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2012年9月10日 (月)

NO NUKES JAZZ ORCHESTRA を聴いた。凄いぞ!

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■今から30年以上も前の話だが、当時のジャズ専門誌には、老舗雑誌「スィング・ジャーナル」「ジャズ批評」の他に、新興雑誌「ジャズ・ライフ」が頑張っていた。

その読者投稿欄に「ジャズの同時代性について」と題して投稿したのだ。力入ってたし結構自信もあったのだが、あっさりボツにされた。もちろん、未熟で稚拙な文章だったからだが、いまどきコンテンポラリー(同時代性)だなんて「ケッ」と、はなで笑われた感じだった。確かに、時代はバブルで浮かれていたな。

 

■以下、9月2日夜の、ぼくのツイートより転載。

 

NO NUKES JAZZ ORCHESTRA のCDを買った。これ凄いんじゃないか。「いまここ」を表現するのが、JAZZの使命さ。特に3曲目が好き。ミンガスかモンクみたいな2曲目もいいな。スティーヴ・ライヒ的な現代音楽も入ってるし、「ショーロクラブ」の人だから、ブラジリアン・ミュージックもね。

 

 
 
 
 
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あとヴォーカルでは、アン・サリーの『満月の夕』(池本本門寺でのライブ版は、YouTubeで以前にさんざん聴いた)がいいのは勿論のこと、おおたか静流の2曲『3月のうた』谷川俊太郎・作詞、武満徹・作曲『スマイル』チャップリン作曲、が素晴らしい。泣ける。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8曲目『夜のラッシュアワー』も実に美しい印象的な曲だ。パット・メセニーのCDみたいな感じで始まって、後半はギル・エヴァンズかエリント
ン・オーケストラのブラス・アンサンブルが聴かせる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
10曲目「Gray-zone(妄想と現実の狭間)」の緊張感も尋常じゃないぞ。Gray-Zone っていうユニット、要注目だ。是非ライヴで聴いてみたい。ギターの人いい。パット・メセニーかと思ったら、デレク・ベイリーじゃん。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■以下、追補。
 
 
11曲目「Circle Line」。いきなり始まる弦楽が奏でるテーマに驚愕する曲。ふつう、ジャズを弦楽が表現しようとすると、どうしても「もっさり、どんより」してしまうのだ。例えば「クロノス・カルテット」がそう。
 
ところが、このオーケストラに参加している弦楽四重奏団は違うな。キレがいい。リズム感がいい。音が、とがっている。これは特筆すべき点だ。
 
何度も聴いてみて、すごく好きな曲だと感じた。ぼくの大好きな、エリック・ドルフィーのアルト・ソロを連想させる、音が極端に高低するスピードの快感にあるからだと思う。
 
 
12曲目「Blue March(宛名のない未来への手紙)」
 
弦が爪弾かれる音の感じは、海の底だ。大量の水と共に放出され続ける(もしくは地下の土壌から海へ染み出て行く)放射性物質が拡散してゆく様がイメージされる。その海には、魚が泳いでいて、海藻もプランクトンもいて、黒潮に乗って回遊魚もやってくるのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
・政治的プロパガンダを、ジャズを演奏することで表現し、強く大衆に訴えてきた人といえば、まずはチャールズ・ミンガスが上げられる。「直立猿人」「ハイチアン・ファイトソング」「フォーバス知事の寓話」など、ミンガスは何時でも世の中に怒っていた。
 
 
 
 
 
・それから、チャーリー・ヘイデンの「リベレーション・ミュージック・オーケストラ」。それに、沢田穣治氏率いる、この「ノー・ニュークス・ジャズ・オーケストラ」。興味深いことは、3人とも「ベーシスト」であること。
 
 
 
らに共通する、もう一つの大切な事柄は、まず何よりも「音楽性に優れている」「音で聴かせる」ということだ。
 
 
 
 
 
 
 
・この『NO NUKES JAZZ OCHESTRAでは、短いピアノソロ(デュオ?)に始まって、最後もまたピアノソロでクローズされる。
 
 
 
中にサンドイッチされる楽曲は、弦楽器も加えた大きな編成のジャズバンド。続いて、菊地成孔的モーダル・コーダルなスリリングでかっこいい曲。グレー・ゾーンによる先鋭的フリージャズに、弦楽四重奏を主役とした現代音楽と、ショーロクラブのブラジル音楽。それから、それぞれに個性的で心に沁みるヴォーカルが4曲。
 
 
これらが全く違和感なく、見事な統一感でもって、曲と曲とが密接に関連しあいながら、全15曲を構成している。
 
 
 
 
その事がとにかく素晴らしい。壮大な叙事詩となっているのだ。これは、コンポーザー沢田穣治の力量の成せる技だと思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
・あと、このCDは「音がいい」。これも重要。
 
 
 
・おおたか静流が歌う「三月のうた」は英語の歌詞で歌われているが、日本語で歌われたものを『アルフォンシーナと海』波多野睦美&つのだたかし のCDで以前に聴いた。
 
 
 
 
 
 
   『三月のうた』   谷川俊太郎
 
 
 
 
   JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました(2019/08/06)
 
 
 
 
 
 
・ブラジル人のヘナート・モタとパトリシア・ロバートが歌う「プロミス」は静かで子守歌みたいに優しい曲だけれど、「われわれが何とかします」っていう、責任と意志と決意の表れのような曲だ。
 
 
 
誰に対しての「約束」かって? それはもちろん、ぼくらが死んだあとの未来を生きてゆく、いまの子供たちに対してだ。

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コメント

素晴らしい解説です。
ありがとうございます。
もしよかったら機会があれば
この内容を使わせてもらえたら幸甚です。

沢田穣治さま

コメントありがとうございました!
すみません、最近ブログはほったらかしで、お返事がすっかり遅くなってしまいました。ごめんなさい。

CDの制作者からお褒めのお言葉を頂戴できるなんて、なんと光栄なことでしょう。ありがとうございます。

小生のような素人の文章でよろしければ、的外れな部分はカット修正していただいた上で、どうぞご自由にお使いください。

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