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2014年12月30日 (火)

今月のこの1曲。Judy Bridgewater 『Never Let Me Go』

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カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(早川書房)を読んだのは、もう随分と前なのだけれど、ずっと気になっていることがあって、このブログでも何回か取り上げたことがある。

小説の主人公、キャシー・H が何度も何度も聴くカセット・テープに収録された曲、Judy Bridgewater 『Never Let Me Go』のことだ。

(その1)「2006/11/15 の日記」と、11/23、11/25の日記。

(その2)今月のこの一曲『'Cause We've Been Together』アン・サリー

・ポイントは2つ。

1)ジャズ・スタンダードの『Never Let Me Go』とは、どうも違う曲らしい。

2)「この小説」が出版される少し前のこと。村上春樹氏が東京でカズオ・イシグロ氏と会った際に、スタンダードの『Never Let Me Go』が収録された JAZZのCDをカズオ・イシグロ氏にプレゼントしたらしいのだが、「そのジャズCD」が何だったか不明であること。

ところが最近、思いも寄らぬところから事実が判明した。

なんと! 村上春樹氏ご本人が「その種明かし」を季刊誌『考える人』(2013年秋号)誌上においてしてくれたのだ。現在、その全文は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』小澤征爾・村上春樹(新潮文庫)のラストに、文庫版ボーナス・トラックとして『厚木からの長い道のり』というタイトルで収録されている。

ネタバレになるので、「そのCD」が何だったか興味のある人は「この文庫」に直接当たって下さい。

もう一つ。『わたしを離さないで』は、2010年にイギリスで映画化されていて「予告編」は公開前に見た。原作を読んでイメージした寄宿学校「ヘールシャム」や、ノーフォーク海岸の映像が、ほぼイメージどおりだったので驚いた。で、逆にちょっと怖くなったのだ。

だから、この映画は見なかった。

でも、「この曲」のことを、映画ではどう処理したのか、ずっと疑問だったので、このあいだ TSUTAYA から借りてきて見たんだ。映画は原作に忠実に作られており、主人公たち3人の切ない思いが映像からストレートに伝わってきて、想像以上にとてもよかった。

ところで、このジュディ・ブリッジウォーターの「Never Let Me Go」は、実際には存在しない歌手の小説の中だけの架空の楽曲だが、映画では案外軽く扱われていて残念だったけれど、ちゃんと2度ほど流れた。いかにもそれらしいレコードジャケットも映画用に作られている。

これだ。

Judy Bridgewater - Never Let Me Go
YouTube: Judy Bridgewater - Never Let Me Go

小説では、以下のように書かれている。

 テープに戻りましょう。ジュディ・ブリッジウォーターの『夜に聞く歌』でした。レコーディングが1956年。もともとはLPレコードだったようですが、わたしが持っていたのはカセット版で、ジャケットの写真もLPジャケットのそれを縮小したものだと思います。

写真のジュディは、紫色のサテンのドレスを着ています。こういうふうに肩を剥き出しにするのが当時の流行だったのでしょうか。ジュディはバーのスツールにすわっていて、上半身だけが見えています。(中略)

このジャケットで気になるのは、ジュディの両肘がカウンターにあって、一方の手に、火のついたタバコがあることです。販売会でこのテープを見つけたときから、なんとなく人目にさらすのがはばかられたのは、このタバコのせいでした。(p106) -- 中略 --

スローで、ミッドナイトで、アメリカン。「ネバーレットミーゴー……オー、ベイビー、ベイビー……わたしを離さないで……」このリフレインが何度も繰り返されます。わたしは十一歳で、それまで音楽などあまり聞いたことありませんでしたが、この曲にはなぜか惹かれました。いつでもすぐ聞けるように、必ずこの曲の頭までテープを巻き戻しておきました。(『わたしを離さないで』p110)

確かに「スローで、ミッドナイトで、アメリカン」そのものなんだが、メロディはよくあるチープなR&Bって感じで、歌も妙にセクシーなだけでぜんぜん上手くないし、主人公が何度も何度も繰り返し聴いて心ときめかす楽曲とはとても思えないんだよなぁ。

ぼくが小説を読みながらイメージした「この曲」は、キース・ジャレットの「Standars, Vol.2」B面1曲目に収録された「Never Let Me Go」だった。これです。

Keith Jarrett Trio - Never Let Me Go
YouTube: Keith Jarrett Trio - Never Let Me Go

ちなみに、村上春樹氏はどうもキース・ジャレットが嫌いらしい。

ヴォーカル入りだと、やはりアイリーン・クラールかな。

Irene Kral - Never Let Me Go
YouTube: Irene Kral - Never Let Me Go



2014年11月29日 (土)

今月のこの1曲。アメリカ版:年末のデュエット曲 『 Baby, It's Cold Outside(外は寒いよ)』

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■先日購入した(コレは廉価盤ではない)ブロッサム・ディアリー 1979年のライヴ『 Needlepoint Magic 』がすごくいい。トリオではなく、彼女のピアノ弾き語りのみで、しんみりと聴かせる。

以前ご紹介した「 I Like You, You're Nice」や「 I'M HIP」「I'm Shadowing You」といった、彼女の代表的なオリジナル曲も入っているぞ。客席の笑い声が絶えない何ともくつろいだ雰囲気が実に楽しい。

■中でも、5曲目にゲストで登場したボブ・ドローとのデュエット「BABY IT'S COLD OUTSIDE」が最高だ。歌う前の二人の掛け合いが何とも洒落てる。大人の男女の小粋な感じ。

YouTube で探したら、あったあった。これです。

Blossom Dearie & Bob Dorough - Baby it's cold outside
YouTube: Blossom Dearie & Bob Dorough - Baby it's cold outside

■この曲は、クリスマス&ウインター・ソング・アルバムには欠かせない、アメリカでは大変有名な曲で、まぁ実にに多くの歌い手がデュエットしている。つい最近では、元祖『アナと雪の女王』の、イディナ・メンゼルが、マイケル・ブーブレと歌っているぞ。

■ぼくは、ジェイムス・テイラーのクリスマス・アルバムの5曲目に入っている、ナタリー・コールとのデュエットが好きで、毎年12月になるとさんざん聴いてきた。これだ。

Baby, It's Cold Outside - James Taylor (with Natalie Cole)
YouTube: Baby, It's Cold Outside - James Taylor (with Natalie Cole)

■それから、わが家にあるCDだと、ロッド・スチュワートの『THE Great American SongBook vol.3 』12曲目。

そして、オリジナルのMGMミュージカル映画『水着の女王』でのシーンがこちら。まぁ、他愛のないコミカル・ソングではあるなぁ。後半の男女逆ヴァージョンが面白い。

Baby it's cold outside
YouTube: Baby it's cold outside



2014年11月24日 (月)

このところの「1000円ジャズ廉価盤」発売ラッシュはどうにかならないものか。

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■楽曲は、ネットからのダウンロードでなくて、やっぱりCDで持っていたい。TSUTAYAからCDをレンタルしてきて、iTunes に取り込むのでもダメだ。ちゃんとCDジャケットがあって、中にライナーノーツが同封されていないと嫌なのだ。おじさんはね。

そのあたりの心情をよーく心得ている日本の音楽業界は、このところ「1000円廉価盤CD」再発ラッシュで、われわれ中高年を悩ませているのだった。それはジャズ関係にとどまらず、ロックやR&B分野にも及んでいる。毎月「かつて欲しかったけれど買えなかったCDたち」が続々と出るものだから、うれしい悲鳴というか、正直とても追いつかないのが現状。例えば……

1)SONY music ジャズ・コレクション 1000 シリーズ

2)ユニバーサル ジャズの100枚

3)Jazz The New Chapter「今ジャズ」¥1500シリーズ

4)コンコード・ジャズ・セレクション

5)フュージョン・ベストコレクション 1000

6)ユニバーサル ブラジル 1000

7)ボンバレコード ブラジル音楽名盤1000

 

2014年10月31日 (金)

今月のこの1曲。『 アフロ・ブルー』

Mongo Santamaria - Afro Blue
YouTube: Mongo Santamaria - Afro Blue

■本当は8月に取り上げる予定だったのだ。モンゴ・サンタマリアが作ったとされる『アフロ・ブルー』。彼が1959年に録音したオリジナルがこれだ。

■ヴォーカル盤で一番有名なのが、アビー・リンカーンのこれ。

Afro Blue - Abbey Lincoln
YouTube: Afro Blue - Abbey Lincoln


■この曲を一躍有名にした「本命」といえば、やっぱりコルトレーンだな。

John Coltrane Quartet - Part1 - Afro Blue
YouTube: John Coltrane Quartet - Part1 - Afro Blue

ぼくは「バードランド」のライヴ盤よりも、ハーフノートでのライヴをラジオ放送した『ONE DOUN, ONE UP / LIVE at the HALF NOTE』での演奏が気に入っている。

とにかく、マッコイ・タイナーの気迫が凄い!

ラジオ放送なので、演奏の途中でフェイドアウトしてしまうのが本当に残念だ。

 

■ただ、最近よく耳にするのがこのヴァージョンだ。ロバート・グラスパーのヤツね!

Robert Glasper Experiment - Afro Blue (Feat. Erykah Badu)
YouTube: Robert Glasper Experiment - Afro Blue (Feat. Erykah Badu)

■あと、ディー・ディー・ブリッジウォーターが、1974年に日本で録音したデビュー盤のA面1曲目。

これもいい。

Dee Dee Bridgewater - Afro Blue (1974)
YouTube: Dee Dee Bridgewater - Afro Blue (1974)

■意外なところでは、『矢野顕子×上原ひろみ Get Together - LIVE IN TOKYO』の、2曲目。

それから、ぼくが大好きなのは、向井滋春『フェイバリット・タイム』

板橋文夫、渡辺香津美が参加しているレコード。CDは持ってないんだ。

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2014年9月28日 (日)

今月のこの1曲。Booker T&The MG's 『 Time is Tight 』


YouTube: Booker T & The MG's ~ Time is Tight (HQ)

■月刊誌『小説すばる』を、毎月17日に平安堂まで買いに行く。去年の8月号からだから、もうかれこれ1年以上も続けていることになる。雑誌で連載されている『1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代』柳澤健を読むためだ。この「10月号」で、この連載も【第15回】となり、いよいよ終盤に入った。

■ただ、柳澤健氏は林美雄「ミドリブタ・パック」の熱心なリスナーだった訳ではない。確か宮沢章夫氏が書いていた(ラジオで言っていた?)のだが、「小説すばる」編集長の高橋秀明氏に林美雄の評伝を連載するよう強く請われてのことだったようだ。

ところが、その小説すばる編集長が今年の4月19日に脳出血(脳梗塞?)のため急逝する。享年46。
検索していたら、そのことに関して柳澤健氏自身が「FBに書いている文章」を見つけた。

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■柳澤氏は、連載を始めるにあたり、かなり時間をかけて実に多くの関係者、ファン達から丁寧な取材を行っていて、そこに書かれている内容は初めて知る驚きの事実も数多くあり、実に読み応えがあった。ただ、かつての熱烈な林美雄ファンとしては、彼の「虚像」がどんどん剥がされて「実像」があらわにされてゆく「この連載」は、読んでいて正直辛くなることも多い。

でも、宮沢章夫氏が ETV『ニッポン戦後サブカルチャー史』(第4回)で「林美雄」を大々的にフィーチャーしてくれたことは本当にうれしかったな。

番組では「林美雄パック」のオープニング・テーマ「BOOKER T. & THE MG's -- TIME IS TIGHT」も流れた。懐かしかったなぁ。

★【林美雄に関する過去記事】★


『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その4)2003/03/31
『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その3)2003/02/08
『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その2)2003/02/06
『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その1)2003/02/03

『小説すばる 8月号』林美雄とパックインミュージックの時代  2013/07/22
『林美雄 空白の3分16秒』宮沢章夫(TBSラジオ)     2013/12/31

「BOOKER T. & THE MGs」は珍しいバンドで、リーダー(オルガン)とドラマーが黒人、ギターとベースが白人の混成チームなのだ。スタックス・レコードの専属バックバンドとして、オーティス・レディングのレコーディングなどに参加しつつ、インスト・ナンバーばかりの『Green Onions』 (1962)でデビューし人気バンドとなった。「TIME IS TIGHT」は、1969年のスマッシュ・ヒット。

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■ブッカー・Tは、実はなかなかの美声の持ち主で、「フリー・ソウル」選曲者の橋本徹氏は『FREE SOUL : COLORS』のラストで、ブッカーTが 1974年に出したヴォーカル曲「ジャマイカ・ソング」を紹介し話題になった。

jamaica song
YouTube: jamaica song

その橋本徹氏による、2010年代の「フリー・ソウル」コンピ『Urban-Mellow Supreme』にも、ブッカー・Tが 2013年に出した「Watch You Sleeping」が、19曲目に入っている。橋本氏、ブッカー・Tが大好きなんだね。

< MG's の他のメンバーのその後>

ギターのスティーヴ・クロッパーは、現在も活躍中。1980年代はベースのドナルド・ダック・ダンと共に「ブルース・ブラザーズ」のバンドで再び人気を博し、忌野清志郎との共演後は来日回数も多い。
ドラムスのアル・ジャクソンは、1975年10月、自宅前で暴漢に銃で撃たれて死亡した。犯人は現在も不明。
ベースのDonald "Duck" Dunn(ドナルド・ダック・ダン)は、2012年5月、東京ブルーノート出演のため来日中にホテルで急逝。70歳だった。

 

2014年9月 3日 (水)

近ごろ観たもの聴いたもの

■このところ更新がとどこおっていたので、何時、どこで、何を観たか、まとめてメモしておきます。

・7月22日(火)アントワン・デュフォール ギター・ソロ 飯田市「Canvas

7月23日(水)『三人吉三』まつもと大歌舞伎 松本市民芸術館

水曜日の夜、まつもと大歌舞伎『三人吉三』を見に行ってきた。いい席が取れなくて、四等席(3階最後列)2000円。いやぁ面白かった!因果応報の陰々滅々とした話なのだが、三幕目の若い歌舞伎役者3人がエネルギッシュに大立ち回りで魅せる外連と様式美に圧倒された。3階から俯瞰したのが案外正解

7月26日(土)伊那保育園夏祭り

午後4時から伊那保育園の夏祭りで絵本を読む。ワンマンで『ふしぎなナイフ』福音館書店『もくもくやかん』かがくいひろし『はなびがあがりますよ』のむらさやか(こどものとも年少版8月号)『まるまるまるのほん』ポプラ社『こわくないこわくない』内田麟太郎、大島妙子(童心社)つづく…

『うんこしりとり』tupera tupera(白泉社)『おどります』高畠純(絵本館)『ふうせん』湯浅とんぼ(アリス館)『へいわってすてきだね』長谷川義史(ブロンズ新社)『世界中のこどもたちが』篠木眞・写真、新沢としひこ・詞(ポプラ社)で終了。声が枯れてしまったよ。

・7月28日(月)伊那市医師会納涼会「三浦雄一郎講演会」セミナーハウス

・8月9日(土)日本小児科学会中部ブロック連絡協議会 松本市・松本館

・8月10日(日)伊那のパパズ 下伊那郡喬木村「椋鳩十記念館図書館」

・8月16日(土)映画『STAND BY ME ドラえもん 』アイシティ・シネマ 山形村

・8月29日(金)諸星大二郎原画展 阪神百貨店梅田本店8階

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・8月29日(金)落語会「ハナシをノベル!! vol.45」大阪市中央公会堂

宿泊が APAホテル大阪肥後橋駅前だったので、中之島の中央公会堂へは歩いてもすぐ。何とも趣のある歴史的建造物だった。会場は、地下一階の大会議室。

・月亭文都師、今回の新作落語は、

『あるいはマンボウでいっぱいの海』 田中啓文・作

『ランババ』 北野勇作・作

あ、ランバダじゃなくて、ランババだったんだね。いやぁ、ビックリした。こんな落語初めて。笑った笑った。文都師、これ十八番の持ちネタにするといいよ絶対。ただ、会場によっては体力持たないかも。

あと、中入り前の「トーク de ノベル」。田中啓文氏と北野勇作氏が浴衣姿で高座に並んで座りしゃべったのだが、何だか二人ともボケの不思議な漫才を見ているみたいで、これがまためちゃくちゃ面白かった。

会場には、我孫子武丸氏に牧野修氏、それからぼくは気がつかなかったが、あの傑作SF『皆勤の徒』の著者、酉島伝法氏もいらしたようだ。ものすごく作家さんの人口密度の高い希有な落語会だった。『聴いたら危険!ジャズ入門』(アスキー新書)と『昔、火星のあった場所』(徳間デュアル文庫)は持って行ったので、終演後にがんばってサインして頂いた。

うれしかったなあ。ほんと、お二人ともずっと前からファンだったんです。『こなもん屋うま子』も持っていたから、こっちにもサインしてもらえばよかったなあ。残念。

○ 

・8月30日(土)芝居『朝日のような夕日をつれて 2014』森ノ宮ピロティホール

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■ゴドーを待ちながらヒマつぶしに遊んでいたら、ゴドー1とゴドー2の「ゴドーがふたり」もやって来て、でも「みよ子」は来なくて、舞台がすごい傾斜の斜面になっても、それでも彼らは踏ん張って立ち続ける。そういうお芝居だった。

う〜む。何だかよくわからんうちに、颯爽と終わってしまった。凄いな。昔から憧れていて、でも観ることができなくて、今回たまたま大阪で初めてナマで観た。観れてよかった。第三舞台の『朝日のような夕日をつれて』。

5人の役者さんたちは2時間連続で目まぐるしく動き、機関銃のようなセリフの応酬で、背広の背中が汗でぐっしょり濡れているのがはっきり見える熱演だった。この日は昼夜2公演だったが、55歳の大高さん、52歳の小須田さん、2人とも年齢を全く感じさせないクールで余裕の(顔はぜんぜん汗をかいていない)舞台に、同世代のぼくは感動した。ほんど凄いな。

2014年版の戯曲も売ってたが、パンフしか買わなかったのだけれど、後になって、あの時のセリフが気になって仕方がない。特に終盤。この戯曲集を図書館で探して読んでみようと思った。

■ 9月2日(火)の夜、テルメに行ったら会社創立記念日の臨時休業。あちゃぁと落ち込んで、近くの「ブックオフ」に寄ったら、100円単行本コーナーの「演劇・宝塚」のところに、なんと!「83年版」と「91年版」の戯曲集があった。もうビックリ。買って帰って読んでみると、2014版でも「まったく同じセリフ」のところが結構あるぞ。

「83年版」を読んでいると、そこに載っているギャグや歌(キングトーンズ「グンナイベイビー」とか)が、鴻上さんと同じ昭和33年生まれの僕には逆にリアルで、不思議な感覚に陥った。過去じゃなくて「いま・ここ」の感じ。面白い! ほんとよくできた脚本だなあ。

2014年7月27日 (日)

アン・サリー「森の診療所コンサート 2014」@めぐろパーシモンホール

■1週間前の日曜日。じつは所用で東京にいた。

夕方からは一人でフリーだったので、当初の予定では上野鈴本演芸場へ行って7月中席夜の主任:入船亭扇辰師の落語をじっくり聴こうと思っていた。ところが、タイムラインで 7/20(日)の夜に

アン・サリー「森の診療所コンサート 2014」@めぐろパーシモンホール 

があることを知り、落語はやめにしてネットでこちらを予約した。アン・サリーは是非一度ナマで聴いてみたかった歌い手さん。この機会を逃すわけにはいかない。

■宿泊先のアパホテル新宿御苑前を出た時には小雨パラパラ程度だったのが、東京メトロ副都心線直通の東横線を「都立大前」で下車すると、外は土砂降りの雨。カミナリゴロゴロ。これが噂のゲリラ豪雨というやつか。傘は持ってたから頑張ってパーシモンホールまで歩く。でもズボンはびしょ濡れ。

ようやく辿り着いたホールは、なかなかシックで落ち着いた雰囲気。集まってきた人たちも「オトナな感じ」で年齢層もやや高めだ。場内には鳥のさえずる音が小さく流され、外の喧噪が嘘のような静けさ。

夜7時をまわって暫くした頃、そっと場内が暗転しステージ上に彼女が現れた。そしていきなり映画『おおかみこどもの雨と雪』の主題歌『かあさんの唄』をアカペラで歌い出した。いやぁ、たまげた。その澄み渡る透明な歌声に、1曲目にして早くも涙で目が霞んで、ほんと参ったぞ。

■伴奏は、ピアノ:小林創、ギター:小池龍平、フリューゲルホルン:飯田玄彦の3人というシンプルなステージ構成で、彼女の人柄そのものといった、アットホームでしっとりほんわかと心地よいサウンドを奏でる。曲目は、最新CD『森の診療所』に収録されていた曲がほとんどだったかな。

CM曲特集として、霧島酒造「芋焼酎・吉助」、マルコメ味噌「料亭の味」、小田急ロマンスカー「ロマンスをもう一度」、映画『かぞくのくに』イメージソング、ビリー・バンバンの『白いブランコ』。それから、CDで聴いた時もすごく印象的だった『たなばたさま』。この曲の時には、ステージに満天の星空が広がった(スクリーンに映すのでなくて、天井から星がひとつひとつ吊されていた!)あと、『懐かしのニューオリンズ』が沁みた。

意外とよかったのが「チャタヌガチューチュー」から汽車つながりで「銀河鉄道999」のテーマ。懐かしいゴダイゴの曲ではないか! 谷川俊太郎&武満徹『死んだ男の残したものは』に続いて、ソウル・フラワー・ユニオンの傑作『満月の夕』。そう、この曲をどうしてもナマで聴いてみたかったのだ。以前よりやや速めのテンポで力強い歌声が素晴らしかったよ。

アン・サリー 満月の夕(ゆうべ)
YouTube: アン・サリー 満月の夕(ゆうべ)

あとどんな曲やったっけな。そうそう、チャップリンの『スマイル』。それから『時間旅行』。スケールが大きいこの曲も大好きだ。

アンコールでは、ステージにブラスバンド(トランペット:女性、スーザフォン:女性、トロンボーン:小林創、太鼓:男性、小太鼓:男性、タンバリン:小池龍平。それから、飯田玄彦&アン・サリー)が登場して『 Do You Know My Jesus(違うかも?)』と『聖者が街にやってくる』をステージからフロアに降り、ぐるっと場内を2廻り行進しながら演奏した。これがまたよかったな。

鳴りやまない拍手に、再度ステージ登場したアン・サリーが最後に歌ってくれたのが『蘇州夜曲』。いやぁ、ほんと満足いたしました。

■コンサート終了後、あわよくば持って行ったCDにサインをしてもらおうと考えていたのだが、大きな会場だからサイン会はなしだよなと勝手に諦めて場外へ。雨はすでに上がっていた。

あとでツイッターを見たら、CD販売コーナーにふらりと彼女が現れてサインをしてくれたらしい。そう言えば、彼女の娘さんらしき元気のいい小学生たちが、CDの売り子さんをしていた。


2014年6月29日 (日)

今月のこの1曲。『ぼくのお日さま』ハンバートハンバート

■ハンバートハンバートの新作CD『むかしぼくはみじめだった』を、ようやく入手した。毎日リピートして繰り返し聴いている。地味だが、じわりじわりと沁み入ってくる曲が多い。特に、ラストの「移民の歌」から最初に戻って「ぼくのお日さま」「ぶらんぶらん」「鬼が来た」と続いて行く流れがすばらしい。

キャッチーな派手さはないが、大地に根を張った、プリミティブで力強い自信に満ちた歌声とサウンド。ふたりのハーモニーも、ほんとピッタリと息が合っていて実に気持ちいい。

ハンバート ハンバート
YouTube: ハンバート ハンバート "ぼくのお日さま" (Official Music Video)

■このCDの中で、ぼくが一番すきな曲は2曲目の『ぶらんぶらん』なのだけれど、YouTubeにはアップされていないので、その次に気に入っている『ぼくのお日さま』を挙げておきます。

どなたかもツイートしていたが、ギターのイントロが、エリック・クラプトンの『 Change the World』っぽい。ぼくもそう思った。サビのコード進行は、マキタスポーツ氏が言うところの「カノン進行」だ。

でも、この曲は歌詞が沁みる。しみじみよい。聴き込むほどにじんわり泣けてくる。

歌ならいつだって

こんなに簡単に言えるけど

世の中歌のような

夢のようなとこじゃない

こちらのブログ:週刊「歴史とロック」の著者の文章がじつに読ませる。そうかそうか。

それから、こちらの「普通の日々」の方もいいな。

 

なお『ポンヌフのたまご』の遊穂さんの「うふふっ♫」に萌えた。

っていうの。わかるわかる(笑)

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■ナタリー「ハンバートハンバート × 又吉直樹」の鼎談が面白い。佐藤良成さんて車谷長吉が好きだったんだ。あの「どろどろ加減」、僕も大好きなのさ。それから、山下洋輔トリオの初代マネージャーだった「あべのぼる」氏の2曲も貴重だ。たしか最近亡くなってしまったけれど、松本の丸善で「自叙伝」を見かけた。

■このCDは、診察室の奥の処置室に置いたラジカセで、小さめの音量にしてかけているのだが、吸入とか採血、それから予防接種前後の待ち時間とかで処置室に入った親子連れが聞き耳を立て、『ポンヌフのたまご』や『ホンマツテントウ虫』を NHKテレビで聴いたことがあるのか、いっしょにメロディを口ずさんでいるケースが度々ある。

先日、看護婦さんから聞いたのだが、とあるおかあさんが、こう訊いてきたんだって。

「私もハンバートハンバート大好きなんですが、このCD、先生が選んで買ってきたんですか?

なんか、うれしくなっちゃったな。

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  <ハンバートハンバートに関する過去の記事>

『まっくらやみのにらめっこ』のこと(その2)2008/11/22

今年良く聴いたCD 2007/12/29

今年よく聴いたCD 2008/12/29

CD『ハンバート・ワイズマン!』より「おなじ話」の話。 2012/07/07

『ニッケル・オデオン』 2011/07/18

今月のこの一曲「陽炎」ハンバートハンバート 2010/10/27


2014年5月25日 (日)

今月のこの1曲。「月は無慈悲な夜の女王」ラドカ・トネフ

Radka Toneff - The Moon's a Harsh Mistress 嚴厲的月光夫人
YouTube: Radka Toneff - The Moon's a Harsh Mistress 嚴厲的月光夫人

 Ballad Of The Sad Young Menで発見した、ノルウェーのジャズ歌手「ラドカ・トネフ」のことがずっと気になっていて、結局ネットで中古盤を2枚(ハンブルグでのライヴとベスト盤)新品で彼女の遺作『フェアリーテイルズ』を入手した。

『フェアリーテイルズ』の冒頭に収録されているのが、この曲「The Moon's a Harsh Mistress」だ。ピアノ伴奏のみで唄われるこのCDの中でも特別印象的な一曲。

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■この曲、どこかで聴いたことあるよなって思ったら、YouTube にパット・メセニーとチャーリー・ヘイデンのデュオ・ライヴの映像があった。そうか、『ミズーリの空高く』6曲目に入っていて、何度も聴いてたんだ。

Pat Metheny With Charlie Haden - The Moon Is A Harsh Mistress
YouTube: Pat Metheny With Charlie Haden - The Moon Is A Harsh Mistress

■この曲のオリジナルは、アメリカのソングライター、ジミー・ウェッブで、『夏への扉』で有名なSF作家ロバート・A・ハインラインの小説『月は無慈悲な夜の女王』矢野徹・訳(ハヤカワ文庫)に触発されて出来上がったのだという。ぼくは未読。

この曲を、ジョー・コッカー、リンダ・ロンシュタット、ジュディ・コリンズ、 ケルティック・ウーマン、 Grazyna Auguscik など、いろんな人がカヴァーしているが、曲のタイトルと歌詞、その歌唱がベスト・マッチングしているのが、何と言っても「ラドカ・トネフ」のヴァージョンだ。

彼女は、『Live In Hamburg』を聴いても分かるとおり、エモーショナルに気持を歌に込めて力強く熱唱するタイプの歌い手だ。ところが、『フェアリーテイルズ』では彼女は自らシャウトを禁じている。パッションを内に隠し、ガラス細工のように繊細で儚く危うい歌声。まさに太陽に照らされて光る月の輝きのごとく、どこか冷めた暗い覚悟、諦観のような彼女の思いが、聴いていてひしひしと伝わってくるのだった。



2014年5月18日 (日)

春風亭一之輔独演会 +『HAPPY』の動画を集める(その2)

■いやぁ、笑った笑った。今宵、駒ヶ根の大宮五十鈴神社で行われた春風亭一之輔師匠の独演会。毎回思うのだけれど、落語ってホントいいなあ。聴き終わって何とも幸せな気分になれる。演目は「狸札」「鈴ヶ森」「お見立て」の3つ。

一之輔さんのヨーロッパ公演を記録した写真集や、色紙、手ぬぐいが当たる抽選会(大盤振る舞いだった)には外れてしまったけれど、お土産に真打ち昇進披露公演の50演目が書かれた記念の手ぬぐいを頂戴して大満足でした。

一之輔さんも書いているけれど、ぼくらの左前に座っていた4歳の少年。たしか、はるたろう(晴太郎?)君といってたか。ふつう3〜4歳の男の子だと、じっと座っていられるのは30分が限度だ。しかし、落語通の彼は違った。後半の、吉原の廓噺「お見立て」まで2時間近くいい子で聴いていたぞ。凄いな!

写真集が当たってよかったね。

ただ、幼気な4歳児に容赦なく「廓噺」を聴かせる一之輔師匠って、どうよ。

昨日駒ヶ根にいた4歳の男の子は怪獣図鑑の如くに噺家名鑑を見てるらしい。楽屋まで「いちのすけは初天神、青菜をよくやるんだよ」と聞こえてきた。「ツインテールは海老の味がするんだよ」的に。

■落語をナマで聴いた後に必ず感じる、あの「多幸感」って、ファレル・ウィリアムス『HAPPY』の「気持ちよさ」と同じなんじゃないか? たわいのない日々の日常の暮らしの内に、実は「しあわせ」はあるんだよ、きっと。

 

HAPPY - Pharell Williams [ We are from SXM ] #HAPPYDAY
YouTube: HAPPY - Pharell Williams [ We are from SXM ] #HAPPYDAY


HAPPY We Are From Minsk
YouTube: HAPPY We Are From Minsk

Pharrell Williams - #JamaicaHappy #HappyDay
YouTube: Pharrell Williams - #JamaicaHappy #HappyDay

Pharrell Williams - Happy (Venezuela - Coro) #HAPPYDAY
YouTube: Pharrell Williams - Happy (Venezuela - Coro) #HAPPYDAY

HAPPY in Greenland
YouTube: HAPPY in Greenland

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