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2014年12月 7日 (日)

佐々木昭一郎『さすらい』と、ピーター・フォンダの『イージーライダー』

■録画しておいたNHKアーカイヴス「佐々木昭一郎特集」を、少しずつ見ている。初めて通しで見た『夢の島少女』は、思いのほかエロくて驚いた。ただ、感想を語るにはもう2〜3回見ないと言葉にできないような気がしている。

こちらも初めて見たのだが『さすらい』(1971)は面白かった。すごく気に入っている。これはいいな。

■常に無表情で淡々とした主人公の青年が北海道の孤児院から上京して来て、渋谷で映画の看板屋に就職する。その後、ふらふらと東北を旅して廻るのだ。いろいろな人たちと出会う。看板描きの職人、歌い手を目指すフォーク青年(友川かずき、遠藤賢司)「いもうと」みたいな中学生の少女(栗田ひろみ)サーカスのブランコ乗り(キグレ・サーカス)アングラ旅芸人一座(はみだし劇場)、氷屋、三沢米軍基地近くに住み、渡米を夢見るジャズ歌手(笠井紀美子)などなど。でも、結局なにも起こらない。

彼はただ、「ここ」ではない「ほか」の場所、「ここ」ではない「ほか」の人を求めて旅に出るのだ。

あぁ、わかるよ。すっごくわかる。だって、俺も「そう」だったから。

オープニング。海岸の画面下から、ふいに青年がひょこっと現れる。なんか変。そこから『遠くへ行きたい』みたいな映像が続く。でも、どことなくユーモラスで、妙に軽い。深刻なようでいてぜんぜん暗くない。不思議な乾いた感触が心地よいのだ。ラストシーン。青年は浜辺に棒を一本立ててから再び夕日が沈む海に戻って行く。見ていてすごく「すがすがしい」ラストだ。

ドラマに何度も挿入されるBGMの影響があるのかもしれない。バーズ「イージーライダーのバラッド」。これだ。

The Byrds / Ballad of Easy Rider
YouTube: The Byrds / Ballad of Easy Rider

JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました(2019/08/06)

■で、ふと思ったのだが「この曲」がエンディングで流れる(こちらは、ロジャー・マッギンのソロ・ヴァージョン)映画『イージーライダー』を、今までちゃんと見たことがなかったんじゃないかと。アメリカン・ニューシネマの傑作なのに、何故か映画館でもビデオでも見た記憶がない。

町山智浩さんの『映画の見方がわかる本』は読んでいたから、この映画の知識はあった。本に書かれた内容は、「町山智浩の映画塾!」予習編・復習編でほぼ語り尽くされている。これだ。

町山智浩の映画塾! イージー・ライダー <予習編> 【WOWOW】#83
YouTube: 町山智浩の映画塾! イージー・ライダー <予習編> 【WOWOW】#83

■で、TSUTAYAに行って借りてきたんだ、ブルーレイ・ディスク。返却日の深夜にようやく見たのだが、いや実に面白かった。それにしても、デニス・ホッパー、若いなあ。1969年の公開作。

スタントマンのピーター・フォンダとデニス・ホッパーの2人組が、メキシコで仕入れたコカインを金持ちのぼんぼんに売りつけ、儲けた金を改造バイクのガソリン・タンクに隠して、LAからニューオーリンズまで気ままなツーリングの旅を続ける。途中、インディアンを妻とした子だくさんの白人や、ヒッピー・コミュニティのリーダー、アル中弁護士(ジャック・ニコルソン)など、いろんな人たちと出会うというお話し。

ラストの、ヘリコプターによる空撮。これ、『夢の島少女』のラストカット。あの、ヘリコプター空撮による驚異的な長回しのヒントになったんじゃないか? 『さすらい』(1971)も、この映画から大きなインスピレーションを受けているように思った。音楽の使い方とか。

ドラマ『紅い花』のオープニングで使われたドノバンといい、佐々木昭一郎は「川の歌」というか「川の流れ」へのこだわりを、ずっと持ち続けた人だったんだなあ。

■渋谷の街中にたびたび登場した、巨大なモノクロの少女のヌード写真。あの少女はやはり、栗田ひろみ本人だ。

『創るということ』佐々木昭一郎(青土社)で、佐々木氏は『さすらい』の主人公「ヒロシ」に関してこんなふうに言っている。

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『さすらい』はヒロシって主人公がよかったね。このヒロシはオートバイをいたずらしているとこ見つけたんだけど、今は静かに実生活者として横浜で生きている。彫金師になって、奥さんもらって。必ず年に一回電話して、ぼくに会いに来るんだ。「どうしてますか」って、世間話して帰っていく。

ヒロシに会うのは救いだね。(中略)

ヒロシも、彼は実生活ではサンダース・ホーム出身なんだ。で、ハーフでどこかに捨てられてひきとられて、セント・ジョセフっていう横浜の学校に通って、英語が非常に達者でね、日本語もよくできて、学習能力も抜群で、感性がそういうわけだから周囲がなんとなく違うなってことを感じながら生きてるんだ。

ぼくらにはそんなこと言わないけれど、だから孤独っていうのも顔によく出てたし、少年期特有の反抗心も、その反対の優しさも出てたしね。(『創るということ』p117〜p120)

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あ、渋谷道玄坂、百軒店の入り口だ。右手に「道頓堀劇場」。成人映画の看板を運ぶ2人。ずいぶんと昔の渋谷。佐々木昭一郎『さすらい』を見ている。



2014年10月13日 (月)

伝説の佐々木昭一郎が還ってきた。

■以前、松尾スズキ氏の初期エッセイを集中的に読んで感想を書いたことがあった。

師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その1)

師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その2)

師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その3)

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(その2)にある、松尾氏が「那智チャコ・パック」の常連投稿者であったというくだり。本人自身が書いた文章を見つけた。『永遠の10分遅刻』松尾スズキ(ロッキング・オン)138ページ「私の文章ルーツ、私の演劇ルーツ ---- 松尾少年と野沢那智」(初出不明)だ。以下引用。

 もう二十年になりましょうか。

 私だって子供だった時期がありまして。

 野沢那智の声のファンだったんですね私は。そう、子供の頃から「声」というものに興味があったんです。(中略)

 さて、その野沢那智が同じく声優の白石冬美と一緒にやっていた『パック・イン・ミュージック』という深夜の人気ラジオ番組に、中学高校と私はせっせと手紙を投稿しておったのです。葉書ではなく手紙です。

何しろその番組はリスナーのお便りをおもしろければ10分でも20分でも、野沢那智がいろんな声色で読み続けてくれるというもので、だから葉書では当然分量が足りないということで、レポート用紙にボールペンでびっしり5、6枚。私は「北九州の黒タイツ」というペンネームで随分読んでもらったものでした。

足が毛深いから黒タイツ。ラジオの前に齧り付き、大ファンである声の達人に10分も自分の作品を読んでもらっている時間、それはまさに至福の時でした。

読んでもらったのは、泥酔して他人のうちの庭で寝込んだ兄の話、毛深さに悩んで脱毛ワックスを使った話、エトセトラ。うれしかったな本当に。

漫画家になるのを夢見てデザインの学校に行き、絵の勉強こそすれ、小説も大して読まなかった私が何で今文筆の仕事を生業にできているのか、考えてみるとティーンエイジャーの頃、私はラジオで自然と文章修行をしていたのかもしれません。一月に一本は書いていましたから。

(中略)

 野沢那智は今はなき「薔薇座」の座長でした。で、当然芝居に関するエピソードが中心になってくると。それらは、今思うと赤面したくなるほどマバユイものでしたが、九州の田舎町で育ち文化的情報にもうとかった私の演劇への興味は、実はそんなところから育まれていったものだったのです。(中略)

*野沢那智さんはよく三茶で見かけるんだけど、どーしても声かけられないんだよね。恐れ多くて。みなさんにもいるでしょ。そんな人。

『永遠の10分遅刻』p138〜141

(追記)ところで、「この本」のラストに収録された、NHKラジオドラマ『祈りきれない夜の歌』の脚本を読んだのだが、たまげてしまった。松尾スズキって、天才なんじゃないか? 以下、今朝(2014/10/16)のツイートから。

松尾スズキ『永遠の10分遅刻』(ロッキング・オン)より、NHKラジオドラマ脚本『祈りきれない夜の歌』を読む。ラストで異様な感動を覚えた。これは凄いな。障碍児の出てくる話では『時には懺悔を』打海文三(角川文庫)に匹敵するデキだ。ネットでドラマ版も聴いた。ほぼそのまま放送されたんだ。

続き)『祈りきれない夜の歌』は、先月NHKで再放送のあった『君が僕の息子について教えてくれたこと』(11月24日午前10時から NHK総合で再々放送予定)に登場した『自閉症の僕が跳びはねる理由』を書いた東田直樹君とも密接に通じるものがある。

「このラジオドラマ」は、2001年3月3日に放送された。NHK名古屋放送局の制作。「ニコ動」にファイルがあって、ネット上でいまも聴くことができる。

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■佐々木昭一郎・著『創るということ』【増補新版】が、平安堂書店の新刊コーナーにあったので、びっくりして即購入した。2種類の旧版は以前から読んでみたかったのだが図書館にはなく、古本でも高値が付いていて入手困難だったのだ。

佐々木昭一郎氏も、最初はNHKで「ラジオドラマ」を作って認められた人だ。

■これも以前に書いたものだけれど、是枝裕和監督が、佐々木昭一郎の映像を初めて見た時のはなし。

『物語論 17人の創作者が語る物語が紡がれていく過程』木村俊介(講談社現代新書)に載っていた「是枝裕和」インタビュー(2012/12/30)

『紅い花』つげ義春・原作、佐々木昭一郎・演出(2013/01/06)

Respect 佐々木昭一郎
YouTube: Respect 佐々木昭一郎

■その、伝説の佐々木昭一郎が還ってきた。

20年ぶりの新作『ミンヨン 倍音の法則』が、先週土曜日から「岩波ホール」で公開されているのだ。

さらには、11月には「NHKBSプレミアム」で、佐々木昭一郎初期の代表作が一挙放送される! これは必見! 必録画だ。

「詳細パンフレット」 

■検索していたら、「日曜日はテレビを消せ」の「佐々木昭一郎アーカイブス」を見つけた。リンクが切れてしまっているものもあるが、これはすごく貴重な資料集だ。

それから、ホッタタカシさんのブログ「スローリィ・ステップの怠惰な冒険」の

佐々木昭一郎のテレビドラマ全作品解題・そして新作『ミンヨン 倍音の法則』 が、すばらしい。ものすごく力が入っている。

2014年7月19日 (土)

テレビドラマ『おやじの背中』(第一話)と『55歳のハローライフ』(最終話)

■日曜日の夜9時。そのむかし、TBSテレビは「東芝日曜劇場」というタイトルで単発ドラマを放映していた。池内淳子主演の「女と味噌汁」(平岩弓枝脚本、石井ふく子プロデューサー)はシリーズ化されていたし、北海道放送が製作した大滝秀治主演のドラマ(脚本は倉本聰)は出色の出来だったなぁ。

この時間枠は、最近『半沢直樹』で一気に注目を集めたワケだが、「半沢2」的ドラマ『ルーズベルトゲーム』が終わった後を受けて、10人の人気実力脚本家が「おやじの背中」というテーマで「単発ドラマ」を競作することになった。

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■その「第一話」が、この間の日曜日に放送された。脚本は、『最後から二番目の恋』『ちゅらさん』『おひさま』『泣くな、はらちゃん』を書いた、岡田惠和。主演は、父親役に「田村正和」。その娘に「松たか子」という布陣だ。

いやぁ、よかった。泣いてしまったよ。これは明らかに 小津安二郎監督『晩春』のリメイクを狙ったドラマだな。しかも田村正和と松たか子という役者を得て、あの笠智衆と結核と戦争で嫁に行き遅れた原節子の、品のある、不思議な距離感の父娘が、リアリティのある現代の父娘として、確かな説得力をもって見事に再生されていた。

『東京物語のリメイクならまず見る気がしないが、まさか『晩春』で来るとは。しかも大成功ではないか。うちは息子二人だから判らないけど、結局は娘を持つ父親の理想というか「叶わぬ願望」なんだろうな。

いや、驚いた。恐るべし! 岡田惠和

■ドラマのロケも北鎌倉で行われたのかと思ったら、なんと国分寺なんだって。武蔵野にはこんな景色が残っていたのか。

あと、松たか子と言えば「歌うシーン」だ。彼女が主演したミュージカル『もっと泣いてよフラッパー』は、松本市民芸術館まで観に行ってきたし、もちろん『アナ雪』も見たよ。

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■単発ドラマといえば、先週土曜日のよるNHKで『55歳からのハローライフ』(第5話)を見たんだ。これがまた本当に良かった。「イッセー尾形」主演。共演が「火野正平」。こちらには、アメリカ映画『真夜中のカーボーイ』を彷彿とさせるシーンがあった。やはり、泣いてしまった。最近めっきり涙腺が弱くなってしまったのだよ。

火野正平は、毎朝BSの『花子とアン』の後、7:45から自転車に乗っている姿を見慣れているので、山谷の簡易宿泊所で逆光のなか咳き込みながら座っている姿が、本物のホームレスそのものといった迫力の佇まいで圧倒された。その後登場する山谷「城北労働・福祉センター?」もリアルだったな。どうやって撮ったんだろう。

 

2014年3月 3日 (月)

NHK特集ドラマ『ラジオ』を見た

■昨日の土曜日の午後2時から、NHKBS2で、ドラマ『ラジオ』ノーカット版の再放送があった。ハードディスクに録画した地上波放送の「短縮版」もあわせると、今回で4回目の視聴になる。4度目でも、ぜんぜん飽きない。むしろ、ファーストシーンから「あのラスト」を思い浮かべてウルウルしてしまっている。

   < ドラマ「ラジオ」をご覧になった皆さんへ >

ロング・バージョンと「通常版」との違いが実はよく分からなかったのだが、今回見て「各シーン」がちょっとずつ長くなっていることと、「某ちゃん」と名付けて津波に流されて死んだ同級生の墓参りのシーンが追加されていることが分かった。

前回「通常版」を見て、ロング・バージョンよりも見ていて緊張感が維持でき、やっぱり「こっち」の方がいいかなって思ったのだが、今回「ロング・バージョン」を再度見て思ったことは、「こっち(ロング)」の方が、サイドメン(脇役)に焦点が当たっていて、彼らの気持ちに丁寧に寄り添っていることが見て判った。

例えば、某ちゃんの母親と父親。某ちゃんが自分の二本足で立って前に進もうと決意した日の港でのシーン。それから、夜の仮設住宅の前で凍えながら娘の帰りを待つ母親と、家の中で一人勝手にヨーグルトを貪り食っている父親。この場面は、89分版のほうが見ていてリアルにぐっときた。人間は、どんなに大変な状況においても、メシ食ってクソたれる日常を生きて行かねばならない、という人間の宿命。

そして、なんでもない日々の家族の営みの繰り返しが、実は掛け替えのない「幸せ」なのだということを、画面を見て瞬時に感じることができたからだ。

あと、ラジオ局のディレクター新井浩文と、安藤サクラの佇まいが、ロング版の方がずっとぐっとくるのだよ。あと、高校生DJの同僚、夏居瑠奈の心境も今回初めてよーく分かった。リリー・フランキーは、どっちのヴァージョンでも絶対的にいい! この人の存在感は半端ないね。

新井浩文は、阿部寛の『ゴーイング・マイ・ホーム』に出ていて、それから、安藤サクラといっしょに、NHKのドラマ『書店員ミチルの身の上話にも出ていた。どちらの番組も、制作は「テレビマンユニオン」これ重要。『ゴーイング・マイ・ホーム』を撮った是枝監督も、テレビマンユニオンの出身。

■「ラジオ」って媒体、いいよね。「いま・ここ」でオンエアーされた「音」が確かに伝わって、リスナーの耳に届く。その「音」は、音楽であり言葉でもある。

ところが、ブログやSNSは「文字」でしか伝わらない。そこでは、相手の体温、表情は感じられないから、いくらでも勝手に「誤読」が可能だ。(まだ続く)

(続き)

■ドラマ『ラジオ』の魅力は、実在する「某ちゃん」が実際にブログに書いた文章の切実さと、それを何度も現地(女川)に通って、地元の人たちと交流を重ねた中から脚本を書き上げた一色伸幸氏の力量、そして、某ちゃんを演じた「刈谷友衣子」の飾らないごく自然な演技の3つに集約される。

しかし、ぼくが一番に注目したのは、師匠「佐々木昭一郎」の演出とカメラが、確かに「そこ」にあったことだ。プロの役者さえも、素人が自然に振る舞っているかのごとく見せる、佐々木マジック!

「某ちゃん」のブログを現在は見ることができない。

ドラマを「ほぼ完璧に文章化したサイト」があった。ここ、読んでみてください。

■あと、忘れてならないのが「音楽」!

ドラマで流れた楽曲はすべて「某ちゃん」の選曲なのだそうだ。

しょっぱなで流れる、スターリン『負け犬』は衝撃的だった。

負け犬 / THE STALIN
YouTube: 負け犬 / THE STALIN

そして、

THEイナズマ戦隊 応援歌
YouTube: THEイナズマ戦隊 応援歌


http://ameblo.jp/pikataa3/entry-11498729596.html


2013年9月18日 (水)

『あまちゃん』の夏が終わろうとしている。

■大阪のFMラジオ「FM80.2 BINTAN GARDEN あまちゃん特番」前編・後編で放送された、宮藤官九郎ロング・インタビューが聴き所満載で、ちょっと驚く。クドカン、よく喋るなぁ。YouTube にアップされた前編、後編それぞれの後半30分が宮藤官九郎のインタビューに割かれている。

 

なお、前編では「ピエール瀧」が、後編では「マキタスポーツ」が、出演者としてコメントしていて、これまたなかなかに面白い。

あまちゃん 特番 FM80.2 BINTAN GARDEN 前編 あまちゃんナイト~おら、このままじゃ終われねぇ!じぇじぇじぇギョギョギョな1時間!
YouTube: あまちゃん 特番 FM80.2 BINTAN GARDEN 前編 あまちゃんナイト~おら、このままじゃ終われねぇ!じぇじぇじぇギョギョギョな1時間!

あまちゃん 特番 FM80.2 BINTAN GARDEN 後編 あまちゃんナイト~おら、このままじゃ終われねぇ!じぇじぇじぇギョギョギョな1時間!
YouTube: あまちゃん 特番 FM80.2 BINTAN GARDEN 後編 あまちゃんナイト~おら、このままじゃ終われねぇ!じぇじぇじぇギョギョギョな1時間!

■『TV Bros. / 9.14〜9.27』の、「あまちゃん」総力特集! の力の入り方が尋常じゃない。読みどころ満載だ。

 

Photo

 

 

見開き4ページに渡って載っている、大友良英&細馬宏通・対談【音楽から考える「あまちゃん」と、「あまちゃん」から考える音楽。】が、何と言っても一番の注目記事だが、こちらの「オリジナル音源」を「大友良英 JAMJAMラジオ」で聴くことができる。

 

細馬宏通さんのブログで、少し前に書かれていたことに、『TV Bros.』に載った、井上剛チーフディレクター・インタビューの後半に出てくる、1シーン撮るのにカメラ5台を同時に回して、さらにカメラ・ポジションを変えて同じシーンを撮るという話。

 

今週火曜日の「腹黒ユイちゃん完全復活のシーン」は、なるほどそうやって撮ってるからテンポよく、ビビッドに視聴者に伝わるんだ! と、しみじみ思った。

 

それにしても、この回の「あまちゃん」はよかったなぁ。本放送4回(BSで2回、地上波で2回)と、録画で2回(息子たちといっしょに)見た。そうそう、ここ。ここがよかったなぁ。ストーブさんと勉さんが、じつにいい仕事をしている。

 

「やりたいよ!……やんないよ!でもやんないよ」「やりなよ」「やればいいのに」「やんないよ」「やれよ!」「やるよ!」「やったーーー!」

2013年6月23日 (日)

その後の『あまちゃん』について考える(その2)

■このTVドラマ評論家で女性作家の山下柚実さんの「あまちゃん評」

『カーネーション』では岸和田商店街と近所の人々の暮らしぶりが丁寧に描かれていたのに、『あまちゃん』では北三陸市の街並みや生活感がないっていう。でも、何か違うんじゃない?


■基本、朝ドラはスタジオ収録される。ただ『カーネーション』の時は、同時期に松下幸之助のドラマとかも収録されていて、京都のオープンセットが例外的に贅沢に使用できたのだ。

いつもの朝ドラでは、ヒロインと周辺の登場人物たちが「常に集う場所」が必ず設定されている。『ちりとてちん』で言えば、キム兄ぃの『寝床』だし、『純情きらり』なら、あのアパートの集会室だ。

そして『あまちゃん』では、北鉄駅構内の喫茶&スナック「リアス」が正に「そこ」なワケね。東京編での「そこ」は、松尾スズキがマスターを演じる喫茶店と、『おひさま』で軍事教練担当の代用教員を熱演したピエール瀧が『ど根性ガエル』の梅さんみたいな寿司屋の大将で登場するのだが、その寿司屋が「そこ」となることは間違いない。


■そういうことなんかを思い出してたら、宮藤官九郎が「過去の朝ドラ」を研究し尽くしていることにふと気づいて驚く。

「へたれ」のヒロインが、勢いだけで家族と離れて福井の田舎から上京(上阪)し、偶然出会った師匠の元で兄弟弟子とともに落語家修業に励むのが『ちりとてちん』だった訳だが、『あまちゃん』も基本構造は同じだ。

「おかあさんみたいになりたくないの!」そう捨てゼリフを残して大阪行きの列車に乗るヒロイン。車窓からふと外を見ると、母親(和久井映見)が屋外カラオケ大会で、五木ひろしの『ふるさと』を熱唱している。

その後ろ。河の土手を、叔父さんの小次郎(京本政樹)が大きな大漁旗を振ってヒロインを見送っている。今日の『あまちゃん』を3回見た後になって、そのシーンをようやく思い出したよ。いや、パクリだとか批難したいんじゃないんだ。

じつに上手いこと、王道路線を踏襲しているなと、感心するのだった。


■能年玲奈の魅力に関しては、『東京ポッド許可局』(売れない文系芸人、マキタ・スポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの3人が、毎週土曜日の未明4時〜5時に TBSラジオで放送している深夜トーク番組)の「5月11日放送『あまちゃん論』」が面白かった。(テキスト化したもの

なるほど、そういうことなのか、「萌えの意味」。あと、朝ドラにおける戦争と方言の必然性。


サンキュータツオが言ってるように、能年玲奈って、2次元的(アニメ的)アイドルなんだな。細田守監督作品のアニメ映画のヒロインが実写で登場したみたいな感じなんだ。性的な匂いが全くしない。


■ぼくは個人的には、橋本愛だって「2次元的アイドル」としてまずは想起した。ただ、アニメじゃなくて、つげ義春の『沼』という漫画に登場する、浴衣姿の少女だ。神秘的でセクシャルな匂いに包まれた不思議な美少女を。
能年玲奈とは正反対の印象。面白いなぁ『あまちゃん』。


先日の6月22日に放送された『東京ポッド許可局』「あまちゃん論 その後」 を、さっそく聴いてみたのだが、期待が大きすぎたためか、ちょっとイマイチな内容だったな。


追伸:『STUDIO VOICE』の成馬零一氏による「あまちゃん前半総括」は、なかなかに深い読みで感心するなあ。

2013年6月20日 (木)

その後の『あまちゃん』について考える

■今日の『あまちゃん』は、泣いた。4回見て、4回泣いた。

もちろん、時刻表示のない「夜あま」は録画してある。
小泉今日子。凄い! 宮本信子。流石だ!
今日がドラマ前半の一番の山場であることは間違いない。


ツイッターで教えてもらった、日本経済新聞 2012/04/02 の記事「『なんてったってアイドル』を歌うのは嫌でした。 小泉今日子 30年の軌跡」 を読むと、今日の彼女の演技の意味がよくわかる。これは必読の特集記事だな。


■ここ最近、テレビドラマを見る時は、ツイッターを併用するのが慣わしだ。映画評論家の町山智弘氏がラジオで言ってたけれど、子供の頃は、すごく楽しみにしてるテレビ番組があって、その番組のことばかり考えて幸せだったな。1週間が待ち遠しくてたまらなかった。

町山:子供の頃の『今日はあのテレビがあるから家に帰ろう!』みたいなね。で、翌日学校に行くとみんなそのテレビの話をするっていうの、あるじゃないですか。『昨日見た?』みたいな。あれがね、久々にこの岩手県を舞台にしたNHKの海女さんを主人公にしたドラマではね、そういう興奮が蘇ってくるんです。


ほんと、そのとおりだ。だから、今日の『あまちゃん』見た? 面白かったね! あれ、どういう意味? って、語り合いたくなるんだな。まぁ、家族で盛り上がってもいいのだが、あの頃より子供たちも大きくなり、何故か気恥ずかしくて『ちりとてちん』の時のような家族一丸となっての興奮は残念ながらない。

だから「ツイッター」だ。

さっきも、宮藤官九郎さんが、日記で最終話(第156話)を脱稿した。と書いているという情報が入った。とにかく、ツイッターには最新情報、面白情報、有益な情報が次々とアップされる。ネタバレの恐れはあるけどね。


■岩手県知事が毎日『あまちゃん』ツイートしていることは有名だ。先日、知事がつぶやいていたのだが、検索するとき「#あまちゃん」と、単に「あまちゃん」とでは、つぶやかれている内容が確かに異なる。なるほど、面白いなぁ。

ただ、この両方をフォローしようとすると、最近の『あまちゃん』人気で、あれよあれよと発言が増えて、すぐに 100、200の未読発言がアップされ、とてもとても読み切れないし、玉石混交(ほとんどは屑)のツイートの中から「これは!」というツイートを見つけることが、最近は容易ではなくなってきた。困ったものだ。


■しかし、最近ツイッター上で話題になっている「プロの漫画家による『あまちゃん絵』饗宴」とかは、『ゲゲゲの女房』の時にすでに盛り上がっていたし、「朝イチ」での、有働アナとイノッチの受けは『カーネーション』『純と愛』でもやっていた。ただし、当時は遠慮して、隔日とか、週3回までとか自制していたけれど。

それから、お昼の再放送が終わった後の、午後1時のニュースで、高瀬アナウンサーは絶対「見ている!」「いや、見てない」という論争は、『ちりとてちん』の頃からあった。

確かあれは、朝の8時半からのニュース(『朝イチ』はまだ放送されていなかったのだ)だったか、電車での痴漢騒動で消えた「森本アナ」が、ニュースを読む前に冒頭で『ちりとてちん』最終回をお楽しみに! と言って、すっごく話題になったことがあったのだ。(もう少し続く)

2013年5月11日 (土)

『あまちゃん』の感想を書いてみる(その2)

  大切なことは、あえてクドカンは「朝ドラ」の定石に則ってドラマを書いていることだ。頑固な祖母と一途な孫娘。孫娘はいきなり海へ落とされる。これは『てっぱん』を踏襲している。富司純子のおばあちゃんも良かったが、『ちりとてちん』の江波杏子も凛として格好良かったな。

 

 貫地谷しほり演じる、愚図でダメダメな冴えないヒロイン和田喜代美(B子)と対極にあるクラスメイトでライバルの和田きよみ(A子)佐藤めぐみの存在。これは『カーネーション』での尾野真千子と栗山千明に引き継がれ、今回は天然キャラの能年玲奈に対して、クールな美少女、橋本愛を配した訳だ。つげ義春の漫画に登場するキクチサヨコ(紅い花)や、コバヤシチヨジ(もっきり屋の少女)を彷彿とさせる橋本愛は、まさに正統派美少女だ。

 

 ヒロインのライバル栗山千明も佐藤めぐみも、ドラマでは奈落の底まで落ちて行くのはお約束だったし、天野アキ(能年玲奈)の母親、天野春子(小泉今日子)が、足立ユイ(橋本愛)に対して心配するのもその点だ。夢を抱いて田舎から上京したアイドル志望の少女が、芸能界に蠢くハイエナのような男どもの餌食となってお払い箱となり、心身共にボロボロとなって田舎へ帰る。そういう展開が見え見えだからだ。

 

  しかし、予想に反して「現実の」橋本愛は高校生(17歳)にしてめちゃくちゃ「したたか」だった。有名になるためなら、男もスキャンダルも芸の肥やしにしてやろうじゃないかという確かな覚悟がある。たいしたものだ。実際にそうなのだから、ドラマでも予想外の展開を期待してるぞ。

 

  その橋本愛に気があるのが、ヒロインの先輩で爽やか好感青年役の仮面ライダー・イケメン男優の福士蒼汰。「自分(ずぶん)は……」と訛る素朴さとのギャップが新鮮だ。  

 

Amachan


 一方、先輩に片思いのヒロイン能年玲奈は、母親が高校時代を過ごした1984年で時間が止まったままの子供部屋で、YMOの『君に胸キュン』を聴きながら、瞳をキラキラさせて「キュン!」と言うシーンがめちゃくちゃ可愛い。

 

 

 このドラマのもう一つのポイントが、1984年だ。三陸鉄道「北リアス線」が開業し、ヒロインの母親(高校生時代の小泉今日子役・有村架純)が家出した年。ジョージ・オーウェルや村上春樹が、小説のタイトルにした年。

ぼくが医学部を卒業したのが1983年だったから、あの頃はやっぱり松田聖子だな。『赤いスイートピー』がヒットした後、サントリーのビールのCMでペンギンが『スイート・メモリーズ』を唱っていた。

 

 


 

 ドラマでは小道具にもこだわりがあって、館ひろし(『純と愛』にホテル社長として出ていた)のグラビアが載っている月刊誌は『明星』ではなく『明凡』だし、橋本愛が「誰?これ」と言った雑誌『POMB!』(「BOMB!」でなく)の表紙は、シブがき隊の布川敏和と結婚した「つちやかおり」だった。つい先日は、斉藤由貴のデビュー曲『卒業』が当時の映像で流れた。もうたまらなく懐かしい。いま4050代のオジサン、オバサンの心を鷲づかみだ。

 


 そうして、当時のアイドル最高峰といえば、なんてったって「小泉今日子」なのだった。『ヤマトナデシコ七変化』は今でも持っている。その小泉今日子も、なんと今年47歳になった。ドラマでは変に無理して若作りせず、わざと顔に影が出来るライティングに素顔に近いメイクで臨んでいる。当初は正直あまりのギャップに違和感があった。しかし、回が進むごとに熟年・小泉今日子の魅力がじわじわとアップしてきているのを感じる。女優魂。いや、アイドル魂か。演技にも凄味が出てきた。今後の彼女が実に楽しみだ。


 脇を固める助演人にも触れなければなるまい。海女軍団の面々では、渡辺えり(劇団3○○主宰、山形県出身)のとぼけた演技が最高に可笑しい。あんべちゃん・片桐はいり(ブリキの自発団、東京出身)もよかった。宇都宮へ行ってしまって淋しいぞ。さらに、木野花(劇団青い鳥、青森県出身)、美保純(にっかつ、静岡出身)とベテラン芸達者が並ぶ。吹越満(WAHAHA本舗、青森県出身)、荒川良々(大人計画、佐賀県出身)、皆川猿時(大人計画、福島県出身)など、東北出身や小劇場出身の役者さんが多いのもポイントだ。


 音楽は、福島高校卒でフリージャズ・ギター奏者&ノイズ・ミュージック作曲家の大友良英。宮藤官九郎も宮城県出身。つまり『あまちゃん』には東北人パワーが結集しているのだった。

 

 ドラマの後半は、ヒロインが東京へ出て来て「AKB48」みたいな、地元ローカル・アイドル寄せ集め集団「GMT47」に入り、

いよいよ芸能界デビューするらしい。それはドラマ上での来年(2009年)の話。


ということは、その2年後には 3.11. がやってくる。

クドカンは、いったいどうするんだろう? ちょっと不安。

2013年5月 8日 (水)

NHK朝ドラ『あまちゃん』の魅力を書いてみる

 

「なんてったってアイドル」

 

          北原文徳

 

 

 

 

 巻頭言に相応しい話題がどうしても思いつかないので、いま一番注目している、NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の魅力について、その熱い思いを書く。

 『あまちゃん』はイイ! とにかく面白い。明るい。そして、ヒロインがもうめちゃくちゃ可愛い。毎朝たった15分間に凝縮された中で、思い切り笑って泣いて癒されて、今日も一日がんばろう!って気持ちにさせられる。あの、ブガチャカ、ブガチャカいうテーマ曲が流れると、元気を満タンにしてもらえるのだ。やっぱり「朝ドラ」はこうでなくちゃいけない。


 思い起こせば『純と愛』は酷かった。最終回に視聴率40%を越えた話題のドラマ『家政婦のミタ』の脚本家、遊川和彦が「アンチ朝ドラ」を旗印に、うざいヒロインが次々と不幸な事態に遭遇するという救いのない話を書いた。最終回まで我慢して見続けたが、最近 YouTube にアップされた「1分で振り返る朝ドラ『純と愛』」以上の内容は何もなかった。

「ポスト 3.11」を過分に意識したドラマとして、人間はそれでも生きてゆく必然を説いたつもりかもしれないが、毎朝NHKの朝ドラで見せられる作品ではない。誰かがツイッターで「森下愛子が気の毒だ」と言っていたが、ほんとそう思うぞ。妻が長期沖縄ロケで不在のため、ちょっと元気のなかった吉田拓郎も気の毒だったな。


 「朝ドラ」の王道は、明治・大正・昭和・平成と、時代の波に翻弄されながらも、どっこい生き抜いた女性の一代記に尽きる。傑作『カーネーション』が正にそれだった。『おひさま』は、前半の戦前編までは良かったのだが、3.11 の影響で後半の戦後編が絵空事になってしまったのが残念だったな。現代ものの傑作は、何と言っても『ちりとてちん』。朝見て、昼見て、夜また見て、録画してもう一度見て。そこまで入り込んだのは『ちりとてちん』が初めてだ。脚本は、大河ドラマ『平清盛』を書いて視聴率で転けた、藤本有紀だった。


 ところで、『あまちゃん』の脚本家は宮藤官九郎だ。松尾スズキが主宰する劇団「大人計画」メンバーで、「TOKIO」長瀬智也の役者としての方向性を決定づけた『タイガー&ドラゴン』、『うぬぼれ刑事』の脚本を手がけた。長瀬君は、岡田惠和が書いた『泣くな、はらちゃん』で最高の演技を見せることになるのだが、それはまた別のはなし。


 脚本家クドカンが書いた知られざる傑作に、TBSで午後1時から30分間帯で放送された昼ドラ『我が輩は主婦である』がある。あの夏目漱石が斉藤由貴演じる現代の平凡な主婦の身体に乗り移るという荒唐無稽なホームドラマ。これが面白かった。「昼ドラ」の縛りはきつい。それを難なくこなした宮藤官九郎の次なるチャレンジが、NHK朝ドラだった訳だ。(つづく)

2013年1月13日 (日)

佐々木昭一郎をリスペクトする映画監督たち


YouTube: 映像の詩人 佐々木昭一郎 (1/2)


YouTube: 映像の詩人 佐々木昭一郎 (2/2)


■この映像は、日本映画専門チャンネルが 2006年6月に「佐々木昭一郎の全作品」を集中放送した時に制作された特別番組だ。この時はまだCSを見る環境になかったので、こんな特集が組まれていたとはちっとも知らなかった。

今は「日本映画専門チャンネル」を受信できるから、なんとかもう一度「佐々木昭一郎特集」を企画してもらえないだろうか。ぜひとも。


■ところで、この『映像の詩人・佐々木昭一郎』には、彼をリスペクトする若手映画監督のインタビューが出てくる。塚本晋也、河瀬直美、是枝裕和の3人だ。インタビューの時間は短いが、どれほど衝撃を受けたかがよく分かって面白い。


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