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2011年7月18日 (月)

『ニッケル・オデオン』ハンバートハンバート

110717


50年以上も生きてくると、大好きなミュージシャンがいっぱいいる。加川良、泉谷しげる、吉田拓郎、友部正人、高田渡、浅川マキ、たま、荒井由実、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンズ、アート・ペッパー、エリック・ドルフィー、ウディ・ショウ、ファラオ・サンダース。などなど。


みんな、ずいぶんと追っかけてきた。でも、いつしか知らないうちに彼らの「最新CD」を買わなくなってしまうのだ。何故なら、僕のテンションをずっと継続して最先端の楽曲を提供してくれるミュージシャンはそうはいないのだから。


そんな中で、唯一ぼくが「最新CD」が常に「彼らの最高傑作」であると思い続けていて、しかも、その思いが決して裏切られたことがないグループがいる。それが「ハンバートハンバート」なのだ。50すぎのオヤジがね、ホレてしまったのだよ。

■「北原こどもクリニック」のHP内を探したら、2008年11月22日に書いた「ハンバートハンバート」に関する文章が見つかったので、ここに再録しておきます。

■「ハンバートハンバート」は、男女デュオのフォークグループだ。いまの若い世代から、1970年代初頭を中学生・高校生で過ごした僕らのようなオリジナル・フォーク世代まで、ファン層はじつに広い。作詞・作曲は全て佐藤良成が担当する。ギターも上手いがフィドルも巧い。野武士のような風貌で、ちょっとぶっきらぼうで泥臭い、でも不思議と暖かな歌声を聴かせる。佐野遊穂は、ヴォーカルとハーモニカを担当。彼女の声も独特だ。どこまでも澄んで高く清らかなんだけど、決して、か細く弱い声ではない。凛とした気高さがある。そういう女性の声だ。

男女デュオのグループは難しい。男と女で、声の音域がぜんぜん違うからだ。これから年末に入ると、忘年会のカラオケでは男女デュエット曲が目白押しだ。先だって亡くなった、三笑亭可楽ファンのフランク永井「有楽町で合いましょう」とか、平尾正章&畑中葉子 の「カナダからの手紙」とか、石川優子&チャゲ「ふたりの愛ランド」かな。あとは、チェリッシュ「てんとう虫のサンバ」もあるし、ヒデとロザンナやトワ・エ・モアもいたね。ちょっと古すぎたかな(^^;;

ハンバートハンバートにも、男女デュエット曲の基本を踏襲した楽曲がある。いわゆる男と女の掛け合いで展開する曲だ。名曲「おなじ話」がそうだし、『まっくらやみのにらめっこ』の1曲目に収録された「バビロン」が、まさにそう。しかし、こういう男女のボーカルのからみが可能だとは、思いもよらなかったな。新しい試みだ。この曲を聴いて感じたことだが、佐野遊穂のボーカルが変わった。何か、ふっきれたように力強く唄っている。突き放したような、圧倒的なパワーを、その歌声に感じたのだ。「白夜」や「おいらの船」を聴くに及んで、その思いは確信に至った。

今を生きる「ふてぶしさ」と「したたかさ」を。


■ YouTube を見ていたら、ぼくが中学生のころ大好きだった加川良と、ハンバートハンバートが共演している映像を発見した。「フォークの達人」 だ。これは2年前、ぼくもBS2で録画したはず。HDDレコーダーを確認してみると、あったあった。な~んだ、ハンバートハンバートのことは、意識下で既に2年前から知っていたんだ。加川良、そして高田渡。彼らの正統な継承者は「ハンバートハンバート」しかいまい。うん、きっとそうだ。

■ Amazon の『まっくらやみのにらめっこ』カスタマー評に、以下のように書く評者がいた。まったく巧いことを言うものだ。本当にその通りだと思うよ。

★★★★★  どこかで聞こえた唄, 2008/9/15 By wab

ハンバートハンバートのことは、随分前から知っていた。
知っていたけど、ちゃんと聴いてなかった。

勝手に「癒し系」とか「ゆるい」とか想像してた。

このアルバムを、たまたま聴いたんだ。
うわー。なに、これ。すごい。


独特の視点の歌詞が素晴らしい。
ハーモニーも美しい。
トラッド感が良い具合の演奏も○。


ただ、僕の心に引っかかったのは、もっと本質的な点だ。
この唄たちは、どこかで聴いた、どこかから聞こえた、そんな気がしたのだ。
ひっかかる感じ。思い出せるようで思い出せない、あの。。。。
ノスタルジックともちょっと違う感覚。
優しい思い出感覚じゃない。

この感じって何て言うんだろう。

悲しいわけでも嬉しいわけでもないのに、涙が出てくる感じ。

あなたたちの音楽は、そんなかんじ。



ついこの間まで、前作の『さすらい記』が一番のお気に入りで、繰り返し繰り返し聴いてきた。

でも今は、発売されたばかりの『ニッケル・オデオン』
例によって、処置室に置いたラジカセで繰り返し一日中聴いているが、ちっとも飽きない。さりげないのだけれど、すごくいい。

■少し前に、ツイッター上で僕が呟いた感想を、少し修正して以下に載せます。
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ハンバートハンバートの新譜が届いた。まずは金沢「もっきりや」でのライヴDVDを見る。「もっきりや」はね、学生の頃一度行ったことがあるんだ。香林坊近くのジャズ喫茶。「慚愧」「虎」「おなじ話」「罪の味/アセロラ体操のうた」&金沢の素敵な古本屋さんや雑貨屋さんとかを収録。いいじゃん。


あぁやっぱり「虎」はいいなぁ。泣ける歌だなあ。「人の胸に届くような そんな歌がつくれたら だめだ、だめだ、今日はやめだ メロディひとつできやしない 酒だ、酒だ、同じことさ 昼間からつぶれて眠る」


さて、ハンバートハンバート『ニッケル・オデオン』を聴こう。いい意味で、新境地とか何もない、いつもどおりの彼らが変に力まず「のほほん」と、ぼくらのありふれた日常の歌を唄っていた。ありがとう。ほんとに。


最初に1回聴いてまず好きになった曲は、2曲目の「ゆうべはおれが悪かった」だ。あはは! これ、夫婦喧嘩に負けた夫が翌朝「奥さん」に謝る唄じゃん。変にフレンチ・ポップスかブロッサム・ディアリーのお洒落なアレンジがされてるし、取って付けたような「愛してるぜ」は、心こもってないぞ!


その次に気に入ったのは、5曲目「好きになったころ」だ。わかるなぁ、すっごく分かる。ぼくが中坊だった頃、加川良のLPを買って何度も何度も聴いた。そして我慢できなくなって、中古のフォーク・ギターを買ってもらったんだ。左手の指がスチール弦を押さえてマメになった。痛かったなぁ。


6曲目「おじさんと酒」は、ハンバートハンバートの王道を行く曲だ。最近気に入っている星野源の曲とも共通する、何とも言えない「ほのぼの感」がよいな。ノコギリの音も入ってるし。


6曲聴いて驚いたことは、「波羅蜜」みたいな毒のある暗い曲がないことだ。でも震災の後だしね、彼らはあの日、仙台にいたのだから。


で、このCDで一番チカラが入った曲、1曲目「みじかいお別れ」のこと。聴き込むほどに、味わいが増す名曲だ。言葉をひとつずつ確かめるように歌う佐野遊穂さんの歌声は、静かで優しいんだけれど、じわじわと力強さが伝わってくるのだった。ポイントは、ベースが基調となってリードしていることか? もしかして、全ての曲で?

イントロのフレーズとテンポ。あれ?どこかで聴いたことあるぞ。井上堯之『青春の蹉跌のテーマ』と同じコード進行なんだ。いいな、すごくいい。『青春の蹉跌』は、大好きだったTBSラジオの深夜放送、林美雄パックイン・ミュージックのテーマ曲だから、この曲を聴くと、亡くなった林美雄アナのことを思い出してしまうのだ。






YouTube: 再アップです 林美雄 パックインミュージック最終回


「桶屋」は、風が吹けば桶屋が儲かる、みたいな曲で、ドラムスの人がいいテンポ、リズムを醸し出している曲だ。「君と暮らせば」は、怪談・牡丹灯籠みたいな話なのだが、ぜんぜん暗くないし怖くはない。佐藤良成のヴォーカルは、いつだって「いま」を振り切って風になっている。


そうか、ハンバートハンバート『ニッケル・オデオン』5曲目「好きになったころ」に出てくるCDって、ボブ・ディラン『追憶のハイウェイ61』だったんだ。そう言えば、この曲の間奏は「Like a Rolling Stone」じゃないか。



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