■毎年7月恒例のツール・ド・フランス。3週間の熱戦を繰り広げて今日が最終日。いまパリ・シャンゼリゼの周回コースに入ったところ。今年は最後まで混戦続きで面白かったな。あぁ、今日で終わってしまうのか。
■そんな訳で、ここ3週間はツールTV観戦に忙しくてブログの更新がおろそかになってしまった。すみません。
忘れないうちに、覚え書きとして、先だって7月16日(土)の午後、伊那文化会館小ホールで開催された「子ども・若者支援地域ネットワーク形成のための研修会・第1回公開講座」での、「「子どもたちの脳は疲れている」と題された、「小児慢性疲労症候群」に関する日本における第一人者、兵庫県子供の睡眠と発達医療センター長、三池輝久先生の講演会を聴いてきたことを書いておかねばならない。
「上伊那子どもサポートセンター」代表の戸枝さんから、今回の連続講座開催のことを、この5月下旬にメールと電話でお話をうかがった際、戸枝さんから「最近話題になっている、小児慢性疲労症候群のことについて北原先生に連続講座の中で話して欲しい」との依頼があった。ちょうどその時、ぼくも所属する「外来小児科フリートーク・メーリングリスト」で、三池輝久先生が「小児慢性疲労症候群」の子供たちを治療した報告が話題になっていて、三池先生が提唱する「その疾患」と、われわれ一般小児科医がこの時期(春から夏にかけての)よく遭遇する「起立性調節障害」との異動が、メーリングリストで議論されていたのだった。
だから正にタイムリーな話題であったのだが、専門知識に欠けるぼくには到底「小児慢性疲労症候群」の話はできません、無理です。と、戸枝さんにお断りしたのだった。でも、戸枝さんは凄かった! 「小児慢性疲労症候群」と「小児の睡眠障害」に関するエキスパートの、三池輝久先生に直接講演依頼をし、なんと、三池先生の講演会が伊那市で実現することになってしまったのだから。いやはや驚いた。
■そんな訳で、当日ぼくは外来を午後1時で終了して伊那文化会館へと向かったのだ。
三池輝久先生は大変才気溢れる先生で、頭が良すぎる上に言いたいことがいっぱいありすぎて、われわれ一般的聴衆の理解度の低さを最初から諦めているような感じさえあったが、いやいやどうして、大変示唆に富む面白いご講演であった。
■「人はなぜ眠る必要があるのか?」「睡眠は子供の脳の発達にどう係わっているのか?」 という話から講演は始まった。
・睡眠は子供の脳の発達に必要欠くべからずものだ。睡眠は「脳を創り、育て、そして守っている」のだと。REM睡眠は覚醒を促す。眠っている間に海馬が働き記憶を整理する(長期記憶)。そして、眠っている間にシナプスの点検整備(メインテナンス)が行われている。
・人はなぜ眠る必要があるのか? それは、ヒトの脳内のシナプスを守る3つの重要な働きがあるから。
1)活動している時に使用した、神経伝達物質残渣をクリーンにする(シナプスの清掃とメインテナンス)
2)神経突起からミトコンドリアが細胞内に移動しそこで複製がおこる(エネルギー生産を守る)
3)神経伝達物質の脳幹調節機構やその他の部位での再分配がおこる。(神経伝達物質の供給)
だから、脳が発展途上にある子供たちにとって「睡眠」はとっても大事!
・小学4年生までは、最低10時間の睡眠が必要。
・小学5〜6年生では9時間の睡眠。
・中学生でも、7〜8時間は睡眠が必要。
子供が起床しなければならない時間、そこから逆算して、ベッドに入る時間を決めればよい。例えば、朝6時には起きなければならない中学1年生は、夜10時台には入眠する必要があるということ。
しかし、今の日本の子供たちは、大人の都合でどんどん「夜更かし」となり、「慢性的睡眠不足状態」に陥っているのだった。そうなるとヒトの体はどうなるか?
・ミトコンドリアの機能が低下する
・糖代謝が落ちる → 肥満
・脳幹部にある「視床下部」の機能が落ちる
・そうすると、認知機能が落ちる(集中力・持久力・意欲の低下)
・朝はテンションが上がらず、疲労度は増すばかり。でも夕方になって急に元気がでてくる(別人28号)
・そうなると、逆に10時間以上の過眠状態に逆転してくる
・つまりは、脳内にある「体内時計」が壊れてしまうのだ
・体内時計が壊れると、体温・血圧調節(自律神経機能)が壊れ、
ホルモン分泌バランスが崩れる。
これらの症状が「小児慢性疲労症候群」なのだった。
その結果、朝起きられず、何時しか昼夜逆転した子供たちは不登校となってしまう。
■こうなってしまったら、どうしたらよいか?
このことに関して、三池先生は決してバラ色の話はしなかった。
焦らず、不足した睡眠時間を十分に確保して(平日不足した睡眠時間を土日で補充するなど)、無理せず然るべき時期が来るまで、できる範囲で学業の準備しつつ「じっとチャンスを待つ」その時期とは、高校入学の頃のことが多い。とのことでした。
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