今月のこの1曲 Feed

2014年8月19日 (火)

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(その3)「映画」と「漫画」・今月のこの1曲「人生は風車」カルトーラ

■このところ、外来小児科学会のWSの準備で(配布資料を誠意作成中なのだ)ブログの記事を書いている余裕がない。というのは半分本当で、あとの半分は更新が億劫になってきていることによるみたい。すみません。

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■ 映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は本当に面白かった。主演の峯田和伸がとにかく良かった。何とも情けない奴なんだけれども、どこか可愛い。憎めない。そして今どき呆れるほどの「純」なココロの持ち主。

彼が惚れる「ちはる」役の黒川芽以もよかった。ちょっと太めで垢抜けない新垣結衣って感じが、長野出身の「ちはる」にピッタリだ。それから、峯田の敵役、松田龍平。こういう、とことん嫌な奴をやらせたら最高に上手いな。

監督は三浦大輔。演劇界の鬼才初の監督作品となった訳だが、案外手堅くオーソドックスな画作りが成されていた。引きの画像が多かったし、カット割りも自然で、妙なこだわりは感じなかった。すごく好印象。

ただ、小林薫が缶ビールを飲むシーンが2つ続くところ。時間帯はまったく異なるのに、カットが変わっても缶ビールの動きが「完全に一致」していたのは見事だった。

■映画があまりに面白かったので、原作の漫画を「ブックオフ」巡りをして10巻全部そろえた。漫画も面白い。実によく出来ている。映画は、原作の「5巻の半分」で終わっているのだね。マンガはまだあと半分続く。

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ただ、マンガの主人公と映画の峯田和伸とでは、ずいぶん感じが違う。

例えば、マンガの「第1巻」79ページ下段の画。映画でも同じシーンがある。しかも2度も登場する。峯田のアップ。マンガと違って、峯田は峯田だ。どんなに情けなくともカッコイイしカワイイ。

DAIGO みたいだけれど、もっと垂れ目で、メガネをかけると生瀬勝久に似てきて、モヒカンになったら所ジョージにも見える。でも峯田は峯田だ。

宇多丸が映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を語る
YouTube: 宇多丸が映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を語る


マンガと映画の違いに関しては、宇多丸さんがラジオで語っていて、なるほどなと思った。原作を先に読んでいると、どうしてもそう感じてしまうかも。

あと、銀杏BOYZ 峯田和伸が歌う主題歌がめちゃくちゃイイぞ!

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★【今月のこの一曲】カルトーラ 『人生は風車』

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■ずっと探していて、8月の初めに松本の「ほんやらどお」でようやく入手できた名盤『カルトーラ ”人生は風車〜沈黙のバラ”』カルトーラが65歳と68歳時の録音。何ていい声なんだ。艶があって若々しくて。聞き惚れてしまうよ。

Cartola e seu Pai - O Mundo é um Moinho
YouTube: Cartola e seu Pai - O Mundo é um Moinho


■これでようやく「古いサンビスタたち」の歌声・演奏を記録した貴重なCDが4枚そろったのだ。

2014年6月29日 (日)

今月のこの1曲。『ぼくのお日さま』ハンバートハンバート

■ハンバートハンバートの新作CD『むかしぼくはみじめだった』を、ようやく入手した。毎日リピートして繰り返し聴いている。地味だが、じわりじわりと沁み入ってくる曲が多い。特に、ラストの「移民の歌」から最初に戻って「ぼくのお日さま」「ぶらんぶらん」「鬼が来た」と続いて行く流れがすばらしい。

キャッチーな派手さはないが、大地に根を張った、プリミティブで力強い自信に満ちた歌声とサウンド。ふたりのハーモニーも、ほんとピッタリと息が合っていて実に気持ちいい。

ハンバート ハンバート
YouTube: ハンバート ハンバート "ぼくのお日さま" (Official Music Video)

■このCDの中で、ぼくが一番すきな曲は2曲目の『ぶらんぶらん』なのだけれど、YouTubeにはアップされていないので、その次に気に入っている『ぼくのお日さま』を挙げておきます。

どなたかもツイートしていたが、ギターのイントロが、エリック・クラプトンの『 Change the World』っぽい。ぼくもそう思った。サビのコード進行は、マキタスポーツ氏が言うところの「カノン進行」だ。

でも、この曲は歌詞が沁みる。しみじみよい。聴き込むほどにじんわり泣けてくる。

歌ならいつだって

こんなに簡単に言えるけど

世の中歌のような

夢のようなとこじゃない

こちらのブログ:週刊「歴史とロック」の著者の文章がじつに読ませる。そうかそうか。

それから、こちらの「普通の日々」の方もいいな。

 

なお『ポンヌフのたまご』の遊穂さんの「うふふっ♫」に萌えた。

っていうの。わかるわかる(笑)

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■ナタリー「ハンバートハンバート × 又吉直樹」の鼎談が面白い。佐藤良成さんて車谷長吉が好きだったんだ。あの「どろどろ加減」、僕も大好きなのさ。それから、山下洋輔トリオの初代マネージャーだった「あべのぼる」氏の2曲も貴重だ。たしか最近亡くなってしまったけれど、松本の丸善で「自叙伝」を見かけた。

■このCDは、診察室の奥の処置室に置いたラジカセで、小さめの音量にしてかけているのだが、吸入とか採血、それから予防接種前後の待ち時間とかで処置室に入った親子連れが聞き耳を立て、『ポンヌフのたまご』や『ホンマツテントウ虫』を NHKテレビで聴いたことがあるのか、いっしょにメロディを口ずさんでいるケースが度々ある。

先日、看護婦さんから聞いたのだが、とあるおかあさんが、こう訊いてきたんだって。

「私もハンバートハンバート大好きなんですが、このCD、先生が選んで買ってきたんですか?

なんか、うれしくなっちゃったな。

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  <ハンバートハンバートに関する過去の記事>

『まっくらやみのにらめっこ』のこと(その2)2008/11/22

今年良く聴いたCD 2007/12/29

今年よく聴いたCD 2008/12/29

CD『ハンバート・ワイズマン!』より「おなじ話」の話。 2012/07/07

『ニッケル・オデオン』 2011/07/18

今月のこの一曲「陽炎」ハンバートハンバート 2010/10/27


2014年5月25日 (日)

今月のこの1曲。「月は無慈悲な夜の女王」ラドカ・トネフ

Radka Toneff - The Moon's a Harsh Mistress 嚴厲的月光夫人
YouTube: Radka Toneff - The Moon's a Harsh Mistress 嚴厲的月光夫人

 Ballad Of The Sad Young Menで発見した、ノルウェーのジャズ歌手「ラドカ・トネフ」のことがずっと気になっていて、結局ネットで中古盤を2枚(ハンブルグでのライヴとベスト盤)新品で彼女の遺作『フェアリーテイルズ』を入手した。

『フェアリーテイルズ』の冒頭に収録されているのが、この曲「The Moon's a Harsh Mistress」だ。ピアノ伴奏のみで唄われるこのCDの中でも特別印象的な一曲。

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■この曲、どこかで聴いたことあるよなって思ったら、YouTube にパット・メセニーとチャーリー・ヘイデンのデュオ・ライヴの映像があった。そうか、『ミズーリの空高く』6曲目に入っていて、何度も聴いてたんだ。

Pat Metheny With Charlie Haden - The Moon Is A Harsh Mistress
YouTube: Pat Metheny With Charlie Haden - The Moon Is A Harsh Mistress

■この曲のオリジナルは、アメリカのソングライター、ジミー・ウェッブで、『夏への扉』で有名なSF作家ロバート・A・ハインラインの小説『月は無慈悲な夜の女王』矢野徹・訳(ハヤカワ文庫)に触発されて出来上がったのだという。ぼくは未読。

この曲を、ジョー・コッカー、リンダ・ロンシュタット、ジュディ・コリンズ、 ケルティック・ウーマン、 Grazyna Auguscik など、いろんな人がカヴァーしているが、曲のタイトルと歌詞、その歌唱がベスト・マッチングしているのが、何と言っても「ラドカ・トネフ」のヴァージョンだ。

彼女は、『Live In Hamburg』を聴いても分かるとおり、エモーショナルに気持を歌に込めて力強く熱唱するタイプの歌い手だ。ところが、『フェアリーテイルズ』では彼女は自らシャウトを禁じている。パッションを内に隠し、ガラス細工のように繊細で儚く危うい歌声。まさに太陽に照らされて光る月の輝きのごとく、どこか冷めた暗い覚悟、諦観のような彼女の思いが、聴いていてひしひしと伝わってくるのだった。



2014年4月28日 (月)

『今月のこの一曲』。「I Like You,You're Nice」ブロッサム・ディアリー

I Like You, You're Nice - Irene Kral
YouTube: I Like You, You're Nice - Irene Kral

■「今月のこの一曲」は、ブロッサム・ディアリーが作曲した『I Like You,You're Nice』。大好きな曲で、アイリーン・クラールの歌でさんざん聴いた。小品ながらも小粋な佳曲。

とある女性が、イケメン男に一目惚れしてしまう歌。オリジナルは、『BLOSSOM DEARIE SINGS』5曲目に入っている。先日、名古屋市大須の中古CD店でようやく入手できた。コイツはよかった! ずっと探していたのだよ。うれしかったなぁ、見つけたとき。このところ毎日ずっと聴いている。じつに良い。

Blossom Dearie - I Like You, You're Nice / Saving My Feeling For You (Parkinson, 1972)
YouTube: Blossom Dearie - I Like You, You're Nice / Saving My Feeling For You (Parkinson, 1972)

■この曲を唄うアイリーン・クラールのCDは3枚持っていて『Irene Kral LIVE』では9曲目に入っている。ラストの「コーヒーを一杯」のくだりで客席に笑いが起こる。何故だ? その理由がよくわからない。歌詞カードがなかったから尚更だ。ところで、オリジナル盤にはちゃんと英語の歌詞カードが載っていた。

で、例の「コーヒー1杯」のくだり。 " I'll make you a marvelous, wondrous and quite notorious cup of Costa Rican coffee " と、ある。

よくわからないのは「quite notorious」。

直訳すれば、「極めて悪名高き」となる。コスタリカのコーヒー豆に、血に塗られた暗黒の歴史でもあったのか? 単に「有名」なら、famous とか、well known を使うはずなのに、何故「quite notorious」なのか? 未だに、わからないのだ。

でも、ここで笑いが起こるのはたぶん、すっごく期待させておいて、なんだコーヒー1杯だけかよ!

っていう落ちに対してなんだろうなぁ。

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■納戸を整理していたら、「I Like You,You're Nice」をA面5曲目で唄っている、アン・バートンのレコードが見つかった。ボサノバ・タッチで、アイリーン・クラールほど「しっとり」しすぎず、小粋に軽く唄っている。1983〜84年の録音だから、晩年のレコードか? ベースは、セシル・マクビー。渋いぞ!

2014年3月30日 (日)

復活「今月のこの1曲」 『Ballad of the Sad Young Men』

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■しばらく忘れていた「今月のこの1曲」を、ふと復活させようと思ったのだ。

「この曲」を初めて聴いたのは、「こちらのブログ」の筆者と同じく、コンテンポラリー・レーベルから出た、アート・ペッパーの復帰後3枚目のLP『ノー・リミット』でだった。最もハードでフリーキーなアート・ペッパーの演奏を記録したこのレコードの、A面2曲目に収録されていたのが「 Ballad Of The Sad Young Men」だ。

さんざん聴いたなぁ。この曲。

1950年代の軽やかで艶のある演奏と違って、ちょっとブッキラボウに、とつとつと途切れ途切れにフレーズを奏でるペッパーのバラード演奏は、ほんとうに沁み入った。アルトの音色が切なかった。

なんなんだろうなぁ、若い頃はブイブイ言わせて大活躍していたのに、麻薬禍から1960年代後半には知らないうちにジャズ界から消え去っていた。そんな彼が50歳をとうに過ぎて奇跡的に復活し、アルト・サックスで吹く「 Ballad Of The Sad Young Men」のメロディには、その一音一音に彼の特別な想いが込められているような気がしてならない。もう若くはない「いま」だからこそ、ようやく吹けるようになったのだ。

ちょうど、ビリー・ホリデイ『レディ・イン・サテン』の「I'm a Fool to Want You」を聴いた時と同じ印象。彼の(彼女の)人生(生きざま)が、そのままダイレクトに演奏に反映されていた。


YouTube: Art Pepper Quartet - Ballad of the Sad Young Men



■先達て松本へ行った際、久しぶりに「アガタ書房」へ寄って中古盤の2枚組『オール・オブ・ユー』キース・ジャレット・トリオ(ECM / HMCD)を入手した。2枚目のほうに、僕の大好きな曲が2曲も収録されていたからだ。

その2曲とは、「All The Things You Are」と「Ballad Of The Sad Young Men」。

このCDの原題は『Tribute』で、リー・コニッツ、ジム・ホール、ビル・エバンス、チャーリー・パーカー、ロリンズ、マイルス、そしてコルトレーンにそれぞれ曲が捧げられている。

で、ジャズ・ヴォーカリストのアニタ・オデイに捧げられていたのが「この曲」だった。僕は彼女が歌った「この曲」を聴いたことがなかったので、早速検察してみると、彼女が1961年にゲイリー・マクファーランド・オーケストラと録音した『All The Sad Young Men』の5曲目に収録されていることが判った。

さらにググると、ボズ・スキャッグスやリッキー・リー・ジョーンズ、それに、ロバータ・フラックも「この曲」を歌っているらしい。

YouTube には、ロバータ・フラックのヴァージョンがあった。それがコレだ。

Roberta Flack - Ballad of the Sad Young Men
YouTube: Roberta Flack - Ballad of the Sad Young Men


ロバータ・フラックがピアノの弾き語りで歌っている。冒頭の印象的なベースの弓引きは、ロン・カーター。アート・ペッパーの演奏は、このロバータ・フラックのアレンジを「そのまま」いただいていたんだね。そっくり同じだ。

こうして、初期のロバータ・フラックを聴いてみて感じるのは、同じピアノの弾き語りをしている「ニーナ・シモン」のことを、すっごく意識していることだ。ソウルフルでありながら、シンガー・ソング・ライターの楽曲をいっぱい取り入れている点。ジャニス・イアンとか、レナード・コーエンとかの曲をね。彼女のこのデビュー盤、なかなかいいじゃないか。

■さらに先週、東京に行って、新宿のディスクユニオンで「アニタ・オデイ盤」を中古で入手した。でも、凝ったアレンジがかえって邪魔してしまい、この曲のシンプルな切ない味わいが損なわれてしまっていて残念だったな。

曲のタイトルと、CDのタイトルが微妙に異なっているのには訳がある。

『All The Sad Young Men』というのは、『華麗なるギャツビー』の作者フィッツジェラルドの小説のタイトルなんだそうだ。なるほどね。

Radka Toneff - Ballad of the Sad Young Men (live, 1977)
YouTube: Radka Toneff - Ballad of the Sad Young Men (live, 1977)


あと、さらに検索を続けたら、ノルウェーの歌姫ラドカ・トネフのヴァージョンが見つかった。これもいいな。今までぜんぜん知らなかった人だ。CDも持ってない。北欧系の女性ジャズ・ヴォーカルは、このところけっこうフォローしてきたのにね。

調べてみると、30歳で自ら命を絶って、いまはもういない人だった。

2012年10月 4日 (木)

ブリジット・フォンテーヌ『ヌガ』と『ラジオのように』

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成田の次兄一家といっしょにやって来た、ミニチュアダックス(雌)の「チョビ」に対して、どう接してよいのか悩んでいる、わが家のシープー「レオン」(雄)。

 

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■さて、木曜日になろうとしているのに、未だに日曜日午後の「ワサブロー コンサート」の余韻に浸りきっているのだった。本当に素晴らしかったなぁ。
 
で、アンコールに歌ってくれた「ヌガ」が気に入って、ブリジット・フォンテーヌのオリジナルを探してみたら、あったあった。YouTube。
 


YouTube: Brigitte Fontaine - Le Nougat

正直これ、あまりにぶっ飛んでて、単なるアブナイ不気味なおばさんじゃないか?。

ネットでググってみたら、「ヌガ」というのは隠語(符牒)で、本当は……

 

■ピンクの象がいる、銀座のビストロ「ヌガ」のサイトを開くと、いきなりワサブローさんが歌う「ヌガ」が流れる。

http://www.lenougat.jp/floor.html

(この「ヌガ」はCD収録のものとは違うようだ)

 


YouTube: Brigitte Fontaine - Comme à la radio 1969

で、久しぶりに聴いてみたのが「ラジオのように」

 

 il fait froid dans le monde(世界は寒い)

 il fait froid dans le monde(世界は寒い)

 il fait froid  il fait froid  il fait froid

 ca commence a se savoir(それはみんなにわかってくる)

 et il y  des incendies qui s'allument dans certains endroits

              (そしてあちこちで 火事が起きる)

 parce qu'il fait trop froid(なぜって、あまりに寒いからさ)

 traducteurs, traduisez (翻訳家よ、翻訳せよ)

2012年9月10日 (月)

NO NUKES JAZZ ORCHESTRA を聴いた。凄いぞ!

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■今から30年以上も前の話だが、当時のジャズ専門誌には、老舗雑誌「スィング・ジャーナル」「ジャズ批評」の他に、新興雑誌「ジャズ・ライフ」が頑張っていた。

その読者投稿欄に「ジャズの同時代性について」と題して投稿したのだ。力入ってたし結構自信もあったのだが、あっさりボツにされた。もちろん、未熟で稚拙な文章だったからだが、いまどきコンテンポラリー(同時代性)だなんて「ケッ」と、はなで笑われた感じだった。確かに、時代はバブルで浮かれていたな。

 

■以下、9月2日夜の、ぼくのツイートより転載。

 

NO NUKES JAZZ ORCHESTRA のCDを買った。これ凄いんじゃないか。「いまここ」を表現するのが、JAZZの使命さ。特に3曲目が好き。ミンガスかモンクみたいな2曲目もいいな。スティーヴ・ライヒ的な現代音楽も入ってるし、「ショーロクラブ」の人だから、ブラジリアン・ミュージックもね。

 

 
 
 
 
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あとヴォーカルでは、アン・サリーの『満月の夕』(池本本門寺でのライブ版は、YouTubeで以前にさんざん聴いた)がいいのは勿論のこと、おおたか静流の2曲『3月のうた』谷川俊太郎・作詞、武満徹・作曲『スマイル』チャップリン作曲、が素晴らしい。泣ける。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8曲目『夜のラッシュアワー』も実に美しい印象的な曲だ。パット・メセニーのCDみたいな感じで始まって、後半はギル・エヴァンズかエリント
ン・オーケストラのブラス・アンサンブルが聴かせる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
10曲目「Gray-zone(妄想と現実の狭間)」の緊張感も尋常じゃないぞ。Gray-Zone っていうユニット、要注目だ。是非ライヴで聴いてみたい。ギターの人いい。パット・メセニーかと思ったら、デレク・ベイリーじゃん。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■以下、追補。
 
 
11曲目「Circle Line」。いきなり始まる弦楽が奏でるテーマに驚愕する曲。ふつう、ジャズを弦楽が表現しようとすると、どうしても「もっさり、どんより」してしまうのだ。例えば「クロノス・カルテット」がそう。
 
ところが、このオーケストラに参加している弦楽四重奏団は違うな。キレがいい。リズム感がいい。音が、とがっている。これは特筆すべき点だ。
 
何度も聴いてみて、すごく好きな曲だと感じた。ぼくの大好きな、エリック・ドルフィーのアルト・ソロを連想させる、音が極端に高低するスピードの快感にあるからだと思う。
 
 
12曲目「Blue March(宛名のない未来への手紙)」
 
弦が爪弾かれる音の感じは、海の底だ。大量の水と共に放出され続ける(もしくは地下の土壌から海へ染み出て行く)放射性物質が拡散してゆく様がイメージされる。その海には、魚が泳いでいて、海藻もプランクトンもいて、黒潮に乗って回遊魚もやってくるのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
・政治的プロパガンダを、ジャズを演奏することで表現し、強く大衆に訴えてきた人といえば、まずはチャールズ・ミンガスが上げられる。「直立猿人」「ハイチアン・ファイトソング」「フォーバス知事の寓話」など、ミンガスは何時でも世の中に怒っていた。
 
 
 
 
 
・それから、チャーリー・ヘイデンの「リベレーション・ミュージック・オーケストラ」。それに、沢田穣治氏率いる、この「ノー・ニュークス・ジャズ・オーケストラ」。興味深いことは、3人とも「ベーシスト」であること。
 
 
 
らに共通する、もう一つの大切な事柄は、まず何よりも「音楽性に優れている」「音で聴かせる」ということだ。
 
 
 
 
 
 
 
・この『NO NUKES JAZZ OCHESTRAでは、短いピアノソロ(デュオ?)に始まって、最後もまたピアノソロでクローズされる。
 
 
 
中にサンドイッチされる楽曲は、弦楽器も加えた大きな編成のジャズバンド。続いて、菊地成孔的モーダル・コーダルなスリリングでかっこいい曲。グレー・ゾーンによる先鋭的フリージャズに、弦楽四重奏を主役とした現代音楽と、ショーロクラブのブラジル音楽。それから、それぞれに個性的で心に沁みるヴォーカルが4曲。
 
 
これらが全く違和感なく、見事な統一感でもって、曲と曲とが密接に関連しあいながら、全15曲を構成している。
 
 
 
 
その事がとにかく素晴らしい。壮大な叙事詩となっているのだ。これは、コンポーザー沢田穣治の力量の成せる技だと思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
・あと、このCDは「音がいい」。これも重要。
 
 
 
・おおたか静流が歌う「三月のうた」は英語の歌詞で歌われているが、日本語で歌われたものを『アルフォンシーナと海』波多野睦美&つのだたかし のCDで以前に聴いた。
 
 
 
 
 
 
   『三月のうた』   谷川俊太郎
 
 
 
 
   JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました(2019/08/06)
 
 
 
 
 
 
・ブラジル人のヘナート・モタとパトリシア・ロバートが歌う「プロミス」は静かで子守歌みたいに優しい曲だけれど、「われわれが何とかします」っていう、責任と意志と決意の表れのような曲だ。
 
 
 
誰に対しての「約束」かって? それはもちろん、ぼくらが死んだあとの未来を生きてゆく、いまの子供たちに対してだ。

2012年7月 7日 (土)

CD『ハンバート・ワイズマン!』より「おなじ話」の話。

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このあいだの日曜日、中学2年生の次男を車に乗せて松本のゼビオに向かう途中、先日購入したばかりの『ハンバート・ワイズマン!』を何気にかけたのだ。

そしたら、1曲目の「おなじ話」が始まってしばらくしてから、後部座席に座っていた次男が言った。

「これ、幽霊のはなし?」 「スルドイなお前! なんで分かったんだ? 彼女がもういないってこと。この曲はね、ハンバートハンバートの名曲中の名曲なんだよ。」


YouTube: おなじ話 / ハンバートハンバート

ぼくは感心しきったぞ。 「おなじ話」は、ハンバートハンバートの曲の中で一番知られた代表曲だ。幾つかバージョン違いがあるが、やはりオリジナルCD『11のみじかい話』1曲目に収録されたものが一番いいと思っていた。(シングル盤に収録された別アレンジのアコースティック版は『ハンバートハンバート シングルコレクション』Disc1 5曲目に入っている)

■しかし、ここ連日ずっと午前も午後も繰り返し繰り返し『ハンバート・ワイズマン!』のCDを聴いていたから、この最新ヴァージョンが案外一番いいんじゃないかと確信したのだが、今晩久し振りで「オリジナル演奏」を聴いてみてビックリした。 オリジナルはテンポが思いのほか速いのだ。「えっ?」っていうくらい速い。 それだからかもしれないが、女性ヴォーカルが冷たく「つっけんどん」な印象もつよい。もう、心ここにあらず、といった感じなのだ。

そして、この曲に関しては聴いていて「何とも不安で不穏な男女の居心地の悪さ」を感じてしまう。しかも、最終的には「この男女」は別れるみたいだし。そういう「どうにもならない切なさ」を歌った曲だと理解して正しいと思う。 ただ不思議なのは、「歌詞が不自然」なことろが多々あって、それがどうにも気になっていた。

彼女は、「いるのにいない」し、「いないのにいる」のだ。 という状況を矛盾なく説明するには、うちの次男が言うように「彼女は幽霊なのだ」って、解釈するしかないのではないか。 そう思った根拠は、内田樹センセイが著書『村上春樹にご用心』の中の、p58で「村上春樹の作品はほぼすべてが『幽霊』話である」と看破していることと関係している。

■ハンバートハンバートの名曲「おなじ話」に、なぜ人々が共感して涙を流すのかというと、それは村上春樹の小説を読んで「じん」とくる「切ない喪失感」と同じだからではないのか。つまりこの曲は、「死者と交流」する話なのだ。

■死者との交流で思い出したのだが、じつは、ハンバートハンバートは「そういう曲」をいっぱい歌っている。 「大宴会」「喪に服すとき」「陽炎」。そして、高田渡の「ブラザー軒」。

「東一番町、ブラザー軒。たなばたの夜。キラキラ波うつ硝子簾の向こうの闇に」「死んだおやじが入ってくる。死んだ妹をつれて 氷を食べに、ぼくのわきへ。」(菅原克己・作詞、高田渡・作曲「ブラザー軒」より)

あ、そうだ。今夜は七夕だったね。 という訳で、何度も繰り返し聴いてみて「おなじ話」に関しては最新盤がやっぱり一番しっくりくるんじゃないかと思ってしまう。ジャマイカのロックステディのリズムがスローでゆるく、切ない曲なんだけれども何とも心地よい。


YouTube: おなじ話 総天然色バージョン - ハンバートハンバート×COOL WISE MAN

もともと佐藤良成の「ぶっきらぼうな歌声」は、スカ〜ロックステディのリズム、ブラスアンサンブルと相性はよいはずだし、母親になって、なんか吹っ切れたような力強さを感じさせる佐野遊穂の歌声には、オリジナル版よりも不思議と人間的な暖かみがあるのだ。ホントは幽霊なのにね。あったかいのだよ。聴いていて。そこがいいんだ。

2012年7月 1日 (日)

最近購入したCDたち

P1010220 ■エヴァ・キャシディ(Eva Cassidy)の『Live At Blues Alley』は、浜松『弁いち』親方の「板前日記」で先日教えてもらった、ぜんぜん知らない人だ。これは!? と思って、早速アマゾンで購入した。 聴き始めて驚いたのは、ジャズを中心にブルース、R&B、ゴスペル、フォークと何でも歌う人なのだ。ただ、ジャズ・ヴォーカルとしてはやや凡庸な印象はぬぐえなかった。 ところが、ライヴ中盤でのギターの弾き語りが始まってたまげてしまったのだ。なんなんだ、この人は! P1010224 やはり白眉は、8曲目「Fields of Gold」と、その次の「Autumn Leaves」だな。これはほんと凄い。


YouTube: Fields of Gold-Eva Cassidy

■この曲のオリジナルはスティングだが、「こちら」を見ると、リリックに加え、オリジナル演奏も聴けるのでありがたい。 彼女が歌う「Fields of Gold」が、どれくらいオリジナルを離れて「彼女自身の歌」になっているかがよくわかるのだ。

2012年5月29日 (火)

アイザックの「くちパク」プロポーズ

■今朝、茂木健一郎氏がツイッターで教えてくれた、YouTube画像 「Isaac’s Live Lip-Dub Proposal」。 これはたまげた驚いた! 2012年5月23日(先週の水曜日)に録画された画像だ。カメラは最初から最後まで「まわしっぱなし」の「ワンシーン・ワンカット」で、一切編集は施されていない。それなのに、なんなんだ! この完璧さ。感動して、ラストで泣いてしまったよ。先ほど、iPad の大きな画面で見たら、もっとよかった。 曲がいいんだね。 Bruno Mars の『Marry You』って曲。 あぁそうか。「Gree」でカヴァーされた曲なんだ。 場所は何処なんだろう? アメリカというより、イギリスって感じかな? あ。いや、ホンダCRV の後ろに駐車している車のナンバーは「オレゴン」だ。てことは、アメリカ西海岸北部か。


YouTube: Isaac's Live Lip-Dub Proposal

でも、日本語的には「結婚してください」だから、英語で「Marry Me」って感じなのだが、正しい英語では『Marry You』なのか? Youが主語なら「 Will you marry me」だが、I が主語だから「 I wanna marry you. 」ってなるわけか。

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