『バッド・モンキーズ』マット・ラフ(文藝春秋)
■一昨日の木曜日は、昼休みに近くの竜東保育園へ自転車に乗って行って、午後2時から年長さんの秋の内科健診。2クラスで60人強。30分で終わったので、残りの時間をいつものように絵本を読んで過ごす。
1)『どうぶつサーカスはじまるよ』西村俊雄・作(福音館書店)
2)『これがほんとの大きさ!』S・ジェンキンズ作(評論社)
3)『子うさぎましろのお話』佐々木たづ・文、三好碩也・絵(ポプラ社)
1)を読む前に「サーカス見に行ったことある人」って訊いたら、「ハイ、ハイッ!」と、いっぱい手が上がった。木下サーカスかな? それとも、キグレ大サーカスかなって思ったら、一番前の男の子が言った「あのね、名古屋へ行って サルティンバンコ観たよ! 」おいおい、いきなり「シルク・ドゥ・ソレイユ」かよ。でも、この絵本を読むのは楽しいな。「みなさん、拍手をおねがいしまーす」と読むと、子供たちは真剣に「すっごぉい!」って顔をして大きな拍手をしてくれるからだ。それから、最後の出し物の「空中ブランコ」。ブタくんはサクラで最初から仕組まれていたんだね。だって、裏表紙を見ると、ブタくんも他のサーカス団員といっしょにバスに乗ってるもん。
3)は、クリスマスも近いので、しみじみ読んでみる。長いお話なのに子供たちはみな集中して静かに聞いてくれた。地味だけど、ぼくの大好きなおはなし。
■金曜日の昼休みは「いなっせ」7F「こども広場」でお話会。インフルエンザ流行中なので、集まってくれたのは4組の親子のみ。「咳のはなし」をする。気合いが入っていなかったので、20分くらい話して終わってしまう。残りの時間は絵本を読んでお茶を濁す。
1)『どうぶつサーカスはじまるよ』西村俊雄・作(福音館書店)
2)『クリスマスって なあに』ディック・ブルーナ・作(講談社)
3)『クリスマスのほし』ジョセフ・スレイト・文、フェリチア・ボンド・絵(聖文社)
若いおかあさんの心に、『クリスマスのほし』が輝いてくれたらいいな。
■テルメの帰りに TSUTAYA へ寄って『このミステリーがすごい! 2010年版』を購入。大幅増ページなのに、500円と値下がりしている。出版界もデフレの嵐なのか? これは大英断だね。順位を見て驚いたのは、『バッド・モンキーズ』マット・ラフ著(文藝春秋)が、なんと4位! そんなに傑作か? ぼくも一昨日読み終わったばかりだが、表紙のイラストそのままの雰囲気の内容。めちゃくちゃクールで、ビートの効いたヒップ・ホップのテンポに乗って、軽快にぐいぐい読ませる希有な小説であることは認めるが、これ、ミステリーとしてはルール違反なんじゃない? ぼく的評価は(★★★半)だな。
40過ぎのドラッグ中毒で(でもヘロインには手を出さない節度はある)もしかすると統合失調症ぎみのオバサンが、精神科医を相手に独白する荒唐無稽な話。彼女の話す内容は妄想と幻覚に満ちてはいるが、とにかくメチャクチャ面白い。でも、最初から「語り手 = 騙り手」であることが見え見えで、しかも、読者としては了解不能な領域まで彼女がすぐに行ってしまうので、ついて行けないのだ。これが、例えば「騙り手」の名手である、イギリスのSF作家、クリストファー・プリーストの小説だと、物語の終盤まで騙されていることに全く気が付かないように出来ている。だからこそ、読了後に何とも言えない「現実崩壊感」を味わうことができるのだ。
でも、『バッド・モンキーズ』の読後感は微妙に違うのだ。確かに、最終章の逆転につぐ逆転に「目がテン」になったことは事実。「めくるめく」なりすぎちゃって、何が何だか判らなくなってしまったよ。でもそれは、プリーストの「現実崩壊感」とは違うな。そこが不満だ。
今、冷静になって思い返すと、この小説も実は『闇の奥』とよく似た構造をしている。主人公の独り語りで成り立っていて、主人公は失踪した弟を捜して「ある組織」に加入する。じつは彼女は、弟に対して人には言えない負い目があるのだ。そのことを、面接する精神科医にカミングアウトするところが、この小説の一番の山場なんじゃないかと、ぼくは思う。ちょうど、無免許のアル中私立探偵マット・スカダーが『八百万の死にざま』のラストでカミングアウトするみたいに。
さらに言うと、『長いお別れ』にもよく似ている。なんか不思議とリンクしているのだな。というワケで、さらにリンクするらしい『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド・著、村上春樹・訳(中央公論社)を昨日の夜、高遠町図書館から借りてきたところだ。これを読み終わったら、次はいよいよ『1Q84』か!?
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