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2012年4月29日 (日)

自著を売るのは、ほんと大変なのだ。

■ここ2年半「ツイッター」をやってみて、思ったことがある。


作家が「エゴサーチ」して、自著に好意的なツイートを軒並み「リツイート」していることに関して、正直、嫌らしいなって、見苦しいじゃないかって意見があること。

でも最近は(と言うか、当初より)ぼくは「いいんじゃないの」って思ってきた。


と言うのも、いまから5年前に『小児科医が見つけた えほん エホン 絵本』(医歯薬出版)を、ぼくら絵本好き小児科医の仲間が出版したときのことを思い出したのだ。


この本の編集者は、ほんと切れ者の才媛だった。彼女がいなければ「この本」は世に出なかっただろうと正直思う。それほど「編集者」の存在は重要なのだ。


■ところが、ここに大きな問題が出現した。出版社の編集者は、どんなに優秀でも、その本が出版販売されてしまえば「管轄外」となってしまう。つまり、「本を世に出す」のが編集者の役目であって、その本を売るのは営業部担当社員の役目なのだから。


ところで、医学系専門出版社の営業部って、あんまり宣伝する気がないんですね。そこそこ売れて、赤字が出さえしなければそれでよいワケです。


でも、「この本」は様々な事情が発生して、結局、一部刷り直して製本もやり直してから出版された。当初、出版社は初版5000部を刷ったのです。医学専門書出版社としては冒険だったと思う。それが諸般の事情で赤字必至となってしまったのだった。


■「この本」を書いたのは、8人の絵本好き小児科医でした。8人+名古屋千住区の絵本専門店「メリーゴーランド」の三輪さんによる共著本だったのですが、僕は自分が書いた文章が実際に本になった喜びで、個人的に「この本」を100冊購入して親戚や知り合いに配りました。ぼくが想像するに、他の7人の小児科医も同じようだったんじゃないかな。しかも、この他にも原稿を依頼して書いて頂いた小児科の先生が何人もいる。


つまり、初版のうち全国各地の図書館へ納入された本以外の案外多くを「共著者自身」が購入して配っていたのですね。そういう事情を理解していない出版社は、思いのほか売れたんで、これは行けると思い切ってさらに増刷したのでした。

でも、著者たちが買わなければ、もうそうは売れませんよね。しかも「この本」は、大型書店の児童書・絵本コーナーに置かれることはなく、たいていどこの本屋さんでも「医学書専門コーナー」に置かれていたのですから。


■ぼくは「この本」が発売されてしばらくして、販売促進プロモーションというものは「ぼく自身」がしなければ誰も売ってはくれないのだということに気付きました。で、新聞社各社に売り込んでみたのですが、結局記事を載せてくれたのは「信濃毎日新聞」だけでした。


あと、いわゆる「著者謹呈」の献本として(でも、書籍代+送料とも出版社に負担してもらうのではなくて、自分で買って自分で梱包して自分で送料も払った)ずいぶんいろんな人に送ったけど、結局、思ったほどの宣伝効果はまったく得られなかったのでした。

素人のぼくら「一回だけの」体験がそうでしたから、プロの作家さんは「自分の本」を出版するたびに、同じ思いを何度も何度も味わってきたのではないか? と、容易に想像がつきます。


出版者の営業部にはなんにも期待できない。そういうことをイヤと言うほど味わされてきたと。


じゃぁ、自分で「ツイッター」で宣伝活動をするしかない。


そう思い至ってもしょうがない状況が、いまの出版界にあるのではないでしょうか。


ほんと、いまの世の中「本が売れない」のです。
しかも、新刊書があっという間に本屋さんの平台から本棚から消えてゆく。で、気が付けば在庫切れ→絶版の憂き目。

でも、ぼくらの本『小児科医が見つけた えほん エホン 絵本』は在庫があって、今でもちゃんと流通しているからほんとありがたいと思うのでした。

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