠点。ただし、NHKは大丈夫。海外のラジオ局は、iTunesのラジオと同様なのだが、now playing の演奏者&曲名とCDジャケットが見られるのがうれしい。
そうか、iPad はラジオとしても使えるんだね。
■ハンバートハンバートの佐藤良成は、和光高校→早稲田大学出身で、「COOL WISE MAN」のトランペット奏者、浜田光風さんは和光高校の4つ先輩なんだそうだ。ここの「タワレコ・インタビュー」を読むと、ハンバートハンバートのマネージャーも同じ高校の出身とのこと。 正直いって「COOL WISE MAN」ってバンド、知らなかったんだ。ごめんなさい。今回のCDを聴いて、あわてて YouTube をチェックしてみたのだが、どうも純粋なインスト「スカ」バンドじゃなくて、レゲエもやれば、サルサもジャズもお手の物といった感じで、手練れの強者ぞろいの曲者集団とみた。 そんな彼らのオリジナル「狼煙(のろし)」は、聴衆の不安を煽るようなマイナー・ワンコードで「パッパラッパ、パッパラッパ」と繰り返されるアップテンポの独特な曲調だ。それに佐藤良成が詩を付けて、佐野遊穂が力強くあっけらかんと歌う。でも、歌詞はかなりきわどい。これは明らかに福島第一原発のことを歌っているな。
JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました(2019/08/06)
■そんな不安を吹き飛ばしてくれるのが、次の「二人の記憶」だ。 これ、何度も何度も聞き込むうちに、妙に心の片隅に引っ掛かる曲なんだよなあ。そうだよ、恋している時は「この幸せ」が永久に続くと確信したよね。若かったんだな。バカだったんだな。 そうしてラストに収録された「ラストダンスは私に」。 これ、誰が選曲したんだろう? いろんなカヴァー曲を以前から歌っていたように思うが、この曲もレパートリーだったっけ? なんか、安心して聴けるな。すっごくいい感じ。 先日の渋谷タワレコ「インストアー・ライヴ」では、「サザエさんのテーマ」と、「リンゴ追分」を「スカ」で共演したそうだが、一体全体どんな「リンゴ追分」だったんだ?? まったく想像できないぞ。 それから、CD2曲目「23:59」て、人類滅亡まで、もう秒読段階に入りましたって曲だよね。それにしては何ともノー天気な曲調だな。すっごく好きだけど。 ■追伸:おまけのDVDには、「23:59」のPVと(これマジで笑える)、1年前(2011/06/26)に下北沢 Indie Fanculub でライヴ収録された「おなじ話」と「罪の味」が収録されている。 こうして聴いて見てみると、日テレ「2クール」主題歌『罪の味』って、そのまま「スカ」だったんじゃん!
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