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2015年12月

2015年12月30日 (水)

『ポップスで精神医学:大衆音楽を”診る”ための18の断章』(日本評論社)山登敬之、斉藤環、松本俊彦、井上祐紀、井原裕、春日武彦

「この本」は面白かったな。さすが手練れの文章家揃いで、一気に読まされてしまったよ。

もちろん、勉強にもなる。それに、信じられないような「花形人気精神科医夢の共演企画」であり、それがピタリと決まって、予想以上に執筆者たちがお互いに対抗意識丸出しで、みな結構本気の真剣勝負に挑んでいるのだ。手を抜いて軽くいなしたような文章が一つもないことに驚く。

山登敬之氏の「はしがき」によると、この本は『こころの科学』164〜181号に連載された、6人の精神科医による「この病、この一曲 --- 大衆音楽を“診る”ための18の断章 」を編み直し、一冊にまとめたもので、

企画の趣旨は、精神科医は自分のこだわりのある病気をひとつ選び、同時にそれを語る際のテーマとなる一曲を選んで思いの丈をぶつけてみようというもの。

内容的には、斎藤環の言葉を借りていうと、「精神疾患の隠喩として大衆音楽をサンプルに」とる手法を用い、ふだん馴染みの薄い精神科の病気を一般向けに解説しようと考えた

のだそうだ。いやぁ、これは「企画」の勝利だね。

【山登敬之】

・『天才バカボンアニメ主題歌 →「発達障害」

・『少女』五輪真弓 →「摂食障害」

・『DESIRE --情熱 --』中持明菜 →「性同一性障害」

【斎藤環】

・『トランジスタラジオ』RCサクセション(忌野清志郎)→「中心気質者」

・『失恋記念日』石野真子 →「解離(離人症)」

・『友達なんていらない死ね』神聖かまってちゃん →「いじめ」

【松本俊彦】

・『ステップUP↑』岡村靖幸 →「薬物依存」

・『ま、いいや』クレイジー・ケン・バンド →「うつ病・自殺予防」

・『サヨナラ COLOR』スーパー・バター・ドック →「アルコール依存症」

【井上祐紀】

・『タンゴむりすんな!』TVドラマ「あばれはっちゃく」主題歌→「ADHD」

・『Get Wild』TM NETWORK(小室哲哉)→「乳児のこころの安全基地」

・『Something Jobim 〜光る道〜』祐生カオル →「PTSD/ネガティブ体験」

【井原裕】

・『遠野物語』あんべ光俊 →「対象喪失後も人生は続く」

・『ANAK(息子)』杉田二郎 →「マザコン:親不孝息子から母へ」

・『風』はしだのりひことシューベルツ →「北山修を定義する」

【春日武彦】

・『昆虫ロック』ゆらゆら帝国 →「統合失調症」

・『ケッペキにいさん』吉田美奈子 →「強迫症状」

・『逃ガサナイ』あざらし →「ストーカー」

■さすが「あまのじゃく」な春日武彦氏だ。氏が選んだ「3曲」は、すべて聴いたことがなかった。取り上げられた18曲のうち、聴いたことがあるのは10曲。多いのか少ないのか、よく分からないけれど。

でも、便利な時代になったもので、聴いたことのない曲も、本を読みながら「YouTube」で検索して聴くことができた。斎藤環氏オススメの「神聖かまってちゃん」。名前は知っていたが、ちゃんと聴いたのは初めて。衝撃的だった。ただし、春日武彦氏が選んだ『逃ガサナイ』あざらし だけは、どうしても見つからなかった(^^;; 「ケッペキにいさん」も、吉田美奈子のオリジナルじゃなくて、サーカスのヴァージョン。それにしても「いい曲」じゃないか! 大瀧詠一&細野晴臣の楽曲を彷彿とさせる名曲だ。


YouTube: CIRCUS Keppeki Niisan


ちょっと興味深いことは、これらの文章が「どういう順番で」連載されたのか? ということだ。

この本では、前掲の【もくじ】のように同じ著者ごとに載っているが、連載時は6人が順番で執筆していったはずだ。『こころの科学』は定期購読していないので、連載時の同誌で僕が持っているのは2冊のみ。166号「赤ちゃんの精神保健」と、170号「いじめ再考」だ。見てみると、前者(連載第3回)には松本先生の「岡村靖幸」が、後者(連載第7回)には山登先生の「少女:五輪真弓」が載っていた。

ということは、やはり本に収録された順番で執筆されたのか?

ただ、読みながら思ったことは、6人の執筆者がお互いの文章に影響されて、更なる「一篇」を編み出していることが手に取るように感じられたのだ。こういうのって、今までありそうでなかったよなぁ。

■巻頭が『天才バカボン』とは、山登先生の初球変化球攻めにほくそ笑む。五輪真弓『少女』は想定内だったけれど、新宿二丁目の「おかま」たちが、中森明菜『デザイアー』(ぼくの大好きな曲だ!)と結びつくとは思いも寄らなかった。恐れ入りました。

驚いたのは、斎藤環先生の「忌野清志郎愛」だ。いつも冷静な氏からは想像も出来ないような直球ど真ん中の熱い文章だった。そしたら、続く松本俊彦先生の「岡村靖彦愛」も、ぜんぜん負けていない熱烈な文章でほんと感動した。ところが、同じく著者自身の個人的音楽体験に根ざした昔から愛聴してきたお気に入りミュージシャンを取り上げているのに、何故かよそよそしい井上祐紀先生の「小室哲哉論」が実に対称的で興味深かった。

井原裕先生の「北山修愛」も相当なものだぞ。ぼくも最近ウイニコットを勉強していて、北山修先生にはお世話になっているのでした。

『ANAK(息子)』は、杉田二郎ヴァージョンでなく、オリジナル「タガログ語」のシングル盤を持っている。先日テレビで中居正広クンが落ち込んだとき「この曲」を聴いて元気を出すと言っていて驚いた。『ポップスで精神医学』(日本評論社)p212を読んでいる。この本は、ほんと面白いなあ。 2015年12月19日
■この本を読みながら疑問に思ったことがある。それぞれの文章には、取り上げられた楽曲の「歌詞」がほぼ全て転載されているというのに、著作権にうるさい「JASRAC(日本音楽著作権協会)」の「あのマーク」が、参考文献の欄にも、本の巻末にも載っていないということだ。歌詞の権利関係は、いったいどうなっているのか? たいへん興味深い。

2015年12月23日 (水)

今月のこの1曲。 タートルズ『Happy Together』


YouTube: Happy Together - Turtles

■この曲は、アメリカのロックバンド「タートルズ」が 1967年に全米ナンバーワンを獲得し、世界中で大ヒットを飛ばした曲で、僕も小学生の頃に聴いた憶えがある。先日、この曲がじつに印象的に使われている「お芝居」を観てきた。ケラリーノ・サンドロビッチ作・演出、ナイロン100℃公演『消失』だ。

■何処か知らない国の近未来。戦争の終わった片田舎で、仲よく慎ましく暮らす兄弟二人をめぐる、クリスマスから大晦日までの7日間のおはなし。

最初と最後に「この曲」が流れるのだが、開演時はガット・ギターでのカヴァー・ソロ演奏、ラストで舞台が暗転してスクリーンに出演者の名前が次々と映し出され、そのバックで流れるのが、このオリジナル版だった。

お芝居は、年末まで下北沢「本多劇場」にてもう数ステージ公演が続くので「ネタバレ」できないワケだけれど、3時間強の公演時間(前半2時間、休憩をはさんで、後半1時間)が、ぜんぜん長くは感じられなかった。やっぱり傑作だよ。でも、感動の涙というのとは正反対の、見終わった後に圧倒的な「虚無感、虚脱感」が襲ってくる舞台だったな。

ケラさんは、この芝居の脚本を執筆中に「小津安二郎」の映画を集中的に見ていたそうだ。で、映画『晩春』の最重要シーンから、原節子と笠智衆のセリフをそのまま4ページ拝借したのだという。え、どこに? と思ったら、休憩のあと第2幕が始まってすぐの、弟(スタン:みのすけ)と兄(チャズ:大倉孝二)の会話が「まさにそのまま」だったので、ゾクゾクっときた。

かたや「父と娘」、かたや「兄と弟」。あれ? でもちょっと変だよ。いっしょにいて楽しいのは、恋人同士の「男と女」なんじゃないか?

 
純粋無垢な人。それは、死者に花束を添えたネアンデルタール人だったのだろうか? 今日、本多劇場で『消失』を観てきた。今になって、じわじわとこみ上げてくるものが沢山あるな。(12月20日
『消失』を英語でいうと「disappearance」だから、見ている眼の前で消えて無くなるという意味になるな。だから、落とし物を紛失することとはぜんぜん違う。芝居を観ながら思い浮かべたものは、黒澤明『白痴』北野勇作『かめくん』それに、高田渡と加川良が唄ったローランサンの『鎮静剤』だった。
その昔「ウナセラディ東京」って歌があったけど、ナイロン100℃のお芝居『消失』を見終わって劇場を後にした自分の全てを支配していた感情は「やるせなさ」だった。映画監督成瀬巳喜男は「ヤルセナキオ」と呼ばれていたそうだが、これほどの脱力感と無力感に打ちのめされようとは予想だにしなかった。
『消失』ラストの、みのすけ氏のセリフ「あっ!鳥が鳴いた」は意味深だ。素直に取れば、青い鳥の希望を予感させるが、現実は「炭鉱のカナリア」なのだから、カナリアが鳴いたということは、そうとうにヤバイ状況が直近であるということだ。朝ドラ『あさが来た』でも、炭鉱落盤事故の直前にメジロが鳴いた。

■芝居の感想をもう少し。大倉孝二さんて、ひょろりと背が高いんだね。テレビでしか見たことなかったから、実寸大のデカさに驚いてしまったよ。あと、みのすけさんの声がよかったな。

それから、ケラさんの舞台といえば「プロジェクション・マッピング」の妙だ。松本で観た『グッドバイ』でも、WOWOWで見た『わが闇』でも、スタイリッシュで実にかっこよかったけれど、『消失』の舞台でも驚くほど効果的に機能していた。

後半、兄(チャズ)がずっと隠してきた事実が、皆の前であらわにされる場面で、突如、舞台セット全体がドロドロと溶解しはじめるのだ。今まで、確かな現実として、そこにあったものが、あれよあれよと溶けて無くなってゆく。いわゆる「現実崩壊感」っていうのは、こういう感じだったんだ。

不気味で居心地の悪い厭な気分に、観客はみなさらされたはずだ。

でも実際には、プロジェクターでイリュージョン映像がセットに重なって映し出されていただけで、本物のセットは溶け出したりはしてなかった。でも、あの時のぼくは、まるで統合失調症の患者さんの内面をリアルに体感しているみたいな気分だった。なんかこう、ぞわぞわと居心地の悪い、全てを消し去りたい気分。

■このお芝居を観ていて、登場人物6人の誰に一番感情移入したかというと、僕はやっぱり、犬山イヌ子さんが演じたホワイト・スワンレイクだな。弟のスタンより1歳若いとはいえ、もう40代の独身女性。過去にはいろいろとあった。でも、ネアンデルタルー人のことが好きで、果てしない宇宙のはなしが大好き。忘れ去られても、また、一から「二人の想い出」を作っていけばそれでいいのだ。記憶とはそういうものさ。

このお芝居の中では、彼女の孤独と哀しさが際だっていたように思う。


YouTube: "Happiness comes only through effort" - Late Spring (1949, Yasujiro Ozu)

■「おとうさんはもう、56だ。おとうさんの人生はもう終わりに近いんだよ。」と、笠智衆は言っているが、おいおい、57歳の俺より、実は若かったのかよ! ビックリぽんや。


YouTube: Yasujiro Ozu - (1962) Sanma no aji / Autumn Afternoon/ Il gusto del sakè [Scena del bar]

小津安二郎の『晩春』を YouTube で探していたら、『秋刀魚の味』で僕が一番好きなシーンが見つかった。

笠智衆:「けど、負けてよかったじゃぁないか」

加東大介:「そうですかね。ふーむ、そうかもしれねぇなぁ。バカな野郎が威張らなくなっただけでもね。館長、あんたのことじゃありませんよ。あんたは別だ。」


2015年12月12日 (土)

12月12日は、小津安二郎の誕生日&命日

■女優の原節子が亡くなった。

ただ、ぼくの中では「永遠の人」だから、彼女は決して死ぬことはないのだ。そら、映画『東京物語』の中でも言っていたでしょ。「わたし、年をとらないことに決めてるんです」ってね。

今週号の「週刊文春」12月17日号の、小林信彦の連載「本音を申せば」のタイトルは、「原節子という大きな星」だった。読んでいて気になったのは、小林氏が

「戦時下での原節子の映画でハッとするのは一本だ。(中略)『望郷の決死隊』と同じ43年、山本薩夫の『熱風』である。」

と書いていることだ。この『熱風』は見たことがない。見たい。ぜひ見たい!

それから、小林さんが「木下恵介の映画の中で、ぼくがもっとも好きな作品だ」と言って、紹介しているのが『お嬢さん乾杯!』(昭和24年公開。木下恵介監督作品、佐野周二、原節子主演)だったこと。なんだか、うれしくなっちゃったな。

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原節子というと、戦前の映画『河内山宗俊』『新しい土』での、まだ10代だった彼女の笑顔と、ぼくが大学病院で受け持った高校生の女の子、Hさんの笑顔がそっくりだったことを思い出す。夏目雅子と同じ病気で美人だったHさんは、原節子さんの一生の6倍の速さで人生を終えた。

■彼女のことは、ずいぶんと以前に書いたような気がする。小津安二郎・生誕100年 そして、原節子のこと。(2003/12/12)(クリックして、下のほうへスクロールしてゆくと出てきます)

ぼくの一番の原節子は、やっぱり『東京物語』だけれど、『麦秋』の台所で一人「お茶漬けさらさら」の場面と、ラスト前の藤沢「鵠沼海岸」でのシーンも好き。あと、木下恵介『お嬢さん乾杯!』と、成瀬巳喜男『めし』も。小津安二郎『秋日和』の喪服姿も案外好きだったりする。合掌。(2015年11月26日

2015年12月 6日 (日)

伊那のパパズ絵本ライヴ(その121)伊那市役所1階多目的ホール

■12月になって、いよいよ寒くなってきました。今朝も風が冷たかった。

今日は、午前10時30分から「伊那市子育て支援課」主催のパパズです。市役所1階の多目的ホールには、この寒空のなか「70組もの親子連れ」が集まってくれました。トータルでは、160人以上だったそうです。ほんと、ありがとうございました。

日ごろ、当院の外来でよく見る子供たち、お母さんも多くて、なんか恥ずかしいような嬉しいような。お父さんの姿も多数見受けられましたよ。子育てには、いい時代になってきたのかなぁ。今日は恒例の「サンタさんの衣装」での登場だ。

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<写真をクリックすると大きくなります。倉科さんのFBより、勝手に写真を拝借いたしました。ごめんなさい。>

< 本日のメニュー >

 1)『はじめまして』新沢としひこ(ひさかたチャイルド)

 2)『このすしなあに』塚本やすし(ポプラ社)→伊東

 3)『しろくまのパンツ』tuperatupera(ブロンズ新社)→北原

     「安心してください。 はいてますよ!」

 4)『かごからとびだした』(アリス館)

 5)『メリークリスマスおおかみさん』宮西達也(女子パウロ会)→坂本

 6)『うんこしりとり』tuperatupera(白泉社)

 7)『すもうまん』長谷川義史(講談社)→宮脇

     「内掛け〜 上手投げ〜 猫だまし〜 五郎丸〜」

 9)『すてきなぼうしやさん』増田裕子・歌、市居みか・絵(そうえん社)

 10)『オニのサラリーマン』富安陽子・文、大島妙子・絵(福音館書店)→倉科

 11)『ふうせん』(アリス館)

 12)『世界中のこどもたちが』新沢としひこ&中川ひろたか(ポプラ社)


YouTube: ようちえんのブルース

■これはですね、2014年9月7日(日)「飯田市立上郷図書館」での、われわれの「絵本ライヴ」から、倉科パパと、絵本作家:飯野和好さんとのジョイント即興セッションを伊東パパがアップしてくれたものなんです。これは、ホントよかったなぁ。

■次回「伊那のパパズ」は、2016年1月16日(土)午前11時から、山梨県笛吹市石和町「山梨英和プレストンこども園」(クローズドの会です)と、

■2016年1月17日(日)午後1時半 から、山梨県北杜市須玉町「須玉ふれあい館ホール」(こちらは、参加オープンだと思いますが、あらためて確認いたします。)


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