2015年1月12日 (月)

『子どものミカタ』山登敬之(日本評論社)

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■『現代、野蛮人入門』松尾スズキ(角川SSC新書)を読み終わり、続いて、児童精神科医:山登敬之先生の新刊『子どものミカタ』(日本評論社)を読む。

これはよかった。とても勉強になる。

そして、日頃の外来診療で、小児科開業医として自分が子供たちに接する態度をふり返り、山登先生とはえらい違いだと、ただただ反省させられた。

■この本には、山登先生が専門雑誌『こころの科学』『そだちの科学』『児童心理』や、学術誌『臨床精神医学』『保健の科学』、それに精神科の専門書に載せた文章や論説が集められているので、対象読者は「子供のこころ」や「発達障害」と直接係わる、若手児童精神科医、一般小児科医、臨床心理士、言語聴覚士、支援学級の教師、一般教師や保育士、患児の親御さん、ということになるか。

本のタイトルである『子どものミカタ』には、「味方」と「診方」の2つの意味が込められていて、特に後者に関して、臨床経験30年以上のベテラン児童精神科医が「その手の内」を惜しげもなく開示してくれているのだ。これは小児科医として大変ありがたい。

 2)子どもの「日ごろと違う様子」をどう読むか

 6)不登校診療のエッセンス

 7)子どもの「うつ」をどうみるか

 13)子どもの悩みをきく ---- 専門職として、大人として

 14)説明の工夫

 15)クリニックの精神療法、その周辺

特に上記のパートで、児童精神科医がどのように診療を進めて行くのかが具体的に分かり易く述べられている。これは非常に貴重だ。ぼくは他の先生の本で「このような記載」を読んだことがない。

■それから、なるほど! と感心したのは、「説明の工夫」(199ページ)に書かれている「それは一言で言うとどんな病気?」という問いを設け、それに対する答えを考えてみる、というところ。たとえば、

 ・統合失調症:「よくわからなくなる病気」

 ・うつ病  :「動けなくなる病気」

 ・神経症圏の病気:「特殊なわがまま」

 ・発達障害:「(生まれつき)上手にできない」

   ADHD:上手に話が聞けない。上手に片付けができない。

   自閉症スペクトラム:上手に人間関係が築けない。上手に気持の切り替えができない。

   LD:上手に読めない。上手に計算ができない。

なるほどなぁ。うまいことを言うものだ。

そうして、最初のパートに登場する摂食障害の患者の言葉。まるで、俵万智の短歌のような文章をただ並べただけで、あの厄介な摂食障害という病気を読者に直感的に了解させてしまうというウルトラC級の大技を見せてくれて、山登先生はやっぱりスゴイなぁと思った次第です。

■あと、本の随所に児童精神科医の「矜持」が感じられたこと。これは「子どもの味方」のほうの部分。

ぼくなんかが、いいかげんな知識、面談、態度で、ただ診断名だけ付けただけで、子供の生活環境の調整もフォローもせず、薬を出してそれでおしまい、なんていうような事は決してやってはいけない。

そう、肝に銘じました。

・それからもう一点。

9)「当世うつ病事情」131ページに興味深い記述があった。

 ところで、恥を承知で白状すると、私は香山の本を読むまで、「未熟型うつ病」だの「現代型うつ病」だのという言葉があるのも知らなかった。(中略)

 では、私がこれらの病態の存在をまったく知らなかったかといえば、そうではない。むしろ、右にあげた特徴を備えた患者は、私にとって比較的お馴染みの人たちであった。私は長いこと、不登校の子どもたちやひきこもりの青年たちを相手に仕事をしてきたため、こういう人たちのことを、とくにめずらしく感じなかったのだと思う。

 近ごろの若いやつらってだいたいこんなもんでしょ、という意味では、不登校の中学生もうつ状態のサラリーマンも、診察室を訪れる患者にそんなに大きな違いはない。つまり(中略)私は思春期臨床の延長上で彼らの相手をしていたため、彼らの抱える病理(=新しいタイプのうつ病)よりも、未解決の発達課題(=オトナになること)のほうに目が向いていたのだ。

 うつ病は基本的に大人の病気である。私はそういう印象をもっている。

「オトナになること」とは、どういうことを言うのか? それも「この本」に書いてあった。

13)「子どもの悩みをきく ---- 専門職として、大人として」の、190ページ。高校3年生の女の子から山登先生がもらった手紙だ。

 あの頃の私は、なんでも人のせいにばかりして、みんなに迷惑かけていたと思います。けれど、結局は自分自身だということを知りました。

 自分が変わることで、ものの見方やまわりの世界も変わってくるんだということ。がんばっていると、みんな応援してくれる。それから、がまんするっていうこと。人を思いやること。いろんなことがわかってきました。

 つらいことがあってもそれをはねとばしちゃうくらいになりました。こんな感じでちょっとずつ大きな人になりたいです。

 先生、ありがとう。

             ■ 中略 ■

 いろいろなことを経験して、あの頃の私を思い浮かべるいまの私がいる。その私は、行動すること、がまんすること、人を思いやることの大切さを知っている。その私は、いまもちょっとずつ大きな人になりたいと願っている。

 どう? 人間が成長するってことは、まさしくこういうことだって思わないか?

(190ページ)

■なるほどなぁ。ぼくはぜんぜん大人になりきれていないぞ。56歳なのにね。

松尾スズキ『現代、野蛮人入門』も、考えてみたら「オトナになること」に関して書かれた本であった。「偽善のススメ」なんて、まさにそうだ。松尾さんは、『サブカル・スーパースター鬱伝』吉田豪(徳間文庫ビレッジ)にも登場するので、『大人失格』どころか、ちゃんとした大人に違いない。

■逆に、つね日ごろ暗くてテンションが低いぼくだが、不思議と「古典的うつ病」にならないのは、大人になりきれていないからだったんだなぁ。妙に納得してしまったよ。

「成人の日」に、なんだかしみじみと考えさせられてしまったな。

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      【写真をクリックすると、大きくなります】

■日曜日。伊那市立図書館へ延滞していた本を返却しに行ったら、雑誌コーナーに『ビッグ・イシュー日本版』の最新号とバックナンバーが置いてあるのを発見してビックリした。

東京や大阪で、直接ホームレスの人から購入しないと読めない雑誌だとばかり理解していたからだ。伊那でも読めるのか! さっそくバックナンバーを数冊借りてきた。

■『ビッグ・イシュー日本版』には、自閉症の作家、東田直樹くんが連載を持っている。2年くらい前からは、山登敬之先生との往復書簡という形で「自閉症の僕が生きていく風景 <対話編>」というタイトルで連載が続いている。そのことは以前から知っていたので、まずはそのページを開いて読んでみた。

う〜む。なかなかに深い話をしているじゃないか。

これからは、伊那にいながらにして「この連載」が読めることが何よりもうれしいぞ。

2015年1月 4日 (日)

『なんたってドーナツ』早川茉莉・編(ちくま文庫)

あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

■年末は、12月31日が当番医で覚悟していたのだけれど、インフルエンザ流行ギリギリ前だったためか、予想より少なめで137人診察して夜7時半には終了した。とは言え、スタッフはみなお昼の「ちむら」のちらし寿司を食べる間もなく、午前午後ぶっ通しでがんばってくれた。ありがたい。

ぼくは午後2時から15分間昼食タイムを頂いた。一人だけすみません。

■正月は、何処へも出かけずにずっと家にいた。

元旦の午前中に、今年初めて注文した「浜松・弁いち」の「おせち」が宅急便で届いて、これがまぁ、どのお料理にも丁寧な仕事が成されていて、美味しかったのなんの。家族4人で2日の夜にはすっかり食べきってしまった。今までもいろんな所から「おせち」を注文したけれど、ここはちょっと特別。

機会があったら、ぜひ一度浜松のお店に食べに行きたいものだ。

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■時間はいっぱいあったのに、予定していた本はほとんど読めなかった。

読み終わったのは、『なんたってドーナツ』早川茉莉・編(ちくま文庫)の一冊のみ。でも、これは面白かったなぁ。ラーメンとか、カレーのエッセイ・アンソロジーは読んだことがあるが、ドーナツとはね。

しかも41人+編者自身の文章が載っている。そのうち編者が直接原稿依頼した書き下ろしが19本。それにしても、よく集めたよねぇ。またこの人選が適確なんだ。

植草甚一氏の文章なんて、他の本には収録されてないんじゃないかな。こんなに甘党の人だとは知らなかったよ。

■まぁ、ぼく自身はドーナツ大好きというワケではないのだ。

ただ、以前から「ドーナツの穴問題」に関心があって、本屋さんで手に取って目次を開いたら「第三章 ドーナツの穴」と、わざわざ一章を割いて着目し、村上春樹「ドーナッツ」北野勇作「穴を食べた」細馬宏通「穴を食す」片岡義男「ドーナツの穴が残っている皿」いしいしんじ「45回転のドーナツ」など、8編も収録されていたので「おぉ!」と、うれしくなってしまい即購入したのだった。

「ドーナツ・ホール・パラドックス」問題は以前、「こちら」『演劇最強論』の1月22日と23日にも書いた。

ところで、村上春樹氏が「ドーナツの穴問題」に言及した最も古い文章は、『羊をめぐる冒険』ではなくてたぶんこの、スタン・ゲッツ『Children Of The World』のライナーノーツなんじゃないかな?

■編者の早川さんが京都在住のためか、京都に住む作家さん(千早茜、いしいしんじ)、編集者(ミシマ社の三島邦弘さん、丹所千佳さん)大学教授(細馬宏通さん)が寄稿している。

千早茜さんの「解けない景色」が特に印象に残った。前半はちょっと退屈だが、後半がすごくよい。この章の中のエッセイでは最も「ドーナツの穴」に肉薄しているのではないか。

■文章の配列にも工夫があって、江國香織さんによる大雪のニューヨークでの顛末に続いて、松浦弥太郎氏がサンフランシスコの「ヴェローナ・ホテル」に宿泊していた、とある一人の中国人青年の話を。その後に、東海林さだお氏と小池昌代さんが同じクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンの話をしている。最後のトリは、清水義範氏が子供の頃、伊勢湾台風に遭遇した夜に家族みんなで食べた不味いドーナツの話。これがまた。しみじみ読ませるのだよ。

ぼくも、保育園の頃に食べたドーナツの味をありありと思い出したのでした。

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■ツイッターに書いた感想より

· 12月25日
『なんたってドーナツ』早川茉莉・編(ちくま文庫)を読んでいる。41人のドーナツ関連エッセイ(書き下ろしもある)が集められている。僕好みの渋い人選なんだこれが。今日は「祖母とドウナツ」行司千絵を読む。うまいなぁ、読ませるなぁ。


· 12月27日
『なんたってドーナツ』より「ひみつ」田村セツコを読む。戦時中、疎開先の学校で隣の席だったK子ちゃんの家(裏に竹林のある大邸宅)で、お手伝いさんがおやつに運んできた紅茶とドーナツ。わずか2ページ半なのに、妙に気になる不思議な話。


· 12月27日
『なんたってドーナツ』より「高度に普通の味を求めて」堀江敏幸を読む。これも書き下ろし。堀江さんは1964年生まれで僕より6つ下だが、小学校の不幸な給食の想い出がほぼ一緒で可笑しい。雑誌『MONKEY vol.4』に載っている、猿からの質問「(気)まずい食事」の方にも堀江さんは寄稿している。


続き)『MONKEY vol.4』(スイッチ・パブリッシング)143ページ。「ふつうのお茶漬け」堀江敏幸。小学生の頃、連休初日に近所の家族と白川郷へドライブした時の話。脱力するしかない内容なのに、何故か読ませる。このコーナーでは、西加奈子「弔いの煮物」が技ありで一番面白かった。


· 1月1日
『なんたってドーナツ』より、p105「クリームドーナツ」荒川洋治を読む。このエッセイが収録された『忘れられる過去』(朝日文庫)は持っている。島村利正が出てくるからね。「50歳を過ぎた。するべきことはした。あとはできることをしたい。それも、またぼくはこうするなと、あらかじめわかるものがいい。こんなふうな習慣がひとつあって、光っていれば、急に変なものがやってこない感じがするのだ。」

続き)荒川洋治さんの次は、武田百合子さんの『富士日記』だ。これも持ってるぞ、文庫で。上・中・下巻。キンドル版は出ているのだろうか? そうすれば「ドーナツ」の検索は楽だったのにね。

ぼくのドーナツの思い出は、高遠第一保育園に通っていた5歳の頃のこと。お昼寝のBGMに流れた「ユーモレスク」が終わって目覚めると、3時のおやつだ。担任の蛭沢先生がお皿に配ってくれたのがドーナツ。穴のあいてない、サーターアンダギーみたいな、小惑星みたいな、線香花火みたいな突起が出たドーナツ。まわりは焦げ茶色で、かじると中がほんのり黄色い。砂糖はまぶしてなくて、手はベタつかない。

たまにしかおやつに出なかった。美味しかったなぁ。


· 1月3日
『なんたってドーナツ』(ちくま文庫)もうじき読み終わる。「朝食にドーナツをおごるのが、そのころの私のたのしみだった。熱いコーヒーにドーナツ。その日は一日中、活力が切れなかった。メリケン粉と卵とミルクとバターが、それぞれの味の領域を冒すことなく、謙虚にバランスを保ってまぜ合わされ、油がいい仕上げの味を与えていた。(中略)あの日。苦しい戦後が、ひと息ついたのであった。メリケン粉とバターと卵とミルクと油と砂糖という、お菓子の要素となるものが揃うのに、戦後何年の歳月が必要だったろうか。三年あるいは、四、五年も要ったか。」(ドーナツ 増田れい子 p211)

2014年12月30日 (火)

今月のこの1曲。Judy Bridgewater 『Never Let Me Go』

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カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(早川書房)を読んだのは、もう随分と前なのだけれど、ずっと気になっていることがあって、このブログでも何回か取り上げたことがある。

小説の主人公、キャシー・H が何度も何度も聴くカセット・テープに収録された曲、Judy Bridgewater 『Never Let Me Go』のことだ。

(その1)「2006/11/15 の日記」と、11/23、11/25の日記。

(その2)今月のこの一曲『'Cause We've Been Together』アン・サリー

・ポイントは2つ。

1)ジャズ・スタンダードの『Never Let Me Go』とは、どうも違う曲らしい。

2)「この小説」が出版される少し前のこと。村上春樹氏が東京でカズオ・イシグロ氏と会った際に、スタンダードの『Never Let Me Go』が収録された JAZZのCDをカズオ・イシグロ氏にプレゼントしたらしいのだが、「そのジャズCD」が何だったか不明であること。

ところが最近、思いも寄らぬところから事実が判明した。

なんと! 村上春樹氏ご本人が「その種明かし」を季刊誌『考える人』(2013年秋号)誌上においてしてくれたのだ。現在、その全文は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』小澤征爾・村上春樹(新潮文庫)のラストに、文庫版ボーナス・トラックとして『厚木からの長い道のり』というタイトルで収録されている。

ネタバレになるので、「そのCD」が何だったか興味のある人は「この文庫」に直接当たって下さい。

もう一つ。『わたしを離さないで』は、2010年にイギリスで映画化されていて「予告編」は公開前に見た。原作を読んでイメージした寄宿学校「ヘールシャム」や、ノーフォーク海岸の映像が、ほぼイメージどおりだったので驚いた。で、逆にちょっと怖くなったのだ。

だから、この映画は見なかった。

でも、「この曲」のことを、映画ではどう処理したのか、ずっと疑問だったので、このあいだ TSUTAYA から借りてきて見たんだ。映画は原作に忠実に作られており、主人公たち3人の切ない思いが映像からストレートに伝わってきて、想像以上にとてもよかった。

ところで、このジュディ・ブリッジウォーターの「Never Let Me Go」は、実際には存在しない歌手の小説の中だけの架空の楽曲だが、映画では案外軽く扱われていて残念だったけれど、ちゃんと2度ほど流れた。いかにもそれらしいレコードジャケットも映画用に作られている。

これだ。

Judy Bridgewater - Never Let Me Go
YouTube: Judy Bridgewater - Never Let Me Go

小説では、以下のように書かれている。

 テープに戻りましょう。ジュディ・ブリッジウォーターの『夜に聞く歌』でした。レコーディングが1956年。もともとはLPレコードだったようですが、わたしが持っていたのはカセット版で、ジャケットの写真もLPジャケットのそれを縮小したものだと思います。

写真のジュディは、紫色のサテンのドレスを着ています。こういうふうに肩を剥き出しにするのが当時の流行だったのでしょうか。ジュディはバーのスツールにすわっていて、上半身だけが見えています。(中略)

このジャケットで気になるのは、ジュディの両肘がカウンターにあって、一方の手に、火のついたタバコがあることです。販売会でこのテープを見つけたときから、なんとなく人目にさらすのがはばかられたのは、このタバコのせいでした。(p106) -- 中略 --

スローで、ミッドナイトで、アメリカン。「ネバーレットミーゴー……オー、ベイビー、ベイビー……わたしを離さないで……」このリフレインが何度も繰り返されます。わたしは十一歳で、それまで音楽などあまり聞いたことありませんでしたが、この曲にはなぜか惹かれました。いつでもすぐ聞けるように、必ずこの曲の頭までテープを巻き戻しておきました。(『わたしを離さないで』p110)

確かに「スローで、ミッドナイトで、アメリカン」そのものなんだが、メロディはよくあるチープなR&Bって感じで、歌も妙にセクシーなだけでぜんぜん上手くないし、主人公が何度も何度も繰り返し聴いて心ときめかす楽曲とはとても思えないんだよなぁ。

ぼくが小説を読みながらイメージした「この曲」は、キース・ジャレットの「Standars, Vol.2」B面1曲目に収録された「Never Let Me Go」だった。これです。

Keith Jarrett Trio - Never Let Me Go
YouTube: Keith Jarrett Trio - Never Let Me Go

ちなみに、村上春樹氏はどうもキース・ジャレットが嫌いらしい。

ヴォーカル入りだと、やはりアイリーン・クラールかな。

Irene Kral - Never Let Me Go
YouTube: Irene Kral - Never Let Me Go



2014年12月23日 (火)

今年はSFをけっこう読んだな。

と言うか、ミステリーをほとんど読んでいない。『その女アレックス』ぐらいじゃないか?

SFは読んだぞ。

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『皆勤の徒』酉島伝法(東京創元社)★★★★★

・『11/22/63 (上・下)』スティーヴン・キング(文藝春秋)★★★★☆

・『know』野崎まど(ハヤカワ文庫JA)★★★★☆

・『どーなつ』北野勇作(ハヤカワ文庫JAコレクション)★★★★☆

・『SFマガジン 700【海外編】創刊700号記念アンソロジー』山岸真=編(ハヤカワ文庫)★★★★★

・『世界が終わってしまったあとの世界で(上・下)』ニック・ハーカウェイ著、黒原敏行・訳(ハヤカワ文庫)★★★★☆

・『ボラード病』吉村萬壱(文藝春秋)★★★★ この本はSFではなくて純文学だけど、日本の近未来だ。

・『昔、火星のあった場所』北野勇作(徳間デュアル文庫)★★★★★

・『光車よ、まわれ!』天沢退二郎(再読)★★★★★

・『クラバート』プロイスラー(偕成社)★★★★☆

・『霧に橋を架ける』キジ・ジョンスン(東京創元社)★★★★★

・『突変』森岡浩之(徳間文庫)★★★

・『火星の人』アンディ・ウィアー(ハヤカワ文庫)→現在読書中

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以下は購入済み、待機中(一部だけ読了)

・『SFマガジン 700【国内編】創刊700号記念アンソロジー』大森望=編(ハヤカワ文庫)

・『NOVA+バベル:書き下ろし日本SFコレクション』大森望=編(河出文庫)

・『ストーカー』ストルガツキー兄弟(ハヤカワ文庫SF)

・『だれの息子でもない』神林長平(講談社)

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■こうやって並べてみると、いまの時代、僕にとってはミステリーよりもSFのほうがずっとリアルでリーダビリティがあって面白いってことがよく分かる。

2014年12月22日 (月)

最近読み終わった本

■直近で読み終わったのは、

『河岸忘日抄』堀江敏幸(新潮文庫): 3ヵ月以上かけて、ゆっくりゆっくり読んだ。これはよかった。堪能したなぁ。この人の文章は、読んでいてほんと気持ちがいい。

ちょうど、WOWOW で『ポンヌフの恋人』やってて、ラストシーン、セーヌ川を下る平底の砂利運搬船を見たし、『その女アレックス』もパリ郊外のはなしだったので、風景をイメージしやすかった。

『回送電車(1)』(中公文庫)は、その前に読み終わっていて、今度は古書で入手した『郊外へ』(白泉Uブックス)を読み始める。

■対談本3冊連チャン。

『サブカル・スーパースター鬱伝』吉田豪(徳間文庫ビレッジ)

『演技でいいから友達でいて 僕が学んだ舞台の達人』松尾スズキ(幻冬舎文庫)

『秘密と友情』春日武彦&穂村弘(新潮文庫):この本を読んで、2人のイメージが変わった。穂村さんは、すごく頭の回転が速いクレバーな人で、若い頃から女の子にもてて、大藪春彦と大島弓子が大好き。春日先生は心配性で常に罪悪感にさいなまれていて、占い好きで、自分の背後霊の存在を感じている、へんな人だった。その著書からは想像もできなかったな。

■絵本一冊。『まばたき』穂村弘・作、酒井駒子・絵(岩崎書店): この絵本、どうもよく理解できないのだ。2枚目の同じ絵(正しくは決して同じ絵ではないのだが)の意味は何? 「まばたき」して目を閉じた瞬間、まぶたの裏に映る残像なのか? それとも、1回まばたきした時には「ほとんど動いていない」ということなのか? う〜む。よくわからん。

■ページターナー本の2冊。

『その女アレックス』(文春文庫)

『突変』森岡浩之(徳間文庫)

  

2014年12月14日 (日)

第15回「上伊那医師会まつり」

■「上伊那医師会報 12月号」の原稿を、ようやく書き上げた。最近、なんだかちっとも文章が書けなくなってしまって困ってしまう。

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第15回 上伊那医師会まつり

 

 11月14日(金)は今期一番の冷え込みで、身を切るような夜風を避けるようにコートの襟を立て、皆さん足早に会場の信州INAセミナーハウスへ向かいます。この日は2年に1度の医師会まつり。今回は、日本の伝統芸能、江戸太神楽と落語で大いに笑って楽しんで、心の底からぽかぽかと暖まって頂きました。

 最初に登場したのは落語家の春風亭柳朝師匠。軽妙な「まくら」と小咄で場内を和ませた後、「真田小僧」の前半を一席。よく通る声で、所作がきれいな噺家さん。じつは鉄道オタク(乗り鉄)で、岡谷から伊那北まで、今回初めて飯田線に乗ることができたと喜んでいらっしゃいました。

 続いての登場は、夫婦太神楽「かがみもち」の鏡味仙三、鏡味仙花ご夫妻。太神楽(だいかぐら)は、400年前の江戸時代初期に誕生した神事芸能(獅子舞、曲芸)で、お正月のテレビに「おめでとうございま〜す!」と言って登場した海老一染之助・染太郎の傘回しの芸ならご存知でしょう。

 鏡味仙三さんが先ずはその傘回しを披露。毬に始まって、四角い升、鋼のリング、くまモンまで回してくれました。続いて奥さんの仙花さんが「五階茶碗」と呼ばれるバランス芸を披露。始めに棒を顎に立て、その上に板や茶碗、化粧房を積み上げていきます。棒を2本にして、その間に毬を2個挟む段になると、見ていてハラハラドキドキです。最後は細い糸で空中へ吊り上げ、回転させながら糸の上を綱渡り。それはそれはお見事でした。夫婦揃っての曲芸は曲撥(投げ物)です。流石に夫婦息の合った芸を見せてくれました。

 再び高座に上がった春風亭柳朝さん。旦那に悋気(りんき)する女将さんが、使用人の権助に夫の尾行を命じたけれど、逆に権助は旦那に買収されてしまう「権助魚」という噺で場内は笑いの渦に包まれました。

 参加者が150人を越えた大宴会では、サイン色紙争奪ジャンケン大会でまた大いに盛り上がりました。最後に伊藤隆一先生が高座に上がり締めのご挨拶。この「医師会まつり」は30年前に樋代昌彦先生のご発案で始まったのだそうです。こちらも伝統を絶やさぬよう、末永く続けて行きたいものです。

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2014年12月 7日 (日)

佐々木昭一郎『さすらい』と、ピーター・フォンダの『イージーライダー』

■録画しておいたNHKアーカイヴス「佐々木昭一郎特集」を、少しずつ見ている。初めて通しで見た『夢の島少女』は、思いのほかエロくて驚いた。ただ、感想を語るにはもう2〜3回見ないと言葉にできないような気がしている。

こちらも初めて見たのだが『さすらい』(1971)は面白かった。すごく気に入っている。これはいいな。

■常に無表情で淡々とした主人公の青年が北海道の孤児院から上京して来て、渋谷で映画の看板屋に就職する。その後、ふらふらと東北を旅して廻るのだ。いろいろな人たちと出会う。看板描きの職人、歌い手を目指すフォーク青年(友川かずき、遠藤賢司)「いもうと」みたいな中学生の少女(栗田ひろみ)サーカスのブランコ乗り(キグレ・サーカス)アングラ旅芸人一座(はみだし劇場)、氷屋、三沢米軍基地近くに住み、渡米を夢見るジャズ歌手(笠井紀美子)などなど。でも、結局なにも起こらない。

彼はただ、「ここ」ではない「ほか」の場所、「ここ」ではない「ほか」の人を求めて旅に出るのだ。

あぁ、わかるよ。すっごくわかる。だって、俺も「そう」だったから。

オープニング。海岸の画面下から、ふいに青年がひょこっと現れる。なんか変。そこから『遠くへ行きたい』みたいな映像が続く。でも、どことなくユーモラスで、妙に軽い。深刻なようでいてぜんぜん暗くない。不思議な乾いた感触が心地よいのだ。ラストシーン。青年は浜辺に棒を一本立ててから再び夕日が沈む海に戻って行く。見ていてすごく「すがすがしい」ラストだ。

ドラマに何度も挿入されるBGMの影響があるのかもしれない。バーズ「イージーライダーのバラッド」。これだ。

The Byrds / Ballad of Easy Rider
YouTube: The Byrds / Ballad of Easy Rider

JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました(2019/08/06)

■で、ふと思ったのだが「この曲」がエンディングで流れる(こちらは、ロジャー・マッギンのソロ・ヴァージョン)映画『イージーライダー』を、今までちゃんと見たことがなかったんじゃないかと。アメリカン・ニューシネマの傑作なのに、何故か映画館でもビデオでも見た記憶がない。

町山智浩さんの『映画の見方がわかる本』は読んでいたから、この映画の知識はあった。本に書かれた内容は、「町山智浩の映画塾!」予習編・復習編でほぼ語り尽くされている。これだ。

町山智浩の映画塾! イージー・ライダー <予習編> 【WOWOW】#83
YouTube: 町山智浩の映画塾! イージー・ライダー <予習編> 【WOWOW】#83

■で、TSUTAYAに行って借りてきたんだ、ブルーレイ・ディスク。返却日の深夜にようやく見たのだが、いや実に面白かった。それにしても、デニス・ホッパー、若いなあ。1969年の公開作。

スタントマンのピーター・フォンダとデニス・ホッパーの2人組が、メキシコで仕入れたコカインを金持ちのぼんぼんに売りつけ、儲けた金を改造バイクのガソリン・タンクに隠して、LAからニューオーリンズまで気ままなツーリングの旅を続ける。途中、インディアンを妻とした子だくさんの白人や、ヒッピー・コミュニティのリーダー、アル中弁護士(ジャック・ニコルソン)など、いろんな人たちと出会うというお話し。

ラストの、ヘリコプターによる空撮。これ、『夢の島少女』のラストカット。あの、ヘリコプター空撮による驚異的な長回しのヒントになったんじゃないか? 『さすらい』(1971)も、この映画から大きなインスピレーションを受けているように思った。音楽の使い方とか。

ドラマ『紅い花』のオープニングで使われたドノバンといい、佐々木昭一郎は「川の歌」というか「川の流れ」へのこだわりを、ずっと持ち続けた人だったんだなあ。

■渋谷の街中にたびたび登場した、巨大なモノクロの少女のヌード写真。あの少女はやはり、栗田ひろみ本人だ。

『創るということ』佐々木昭一郎(青土社)で、佐々木氏は『さすらい』の主人公「ヒロシ」に関してこんなふうに言っている。

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『さすらい』はヒロシって主人公がよかったね。このヒロシはオートバイをいたずらしているとこ見つけたんだけど、今は静かに実生活者として横浜で生きている。彫金師になって、奥さんもらって。必ず年に一回電話して、ぼくに会いに来るんだ。「どうしてますか」って、世間話して帰っていく。

ヒロシに会うのは救いだね。(中略)

ヒロシも、彼は実生活ではサンダース・ホーム出身なんだ。で、ハーフでどこかに捨てられてひきとられて、セント・ジョセフっていう横浜の学校に通って、英語が非常に達者でね、日本語もよくできて、学習能力も抜群で、感性がそういうわけだから周囲がなんとなく違うなってことを感じながら生きてるんだ。

ぼくらにはそんなこと言わないけれど、だから孤独っていうのも顔によく出てたし、少年期特有の反抗心も、その反対の優しさも出てたしね。(『創るということ』p117〜p120)

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あ、渋谷道玄坂、百軒店の入り口だ。右手に「道頓堀劇場」。成人映画の看板を運ぶ2人。ずいぶんと昔の渋谷。佐々木昭一郎『さすらい』を見ている。



2014年11月29日 (土)

今月のこの1曲。アメリカ版:年末のデュエット曲 『 Baby, It's Cold Outside(外は寒いよ)』

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■先日購入した(コレは廉価盤ではない)ブロッサム・ディアリー 1979年のライヴ『 Needlepoint Magic 』がすごくいい。トリオではなく、彼女のピアノ弾き語りのみで、しんみりと聴かせる。

以前ご紹介した「 I Like You, You're Nice」や「 I'M HIP」「I'm Shadowing You」といった、彼女の代表的なオリジナル曲も入っているぞ。客席の笑い声が絶えない何ともくつろいだ雰囲気が実に楽しい。

■中でも、5曲目にゲストで登場したボブ・ドローとのデュエット「BABY IT'S COLD OUTSIDE」が最高だ。歌う前の二人の掛け合いが何とも洒落てる。大人の男女の小粋な感じ。

YouTube で探したら、あったあった。これです。

Blossom Dearie & Bob Dorough - Baby it's cold outside
YouTube: Blossom Dearie & Bob Dorough - Baby it's cold outside

■この曲は、クリスマス&ウインター・ソング・アルバムには欠かせない、アメリカでは大変有名な曲で、まぁ実にに多くの歌い手がデュエットしている。つい最近では、元祖『アナと雪の女王』の、イディナ・メンゼルが、マイケル・ブーブレと歌っているぞ。

■ぼくは、ジェイムス・テイラーのクリスマス・アルバムの5曲目に入っている、ナタリー・コールとのデュエットが好きで、毎年12月になるとさんざん聴いてきた。これだ。

Baby, It's Cold Outside - James Taylor (with Natalie Cole)
YouTube: Baby, It's Cold Outside - James Taylor (with Natalie Cole)

■それから、わが家にあるCDだと、ロッド・スチュワートの『THE Great American SongBook vol.3 』12曲目。

そして、オリジナルのMGMミュージカル映画『水着の女王』でのシーンがこちら。まぁ、他愛のないコミカル・ソングではあるなぁ。後半の男女逆ヴァージョンが面白い。

Baby it's cold outside
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2014年11月28日 (金)

わが家にもあった「味写」

先達て購入した『味写道』天久聖一(アスペクト)。さすがに『味写入門』ほどの強烈なインパクトはないが、大いに笑える楽しい写真集だ。

■ほぼ日に、その「味写名作選」が載っている。

■そしたら、『味写道』の表紙を飾る「節分の姉弟」と「よく似たポーズ、表情」で写真に写っている兄弟の写真が

わが家にもあった。2002年2月1日に撮影。兄が5歳、弟は3歳。

(写真をクリックすると、もう少し大きくなります)

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■それにしても、子供はあれよあれよと大きくなる。この写真を撮ってから12年半。いまじゃ二人とも、身長は父親より高い。親子4人、ひとつ屋根の下で暮らすことが出来るのも、もうあとわずかな期間しか残っていない。

なんか、しみじみしてしまったよ。

2014年11月24日 (月)

このところの「1000円ジャズ廉価盤」発売ラッシュはどうにかならないものか。

Img_2582

■楽曲は、ネットからのダウンロードでなくて、やっぱりCDで持っていたい。TSUTAYAからCDをレンタルしてきて、iTunes に取り込むのでもダメだ。ちゃんとCDジャケットがあって、中にライナーノーツが同封されていないと嫌なのだ。おじさんはね。

そのあたりの心情をよーく心得ている日本の音楽業界は、このところ「1000円廉価盤CD」再発ラッシュで、われわれ中高年を悩ませているのだった。それはジャズ関係にとどまらず、ロックやR&B分野にも及んでいる。毎月「かつて欲しかったけれど買えなかったCDたち」が続々と出るものだから、うれしい悲鳴というか、正直とても追いつかないのが現状。例えば……

1)SONY music ジャズ・コレクション 1000 シリーズ

2)ユニバーサル ジャズの100枚

3)Jazz The New Chapter「今ジャズ」¥1500シリーズ

4)コンコード・ジャズ・セレクション

5)フュージョン・ベストコレクション 1000

6)ユニバーサル ブラジル 1000

7)ボンバレコード ブラジル音楽名盤1000

 

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