コルトレーン、コルトレーン。
黄金カルテット絶頂期の1964年頃には、アラン・グランドが司会する『ポートレイツ・イン・ジャズ』というWABC-FM(95.5MHz)のラジオ番組があり、毎週金曜日、ここ『ハーフノート』から生中継され、時代の音楽を流し続け好評を博した。スティーリー・ダンのキーボーディスト、ドナルド・フェィゲンもこの『ハーフノート』のコルトレーンのライヴとラジオの生中継をよく覚えている人物の一人だ。
「狭いカウンターの上にコルトレーンとドラムのエルビンが差し向かいで対峙して、阿吽の呼吸から丁々発止のアドリブの応酬だ。ホントに凄かったなあ。」
1965年3月26日には通称 ”ペダル・ブレイキングの曲”と呼ばれる『ワン・ダウン・ワン・アップ』が放送された。それは、エルヴィンが勢い余ってバスドラをキックしすぎ、ペダルを壊してしまった時の演奏である。その間ラジオは、バスドラムの音が聴こえないままコルトレーンとの応酬が進行してゆく様を生中継していたので、その名が付いた。エルヴィンのキック力は桁外れで、そのため彼のドラムセットの横にはつねに予備のペダルが二組も置かれていた。(p139)
『コルトレーン』藤岡靖洋(岩波新書)より。
■でも、先だって中古盤で購入した『ONE DOWN, ONE UP / Live at the HALF NOTE』Disk1 を何度も聴いているのだけれど、エルヴィンの「バスドラ」ずっと鳴っているように思ったのだが、いま一度聴いて見たら、あっ! 確かに演奏開始後 12分30秒〜15分30秒くらいまで、バスドラの音がしないぞ!! そうして、バスドラが復活した後の「エルヴィン対コルトレーン」対決が凄まじいのであった。
■やはり、個人的には「この時期」のコルトレーン・カルテットが一番好きなんだなぁ。『クレッセント』とか『トランジション』、『サン・シップ』とかの頃。
このCDでも、1曲目「ONE DOWN, ONE UP」で、エルヴィンに主役の座を奪われ欲求不満だったピアノのマッコイ・タイナーが、次の「アフロ・ブルー」でテーマのあといきなり全力疾走する。そのピアノ・ソロに身震いするのであった。ほんと、すごいぞ。コルトレーン黄金カルテットのリズムセクション。マッコイ・タイナー &ジミー・ギャリソン、そうして、エルヴィン・ジョーンズ!
■作家、田中啓文氏の「コルトレーンCD評」が、とっても参考になるのだが、これってたぶん、かなり偏っているから一般向きじゃあないのかな。少なくとも、ぼくにとってはびんびん響いてくるのだが……
■タイムマシンがあったら是非とも行って見たい場所と時間(その3)に、1965年3月26日のニューヨーク「ハーフノート」を書き加えることにしよう。
ちなみに、(その1)が、1961年7月16日のニューヨーク「ファイヴ・スポット」での、エリック・ドルフィー&ブッカー・リトルの双頭コンボのライヴで、(その2)が、1981年4月15日の東京文京区駒込「三百人劇場」での『志ん朝七夜』。演目は、たしか「明烏」と「堀之内」。
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