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2012年7月 7日 (土)

CD『ハンバート・ワイズマン!』より「おなじ話」の話。

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このあいだの日曜日、中学2年生の次男を車に乗せて松本のゼビオに向かう途中、先日購入したばかりの『ハンバート・ワイズマン!』を何気にかけたのだ。

そしたら、1曲目の「おなじ話」が始まってしばらくしてから、後部座席に座っていた次男が言った。

「これ、幽霊のはなし?」 「スルドイなお前! なんで分かったんだ? 彼女がもういないってこと。この曲はね、ハンバートハンバートの名曲中の名曲なんだよ。」


YouTube: おなじ話 / ハンバートハンバート

ぼくは感心しきったぞ。 「おなじ話」は、ハンバートハンバートの曲の中で一番知られた代表曲だ。幾つかバージョン違いがあるが、やはりオリジナルCD『11のみじかい話』1曲目に収録されたものが一番いいと思っていた。(シングル盤に収録された別アレンジのアコースティック版は『ハンバートハンバート シングルコレクション』Disc1 5曲目に入っている)

■しかし、ここ連日ずっと午前も午後も繰り返し繰り返し『ハンバート・ワイズマン!』のCDを聴いていたから、この最新ヴァージョンが案外一番いいんじゃないかと確信したのだが、今晩久し振りで「オリジナル演奏」を聴いてみてビックリした。 オリジナルはテンポが思いのほか速いのだ。「えっ?」っていうくらい速い。 それだからかもしれないが、女性ヴォーカルが冷たく「つっけんどん」な印象もつよい。もう、心ここにあらず、といった感じなのだ。

そして、この曲に関しては聴いていて「何とも不安で不穏な男女の居心地の悪さ」を感じてしまう。しかも、最終的には「この男女」は別れるみたいだし。そういう「どうにもならない切なさ」を歌った曲だと理解して正しいと思う。 ただ不思議なのは、「歌詞が不自然」なことろが多々あって、それがどうにも気になっていた。

彼女は、「いるのにいない」し、「いないのにいる」のだ。 という状況を矛盾なく説明するには、うちの次男が言うように「彼女は幽霊なのだ」って、解釈するしかないのではないか。 そう思った根拠は、内田樹センセイが著書『村上春樹にご用心』の中の、p58で「村上春樹の作品はほぼすべてが『幽霊』話である」と看破していることと関係している。

■ハンバートハンバートの名曲「おなじ話」に、なぜ人々が共感して涙を流すのかというと、それは村上春樹の小説を読んで「じん」とくる「切ない喪失感」と同じだからではないのか。つまりこの曲は、「死者と交流」する話なのだ。

■死者との交流で思い出したのだが、じつは、ハンバートハンバートは「そういう曲」をいっぱい歌っている。 「大宴会」「喪に服すとき」「陽炎」。そして、高田渡の「ブラザー軒」。

「東一番町、ブラザー軒。たなばたの夜。キラキラ波うつ硝子簾の向こうの闇に」「死んだおやじが入ってくる。死んだ妹をつれて 氷を食べに、ぼくのわきへ。」(菅原克己・作詞、高田渡・作曲「ブラザー軒」より)

あ、そうだ。今夜は七夕だったね。 という訳で、何度も繰り返し聴いてみて「おなじ話」に関しては最新盤がやっぱり一番しっくりくるんじゃないかと思ってしまう。ジャマイカのロックステディのリズムがスローでゆるく、切ない曲なんだけれども何とも心地よい。


YouTube: おなじ話 総天然色バージョン - ハンバートハンバート×COOL WISE MAN

もともと佐藤良成の「ぶっきらぼうな歌声」は、スカ〜ロックステディのリズム、ブラスアンサンブルと相性はよいはずだし、母親になって、なんか吹っ切れたような力強さを感じさせる佐野遊穂の歌声には、オリジナル版よりも不思議と人間的な暖かみがあるのだ。ホントは幽霊なのにね。あったかいのだよ。聴いていて。そこがいいんだ。

2012年7月 3日 (火)

CD『ハンバート・ワイズマン!』。いいじゃないか!

■今夜も引き続き、趣味の音楽の話題。といっても、いつだって趣味の話しかしないか。


■いろいろとネットの記事を読んでると、出版業界はいよいよ大変な様相だ。とにかく本が売れない。この「矢作俊彦インタビュー」を読んでみると、作家さんにとっては、図書館も敵だ!


いや、それ以上に「音楽業界」は一歩も二歩も先行して危機的状況に陥っていることが、例えば「このサイト」の「ここ」とか「ここ」を読むとよく判る。


という訳で、とにかくCDが売れないご時世なのだ。
でも、ぼくにはどうもよく判らない。好きなミュージシャンの新譜が出れば、まっ先にレコード屋さんへ行って買うんじゃないのか? それがファンていうものだろう。


TSUTAYA でレンタルが出るまで待つのか? それは違う。ましてや、好きな作家さん宛に、図書館で借りて読みました。面白かったです! って、その作家さんに直でリプライするかな、普通しないだろう。ファンなら買うはずさ。本屋さんで。


■もちろんぼくは「ハンバートハンバート」のファンを自認してるので、彼らの新譜が出れば、たとえ、あこぎな「特典DVD付き初回限定盤CD」に騙されてでも、わざわざ値段の高いほうを購入する。


で、CD『ハンバート・ワイズマン!』の感想。


これは、いいんじゃないか。思いのほか、すっごくいい。


一番キャッチーな曲は、2曲目「23時59分」だ。

さっき、CDを聴きながら曲のコードをギターで確認してみたら、なんと!
C、F、G7、C の循環コードで出来ている。今どき信じられないくらい単純なコード進行なのだ。それなのに、今まで一度も聴いたことないくらい新鮮な楽曲に仕上がっている。とにかく「スカ」の軽快なテンポとブラス・アンサンブルが何とも心地よいのだな。(つづく)






YouTube: ハンバート ハンバート×COOL WISE MAN - 23時59分(Short Ver.)


YouTube: サザエさん一家/23時59分 - ハンバートハンバート×COOL WISE MAN

2012年7月 1日 (日)

最近購入したCDたち

P1010220 ■エヴァ・キャシディ(Eva Cassidy)の『Live At Blues Alley』は、浜松『弁いち』親方の「板前日記」で先日教えてもらった、ぜんぜん知らない人だ。これは!? と思って、早速アマゾンで購入した。 聴き始めて驚いたのは、ジャズを中心にブルース、R&B、ゴスペル、フォークと何でも歌う人なのだ。ただ、ジャズ・ヴォーカルとしてはやや凡庸な印象はぬぐえなかった。 ところが、ライヴ中盤でのギターの弾き語りが始まってたまげてしまったのだ。なんなんだ、この人は! P1010224 やはり白眉は、8曲目「Fields of Gold」と、その次の「Autumn Leaves」だな。これはほんと凄い。


YouTube: Fields of Gold-Eva Cassidy

■この曲のオリジナルはスティングだが、「こちら」を見ると、リリックに加え、オリジナル演奏も聴けるのでありがたい。 彼女が歌う「Fields of Gold」が、どれくらいオリジナルを離れて「彼女自身の歌」になっているかがよくわかるのだ。

2012年6月 3日 (日)

「marry you」聴いて、ブルーノ・マーズのCDをポチッテしまった

■前回の続きです。

例のアメリカはオレゴン州、ポートランド在住で「ちょいと冴えない肥満体型の劇団員30代男性」の画像は、YouTubeにアップされてから10日も経たないうちに世界中で1000万回以上再生されたという。凄いな!


実際、ぼくはこのビデオを見るまでブルーノ・マーズも「marry you」も知らなかったのだが、何ともキャッチーな「この曲」にすっかりハマってしまい、サッカー・ワールドカップ最終予選「対オマーン戦」のハーフタイム中に伊那の TSUTAYA へ長男と急いで行って、marry you のカヴァーが収録された『glee season two vol.4』を借りてきたところだ。


で、早速聴いてみたのだが、やっぱりオリジナルのほうが断然ノリがいい。


じゃぁ、と iTunes Store へ行って検索するとあったあった。この曲だけで200円。CD「Doo-Wops & Hooligans」全曲購入だと 1000円。早速ポチろうかと思って、待てよ? と、アマゾンをチェックしたら、輸入盤で購入すると 991円。ダウンロードよりも9円安いじゃないか! もちろん、こちらをポチりましたよ。


ぼくと同じような行動に走った人が世界中に相当いるのではないか?


とすれば、ブルーノ・マーズにとっては一切カネをかけずに思いもかけず最高のプロモーション・ビデオが作成されて、しかも世界中の人たちが 1000万回以上も自分の曲を聴いてくれた。しかも、そのうちの何割かは、iTunes Store や amazon で実際に曲やCDを購入してくれている。だからもちろん「著作権侵害」なんて絶対に言わないよね。


ところが、これが日本で作成されたビデオとなると状況は全く異なる。


一応、JASRAC と YouTube との協定で、素人が「自分で歌ってみました画像」は JASRAC は認めている。でも、オリジナル曲を勝手にBGMとして使用することは「絶対にダメ!」なのだ。そのあたりは徹底している。


■ぼくもよくやるブログへの「YouTube 埋め込み画像」に関して、JASRAC は「このように」公式見解している。「個人が広告収入を得ずに運営するホームページ、ブログ」ならば黙認すると。


でも、この「しろくま通信」が、北原こどもクリニックの広告媒体であると主張される可能性もあるわけで、そうなると、この記事は「やぶへび」になってしまうな。これはマズいぞ。


たぶん、JASRAC は毎日「エゴサーチ」して危険分子をチェックしているだろうから、敵にまわすとホント怖い相手なのだ。


■全国十数カ所に支部があり、例えば長野県の場合は「大宮支部」がチェックしている。そこの長野県担当者は、信濃毎日新聞をはじめ、長野日報などのローカル紙、さらには「週刊いな」や「中日ホームニュース」といったフリーペーパーに載った「コンサート告知情報」を、くまなくチェックして、その日演奏された楽曲の使用料を請求してくる。それはもう、徹底しているそうだ。


彼らのもう一つの重要な任務は、カラオケ店やスナックでのカラオケ楽曲使用料の徴収と、喫茶店などでBGMとして使用されている楽曲使用料の徴収がある。実際に流れた楽曲を1曲ごとにチェックするのはお互いに大変なので、店舗の床面積から割り出した「年間一括契約」で支払われることが多いようだ。


■何が言いたいかというと、もちろん、作詞家、作曲家やミュージシャンたちの著作権を守ることは絶対的に必要だが、旧態依然としたJASRAC の何十年も変わらぬアナクロニズムに関して、さすがにいま現在では問題があるぞ! ということだ。


BGMとして、床面積の小さな喫茶店で 音楽を流すなら、年間 6000円支払えば許す。しかし、BGMとしてではなく、客に音楽を積極的に聴かせる「ジャズ喫茶」の場合は、一曲ごとにしっかり課金しますよ! ライヴの生演奏もあるなら、さらに課金させていただきますよ! てところが問題なんだ。


いまやシーラカンスのようになってしまった天然記念物の「ジャズ喫茶」から、冷酷なJASRAC は反論の余地のない実務的計算式から割り出した課金を赤字であえぐ「ジャズ喫茶」から無情にも搾取しているのだ。


有名なのは、新潟市で古くからジャズ喫茶を営む(ぼくも学生の頃、一度訪れたことがあるぞ)『スワン』店主の果敢な攻防だ。


「このブログ」での記載がよくまとまっている。

■意固地な「sony」が、自社所有の楽曲を未だに「iTunes Store」に解放していないことと似ているバカを、JASRAC は懲りもせずにくり返しているのではないかな。悲しいことだ。ほんと。


■あと「この記事」が示唆に富んでいて読ませる。

2012年5月29日 (火)

アイザックの「くちパク」プロポーズ

■今朝、茂木健一郎氏がツイッターで教えてくれた、YouTube画像 「Isaac’s Live Lip-Dub Proposal」。 これはたまげた驚いた! 2012年5月23日(先週の水曜日)に録画された画像だ。カメラは最初から最後まで「まわしっぱなし」の「ワンシーン・ワンカット」で、一切編集は施されていない。それなのに、なんなんだ! この完璧さ。感動して、ラストで泣いてしまったよ。先ほど、iPad の大きな画面で見たら、もっとよかった。 曲がいいんだね。 Bruno Mars の『Marry You』って曲。 あぁそうか。「Gree」でカヴァーされた曲なんだ。 場所は何処なんだろう? アメリカというより、イギリスって感じかな? あ。いや、ホンダCRV の後ろに駐車している車のナンバーは「オレゴン」だ。てことは、アメリカ西海岸北部か。


YouTube: Isaac's Live Lip-Dub Proposal

でも、日本語的には「結婚してください」だから、英語で「Marry Me」って感じなのだが、正しい英語では『Marry You』なのか? Youが主語なら「 Will you marry me」だが、I が主語だから「 I wanna marry you. 」ってなるわけか。

2012年4月11日 (水)

『土岐麻子 BEST!』(つづき)

■土岐麻子は、FM長野で日曜日の朝9時半から「トキシック・ラジオ」という番組を持っている。ただこの番組は JFN系列全国20局でオンエアされているのだが、何故か放送元の「東京FM」では放送されていない。不思議だ。面白いのに。 同じく、日曜日の早朝FM長野で放送されている「SUNDAY FLICKERS」も、何故か「東京FM」ではオンエアされていない。今をときめく「春風亭一之輔」さんがDJなのにね。どうもこの、JFN系列(ジャパン・FM・ネットワーク)と「東京FM」の関係が理解できないのだった。 ■お互いにリスペクトしている、EPOと土岐麻子だが、確かに今流れている「資生堂のCM」はよい。コラボがはまって、これはヒットするんじゃないか?(あ、もうすでにヒットしたのか) でも、ぼくが思うに土岐麻子の今後は「この曲」ではないと思うのだ。これ、もろ「EPO」そのまんまじゃん。いまの時代に、この楽曲は合わないとぼくは思うのだよ。どうしても、あの80年代のバブリーな時代を思い出してしまうから。 それよりも、断然こっちだな。この曲はほんとイイ! 心に沁みるぜ!!


YouTube: 土岐麻子 & 秦 基博 / やわらかい気配


YouTube: 土岐麻子 & 秦 基博 / やわらかい気配[後半]

曲もいいが、詩がすっごくいいじゃないか! ね。 ■あと、カヴァー集がいいんじゃないか? この BEST! でも「セプテンバー」とか「私を野球に連れてって」がいい。JuJu みたいな「ジャズ」のカヴァーじゃなくって、「羊毛とおはな」みたいな感じで 70〜80年代のポップスあたりの渋い曲をいろいろと聴いてみたいな。

2012年4月 9日 (月)

土岐麻子 BEST! と、チャットモンチー BEST

■この間の日曜日。所用で松本へ行ってきた。


いつも立ち寄る「ほんやらどお」へ行く。そこで、『土岐麻子 BEST! 2004 - 2011』2枚組と、『チャットモンチー BEST 2005 - 2011』、『チャットモンチー レストラン・メインディッシュ』(DVD)を見つけて購入した。


チャットモンチーは、最近長男が入れ込んで聴いていたから気になっていたし、アジカンのコンピで1曲目に収録された「All right part2」に参加した、チャットモンチー・リードヴォーカルの橋本絵莉子の歌声に沁みるものがあったからだ。


で、聴いてみてビックリしたのだが、和製女子版の「ポリス」じゃん。ギター、ベース、ドラムスの3人組。それなのに、音のスケール感が半端じゃなくて、曲の疾走感がたまらなく気持ちいい。これはまさに「ポリス」だ。四国は徳島の片田舎で、女子高校生が趣味で始めたバンドとはとても思えない完成度じゃないか。


ポイントは、元「JUDY AND MARY」のヴォーカル、YUKI みたいな声質の橋本絵莉子と、ポリスのドラムス、スチュアート・コープランドみたいな迫力ある高橋久美子のドラムスにあると思った。


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■チャットモンチーの橋本絵莉子のヴォーカルが「YUKI」に似ているとしたならば、土岐麻子は 「EPO」だ。

だから、土岐麻子の歌声を聞くたびに、ぼくは「オレたちひょうきん族」をパブロフの犬的条件反射で思い出してしまうのだ。あの、バブリーな 1980年代をね。



YouTube: オレたちひょうきん族 DOWN TOWN epo

2012年3月19日 (月)

伊那東部中学校卒業式での、3年生「フィンランディア」

■先週の金曜日、3月16日は、伊那東部中の卒業式だった。 わが家の長男も、無事卒業することができた。ほんとよかった。 以前にも書いたが、ぼく自身のダメダメな中学校時代と違って、わが長男の中学校生活は、陸上部の部活動に完全燃焼したまさに由緒正しき「古典的正統派中学生」だったと思うのだが、彼に訊いてみると必ずしも順風満帆ではなかったようだ。彼なりに小さな挫折と失敗、苦難と反抗を繰り返してきたのだという。そうかそうか、ほんとよくがんばったな。 卒業おめでとう!  


YouTube: 2012年3月16日 伊那市立東部中学校卒業歌 フィンランディア

■卒業式当日は、診療があったので参加できなかったし、中継録画した伊那ケーブルTVの番組を契約切れで見れなかったので、妻の話だけから想像するしかなかった、伊那東部中の卒業式だったが、ラッキーなことに、当日3年生294人が歌った卒業歌「フィンランディア」が YouTube にアップされていた。これが、圧倒的迫力の混声合唱でほんと素晴らしい!! 指揮をした唐沢流美子先生は、伊那東部中「合唱部」顧問として長年指導し、伊那東部中を全国大会でも常勝の合唱部に育て上げた凄い先生。でも、今年度を限りに引退することが決まったのだった。

2012年3月14日 (水)

男性ジャズ歌手が歌う歌詞は「男言葉」なのか?(その2)

■じつは、アンドレア先生(オーストラリア出身)が、トニー・ベネットの『Duets II』を貸してくれる前に、いま一番の「お気に入りCD」を貸してくれたのだ。それが、


ロッド・スチュワート『ベスト・オブ・ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック』だった。


ぼくは正直、「えっ?」って思った。あの、金髪兄ちゃんが豹柄パンツの姉ちゃんを抱きながら「イェィ!」って言ってるジャケットの人でしょ。ぼくがまだ高校生の頃のことだったかなぁ、彼の「セイリング」がヒットしたのは。日本人で言えば「もんたよしのり」のような「しゃがれ声」でハイトーンを正確な音程でシャウトできる稀有な男性ヴォーカリストであったことは認めるが、いかんせん、当時の印象では女の子受けだけを狙った、軟派の兄ちゃんといった雰囲気だった。


そのロッド・スチュワートが、ずいぶんと前からジャズのスタンダード・ナンバーをCDに吹き込んでいて、それが評判を呼んで、Vol.5 まで出ていたとは、恥ずかしながら僕はぜんぜん知らなかったのだ。で、昨年春に『ベスト・オブ・ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック』が出たというワケだったのだね。






YouTube: Rod Stewart & Jeff Beck - People Get Ready.mp4


YouTube: Sailing ROD STEWART (ロッドスチュワート)






YouTube: Rod Stewart - I'll Be Seeing You


で、その『ベスト盤』を半信半疑で聴いてみたら、ほんと思いがけず、すっごくいい。


驚いたね。あの、ロッド・スチュワートがジャズ唱ってるんだよ。


そんな感じで、気軽に気持ちよく聴いてたら、ふと、苦しいときも、つらいときも、何度も何度も聴いてきた曲が流れてきてビックリした。それは「アイル・ビー・シーイング・ユー」って曲。これ、大好きなんだ。ビリー・ホリデイの名唱で世の中に知れ渡った曲さ。


こうしてね、目をつぶって聴いていると、なんか、ロッド・スチュワートに、あのビリー・ホリデイが憑依したんじゃないかっていう歌いっぷりなんだよね。節回しとか、そのままだし。ヘロインでダメダメになってしまった後の『レディ・イン・サテン』の頃のビリー・ホリデイにね。


あと、そうだなぁ『言い出しかねて』も、彼はビリー・ホリデイの唄い方を踏襲しているような気がする。それから、前回の写真に載せた『vol.3』 冒頭の「エンブレイサブル・ユー」も、「アイル・ビー・シーイング・ユー」や「水辺にたたずみ」が収録されている傑作『奇妙な果実』で、ビリー・ホリデイが唱っている雰囲気を感じる。


ロッド・スチュワートは、たぶんビリー・ホリデイを相当聴き込んでいるに違いない。そう思った。

ネットで読んだら、彼はサム・クックの熱烈なファンであることを公言しているので、サム・クックのレコードに『トリビュート・トゥ・ザ・レイディ~ビリー・ホリデイに捧ぐ』というのがあるから、こちらも影響しているのかな。


■ただ、「I'll Be Seeing You」って曲は、どう考えたって女性の唄だよな。


日本語だと、一人称で明確に男か女か判るし、例えば「AKB48」や「いきものがかり」が歌う歌詞には「僕」がよく登場するが、女の子が歌っていてぜんぜん不自然ではない。逆に、福山雅治は女性の一人称で歌うし、徳永英明は女性歌手の持ち歌をそのままカバーする。わざわざ歌詞を男用に変えることはしない。


で、ふと思ったのだが、英語で歌う場合にはどうなんだろうか?

I と You だけなら、どっちが男でも女でも意味が通じるのかな?

でも、さすがに「マイ・マン」とか、「ザ・マン・アイ・ラヴ」って曲は男性ジャズ歌手には歌えまい。


■ところがだ、今回、トニー・ベネットの『デュエット II』を聴いてみたら、シェリル・クロウと歌う曲がまさにその「ザ・マン・アイ・ラヴ」なのだが、何と「ザ・ガール・アイ・ラヴ」と男用に歌詞が変えられていたのだ。なるほど、そうだったのか。


YouTube: Tony Bennett & Sheryl Crow duet- "The Girl I Love" (Great Performances: Duets II - PBS)

いずれにしても、作詞・作曲された当時のオリジナル・ミュージカルで女性が歌ったのか男が歌ったのかで決まるのかな。うーむ、まだよくわからないぞ。(3月19日 追記)

2012年3月12日 (月)

男性ジャズ歌手が歌う歌詞は「男言葉」なのか?

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■中3の長男が英語を教えてもらっている、北原アンドレア先生からCDをお借りした。トニー・ベネット『Duets II』だ。超ベテラン男性ジャズ歌手が、85歳の現役歌手生活を記念して、いま一番生きがいい各方面で話題の若手歌手とデュエットした豪華企画アルバムだ。


驚いたのが1曲目。なんと彼のデュエット相手は、あのレディー・ガガ。しかも、めちゃくちゃいい! レディー・ガガって、こんなに歌が上手かったっけ? パンチの効いた歌声、抜群のリズム感。若い頃にジャズを唄った美空ひばりか、アントニオ・カルロス・ジョビンと「おいしい水」をデュエットしたエリス・レジーナみたいな感じだ。ほんと、じゃじゃ馬娘みたいで楽しそうに歌っているじゃないか。


あと、つい最近、まだ若くして薬中で急死したエイミー・ワインハウスとの「ナイト&デイ」とか、ノラ・ジョーンズとの「スピーク・ロウ」あたりが個人的好みだが、他にもシェリル・クロウ、マライア・キャリー、アレサ・フランクリン、ウィリー・ネルソン、A・ボチェッリとか、意外な組み合わせが聴かせるのだった。


こういう「大人のアルバム」がアメリカではちゃんとヒットするのだな。50代以上のオジサン、オバサン、おじいちゃん、おばあちゃんがCDを買うのだ。日本では考えられないんじゃないか?


例えて言えば、北島三郎が AKB48や、絢香、JuJu、スーパー・フライ、福山雅治とデュエットしているようなもんだからだ。


ぼくは「ジャズ・ヴォーカル」好きなのだが、男性ジャズ歌手は、正直言って興味の対象外だ。とは言え、シナトラも、ナット・キング・コールも、メル・トーメもトニー・ベネットもLP、CDで持っていはる。最近の若手歌手では、カナダ・バンクーバーで開催された冬季五輪開会式で歌った、マイケル・ブーブレのCDもある。(つづく)


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