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2010年9月

2010年9月29日 (水)

『白鍵と黒鍵の間に ジャズピアニスト・エレジー銀座編』南博(小学館文庫)

■ちょうど、外来小児科学会で福岡に行った直後に読み終わったから、かれこれ1ヵ月近く経ってしまって詳細を忘れかけているのだが、すっごく面白かった本なので何とか乏しい記憶を書き留めておこう。

■ Twitter に書いたこと。

8月末までに仕上げなければならない仕事が手つかずだ。それなのに『白鍵と黒鍵の間に ジャズピアニスト・エレジー銀座編』南博(小学館文庫)を読み始める。プロローグの「巨大な寿司桶」がいきなり面白い。困った。止められないぞ。(2010/08/24)


『白鍵と黒鍵の間に・ジャズピアニスト・エレジー銀座編』南博(小学館文庫)読了。これは久々のヒット本だ。面白くてやがて哀しきしみじみ感が、そこここのページにあふれている。この人は文章が上手いな。続編の「アメリカ編」はやく文庫化してくれないものか。(2010/08/31)


■印象に残っているのは、脇役でそっと登場する人たちだ。まずは「小岩のチャーリー・パーカー」(p41)。

著者は小岩の場末のキャバレーHでピアノを弾いていた。バンドの楽屋は、何かが饐えた匂いと、ネズミの匂いがした。その横には廃墟のような空間があり、そこにはフィリピン人のホステスがウレタンが爆裂しているようなマットレスの上に寝起きしていた。


 その頃アルトサックス・セクションにK君という人物がいた。彼は一見朴念仁風で、あまり人としゃべらなかったが、セットの間の休み時間も明日地球がなくなってしまうといった勢いで、チャーリー・パーカーをコピーしたり研究したりしていた。(中略)

 ある日、早めに楽屋に行ってみると、相変わらず一番乗りのK君が、パーカーのフレーズを練習していた。(中略)そして次にK君が言った言葉を僕は忘れない。

「ほら、パーカーってさ、宇宙の音楽じゃん、吹いてるときにオレ、目の前に星が見えるもん、パーカーは宇宙につながっていたんだと思う。色々ほかのアルトサックスプレイヤーも聴いたけどさあ、宇宙が見えん。僕は、演歌だろうが何だろうが、演奏中には星が出ないと我慢できない。」(p43〜45)

このK君、いまどうしてるのかなぁ。すごく気になる。


■次は、「ツアー」(p74)。広島県福山市のクラブへ向かう途中で台風に遭遇した一行は、ライブがキャンセルになってしまい、仕方なく前に新宿ピット・インで従業員やってたベーシスト志望のヤマさんが住む、瀬戸内海の島に行って一晩泊めてもらうことになる。暴風の中、深夜に到着したにもかかわらず焼酎で歓待してくれた「ヤマさん」がしみじみいいんだ。(詳細は、94ページを読んでみて)

■その次は「支配人のアベちゃん」(p115)。変な名古屋弁を操るアベちゃん。転勤が決まって、ホテルのフロントに寂しそうに立つアベちゃんは、哀愁そのものだ。

「まぁ、また東京にもどることもあるがね。そんなときはまた、南君に連絡するかもしれんがや。」 アベちゃんのその言葉を聞いて、なぜだか分からないが、多分永遠にアベちゃんから電話がかかってくることはないだろうと直感した。(p124)


■そうして、「ジョージさん 」(p198)。銀座のクラブSで、幇間か男芸者のような役割を演じていたジョージさん。でも本当は歌手なのだ。このジョージさんのエピソードもいいなぁ。あとは、著者が掛け持ちした、銀座の2つのクラブの、それぞれのバンマスたち。(もう少し続く)


2010年9月26日 (日)

新しい iPod Shuffle を買った

■愛用していた第2世代の iPod Shuffle(オレンジ色)だったが、ずっとだましだまし使ってきたけれど、とうとうどうにも動かなくなってしまった。そこで仕方なく買い換えようと思ったのだが、第3世代の iPod Shuffle は、コントローラーが本体になくて、付属のイヤホンのコードに付いているので、今まで使っていた Shure のイヤホンが使えない。

それは面白くないな。と困っていたら「第4世代の iPod Shuffle 」が新発売になった。見ると、コントローラーが再び本体に戻っているではないか! やったぁ。


というワケで、さっそく注文したのだった。

4,800円で、2ギガ。バッテリーも最大15時間駆動と伸びた。しかも、明らかに音が良くなっている。イヤホンが改良されたのか? これなら、SHURE のイヤホンを使わなくてもいいじゃん。なんだ。

これはマジでお買い得だな。

でも、ホント小さくなっちゃって、不器用なぼくの太い親指では、かえって操作しずらいぞ! それから、衣服に挟むクリップが第2世代に比べて開きが小さいので挟みにくい。ぼくはいつもトレーニング・ウエアーの首周りに挟むのだが、すべてセットアップしてから挟もうとするとコントローラーをクリックしちゃってうまくいかない。挟んでからスイッチ・オンしないとダメなんだ。そこが唯一の欠点か。

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■                                         今日の日曜日の夕食は、例の、飯島奈美『LIFE なんでもない日、おめでとう! のごはん』(ほぼ日刊イトイ新聞)82ページの「お休みの日のパパカレー」に再挑戦だ。今回は、オリジナル通りに豚肉をかたまりで500g(肩ロースはなかったので、豚バラの塊)。コレを入れました。豪華です! 

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カレー粉は、前回と同様に「S&B直火釜焙煎深みロースト・カレーフレーク中辛」と「ハウスジャワカレー辛口」のハーフ&ハーフ。タマネギは4個使った。タマネギを炒める時に、ハチミツを大さじ 1/2 入れること、仕上げに、おろし生姜を大さじ1、バターと醤油を小さじ1ずつ入れることがポイント。

待ちきれなくて、90分間ぐつぐつ煮込むところを70分に短縮したので、豚肉がいまひとつ柔らかくならなかったかな。でも、個人的にはすっごくうまくできた、と思うぞ。(何故か、カレーの写真はない。忘れてた)

2010年9月25日 (土)

Here and Now

■「懐かしのフォーク大全集」みたいな番組を、よくNHK BS2 でやってるじゃないですか。南こうせつが司会で。あれが嫌いなんだ。たいてい NHKホールでライブ収録されていて、カメラがステージから客席のアップに切り替わると、団塊世代の方々が気持ちだけ青春時代にタイムスリップしたふうで、「あの頃はよかったなぁ」って顔をみんなしているんだ。60歳前後の初老のおじさん、おばさんがね。

あの顔を見るのがイヤなんだ。格好悪いじゃん。拓郎の嬬恋もそうだし、小田和正のスタジオ・ライブも、ちょっとだけ年齢層は下がるが見た目はほとんど同じだな。まぁ、おいらだって同類のオヤジなのだが……


■ところが、ジェイムス・テイラーやキャロル・キングの最近のライブDVDを見ると、客席のオジサン、オバサンたちがみな、カッコイイのだよ。何なんだろうなぁ、この違い。


■でも、ステージで歌っているフォーク・シンガー(こういう括りでいいのかどうかは分からないが)たちは違うはずだ。自分が過去完了形だとは決して思っていないはず。大晦日の夜に、東京12チャンネルで「懐かしの歌声」のメンバーとして舞台には立ちたくないはずだ。だって、彼らは今日も「いま」&「ここ」で歌い続けているのだから。


例えば、友部正人。彼は若いミュージシャンからずっとリスペクトされてきた。古くは「たま」「ブルー・ハーツ」。彼は常に今の若いリスナーたちからも、依然として発見され続けているのだ。


それから、加川良。彼は今でもギターケース一つ抱えて全国各地の小さな会場を廻って、ほんの少数の観客の前でも歌い続けている。ぼくが観たのは、今から15年くらい前の諏訪大社(上社)前の喫茶店でのライブだったが、ぼくが中坊だったころ、一人で長野まで行って、長野市民会館での「加川良&中川イサト・コンサート」で聴いた歌声(ちょうどLP『やぁ!』のころだな)から、ぜんぜん違った唄い方に進化していてビックリしたものだ。でも、決してがっかりしなかったな。ぼくの記憶にある「昔の加川良」よりも、「今の加川良」のほうが、ずっとずっとカッコイイ! そう思ったから。


それは、北海道で亡くなる3ヵ月前に伊那に来て、「BASE」で たった20人の客の前で唄ってくれた高田渡さんにも感じたことだ。

彼らはみな、「いま・ここ」で唄っているのだよ。


だから逆に、若いのに変に老成して「昔はよかったねぇ」みたいな感じで、まるで過去を同時代で体験してきたみたいな口ぶりで語る人がいるけど、ぼくはこういう人が一番苦手だ。(落語なんかに関する物言いでは、ぼく自身がまさにそんな嫌な奴なわけだが……)

そうじゃないんだ。確かに、例えば、ジェイムス・テイラーはツアーに出ると毎晩「君の友達( You've got a friend )」を唄うことを強いられるという。でも、この曲をこの日初めて聴いて、なんていい曲なんだって気に入った若者がいるかもしれないし、かつてファンだった団塊の世代のおじさん・おばさん達も、40年以上ずっと現役のまま歌い続けてきたジェイムス・テイラーの生き様に感動し、さらにはこの日初めて聴いた「新しい曲」にも心響かせることができる。

シンガーにとっても、観客にとっても、「いま・ここ」である一期一会の「ライブ」体験とは、そういうものさ。


彼らの唄は、フリーズ・ドライされた過去の遺産なんかじゃない。彼らの唄はみな「いま・ここ」なんだよ。もっと、現在進行形で、切実なんだよ。


そんなかんなを、中川五郎さんの唄を聴きながら考えていた。知らなかったのだが、中川五郎さんの最新CDには、ハンバートハンバートの名曲「おかえりなさい」がカバー収録されているそうだ。

2010年9月23日 (木)

中川五郎ライヴ at The 仙醸蔵(高遠ブックフェスティバル)

■先だっての 9月19日(日)は、母の一周忌だった。

午前11時から建福寺本堂で法要をしていただき、その後、みんなでお墓参り。
お昼は、新町の四季亭「もりた」へ。

早いものだ。あれからもう一年が経つのか。

本当は飲まないつもりだったのだが、高遠の兄に「まぁ、付き合え」と言われてビールを注いでもらう。あぁ、うまいな。料理もみな美味かった。なんと、大きな生の松茸もでたよ。〆は稲庭うどんだった。


■この日は「高遠ブックフェスティバル」の2日目で、町中は人にあふれて妙に賑やかだった。息子たちが高遠町図書館へ行きたいと言うので、一休みしたあと、まずは旧北條ストアーで開催されている古書市へ。SF本が妙に充実していて『百億の昼と千億の夜』光瀬龍(ハヤカワ文庫)をオール300円コーナーで見つけ、中2の長男に「お前はこの本を読むべきだ。絶対に気に入るはず」と、勝手に購入。それから『SFの時代』石川喬司(日本推理作家協会受賞作全集36・双葉文庫)も300円で入手。あと、『すぺるむ・さいえんすの冒険 小松左京コレクション』(ボクラノエスエフ 福音館書店 ¥1890 )を500円で購入。この本は本日一番の戦勝品だったかな。


図書館へ行くと、2階への階段を上がったところで「南信こどものとも社」の坂本さんが月刊誌「こどものとも」のバックナンバーを販売していた。フェスティバルの期間中ずっと店番をしてなきゃならないので大変だな。『とうだいのひまわり』『くいしんぼうのあおむしくん』『たいこたたきのパチャリントくん』など7冊購入。フリー・ペーパーのコーナーには、わざわざ遠く屋久島からやって来た人もいたよ。


午後4時からは、図書館2階の和室で書評家・豊崎由美さんが「古今東西の古典名作に関するブックトーク」を行うとのことだったが、すでに予約がいっぱいで聴けなかった。でも、この日の夜7時から仙醸蔵で開催される「中川五郎&良原リエ・ライヴ」を事前にメールで予約が取れていたので、妻と子供らには先に伊那へ帰ってもらってぼくだけ高遠に残り、ライヴ終了後にバスで帰ることにしたのだ。すでにアルコールが入っていたからね。


ところが、日曜祭日のJRバス時刻表を確認したら、伊那市行きの最終便は午後6時発で、その後は1本もない。ええっ! ぼくが高校生だった頃には、夜10時発くらいの便があったじゃん。信じられないな。仕方ないので、高遠の実家に泊めてもらって翌朝妻に迎えに来てもらうことにした。そうなったらまた気が大きくなって、にんべん酒店へ行って缶ビールとワインを仕入れ、ライヴの時間までもう少し兄と飲む。

この日の早朝、成田を出て渋滞の中央道を車でやって来た次兄は、泊まらずに日帰りしなければならず、ビールは飲めず。ごめんなさいね、兄貴。


■夜7時の時間が近づいたので、歩いて仙醸蔵へ。もう40〜50人近い聴衆であふれているんじゃないかとイメージして行ったら、まだ数人しか来ていない。そうか、この時間だと伊那へは帰れないからね。高遠ブックフェスティバルへ1泊2日でやって来た人でも、ホテルが伊那市街地だったらライヴを聴くことは無理なんだな、自家用車かつノン・アルコールでなければ。


しばらくして、辰野町在住のシンガー・ソング・ライターで、豊南女子短大教授でもある三浦久氏が、奥さんといっしょにやって来て、ぼくのテーブルの後ろに座った。バンジョーのチューニングをしていた中川五郎氏は直ぐに三浦氏に気付き、客席に来て歓談。旧知の仲なんだね。三浦氏は、さかんにレナード・コーエンのロンドン・ライヴのCDの話を五郎さんにしている。ぼくのすぐ後ろでね。あ、その「レナード・コーエンのライヴDVD」ぼくも持ってます! 振り返って、よっぽどそう言おうかと思ったが、じっと我慢した。


そうして始まった中川五郎氏のライヴは、本当にすばらしかった。
若いなぁ、五郎さん。それに、昔よりもずっと、唄が上手くなっている。それに、歌声がすごく力強いのだ。

ぼくが生で彼のライヴを聴いたのは、今から30年以上前の都内のとあるカフェで行われた、友部正人とのジョイント・ライヴ以来だと思う。中川五郎さんと言えば「色男、金と力はなかりけり」といった風情で、何となく自信なさそうに、か弱く唄っている印象があったのだが、今回は違った。なんかすっごく説得力と自信にあふれていたのだ。それには、良原リエさんのアコーディオンによる絶妙の伴奏の影響も大きかったかもしれない。

「主婦のブルース」とかは聴いたことあったが、懐かしい名前の、ピート・シーガーとか、ボブ・ディランとかの曲も、この日初めて聴いた。みないい曲じゃないか。

そうこうするうちにライヴも終板となり、聞き覚えのある伴奏が流れ出した。

  あ! 「ミー・アンド・ボビー・マギー」だ! 

 中川五郎さんの唄の中で、ぼくが一番好きな曲だ。


ぼくは知らずといっしょに歌っていたよ。

 「自由っていうのは失うものが、なにもないことさ〜」
 「いい気持ちになるのは かんたんなこと〜」
 「ボビーがブルースを唄えば〜、それだけで俺たちゃご機嫌ん〜」

うれしかったなぁ。今日のこの日、高遠の仙醸蔵にいれて、本当によかった。心からそう思ったよ。


ありがとう! 中川五郎さん。

「ミー・アンド・ボビー・マギー」は YouTube にはなかったので、彼の「もうひとつ」の大好きな曲を紹介しようか。これだ。


YouTube: 中川五郎 その4


「ミー・アンド・ボビー・マギー」のあと唄ってくれたのが、この「ビッグ・スカイ」。
この曲もよかったなぁ。会場は大盛り上がりで、五郎さんはテーブルに上ってギターをかき鳴らし熱唱したよ。
もう、めちゃくちゃパワフルで感動してしまったなぁ。


YouTube: 中川五郎 その3

この話は、もう少し続く予定だが、
中川五郎氏は、自身のブログで「こう」書いているのでご紹介しておこう。あぁ、そうだったのか。知らなかったな。

しばらくはリンクがつながっているんじゃないかと思う。


■前述の三浦久先生のホームページにも「9月19日の日記」に写真入りで当日のライヴの様子がかかれているよ。

(つづく)


2010年9月21日 (火)

Twitter の XSS脆弱性とやらに、まんまと引っかかってしまったらしい

いまだに「クライアント・ソフト」を使わずに、Twitter公式サイトからずっとTLを見てきたのだが、どうもそれでもって、Twitter の XSS脆弱性とやらに、まんまと引っかかってしまったらしい。

何か今日の夕方くらいから TL の下の方が消えてしまって変だなぁと思っていたら、なんだか知らないうちに、怪しげな所へ誘導する「リツーイト」をしてしまっていたらしい。先ほどRTを削除してきた。

ご迷惑をおかけしたみなさま、本当にどうもすみませんでした。

2010年9月18日 (土)

ぼくが中学・高校生時代に買ったレコードたち

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少なくともこうやって、当時やっとの思いで買ったLPレコードを、いまでも大切に持っているワケですよ。だって、捨てられなかったんだもん。何10回、いや何百回も聴いてきたレコードたち。


■昨日の朝、『ゲゲゲの女房』の後 8:15から始まるNHK総合『あさイチ』に、ゲストとして、ゲゲゲの女房の安来の父親役だった「大杉漣」が登場した。ぼくはあわてて、録画スイッチを押し診察室へ向かったのだが、昼休みに帰って来て番組を再生したら、大杉漣がギターの弾き語りをしていて驚いた。彼は僕より7歳年上だが、聴いてきた音楽はものすごく似ている。彼は加川良や高田渡の熱烈なファンなのだ。

この日、彼が唄ったのは、加川良の「伝道」だった。たまげたし、すごくうれしかった。ぼくも大好きな加川良の曲の中でも、「伝道」はベスト5に入る曲だ。あとの4曲は、「偶成」「こがらしえれじい」「下宿屋」「鎮静剤」かな。だから、僕だって今でも「伝道」は歌詞カードを見ずにギターで弾き語りできるぞ。


つまりは「そういうこと」さ。ぼくの長男が、中学2年生の時点で、邦楽・洋楽・ジャズ・クラシックと、分け隔てなく貪欲に音楽を取り込む姿勢は素晴らしいと思うが、彼が「ただ」で TSUTAYA から借りてきてパソコンにコピーし、ウォークマンに落として聴いている楽曲が、はたして彼が50歳になった時でも、忘れられない大切な音楽として、その時の彼を支える力があるのだろうか?

ぼくは、そのことを危惧している。

2010年9月15日 (水)

いまどきの中学2年生が享受する音楽環境とは

■夕食後、今日発売になったテニス雑誌を買いたいから TSUTAYAへ行こうと、おばあちゃんからもらった図書カードを手に小6の次男が言うので、中2の長男もいっしょに TSUTAYAへ行った。

次男は目的の雑誌を自分の図書カードで購入。ぼくは雑誌コーナーで立ち読み。長男はずっとレンタルCDコーナーにいて、暫くしてから5枚のCD(うち、シングル3枚)を手にやってきて「おとうさん、これ借りたいからよろしく」と当たり前のように言った。

「何だお前、とうさんが金払って借りるのかよ。」 確かに「Tカード」は僕のだが、借りたのは長男だ。しかも、先週末にも5枚1000円で借りてきたばかりじゃないか。なんか納得できないんだよなぁ。

帰宅するなり彼はパソコンに向かって借りてきたCDを早速コピーしている。続けて自分のウォークマンを接続して曲を転送。そんな作業を繰り返して、彼のウォークマンには既に100枚以上のCDが収録されているのだった。


■振り返ってみて、ぼくが中学2年生だった頃はどうだったか? 

『僕の音盤青春期』絵と文・牧野良幸(音楽出版社)という本が出ているが、同じ昭和33年生まれで学年は一つ上の著者とは、ぼくもほとんど同じ音楽変遷を経てきたのだった。

当時はまだラジカセなんてなかったから、FM放送をカセットテープにエアチェック録音することはできなかった。ただ、AMラジオはあったから、当時の中坊は洋楽のベストテン番組に耳を傾け、今週の洋楽チャートがどうなっているのか聞き入ったものだ。気に入った曲があれば、レコード屋さんでシングル盤(ドーナツ盤とも言ったな)を買った。LPなんて、高くてそうそう買えなかった。

ぼくが最初に買ったシングル盤は、サイモンとガーファンクルの「コンドルは飛んで行く」と仲雅美「ポーリュシカ・ポーレ」だったな。この曲は、1971年のTBSドラマ「木下恵介アワー」人間の歌シリーズ「冬の雲」のドラマ挿入歌だった。

そうして、初めて買ったポップスのLPレコードは、CBSソニー『ギフト・パック・シリーズ』の中の「映画音楽ベストヒット集」だった。前述の『僕の音盤青春期』絵と文・牧野良幸(音楽出版社)の中には、26ページにこんな記載があって笑ってしまったよ。

あの頃、小遣いだけが頼りの中学生がLPレコードを買うのは大変だった。せいぜい一枚1,000円のクラシック廉価盤が精いっぱい。ポップスはシングルで買うのが普通だった。でも、「いつかはポップスもLPで!」と思っていた。(中略)

71年暮れ。とうとう初めてのポップスのLPを買う時がきた。いつものように僕とYがレコード屋にひやかしに行ったときのこと、いちばん目立つ棚に、赤い箱がズラリと入っていた。まるで海から打ち上げられた貝殻のようにたくさん重なっている。

それはCBS・ソニーが創業3周年で発売した『ギフト・パック・シリーズ』。LP2枚が赤い箱に入ったベスト盤である。赤い箱はとても印象的で、クリスマス前のウキウキした気分にぴったりだった。『ギフト・パック・シリーズ』には、CBS・ソニーのアーティストがずらりと並んでいた。

その一番手は、やはりサイモンとガーファンクル。前にも書いたが、サイモンとガーファンクルは「ポップスを聴くなら、まずサイモンとガーファンクルを聴け!」と言われるくらい人気だったのだ。(中略)おまけにベスト盤だからさらに厳選された良い曲ばかりにちがいない。2枚組で3,000円という値段も買いやすかった。僕はサイモンとガーファンクルの『ギフト・パック・シリーズ』を買うことにした。自分へのクリスマス・プレゼントだ。


まったくおんなじだ。ぼくは買ったLPレコードを大切に胸に抱えて家に帰り、繰り返し繰り返し聞いた。気に入った曲が、例えばB面5曲目だったりすると、何度も訓練するうちに、曲の始めにぴったし針を落とせるようになったものだ。


■ぼくはこの本の著者と違って、その後は洋楽を離れて専ら国産フォークの世界へどっぷりと浸かることになる。2番目に買ったLPは、泉谷しげる『春夏秋冬』(エレック・レコード)で、3番目が加川良『親愛なるQに捧ぐ』(URCレコード)だった。来る日も来る日も、同じレコードの同じ曲を何度でも繰り返し繰り返し聴いた。加川良のレコードの場合は、やはりB面2曲目の「下宿屋」か。(つづく)


2010年9月11日 (土)

今月のこの一曲 「You've got to have freedom」 by Pharoah Sanders

■今月のこの一曲は、じつは以前にも取り上げたことがある曲だ。<ここ>の下の方へスクロールしてくと出てくる『 You've Got To Have Freedom 』。2003年10月14日に書いたものです。 数あるジャズの名曲の中でも、ぼくが一番好きな曲。もう大好きで、初めて聴いてから30年も経つのに今でも聴き続けている。落ち込んだ時、心が弱っている時、どうにもならない時、大音量で、何度も何度も繰り返し繰り返し聴いてきた。 ファラオ自身の演奏は5種類(5ヴァージョン)あって、レコードはみんな持っている。これだ。 100911 ■以前「YouTube」で検索してみた時には、2006年にファラオ・サンダースが来日した際に伊豆の修善寺で「sleep walker」と共演した時のライヴ映像がヒットしただけだった。 でも、先日久々に検索してみたら、いろいろいっぱいアップされていて驚いたのだ。 まずは、Theresa Records『Journey To The One』(2枚組)3面1曲目に収録された、1980年録音のオリジナル演奏がこれだ!


YouTube: Pharoah Sanders "You Got To Have Freedom"

この曲の一番烈しい熱狂的な演奏は、Theresa Records「Pharoah Sanders Live!」なのだが、長いからさすがに YouTube にはなかった。ベース以外は同じメンツで、オランダのタイムレス・レコードに録音された演奏がこれだ。これも熱いぞ。すっごく充実した密度の濃い演奏だ。ピアノのジョン・ヒックスがいいんだなぁ。


YouTube: YOU'VE GOT TO HAVE FREEDOM @ AFRICA PHAROAH SANDERS

他の人がカヴァーしたものも、いっぱいあるぞ。


YouTube: YOUVE GOTTA HAVE FREEDOM


YouTube: BOOGALOO / YOU GATTA HAVE FREEDOM


YouTube: You've Got To Have Freedom - Courtney Pine ft.Carroll Thompson


YouTube: Dj Cam - You got to have freedom (feat. Inlove)

■今年70歳になるファラオ・サンダースもさすがに寄る年には勝てない。最近の演奏にはかつてのパワーは期待できないが、まだまだ元気だぞ! 動いているファラオを見ることが出来るだけでもうれしいな。以下は、ごく最近の 2009年のライヴ映像。


YouTube: Pharoah Sanders @ Big Chill 2009 pt 3


YouTube: Pharoah Sanders - You Gotta Have Freedom @ Big Chill 2009

■なお、ファラオ・サンダースのCDに関しては、昨年の夏に再来日した時の「HMVでのインタビュー記事」が詳しいです。 iTunes でも、150円で買えます。


YouTube: Pharoah Sanders

■おまけ■ ニコニコ動画にあった「吉幾三 v.s ファラオ・サンダース」あはは! こいつはたまげた。

2010年9月 6日 (月)

外来小児科学会で、福岡に行ってきた(その3)

さてさて、無事ぼくが担当したWSも修了し、ランチョンセミナーは西村先生のオカルト・バクテレミアのはなし。西村先生は、いつも説得力のある講演をするなぁ。感心する。午後は、Meet the Expert #6「21世紀の子育て事情」を聴く。あきやま子どもクリニック院長の秋山千枝子先生の講演に感銘を受ける。すごく示唆に富んだ講演だった。それから「子どもの村・福岡」が誕生した経緯と意義がよく分かったこともよかったな。


土曜日の午後は、本当は総会から会頭講演、特別講演と聴いて、懇親会に出席する予定でいたのだが、日曜日の朝、福岡空港発 7:40 の飛行機に乗るとなると、お土産を買っている時間がない。それはマズい。


というワケで、MTE 終了後に歩いてホテルに戻り、天神の繁華街まで行って、デパ地下で美味しそうな「めんたいこ」を探す。本当は『極楽おいしい二泊三日』さとなお著(文藝春秋)の、215ページに載っていた「きよ味や」の「辛子めんたいこ」が欲しかったのだが、どこにも売っていない。あとで家に帰ってからネットで調べたら「こんなサービス」もあったんじゃん。福岡へはこの MacBookを持参しなかったので、ホテルフロントで「きよ味や」をネット検索してもらったのだが、この日のフロントの兄ちゃん、てんで要領をを得ない人で、検索ダメダメ人間だったのが実に残念だった。


で、仕方なく「岩田屋」で「福さ屋」の「辛子明太子のたたき」廉価版を購入し、クール宅急便で配送してもらうことにした(でもこれは正解で、先日食ったが実に旨かったぞ)。さて、夕食はどうするか? 今日も一人だ。となると、鮨だな。玄界灘の新鮮な魚が食べたい。福岡に来る前に調べた時には、博多駅前のビルの地下に「やま中」があって、ここにしようと考えていたのだが、先ほどの『極楽おいしい二泊三日』を紐解くと、212ページに「吉冨寿し」が載っていた。長浜生鮮市場の近くにある「この店」を、あの「さとなお」さんが絶賛していたのだ。


となると、ここに行ってみるしかないでしょう!
天神繁華街から北に向かって歩いて行き、RKB九州放送局の角を左折して、長浜方面へ延々と歩く。地図によると、この通り沿いの左側、福岡市立少年科学文化会館を通り過ぎて浜の町公園の手前にある。さんざん歩いてちょっと迷い、ようやく「吉冨寿し」を発見。ところが、店のカウンターはお客さんでいっぱいで、無情にも、入り口には「本日は閉店しました」の看板。やはり予約してこなければ無理だったんだなぁ。残念。


伊那に帰ってから、このあたりの地図をもう一度確認してみたら、例の「長浜ラーメン抗争」の3店は、浜の町公園を過ぎたあたりの、この通り沿いにあったのだな。でも、この日は挫けてしまって、そのままUターン。とぼとぼ歩きながらふと見上げると「長浜屋台 一心亭本店」の看板。鮨は諦めて、本場の長浜ラーメンでも食って帰るか、そう決めて店ののれんをくぐった。ひろい店内はすいていて、カウンターにタクシーの運ちゃんが一人。テーブル席には地元の家族連れが2組。客はそれだけ。観光客は一人もいなかった。


生ビールとAセット(ラーメン+餃子)600円を注文。ほどなくラーメンが運ばれてきた。熱々のスープはかなり濃厚な豚骨スープなのだが、変な「けもの臭さ」はまったくない。麺は堅めで好みの歯ごたえ。残念だったのは、高菜は別トッピングメニューになっていて有料だったことだ。紅ショウガは無料だったけどね。ここの長浜ラーメン、ぼくには十分美味かったぞ。替え玉は80円で、家族連れのお父さんは2人とも、替え玉を注文していたな。ぼくは、カロリー・オーバーになってしまうので、ぐっと我慢したが。


中洲まで戻ると、川沿いの屋台では外来小児科学会の懇親会を終えた小児科の先生やスタッフの皆さんが大勢で盛り上がっていた。実はぼくはもう一軒、行くことに決めていた店があった。ジャズ喫茶「リバーサイド」だ。TSUTAYA が入る、Gate's の南側の川沿い2階に、店は確かにあった。うれしかったな。


じつは、30数年前にぼくはこの店を訪れている。学生時代、東京駅から鈍行列車を乗り継いで九州までやって来たことがあった。宿泊はユースホステル。でも、土曜日の夜だけオールナイトの映画館で朝まで眠ることにしていた。あのとき、大分、別府、臼杵と廻って福岡入りしたのは土曜日だった。当時、全国ジャズ喫茶巡り、というのもやっていたので『ジャズ批評・ジャズ日本列島55年版』を見て「リバーサイド」に辿り着いたのだ。記憶では店は2階にあって、ピアノが置かれていた。浅川マキを細くしたような、黒ずくめのママが一人で店にいた。たしか、ビル・エバンズが大きなスピーカーから流れていたな。


深夜まで粘ってから店を出て、結局泊まったのは中洲の映画館。日活ロマンポルノを上映していた。座席は硬いし、場内は異様な雰囲気だし、ぼくはぜんぜん眠れずに朝を迎えたのだった。そんなかんなを、つい昨日のことのように思い出していた。



2010年9月 2日 (木)

外来小児科学会で、福岡に行ってきた(その2)

■20回を迎えた外来小児科学会は、小児科開業医を中心にした学会で、その特色は、医師だけでなく、看護師、事務スタッフ、検査技師、薬剤師、さらには経理担当の院長夫人も参加する学会であることと、学会の中心をワークショップに置いていることにある。今回も、土曜日の午前午後、日曜日の午後と合わせて60以上のワークショップが開かれた。


ぼくが担当したWSは、土曜日の午前9時〜11時45分の時間帯で開かれた「あなたも絵本の読み聞かせに挑戦してみよう!」だ。事前登録の参加者はぼくを含めて21人(医師10人、看護師・受付事務・院長夫人が11人)北は北海道から南は九州、沖縄まで日本各地から参加して下さった。ほんと、ありがとうございました。


当初は、参加者同士で絵本の読み合いをして、経験者が初心者にアドバイスする形式を考えたのだが、大人だけを相手に絵本の読み聞かせをするのは正直かなりシンドイ。反応は悪いし、決して笑ってはくれない。だから、初心者はきっと萎縮してしまって、もう二度と読み聞かせなんかしたくない! そう思ってしまうかもしれない。それはではマズイ。


■ぼくが、自分の子以外の子供たちの前で初めて絵本を読んだのは、忘れもしない平成14年11月のことだった。園医をしている高遠第一保育園で、秋の内科健診が終わったあとに、園長先生に無理矢理お願いして年中組で絵本を読ませてもらったのだ。『さつまのおいも』中川ひろたか・文、村上康成・絵(童心社)と『でんしゃののって』とよたかずひこ(アリス館)の2冊。


もう、大受けだったな。読み終わるなり直ちに「もっかい読んで!」の大合唱となった。「じゃぁ、今日はこれでおしまい。また今度ね」そう言って帰ろうとすると、子供たちがワーっと集まってきて、握手やハイタッチの嵐。そのまま保育園の玄関まで移動。「ゴンズイ玉」ってご存じですか? まさに「あの」感じです。「せんせい! おもしろかったよ」「またきてね!」まるで、アイドル・スターにでもなったみたいな人気だった。うれしかったなぁ。夢のようだった。

あの時の成功体験が、いまのぼくを作っていると言ってもいい。


だから、ぼくらのWSでは是非とも保育園に行って子供たちの前で実際に絵本を読む体験が必要だ、そう思ったのです。そこで、学会会場の福岡国際会議場の近くにある保育園を、まずはネットで検索してみた。そしたら「みなと保育園」があった。幸いHPもあったので、今年の4月30日にメールしてみたのだ。これこれこういう訳でWSを行うのだが、みなと保育園の子供たちの前で絵本の読み聞かせ実践をさせていただけないか、と。そしたら、ラッキーにも園長先生から受け入れOKの返事がきたのだ。有り難かったなぁ。


みなと保育園は、定員60名の福岡市では一番小さな保育園だ。しかも、8月最後の週末だったので、8月28日(土)に登園してきた子供たちは少なかった。全部で25人(1歳児が8人、2〜3歳児が6人、4〜5歳児が10人)くらいだったかな。


■当日は、まずは学会WS会場に集まっていただき、3グループに分かれて(0〜1歳児、2〜3歳児、4〜5歳児)保育園で実際にどう読み聞かせするのか、各グループリーダーを中心に話し合ってもらい、午前9時50分に会場を出て、みんなで歩いてぞろぞろと「みなと保育園」へ移動。午前10時過ぎ〜10:40 まで、各グループごとに分かれて別々に絵本の読み聞かせを実践。


10:40〜11:00 には、年長組の部屋にみんなで集まって、住谷先生が『やさいのおなか』(福音館書店)を、ぼくが『どうぶつサーカスはじまるよ』西村敏雄(福音館書店)を読んで、沖縄県沖縄市で長年読み聞かせ活動を続けてきた石原さんが、縦1メートル、横7メール近くある『おおきなかぶ』の絵本絵巻を実演した。


ぼくは事前のコーディネートと当日の記録係が担当だったのだが、今回もつくづく感じたことは、絵本というものは大人になっても読んでもらうとほんと楽しい。特に子供たちといっしょにいると、彼らの反応に触発されて、知らずと自分も子供時代に戻ってしまったかのように楽しくなるのだ。


保育園をあとに、学会場に戻って各グループごとに反省会とまとめの作業。はたして、参加者のみなさんはどのような感触を得たのだろうか? 楽しんでもらえたらうれしいな。

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