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2019年11月17日 (日)

英国在住の保育士「ブレイディみかこ」さんて、何モノ?

英国在住の保育士「ブレイディみかこ」さんて、何モノ?

 北原こどもクリニック 北原文徳

 (「長野県小児科医会会報:最新号」に投稿した原稿より)

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 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ(新潮社)が、ベストセラー爆走中です。僕も出てすぐ読みました。テンポのよいパワフルな文章に引き込まれ一気読みでした。たまげました。傑作です。特に小児科医は絶対に読むべき本だと思いました。

 日本よりもずっと貧富の格差が進み、移民が次々と流入するイギリス。本来先住の「ホワイト」の方が貧困にあえぎ、反対に、努力した移民が中流住宅街に住んで子供たちを中上流小中学校に通わせているとう現実。その結果として、移民が「ホワイトのアンダークラス」をヘイトし差別するという「ねじれ」が生じています。

 そんな中、彼女の息子(11歳)は、地元のアンダーな白人だらけの「元底辺公立中学校」に入学し、学校が力を入れている音楽部に入部します。最初に仲良くなったのは、ハンサムで歌も上手く、見事ミュージカル『アラジン』の主役を射止めたハンガリー移民の子ダニエル。レストラン経営で成功した父親がとんでもないレイシストで、その影響から息子も当然レイシスト。差別発言だらけのダニエルと何故か友情を育む息子。

 ところが、ダニエルは学校内で次第に陰湿な「いじめ」に会うようになります。正義が悪を懲らしめるのは当然だという理由で。それでも、彼は毎日学校へ通い続けます。父親に怒られるからです。そんな彼に、彼女の息子はずっと寄り添い続けます。

「いじめているのはみんな(彼に)何も言われたことも、されたこともない、関係ない子たちだよ。それが一番気持ち悪い。僕は、人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。……罰するのが好きなんだ」(p196)

 クールでスマートな息子の言動に、読んでいて胸がすく思いがしました。もう、すっかり真っ暗闇の世の中ですが、彼のような若者が世界を変えてくれる希望の星なのかもしれません。そんな彼は、どんな両親のもとで生まれ育ってきたのでしょうか?

 ブレイディみかこさんが世間で認知されるようになった契機は、内田樹先生の「それ」とよく似ています。二人とも遅咲きのコラムニスト・批評家で、40歳代までは全くの無名人だったのに、当時アップしていたネット上のブログ記事が一部で話題となり、注目したプロの編集者がコンタクトを取って書籍化、それが次々とベストセラーになったのです。

 ただ、ブレイディさんの場合は「この本」が世に出て初めてブレイクしたと言ったほうが良いかもしれません。

 彼女は1965年6月、福岡県福岡市に生まれました。先祖に隠れキリシタンや殉教者がいるカトリック教徒でしたが、極貧家庭に育ち、荒廃した中学校でイヤイヤ学び、地元でヤンキー娘として一生を終えるはずが、担任教師の強引な薦めで福岡一の有名進学校、県立修猷館高校に見事合格。ところが……。

 

「70年代から80年代にかけての『一億総中流時代』が政府とマスコミによってクリエイトされたまことに愚かなスローガンであった。でも一番愚者だったのはそれを本気で信じていた一般市民であり、『親が定期代を払えないので学校帰りにバイトしている』という10代の少女に『遊ぶ金欲しさでやってるくせに嘘をつくな、いまどきの日本にそんな家庭はない』と断言した福岡の某県立高等学校の教諭などは、その最たる例であった。

少女はバカたれは許すが愚者は許さん性質だったので、翌日には髪を金髪にしてつんつんにおっ立てて登校した。担任の生徒管理能力の低さを世に示すために」

p221(『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』みすず書房より)

 当時からとんでもなくトンガリ・パンク少女だった彼女のアイドルは、大正時代に名を馳せた同郷のアナキスト伊藤野枝でした。彼女は関東大震災直後の戒厳令下、同志であり愛人であった大杉栄と甥の宗一と共に甘粕大尉率いる憲兵隊に惨殺されます。ちょうど同じ頃、大逆罪容疑で恋人の朝鮮人パクヨルと共に警察に逮捕され、死刑判決から一転恩赦がおりたにも関わらず獄中で自死した金子文子もまた、彼女のアイドルでした。

 ゴミのように親に捨てられ戸籍にも登録されなかった金子文子は、日本における闘う女性の元祖と言ってもよいかもしれません。ブレイディさんは、授業をサボっては図書館に入り浸り、この2人を発見したのだそうです。

 高校卒業後、彼女は大学へは進学しませんでした。親にその資金がなかったことはもちろん、彼女がパンクロックにはまっていたことも関係しています。当時の彼女が生きる糧にしていたのは、アイルランド移民で労働者階級出身のジョン・ライドンが率いるイギリスのパンクバンド「セックス・ピストルズ」でした。彼女は福岡の中洲や銀座でバイトして金を貯めては渡英し、パンクロックのシャワーを全身で浴びました。渡英を何度も繰り返すうち、1996年に入国した際、空港の入国審査官が、ニコッと笑って「ようこそ!英国へ」と言ってくれたのだそうです。この時彼女は電撃的に「私はここに永住するのだ」と確信しました。

 ロンドンではキングスロードに下宿し、某日系新聞社のロンドン支店で事務員として数年間勤務。そうこうするうちに、金融街で働くアイルランド移民で9歳年上の銀行マンと結婚。ロンドンから南へ列車で1時間の海辺の保養地ブライトンに移り住みます。ところが、旦那は銀行をリストラされ、自らミドルクラスから転落して、子供の頃から憧れていた「大型トラックの運転手」となるのでした。

 日本でも英国でも貧困に喘ぐ日々。しかも亭主はガンに罹患。彼女の最初の著書『花の命はノー・フューチャー』(ちくま文庫)を読むと、こんなことが書いてあります。

 

「先なんかねえんだよ。あれこれ期待するな。世の中も人生も、とどのつまりはクソだから、ノー・フューチャーの想いを胸に、それでもやっぱり生きて行け。」(p18)

「わたしも子供が嫌いである。なぜなら、小さな人々とは、文字通り、人間の未熟なものだからだ。純粋だのイノセントだのという言葉で彼らのことを表現する方々もおられるが、子供がよからぬことや邪なことばかり考えて生きていることは、大人と呼ばれる年齢の人間であれば、自らの経験から誰しも知っているはずである。そもそも、子供には人生における挫折の経験がない。」(p199)

 

 そこまで言っていた彼女が、何故か40歳を過ぎて体外受精で男児を高齢出産しました。そして生まれたのが彼です。そしたら、わが子は可愛いし面白い!

 2008年、その乳飲み子を抱えながら彼女は地域のアンダークラス(失業者、生活保護受給家庭)を支援するセンター付属の「無料底辺託児所」にボランティアとして参加します。そこには「幼児教育施設の鑑」と専門家からもリスペクトされている責任者アニーがいて、彼女の元で幼児保育の実践教育を受けながら2年半かけて保育士の資格を取りました。

 当時、労働党のトニー・ブレア政権は抜本的幼児教育改革を行い、移民保育士を積極的にリクルートしました。ブレア政権では多様性(ダイバーシティ)を大切と考え、子供たちがいろんな人種の外国人と共に生活することに、小さな時から慣れて行く必要があるとし、外国人移民の保育士養成費用を政府が負担したのです。

 ところが、2010年に保守党が政権を握ると一気に緊縮財政へと梶を切り、労働党が作った福祉制度を次々とカットしたため、底辺託児所の様相は一転します。『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)には、保育士として働くブレイディさんのリアルな毎日が綴られていて、こちらも必読です。水泳が得意なリアーナの凶暴だった幼児期の記載もありますよ。

 

 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、そんなパンクでホットなかあちゃんとクールでワイズな息子の成長物語でもあります。しかも現在進行形で新潮社の月刊PR雑誌『波』に続編が連載中です。

 僕は椎名誠の名作『岳物語』『続岳物語』(集英社文庫)のことを思い出していました。ただ『続岳物語』は岳君が中学入学の場面で終わっていて『続々岳物語』が書かれることは残念ながらありませんでした。なぜなら……。

 

「もうこれ以上彼のことを小説の題材として書いていくのは申し訳ない、という気持ちをじわじわと感じていたからである。そしてそれとまったく同じ時期に、岳本人からそのことを言われたのであった(中略)猛烈に怒っていた。その怒り方は、親の私が萎縮してしまうくらいだった。それはそうだろうな、とその時私は思った。中学ぐらいになれば彼の友達もいろんな本を読む。『岳物語』はベストセラーになり、教科書などにも載りはじめていた」(椎名誠『定本岳物語』あとがき より)

 岳君本人も「『岳物語』と僕」という文章を寄せています。

「残念ながら、僕はまだ『岳物語』を読んだことがありません。読めないのです。過去に何度か挑戦してみたこともあるのですが、成功したことはありません(中略)

僕はこの本が嫌いでした。大嫌いでした。トウサン、あなたはいったい何てことをしてくれたんですかい、何度もそう思いました。ある時期には、この本、そしてこれを書いた父親のことを真剣に憎んでみたりもしました。」

 (『定本岳物語』p452、『本人に訊く(壱)よろしく懐旧篇』椎名誠・目黒孝二:集英社文庫 p230〜236 )

 

 ブレイディさんの話では、日本語が読めない息子ケン君も「この本」のことが気になっていて、スマホで接写すると日本語を英語に自動翻訳してくれるソフトを使って密かに内容をチェックしているらしいというのです。それはちょっとマズいんじゃないか? 

でも、椎名父子と違って、母親と息子だから険悪な親子関係に陥る危険性は少ないかもしいれないし、そもそも彼の生活の基盤はイギリスです。だから、寛大な彼のこと、きっとパンクな母ちゃんを許してくれるに違いありません。

 

2018年11月19日 (月)

伊那のパパズ絵本ライヴ(その135 ?)飯島町子育て支援センター

■昨日は、まるまる1年ぶりの「パパズ」。あ、それは僕個人的な話。僕が参加しなかった「パパズ」は、1月に山梨県石和でもあった。今年はオファーも実際少なかったのだけれど、メンバー皆が忙しく、折角オファーがあっても、ほとんど断ってきたのも事実。5人のうち3人がダメなら請けられないのだ。

今日は久々に3人だけ(伊藤パパは手良小の収穫祭で欠席、宮脇さんも市役所のお仕事で欠席)そろってのライヴと相成った。

< 本日のメニュー >

1)『はじめまして』

2)『たたんぱたたんぱ』のむらさやか・文、川本幸・製作、塩田正幸・写真(こどものとも 0.1.2. 2018年9月号) →北原

3)『もりのおふとん』(こどものとも年少版 2018年12月号)西村敏夫→坂本

4)『かごからとびだした』(アリス館)

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5)『あれこれたまご』(福音館書店) →倉科

6)『おかおみせて』ほしぶどう(福音館書店) →北原

7)『パンツのはきかた』岸田今日子(福音館書店)

8)『けっこんしき』鈴木のりたけ(ブロンズ新社) →坂本

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■なんだか、水野晴郎みたいな坂本さん。妙に似合ってるなあ。

9)『山んばあさんとむじな』山姥が登場する怖い絵本。→倉科

10)『ふうせん』(アリス館)

11)『世界中のこどもたちが』(ポプラ社)

12)『おーいかばくん』(アンコール)

■ほんと久しぶりで、三線もギターもさわるのもメチャクチャ久しぶり。歌を歌うのも久しぶりで、歌詞も間違えてしまったよ。ダメだな。ごめんなさい。

2017年11月 6日 (月)

伊那のパパス絵本ライヴ(その133)上伊那郡「飯島町・子育て支援センター」

■11月3日(金)文化の日は、飯島町図書館の東側に新しくできた「飯島町・子育て支援センター」へ。

   <本日のメニュー>

1)『はじめまして』新沢としひこ →全員

2)『どっとこ どうぶつえん』中村至男・さく(福音館書店)→北原

3)『いろいろおんせん』増田裕子・文、長谷川義史・絵(そうえん社)→全員

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4)『万次郎さんとおにぎり』本田 いづみ 文 / 北村 人 絵(こどものとも年少版)→坂本

5)『かごからとびだした』(アリス館)→全員

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5)『へんしんおてんき』あきやまただし(金の星社)→宮脇

6)『おーいかばくん』(うた)→全員

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7)『なんでやねん』中川ひろたか・文(世界文化社)→倉科

8)『おふろで なんでやねん』鈴木翼・文、あおきひろえ・絵(世界文化社)→倉科

9)『ふうせん』(アリス館)→うた全員

10)『世界中のこどもたちが』(ポプラ社)→うた全員

11)『うんこしりとり』(白泉社)→うた全員

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(写真をクリックすると、もう少し大きくなります)

平成29年11月5日(日)付「長野日報」より

2017年9月10日 (日)

伊那のパパス絵本ライヴ(その132)下伊那郡「豊丘村」

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2017年9月 1日 (金)

絵本作家「のむらさやか」さんが新作絵本を届けに、わざわざ石川県から当院を訪ねて来てくれたのだ!

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■長年ファンだった絵本作家さんに会いに、各地の「絵本美術館」でのサイン会とか、図書館の講演会とか、ずいぶんと足を運んだものだが、まさか、ぼくが昔からファンである絵本作家さんが自ら、当院「北原こどもクリニック」をたずねてくださるとは。

しかも、わざわざ石川県白山市から、軽自動車を運転して、富山県→岐阜県高山市→安房峠→松本市→中央道→伊那市と、めちゃくちゃ長距離なのに訪ねてきて下さるとは、思いもよらなかった。なんという光栄であろう!

■のむらさやかさんは、福音館書店(こどものとも)から4冊絵本を出している。

1)『これなーんだ?』のむらさやか・文、ムラタ有子・絵

    (こどものとも 0.1.2. /2006/1月号)

2)『かんかんかん』のむらさやか・文、川本幸・制作、塩田正幸・写真

    (こどものとも 0.1.2. /2007/2月号)

3)『はなびがあがりますよ』のむらさやか・文、折茂恭子・絵

    (こどものとも年少版 /2014/8月号)

4)『ぐるぐるぐるーん』のむらさやか・文、サイトウマサミツ・絵

    (こどものとも 0.1.2. /2015/9月号)

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■のむらさやかさんのご実家は上越市だ。御尊父の市川信夫氏は、養護学校・盲学校で教鞭を執りながら児童文学作家として数々の作品を世に出した。中でも児童福祉文学賞を受賞した『ふみ子の海』(理論社)は映画化もされている。(すみません、ぼくは未見)

■夏休みの息子さんを連れて実家に帰るなら、日本海沿いに北陸自動車道を走れば2時間もかからずに到着するはずだ。でも、ニンジャと亀好きの息子さんが「忍者村へ行きたい!」と言ったんだそうだ。忍者村は戸隠にある。戸隠は長野県だ。北原こどもクリニックがある「伊那市」も長野県だ。じゃあ、伊那市に寄ってから忍者村、そのあと上越ならいいんじゃないか? そう思ったのだそうだ。

西から、上越・中越・下越と連なる新潟県も案外広いけど、長野県は南北にメチャクチャ大きい。忍者村は、長野県の北の端、当院は、そこから100km以上南に離れた南信地区に位置する。あのね、とんでもなく遠回りなんですけど。

でも、どうしても「北原こどもクリニック」に寄って、彼女の新作絵本『なかよしなかよし』を届けたかったんだって。ありがたいなぁ。どうして「うち」なんだろう?

のむらさんにお訊きしたら、彼女の処女作絵本『これ なーんだ?』(こどものとも 0.1.2. /2006/1月号)に関して、ネットで取り上げてくれたのが「北原こどもクリニック」のホームページだけだったんだって。それがとってもうれしかったのだそうだ。

■で、自分のサイト内を「のむらさやか」で検索してみたんだよ。こちらです。

おぉ、旧サイトでは10回も取り上げているではないか! 最初はどれ?

「これ」の一番下(2006年2月1日)か。なんだ、たいして大きく取り上げてはいないじゃないか。こんなんで、作家さんは喜んで下さったのか。ありがたいなあ。あと、2006年5月25日にも記載があった。

その次に取り上げたのは、2007年1月20日の「これ」か。

■久しぶりにむかし書いた文章を読んでいたら、2006年2月5日の日記にこんなことが書いてあった。

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●先日送られてきた『母の友 2006/3月号』(福音館書店)をめくっていたら、毎月楽しみにしていた連載「絵本のとびら」伊藤明美(浦安市中央図書館司書)が、今月号で最終回だった。残念だなぁ。その一部を引用させていただきます。

ゆたかな本の世界へ

子どもが本を好きになるためには大人の力が必要です。その一つは心の栄養になる本を選ぶこと。もう一つは、子どもに本を読んであげること。三つめは、共に楽しむこと。最後は、本を身近においてやることです。(中略)

 今、目の前にないものを想像すること、今この瞬間に違う人生を生きている人々がいること、自分と違う考えを持っている人がいること、どうしてそうなったか思い巡らすこと、それが想像力です。本のなかに描かれたたくさんの人生は、子どもたちに、自立した人生を生きてゆくエネルギー=想像する力を養います。

 ちいさいおうちをたてたひとはいいます。
「どんなに たくさんの おかねを くれるといっても、このいえを うることは できないぞ。わたしたちの まごの まごの そのまた まごのときまで、このいえは、きっと りっぱに たっているだろう」

 この「いえ」は、「想像する力」と置き換えることはできないでしょうか。お金では買えず、どんな権力でも曲げることのできない、想像する力こそ、人間を真に自由にします。孫の孫のそのまた孫のときまでも、しっかりと心の中に、想像する力が育っているように、子どもたちに本の扉を開き、さあ、本の世界に一緒に行こうと誘うことができるのは、子どもたちの身近にいる大人、わたしたちです。

 どうぞ、子どもたちに、本を。 (p84)

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■さて、新作『なかよし なかよし』(こどものとも 0.1.2. / 2017年9月号)だ。これまでの4作と違って、今回は のむらさやかさんが一人で絵も文も担当した。しかも絵は描いたのではなくて、さまざまな素材の紙を探してきて、切り絵・貼り絵で造形してある。

その抽象的な形は、ちょっと元永定正の絵本を思わせるが「色合い」がね、ぜんぜん違う。なんかね「和菓子」のような、渋い「和のテイスト」なのだ。

それぞれの「かたち」を「ことば」にしたテキストも楽しい。

  のっとりさん と とことこさん、ぱっくりさん と もじゃもじゃさん。

  もくもくさん と ちゃぷちゃぷさん、ぐるんぐさん と るるんぐさん。

ここで想い出すのは、シェル・シルヴァスタインの『ぼくを探しに』なのだけれど、ちょっと待てよ。お互いの「欠落」を補完するはずの相手は、のむらさんの『なかよし なかよし』の場合、完全には一致していない。ずれているんだよ。

このことは案外重要なんじゃないかって思ったんだ。

しょせん他人なんだから、完全に一致するワケないじゃん!

2017年3月28日 (火)

『親子で向きあう発達障害』植田日奈・著(幻冬舎)

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■あれは、医者になって2年目のことだ。信州大学小児科に入局させていただき、1年間大学病院で研修した後、ぼくは厚生連北信総合病院小児科に配属された。優秀な3人の先輩小児科医のご指導のもと、貴重な症例を含め、たくさんの患者さんを受け持たせていただいた。

大学病院では未経験だった新生児の主治医にもなった。今でもよく憶えているのは、ダウン症の女の子のご両親に、生後1ヵ月して染色体検査の結果が出てから「その事実」を告げた時のことと、重症仮死で生まれて、脳室周囲白質軟化症(PVL)になってしまった赤ちゃんのご両親に、早期療育の必要性を説明した時のことだ。

その時ぼくは、いずれも同じことを口にした。

「確かにこの子は、生まれながらに大きなハンディキャップを背負ってしまいました。でも、ご両親の献身的な療育によっては、もしかするとこの子だって、将来は日本の首相になれる可能性だってあるのです。だから、どうか前向きに、この子と共に生きて行ってください!」と。

その当時、ぼくは自分の言葉に酔っていた。いま考えれば、あまりに無責任な言葉だよな。医者になって2年目、まだ何もできないくせに、何でも出来るような錯覚に陥っていた。

■再び大学に戻って、下諏訪町にある、身体障害児・心身障害児療育施設「信濃医療福祉センター」へパート出張した時のことだから、あれから更に3年後のことだ。センター小児科医長の八木先生に病院を案内してもらって、館内を廻っていた時のことだ。

母子入院をして初期療育をしている、障害がある乳児が多数いる病棟を訪れたのだが、八木先生がふと、「この子には無限の可能性がある! みたいな、過度の期待を親に持たせて『ここ』へ送り込んでくる小児科医がいるんだけれど、ハッキリ言って迷惑なんだよ。」

あ、それを言ったのは俺だ……。

ぼくは、八木先生に申し訳なくて、そのとき何も言えなかったのだった。(まだ続く)

2017年3月16日 (木)

伊那のパパス絵本ライヴ(その130)上田市子育て支援センター

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■去る 3月5日の日曜日。上田市子育て支援課からのオファーで「ひとまちげんき・健康プラザうえだ」まで行って絵本を読んできた。

年度末とあって、めちゃくちゃ忙しい小学校の先生の伊東パパと、やはり市役所職員で大変な宮脇パパは欠席。倉科さんの運転で、坂本・北原・倉科の3人だけで初の上田市へと乗り込んだのであった。

しかし、上田は遠いなぁ。伊那から2時間余り。倉科さん、結膜炎で眼が腫れて、アレルギー性鼻炎も悪化の一途という体調不良にもかかわらず、往復の運転すみませんでした。訊けば、坂本さんもこのところ血圧が高く不調が続いていて、この2週間は禁酒しているとのこと。

なんとか気合いでやり切るのだ!

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  ■ <本日のメニュー> ■

1)『はじめまして』(すずき出版)

2)『くんくんくん これはどなたのわすれもの?』はやしますみ(岩崎書店)北原

3)『ねこガム』きむらよしお(福音館書店)→坂本

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4)『かごからとびだした』(アリス館)

5)『おかん』平田昌広・作、平田景・絵(大日本図書)→倉科

6)『ちへいせんのみえるところ』長新太(ビリケン出版)→北原

7)『ぐやんよやん』長谷川摂子(福音館書店)→坂本

8)『うんこしりとり』tuperatupera(白泉社)

9)『おーいかばくん』中川いつ子、中川ひろたか、あべ弘士(ひさかたチャイルド)

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10)『なんでやねん』中川ひろたか・文、あおきひろえ・絵(世界文化社)倉科

11)『ふうせん』(アリス館)

12)『世界中のこどもたちが』(ポプラ社)

13)『すてきなぼうしやさん』増田裕子・文、市居みか・絵(そうえん社)→アンコール

(終了)

2017年1月15日 (日)

ダウン症の書家、金澤翔子さんの個展(伊那市「はら美術」2Fギャラリー)に行ってきた。

■先週の月曜日(成人の日)に、伊那市郵便局の前にある画廊「はら美術」へ「金澤翔子さんの個展」を見に行ってきた。彼女の最近の書が数十点、展示販売されていた。もしも買えるなら、手元に欲しい! そう思って出かけたのだが、「夢」とか「愛」とか、これは!と思う作品はみな売約済みだった。残念。

金澤翔子さんの大作の実物を見たのは、一昨年の夏に京都を訪れた際、「風神雷神図屏風」の所有者であるところの「健仁寺」に行き、俵屋宗達の傑作:風神雷神図(レプリカ:本物は京都国立博物館所蔵)の左側に、対峙するように描かれた金澤翔子さんの「風神雷神」の屏風(こちらはホンモノ)だった。素晴らしかった。感動した。

以前から、テレビでお母さんと二人三脚で努力されてきた様子は見聞きしていたが、彼女の展覧会には行ったことがなかった。超大作の展示はなかったけれど、これだけ一度に見たのは初めてだけに、その書から発せられる「オーラ」みたいなものに圧倒された。なんなんだろう。この「気」みたいなパワー。凄いな!

2016年12月 5日 (月)

伊那のパパス絵本ライヴ(その128)伊那おやこ劇場 at the「コマ書店」

■「グリーンファーム」の2階にあった、絵本・児童書専門店「コマ書店」が、広域農道を南へ少し下ったカーブの手前左側に新築移転したという話は聞いていたのだが、行ったことはなかった。

そしたら、今回の伊那おやこ劇場からの依頼会場が「そのコマ書店」だったのだ。日曜日の朝9時半過ぎに自宅を出て、グリーンファームに向かい広域農道を左折して「それらしき建物」を見逃さないように車を南へ走らせたのだが、やっぱり行きすぎてしまったぞ。

だって、想像していた「ログハウス」とは全然違って、まるで自衛隊が被災地に仮設した「蒲鉾形のドーム状テント」みたいだったからだ。建物の中に入ってみると、実際はトレーラーハウスを3つ「コの字」に並べて、その間にできたスペースに床をひき天幕で屋根を作り、南側の空いた部分にアルミサッシの窓を設置。暖房に薪ストーブと煙突を完備すれば、立派な「ホール」の出来上がりというワケだ。すごいな。

ただ、この日の朝は晴天でめちゃくちゃ冷え込み、半屋外の「この空間」は、ただただ寒かった。でも、12月の絵本ライヴは「サンタの衣装」で出演って決まっていたから、フリースやウルトラライト・ダウンを脱がずにその上から衣装を着た。一人だけトナカイの着ぐるみを着る倉科さんは、毎年汗だくで大変なのだが、この日は「ちょうどよかったでした」って、後で言ってた(^^;

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<今日のメニュー>

1)『はじめまして』

2)『でてくる でてくる』岩田明子(ひかりのくに)→伊東

3)『中をそうぞうしてみよ』佐藤雅彦(福音館書店)→北原

4)『かごからとびだした』

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5)『メリークリスマスおおかみさん』宮西達也(女子パウロ会)→坂本

6)『みんなにゴリラ』高畑那生(ポプラ社)→宮脇

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7)『うんこしりとり』tupera tupera(白泉社)

8)『かみなりどんが やってきた』中川ひろたか・文、あおきひろえ・絵(世界文化社)→倉科

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9)『ふうせん』

10)『世界中のこどもたちが』

■開始後ようやく薪ストーブが威力を発揮し、会場ホールは暖まった。それよりも、参加してくれた子供たちの熱気のおかげだったに違いない。ありがとうございました >伊那おやこ劇場さん。

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■盛況のうちに「ライヴ」が無事終わったあと、皆でお昼をご馳走になった。なんと! 松茸ごはんと豚汁だ。さすがグリーンファーム。小林文麿社長は、売れ残ったマツタケを冷凍保存していて、その太っ腹で貴重な「マツタケ」をわざわざ解凍して「伊那おやこ劇場」と僕らのために振る舞ってくれたのでした。思わず、どちらも「おかわり」してしまったぞ。

本当にご馳走様でした。ありがとうございました。

2016年11月24日 (木)

伊那のパパス絵本ライヴ(その127)飯島町:子育て支援課の主催の会

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■水曜日は、勤労感謝の日でお休み。この日は午前10時半から、上伊那郡飯島町「飯島成人大学センター」で「パパズ」。町の子育て支援課が主催した会だからか、ちっちゃい子供が多かったな。

<本日のメニュー>

1)『はじめまして』新沢としひこ(鈴木出版)

2)『でてくる でてくる』岩田明子(ひかりのくに)→伊東

3)『かわ(絵巻物版)』かこさとし(福音館書店)→北原

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4)『うみやまがっせん』長谷川摂子:再話(福音館書店)→坂本

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5)『かごからとびだした』(アリス館)→全員

6)『へんしんマラソン』あきやまただし(金の星社)→宮脇

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7)『うんこしりとり』tuperatupera(白泉社)→全員

8)『かみなりどんが やってきた』中川ひろたか・文、あおきひろえ・絵(世界文化社)→倉科

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9)『ふうせん』湯浅とんぼ(アリス館)

10)『世界中のこどもたちが』(ポプラ社)


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