2014年11月17日 (月)

伊那のパパズ絵本ライヴ(その112)小布施町図書館「まちとしょテラソ」

■昨日の11月16日(日)。伊東パパが運転する車に3人(倉科、北原、坂本)同乗させてもらって、早朝に伊那を出発し中央道→長野道を飛ばして一路「小布施町」へ。

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小布施町図書館「まちとしょテラソ・おはなしの会」で、われわれを呼んでくれたのだ。

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長野市医師会でやった時に、代表の伊藤ひろみさんが見に来て下さっていて、今回ぜひにということでオファーをいただいた。ほんと、ありがたいことです。

   <本日のメニュー>

 1)『はじめまして』新沢としひこ(ひさかたチャイルド)

 2)『くだもの なんだ』きうち かつ(福音館書店) →伊東

 3)『リズム』真砂秀明(ミキハウス) →北原

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 4)『かごからとびだした』(アリス館)

 5)『うみやまがっせん』長谷川摂子・文、大島英太郎・絵(福音館書店)→坂本

 6)『うんこしりとり』(白泉社)

 7)『おーいかばくん』中川ひろたか・曲、あべ弘士・絵(ひさかたチャイルド)


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 8)『黒ずみ小太郎旅日記(その8)風雲きのこ山助太刀の巻』飯野和好(クレヨンハウス)→倉科

 9)『ふうせん』(アリス館)

 10)『世界中のこどもたちが』(ポプラ社)

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■上記写真はすべて、伊東パパが撮ったものを拝借掲載しています。

車だして、往復運転して(帰りの麻績〜明科あたりまで、ぼくは後部座席で寝てしまったよ。ごめんなさい)写真も撮ってもらって、伊東パパにはほんとうに感謝感謝であります。

伊那のパパズ絵本ライヴ(その111)上伊那郡箕輪町「長田保育園」

■10月26日(日)の午前11時から、箕輪町の長田保育園「日曜参観」でパパズ絵本ライヴ。

ただぼくは、駒ヶ根の叔父さんの三回忌のため欠席した。以下、倉科さんからの報告です。

 はじめまして
 おめんです2(伊東)
 僕のパパはわるものです(坂本)

 かごからとびだした
 おかあさんのパンツ〜おかあさんのパンツ2(宮脇)
 うんこしりとり

 くろずみ小太郎旅日記その8風雲きのこ山の助太刀(倉科)
 ふうせん〜六甲おろし
 世界中のこどもたちが

(アンコール)
 いろいろおんせん

■「ふうせん〜六甲おろし」というのが、いつもと違っていて「謎」だったのだが、昨日、小布施でことの詳細を聞いて納得したのでした。クライマックス・シリーズ、全勝で広島、巨人を打ち負かした阪神タイガースのファンである倉科さんが、ラッキーセブンの7回裏、阪神攻撃の前にスタンドから飛ばされる「細長い風船」を持ってきて、「六甲おろし」をみんなで歌いながら風船を飛ばしたというワケなのでした。

2014年10月31日 (金)

今月のこの1曲。『 アフロ・ブルー』

Mongo Santamaria - Afro Blue
YouTube: Mongo Santamaria - Afro Blue

■本当は8月に取り上げる予定だったのだ。モンゴ・サンタマリアが作ったとされる『アフロ・ブルー』。彼が1959年に録音したオリジナルがこれだ。

■ヴォーカル盤で一番有名なのが、アビー・リンカーンのこれ。

Afro Blue - Abbey Lincoln
YouTube: Afro Blue - Abbey Lincoln


■この曲を一躍有名にした「本命」といえば、やっぱりコルトレーンだな。

John Coltrane Quartet - Part1 - Afro Blue
YouTube: John Coltrane Quartet - Part1 - Afro Blue

ぼくは「バードランド」のライヴ盤よりも、ハーフノートでのライヴをラジオ放送した『ONE DOUN, ONE UP / LIVE at the HALF NOTE』での演奏が気に入っている。

とにかく、マッコイ・タイナーの気迫が凄い!

ラジオ放送なので、演奏の途中でフェイドアウトしてしまうのが本当に残念だ。

 

■ただ、最近よく耳にするのがこのヴァージョンだ。ロバート・グラスパーのヤツね!

Robert Glasper Experiment - Afro Blue (Feat. Erykah Badu)
YouTube: Robert Glasper Experiment - Afro Blue (Feat. Erykah Badu)

■あと、ディー・ディー・ブリッジウォーターが、1974年に日本で録音したデビュー盤のA面1曲目。

これもいい。

Dee Dee Bridgewater - Afro Blue (1974)
YouTube: Dee Dee Bridgewater - Afro Blue (1974)

■意外なところでは、『矢野顕子×上原ひろみ Get Together - LIVE IN TOKYO』の、2曲目。

それから、ぼくが大好きなのは、向井滋春『フェイバリット・タイム』

板橋文夫、渡辺香津美が参加しているレコード。CDは持ってないんだ。

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『霧に橋を架ける』キジ・ジョンスン著、三角和代・訳(東京創元社)

キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』(東京創元社)を読む。これはよかった。

以下ツイートから。

10月7日
キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』(東京創元社)より「26モンキーズ、そして時の裂け目」と「スパー」を読む。猿のサーカスの話はしみじみよかった。「スパー」は……凄まじすぎるぞ。検索したら、いろいろと深読みできるんだね。不変の愛か。愛なんかないじゃん。


続き)「スパー」って、普通はボクシングの「スパーリング」のことを言うのか。まぁ、エイリアンとのスパーリングみたいな話だもんなぁ。


10月9日
キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』(東京創元社)より、「シュレディンガーの娼館(キャットハウス)」を読む。どこかで聞いたことのある名前だ。読み終わって思い出した。『昔、火星のあった場所』北野勇作(徳間デュアル文庫)94ページ。量子力学の怪談「シュレーディンガーの猫」の仮想実験の話


10月13日
キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』より「蜜蜂の川の流れる先で」を読む。西村寿行『蒼茫の大地、滅ぶ』みたいに、蜜蜂の大群が川のようになって連なる先を目指して、老犬のジャーマン・シェパードと旅する話。伊藤比呂美『犬心』も同じ犬種だったな。泣けた。


キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』より、表題作を読む。7年かけて巨大な吊り橋を建設する話。これは読み応えがあった。淡々とただ工事の進行具合が綴られてゆくだけなのだが、いやいやどうして、しみじみと味わい深い傑作だ。


小説の冒頭は、西部劇みたいだ。主人公の設計士キットが「川」の右岸町に到着する。よそ者には冷たい人々。触れると皮膚が爛れてしまう腐食性の霧の中には《でかいの》が何匹も潜んでいて、川を渡るのは容易でない。椎名誠『武装島田倉庫』の感じでもあるな。だから、橋を架けるのだ。


そこに、ナウシカみたいな男勝りで凜としたヒロインが登場する。左岸町のラサリ・フェリーだ。名前には職業を付ける。フェリーとは、川の渡し船の船頭という意味。映画『ダンス・ウイズ・ウルブス』を思い出した。だから、この小説の原題は「The Man Who Bridged The Mist」なのだ。ただ、この二人。読んでいてじれったくなるほどのプラトニック。


野坂昭如の『黒の舟歌』ではないが、川とか、七夕とか、舟を出すとか、橋を架けるという言葉は安直に考えると「理解不能な相手に対するコミュニケーションの可能性」を象徴している。しかし著者が言いたいことは逆で、ディスコミュニケーションの諦観なのだった。ただ著者は諦めきってはいない。最後に祈りと微かな希望がある。


誤解を恐れずに言えば、著者は『火星の人類学者』ほどではないかもしれないが、人間関係に困難を感じているに違いない。だからこそ、動物(犬や猫やポニー)の気持が判るのだ。テンプル・グランディンさんみたいにね!

 


10月27日
キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』(東京創元社)より「《変化》後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」を読む。面白い。我が家にも、いま僕の横のソファーで寝ている犬がいる。犬は「今ここ」の瞬間瞬間を生きている。もしも彼らが「言葉」を獲得したら…という話。


続き)犬は、仲間の犬たちに向かって「とある犬の物語」を語るのだ。10匹の「とある犬の物語」を。こうして犬たちは「記憶」を共有し、子孫に語り継いでゆく。「言葉」はそのために必要なのだ。なんか、人間との関係は『猿の惑星』みたいでもあったな。

("覚えている"というのは枠組みだ。犬は言葉を知る以前のことを"覚えて"はいなかった。長いか短いかのいまを生きていただけだ。記憶は憤りを生む。あるいは、そのようにわたしたちは恐れている)。『霧に橋を架ける』p255〜256より。

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「読書メーター」にあがった感想を読んでいたら、「vertigo」さんの感想が完ぺきだった。そうだよ。そのとおりだよ。ほんと、上手いこというなぁ。リンクがはれないので、すみませんが勝手に転載させていただきます。ごめんなさい。

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「vertigo」8月10日

素晴らしい。『26モンキーズ、そして時の裂け目』の不思議な猿たちがなぜ消え、なぜ現れるのかの理由。壮大な物語の何気ない始まり『水の名前』の爽やかさ。『スパー』や『ポニー』の絶望。表題作の永遠に一緒にいられないことはわかっている男女の触れ合いの切実。私がフィクションに求めるものの嗜好はこういう方向なのだなあ。残酷なディスコミュニケーションの物語を描いてもキジ・ジョンスンは「わかりあえなさをわかりあおう」とする者たちの孤独や淋しさや願いの切なさに対してどこまでも優しい。身を切られるように痛いけど優しい短編集。

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2014年10月13日 (月)

伝説の佐々木昭一郎が還ってきた。

■以前、松尾スズキ氏の初期エッセイを集中的に読んで感想を書いたことがあった。

師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その1)

師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その2)

師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その3)

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(その2)にある、松尾氏が「那智チャコ・パック」の常連投稿者であったというくだり。本人自身が書いた文章を見つけた。『永遠の10分遅刻』松尾スズキ(ロッキング・オン)138ページ「私の文章ルーツ、私の演劇ルーツ ---- 松尾少年と野沢那智」(初出不明)だ。以下引用。

 もう二十年になりましょうか。

 私だって子供だった時期がありまして。

 野沢那智の声のファンだったんですね私は。そう、子供の頃から「声」というものに興味があったんです。(中略)

 さて、その野沢那智が同じく声優の白石冬美と一緒にやっていた『パック・イン・ミュージック』という深夜の人気ラジオ番組に、中学高校と私はせっせと手紙を投稿しておったのです。葉書ではなく手紙です。

何しろその番組はリスナーのお便りをおもしろければ10分でも20分でも、野沢那智がいろんな声色で読み続けてくれるというもので、だから葉書では当然分量が足りないということで、レポート用紙にボールペンでびっしり5、6枚。私は「北九州の黒タイツ」というペンネームで随分読んでもらったものでした。

足が毛深いから黒タイツ。ラジオの前に齧り付き、大ファンである声の達人に10分も自分の作品を読んでもらっている時間、それはまさに至福の時でした。

読んでもらったのは、泥酔して他人のうちの庭で寝込んだ兄の話、毛深さに悩んで脱毛ワックスを使った話、エトセトラ。うれしかったな本当に。

漫画家になるのを夢見てデザインの学校に行き、絵の勉強こそすれ、小説も大して読まなかった私が何で今文筆の仕事を生業にできているのか、考えてみるとティーンエイジャーの頃、私はラジオで自然と文章修行をしていたのかもしれません。一月に一本は書いていましたから。

(中略)

 野沢那智は今はなき「薔薇座」の座長でした。で、当然芝居に関するエピソードが中心になってくると。それらは、今思うと赤面したくなるほどマバユイものでしたが、九州の田舎町で育ち文化的情報にもうとかった私の演劇への興味は、実はそんなところから育まれていったものだったのです。(中略)

*野沢那智さんはよく三茶で見かけるんだけど、どーしても声かけられないんだよね。恐れ多くて。みなさんにもいるでしょ。そんな人。

『永遠の10分遅刻』p138〜141

(追記)ところで、「この本」のラストに収録された、NHKラジオドラマ『祈りきれない夜の歌』の脚本を読んだのだが、たまげてしまった。松尾スズキって、天才なんじゃないか? 以下、今朝(2014/10/16)のツイートから。

松尾スズキ『永遠の10分遅刻』(ロッキング・オン)より、NHKラジオドラマ脚本『祈りきれない夜の歌』を読む。ラストで異様な感動を覚えた。これは凄いな。障碍児の出てくる話では『時には懺悔を』打海文三(角川文庫)に匹敵するデキだ。ネットでドラマ版も聴いた。ほぼそのまま放送されたんだ。

続き)『祈りきれない夜の歌』は、先月NHKで再放送のあった『君が僕の息子について教えてくれたこと』(11月24日午前10時から NHK総合で再々放送予定)に登場した『自閉症の僕が跳びはねる理由』を書いた東田直樹君とも密接に通じるものがある。

「このラジオドラマ」は、2001年3月3日に放送された。NHK名古屋放送局の制作。「ニコ動」にファイルがあって、ネット上でいまも聴くことができる。

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■佐々木昭一郎・著『創るということ』【増補新版】が、平安堂書店の新刊コーナーにあったので、びっくりして即購入した。2種類の旧版は以前から読んでみたかったのだが図書館にはなく、古本でも高値が付いていて入手困難だったのだ。

佐々木昭一郎氏も、最初はNHKで「ラジオドラマ」を作って認められた人だ。

■これも以前に書いたものだけれど、是枝裕和監督が、佐々木昭一郎の映像を初めて見た時のはなし。

『物語論 17人の創作者が語る物語が紡がれていく過程』木村俊介(講談社現代新書)に載っていた「是枝裕和」インタビュー(2012/12/30)

『紅い花』つげ義春・原作、佐々木昭一郎・演出(2013/01/06)

Respect 佐々木昭一郎
YouTube: Respect 佐々木昭一郎

■その、伝説の佐々木昭一郎が還ってきた。

20年ぶりの新作『ミンヨン 倍音の法則』が、先週土曜日から「岩波ホール」で公開されているのだ。

さらには、11月には「NHKBSプレミアム」で、佐々木昭一郎初期の代表作が一挙放送される! これは必見! 必録画だ。

「詳細パンフレット」 

■検索していたら、「日曜日はテレビを消せ」の「佐々木昭一郎アーカイブス」を見つけた。リンクが切れてしまっているものもあるが、これはすごく貴重な資料集だ。

それから、ホッタタカシさんのブログ「スローリィ・ステップの怠惰な冒険」の

佐々木昭一郎のテレビドラマ全作品解題・そして新作『ミンヨン 倍音の法則』 が、すばらしい。ものすごく力が入っている。

2014年10月 6日 (月)

小津安二郎記念・蓼科高原映画祭で『そして父になる』を観てきた

■昨日の日曜日、茅野市民会館で開催されていた「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」に今年も行ってきた。

『彼岸花』デジタル・リマスター版は、土曜日午前中の上映だったのでダメだったが、『そして父になる』をずっと見よう見ようと思いながら未だだったので、会場一杯の観客と共に大きなスクリーンで見ることができて幸せだった。

ただ、上映15分前に着いたら、入場を待つ人たちでいっぱい。最後列に並んでようやく場内に入ると、空いている席はステージ前の最前列正面のみで、仕方なくスクリーンを2時間見上げての鑑賞となった。

映画は、いい意味で「福山雅治」の魅力を世界に知らしめるための作品であり、それに見事に成功したのだと思った。後半まで、今回は泣かないぞと思っていたのに、福山が涙するシーンが横顔のアップで撮られているのを目にして、思わずいっしょにグッときてしまい、結局泣かされました。

それから、これは是枝監督の映画はみなそうなんだけれど、二人の対照的な子役の男の子がじつにいい演技をしているのだ。あと、リリー・フランキー&真木よう子家の3人の子供の中でも特に次男の子。これまた実に無邪気な子供らしさにあふれていて、スクリーンを見ながら思わず何度も微笑んでしまった。弁当屋の店先での場面とか、お風呂のシーンとか。

そしてリリー・フランキーさん。

ピエール瀧もちょこっと出ていて、正反対の映画『凶悪』を未だ見てなくてよかったな。

あと、音楽がよかった。今回は「ゴンチチ」じゃなくて、クラシックのピアノ曲。オリジナルの「絆」という曲がいい。それから、エンドロールで流れる、グレン・グールドのバッハ。優しいようでいて厳しく敬虔なピアノの響きが、映画を見終わった余韻と重なる。何かこう、ずっしりとくるのだ。

上映終了後、是枝裕和監督がステージに登場し、長野日報でいつもスルドイ映画評を書いている映画コラムニストの合木こずえさんが聞き手となって、30分間『そして父になる』の裏話をしてくれた。これまた面白かったな。あやふやな記憶でいけないが、思い出した話題を以下に挙げてみたい。(会話はニュアンスのみで、二人が正確にそう発言した訳ではありません)

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合木:まずは、福山さんのキレイなお顔が存分に拝める映画を作って頂き、感謝いたします。

是枝:いや、本当に美しいんですよ。特に、彼の横顔。ここぞという大切なシーンに彼の横顔をアップで使わせてもらいました。

合木:福山さんの一家が、リリーさん一家に会うために車で移動する時に挿入される風景のカットが素晴らしい。首都高を車がカーブして行く時の流れゆく防音壁を見ていて、主人公の気持ちと完全に同調してしまった。その後の、並んだ高圧送電線の風景とか…。

是枝:撮影監督の瀧本幹也さんは、元々はスチール・カメラマンで、トヨタのクルマのCMとかたくさん撮っている人なんです。あの風景のカットは、ものすごく時間をかけて撮っている。彼がクルマを撮ると違うんですよ。無機質じゃなくて暖かみがあるとでもいうか。

 あと、マンションの部屋の中にテント張って模擬キャンプするシーン。外からガラス越しに撮っている。あれ、素晴らしいですよね。

合木:尾野真千子さんが息子の慶太くんを迎えに行って電車で帰る、あの車内の母と子の二人のシーンも本当に素晴らしかったです。あれは、どうやって撮ったのですか?

是枝:じつは、あのテイクはNGだったんですよ。何度も撮り直して上手くいかなくて、暗くなってくるし。最後に撮ったのがこれ。セリフが終わらないうちに駅に着いちゃって、乗客が乗り降りする中でまだ撮ってたんです。撮影の瀧本さんが「NGだったけど、すごくよかったね!」って。結局、これが一番良くって。撮れたのはまったくの偶然だったんですよ。

合木:「琉晴くん」役の男の子。前から子役で出ていたのですか?

是枝:いやぁ、オーディションではまず真っ先に落とされる感じの子ですからねぇ。とにかく絶えず動いている。じっとしてない。いつも「なんで?」「なんで?」って訊いてくるんです。だから「あのシーン」では逆に、福山さんの前でいつもみたいに「なんで?なんで?」って、ずっと言ってればいいからねって撮ったんですよ。

合木:リリーさんが「スパイダーマンて、蜘蛛だって知ってる?」って子供に言うところ。あれは、リリーさんのアドリブですか?

是枝:いいえ、台詞にあるんです。ただ撮影に入る前、子供たちと仲良くなるためにリリーさんが「そう」話していたのが印象に残っていて、台詞に使いました。

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翌日の「長野日報」に載った記事。記者さんと同じ話を聞いていたのに、印象に残ったポイントがぜんぜん違うのが可笑しい。

 

■福山雅治「オールナイト・ニッポン 魂のラジオ 2013.12.14」ゲスト:是枝監督、リリー・フランキー を見つけた。『そして父になる』の裏話を3人が寛いだ雰囲気でしていて、すごく面白い。

福山雅治 魂のラジオ ゲスト:是枝 裕和 監督・リリーフランキー〔トーク部分のみ〕2013.12.14【転載・流用禁止】
YouTube: 福山雅治 魂のラジオ ゲスト:是枝 裕和 監督・リリーフランキー〔トーク部分のみ〕2013.12.14【転載・流用禁止】

■あと、宇多丸さんがラジオで『そして父になる』を激賞している。

宇多丸が映画『そして父になる』を語る
YouTube: 宇多丸が映画『そして父になる』を語る


2014年9月28日 (日)

今月のこの1曲。Booker T&The MG's 『 Time is Tight 』


YouTube: Booker T & The MG's ~ Time is Tight (HQ)

■月刊誌『小説すばる』を、毎月17日に平安堂まで買いに行く。去年の8月号からだから、もうかれこれ1年以上も続けていることになる。雑誌で連載されている『1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代』柳澤健を読むためだ。この「10月号」で、この連載も【第15回】となり、いよいよ終盤に入った。

■ただ、柳澤健氏は林美雄「ミドリブタ・パック」の熱心なリスナーだった訳ではない。確か宮沢章夫氏が書いていた(ラジオで言っていた?)のだが、「小説すばる」編集長の高橋秀明氏に林美雄の評伝を連載するよう強く請われてのことだったようだ。

ところが、その小説すばる編集長が今年の4月19日に脳出血(脳梗塞?)のため急逝する。享年46。
検索していたら、そのことに関して柳澤健氏自身が「FBに書いている文章」を見つけた。

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■柳澤氏は、連載を始めるにあたり、かなり時間をかけて実に多くの関係者、ファン達から丁寧な取材を行っていて、そこに書かれている内容は初めて知る驚きの事実も数多くあり、実に読み応えがあった。ただ、かつての熱烈な林美雄ファンとしては、彼の「虚像」がどんどん剥がされて「実像」があらわにされてゆく「この連載」は、読んでいて正直辛くなることも多い。

でも、宮沢章夫氏が ETV『ニッポン戦後サブカルチャー史』(第4回)で「林美雄」を大々的にフィーチャーしてくれたことは本当にうれしかったな。

番組では「林美雄パック」のオープニング・テーマ「BOOKER T. & THE MG's -- TIME IS TIGHT」も流れた。懐かしかったなぁ。

★【林美雄に関する過去記事】★


『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その4)2003/03/31
『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その3)2003/02/08
『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その2)2003/02/06
『深夜放送の黄金時代』 林美雄パック(その1)2003/02/03

『小説すばる 8月号』林美雄とパックインミュージックの時代  2013/07/22
『林美雄 空白の3分16秒』宮沢章夫(TBSラジオ)     2013/12/31

「BOOKER T. & THE MGs」は珍しいバンドで、リーダー(オルガン)とドラマーが黒人、ギターとベースが白人の混成チームなのだ。スタックス・レコードの専属バックバンドとして、オーティス・レディングのレコーディングなどに参加しつつ、インスト・ナンバーばかりの『Green Onions』 (1962)でデビューし人気バンドとなった。「TIME IS TIGHT」は、1969年のスマッシュ・ヒット。

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■ブッカー・Tは、実はなかなかの美声の持ち主で、「フリー・ソウル」選曲者の橋本徹氏は『FREE SOUL : COLORS』のラストで、ブッカーTが 1974年に出したヴォーカル曲「ジャマイカ・ソング」を紹介し話題になった。

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YouTube: jamaica song

その橋本徹氏による、2010年代の「フリー・ソウル」コンピ『Urban-Mellow Supreme』にも、ブッカー・Tが 2013年に出した「Watch You Sleeping」が、19曲目に入っている。橋本氏、ブッカー・Tが大好きなんだね。

< MG's の他のメンバーのその後>

ギターのスティーヴ・クロッパーは、現在も活躍中。1980年代はベースのドナルド・ダック・ダンと共に「ブルース・ブラザーズ」のバンドで再び人気を博し、忌野清志郎との共演後は来日回数も多い。
ドラムスのアル・ジャクソンは、1975年10月、自宅前で暴漢に銃で撃たれて死亡した。犯人は現在も不明。
ベースのDonald "Duck" Dunn(ドナルド・ダック・ダン)は、2012年5月、東京ブルーノート出演のため来日中にホテルで急逝。70歳だった。

 

2014年9月23日 (火)

『昔、火星のあった場所』北野勇作(徳間デュアル文庫)

■読み終わって2週間近く経っているのだが、なかなか感想が書けないでいる。

『昔、火星のあった場所』北野勇作(徳間デュアル文庫)だ。(amazon の2番目の読者レビューは、もろネタバレ!要注意。)

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いや、すごく面白かった。最後の最後で「あっ!」となって、それからじんわり切なくなった。

ただ、どうも僕はこの小説をちゃんと読めていないような気がしてならないのだ。

著者の「いつのも雰囲気」(ブリキの自発団、生田萬さんの座右の銘  “過去はいつも新しく、 未来は不思議に懐かしい” 的感覚)をただ味わえばそれでおしまいじゃなくて、もっと綿密にハードSFとしてキッチリ構成されていて、あちこちにバラまかれたパズルのピースを集めてきて、あるべき場所にはめれば、最後に納得する形で小説世界が完結する。この本は、どうもそういうふうに出来ているに違いない。直感的にそう感じるのだ。

でも、読み終わってもよく分からないところ、疑問点がいっぱいあって、ネットでいろいろと他の人の感想とか読んでみたけれど、ぜんぜん納得がいかない。いや、ほんとなかなか手強い小説だ。

                  *

                  *

ただ、検索してみると「この小説」は著者の北野勇作氏当人が脚色してラジオドラマ化されたのだという。NHKFM「青春アドベンチャー」1994年6月27日~7月8日(全10回)

しばらく前まで「ニコ動」で聴けたらしいのだが、いまはもう削除されてしまっている。最終回だけでもぜひ聴いてみたかったぞ。

                  *

誰か「この小説」の正しい読み方を詳細に解説してくれないだろうか? 読書会とかやってくれると有り難いのに。そんなふうに思いながら今日も検索を続けていたら、とうとう「お宝サイト」を発見した。

「ざぼんの皮トピックス:北野勇作関係」だ。こいつは凄いぞ!ホンモノだ。2001年7月9日「読書会」のファイルをよくぞ残しておいてくれました。ほんとありがたいぞ。(ただし、ほとんどのリンクはさすがに切れているが)

                  *

さらには、「完全ネタバレ詳細解説(徳間デュアル文庫版の掲載ページ付き)」(草稿)(完成版)

のファイルも発見。そうだよ、こういうのを求めていたのだ。これは本当に完璧だ。ざぼんさん、ありがとうございます。

                  *

もちろん、ざぼんさんの解説すべてに納得した訳ではない。疑問点はまだまだ残ったままだ。

という訳で、この詳細な資料を地図にして、もう一度最初から『昔、火星のあった場所』を読み直しているところなのです。ついでに、『クラゲの海に浮かぶ舟』(出た時に買ったのだが、どうも処分してしまったらしい。見つからないのだ)も古書で見つけて発注済みなのだ。

2014年9月21日 (日)

伊那のパパズ絵本ライヴ(その110)上伊那郡箕輪町松島コミュニティセンター

■今日の日曜日は、午前10時から箕輪町松島コミュニティセンターで伊那のパパズ。

箕輪町は、町を挙げて子供への絵本読み聞かせ啓蒙活動に力を入れていて、8月2日には、文化センターで大地康雄が主演した映画『じんじん』の上映会をやったり、その前の7月13日には、絵本作家サトシンさんの絵本ライブを開催している。そういえば長谷川義史さんも、毎年のように呼んでるなぁ。すごいぞ。

だからなのか? とにかくお父さんの参加率が異常に高い。今日も15,6人は来てたな。偉いなぁ。

      <本日のメニュー>

1)『はじめまして』新沢としひこ(ひさかたチャイルド)

2)『まるまるまるのほん』エルヴェ・テュレ作、谷川俊太郎訳(ポプラ社)→北原

3)『どうぶつサーカスはじまるよ』西村敏雄・作絵(福音館書店)→坂本

4)『おめんです』いしかわこうじ(ビッグブック/偕成社)→坂本

201409211

5)『かごからとびだした』(アリス館)

6)『バナナじけん』高畠那生・作絵(BL出版)→宮脇

7)『うんこしりとり』tupera tupera(白泉社)

201409212

8)『ヤカンのおかんとフトンのおとん』サトシン作、赤川明・絵(佼成出版社)→倉科

9)『ふうせん』(アリス館)

10)『世界中のこどもたちが』(ポプラ社)

2014年9月18日 (木)

太田省吾(その3)→ 鴻上尚史・宮沢章夫・岡田利規

■『水の希望 ドキュメント転形劇場』(弓立社/1989/8/5)86ページに、「転形劇場さんへ」と題された鴻上尚史さんの文章が載っている。その一部を抜粋。

 僕が、初めて転形劇場を見たのは、今から8年ほど前のことでした。T2スタジオは、もちろん、まだできていませんでしたから、民家を改造したスタジオで、僕は、『水の駅』を見たのです。

 ちょうど、その時、僕は、自分の劇団を作ったばかりで、まだ、早稲田の演劇研究会に在籍していました。

 観客席で、じっと舞台を見つめながら、僕は、自分がこれから作ろうとしている舞台との距離を確認していました。(中略)

 不遜な言い方をすれば、演劇という地平の中で、僕は、おそらく、ちょうど正反対の方向へ進むだろうと思っていました。つまり。それは、絶対値記号をつければ、同じ意味になるのではないかということでした。

 そぎ落とすことで、演劇の極北へと走り続けているのが、この舞台だとすれば、僕は、過剰になることで、演劇の極南(という言葉はヘンですが)、走りたいと思ったのです。

 それは、例えば、『水の駅』のラスト、歯ブラシで歯を磨く、あの異様とも感じてしまう速度からスタートしようと思ったということです。(中略)

 僕達は、スローモーションのかわりにダンスを、沈黙のかわりに饒舌を、静止のかわりに過剰な肉体を選びました。

 ですが、演技論としては、それは、リアリズムという名のナチュラリズムから真のリアリズムを目指しているという意味で、これまた不遜な言い方になりますが、転形劇場の方法と、同じだったと思っています。

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『演劇最強論』徳永京子、藤原ちから(飛鳥新社)p234〜p243 に載っている、チェルフィッチュ主宰:岡田利規氏のロング・インタビューを読むと、前掲した太田省吾氏の文章と同じことを言っていて大変興味深い。

岡田「(前略)あと、僕のどこに影響を受けるかというのがね、なんか、僕には偏っているように感じられるんですよ。ダラダラした文体とか、身体の用い方とか、反復という手法とか、そういうところに影響を受けてる人がいる感じはあるけど、例えば時間感覚については、僕のやってることはむしろ否定されてる気がします。

引き延ばすのは退屈なだけだからポップな時間感覚にすることをもってアップデート、みたいな。僕はそういうポップな時間感覚を演劇に求めることを面白がれないんですよね。」

岡田「僕が思ってる時間って、ふたつある。ひとつは時計で測れる時間。この時からこの時まで何秒でした、っていう。それとは別に、裸の時間っていうのがあるんですよ。秒数ではなくて体験としての時間。でそれは、退屈というのとニアイコールなんですよね。

退屈っていうのは、時間を直に体験しているということ、時間の裸の姿を目の当たりにしてるということ。だからそれって、ものすごく気持ちいいことなのかもしれない。苦痛が快感かもしれない。子供にとってビールって苦いだけで何が美味しいか分かんないけど、やがてそれが美味しいって分かってくる、みたいなのと似たことだと、僕は思うんですけどね。違うのかな。」

■あと、『演劇最強論』では、宮沢章夫氏へのロング・インタビューがいろいろと示唆に富んでいてとても面白い。宮沢氏はいま、毎週金曜日の夜11時からEテレで『ニッポン戦後サブカルチャー史』の講師を務めているが、その先駆けがこのインタビューの中にあるのだ。

徳永「平田(オリザ)さんに書けないものというと?」

宮沢「サブカルチャーだと思う。分かりやすい例が音楽で、平田くんが劇中でほとんど音楽を使わないのはなぜかというと、彼自身が言っていたけど、よく分からないからだと。

90年代、僕や岩松(了)さんや平田くんは、音楽について非常に慎重になったんです。前の時代の演劇の反動で。劇的な音楽を使えば、芝居は簡単に劇的になる。そういうことに疑いを持って、そうならないためにはどうしたらいいかと考えたんです。」

『演劇最強論』p282〜p283)

 

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