NHK朝ドラ『虎に翼』が終わって
長野医報11月号「あとがき」(掲載版でなく、改訂前のロングバージョンです)
広報委員 北原文徳
■NHK朝ドラ『虎に翼』が終わってしまいました。
桂場役の松山ケンイチさんは、本篇放送中は思う所があり一度もドラマを見なかったそうですが、最終回2日後の9月29日
「沙莉ちゃんに見てくださいと言われていたのでここに見た証として感想を乗っけながら最終回まで見ます」
とX(旧ツイッター)で宣言し、第1回から視聴感想を連続ポストし始めました。これがまた面白いのです。「初見の感想からしか得られない栄養がある」というオタク界の格言があるのだそうですが、なるほど上手いことを言いますね。
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■ぼくが好きな回は、5月24日(金)放送の第40回です。夫の優三(仲野太賀)に赤紙が来て、寅子(伊藤沙莉)とふたり河原で弁当を食べるシーン。
優三が言います「寅ちゃんができるのは、寅ちゃんの好きに生きることです。また弁護士をしてもいい。違う仕事を始めてもいい。優未のいいお母さんでいてもいい。僕の大好きななにかに無我夢中で、なにかを頑張ってくれること。いや、やっぱり頑張らなくてもいい。寅ちゃんが後悔せず、心から人生をやりきってくれること。それが僕の望みです」と。
これって、日本国憲法第13条そのものです。憲法に詳しい伊藤真弁護士は、第13条について
みんなの個性を大事にすること。みんな違っていいし、違うことが素晴らしいのだと認め合い、どうやってみんなで一緒に生きていくかを考えようということ。また、自分以外の人たちにも同じように価値があるのだから、大事にしようということ。
人は何かの役に立つから価値があるのではなく、存在するだけで価値がある。豊かな人も貧しい人も、健康な人もハンディキャップを負っている人も、人種も宗教も性別も一切関係なく、人間として生まれた以上はかけがえのない価値がある。
と解説しています。
生きにくいのは決して自己責任ではないのです。誰もが生きやすい社会のために必要な福祉や教育、人権を国や地方行政が保障するのは当然であり、われわれも「いつか自分も同じ立場になるかもしれない」と考え、少数派・弱い側にいる人への共感や想像力をもっと高めて行かねばならないと強く感じたドラマでした。
次号の特集は「山に思う」です。どうぞお楽しみに!
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