今月のこの1曲 Feed

2015年10月27日 (火)

今月のこの1曲。インゲル・マリエ・グンナシェン『 Will you still love me tomorrow』


YouTube: Inger Marie Gunderson - Will You Still Love Me Tomorrow

■この曲に関しては以前に一度、取り上げたことがあって、調べてみたら「2007年5月31日の日記」に書いてあった。

ここで内田樹先生が「音楽との対話」の中で言及している、キャロル・キングのセルフカヴァー・ヴァージョンはこれ。


YouTube: carole king will you still love me tomorrow lyrics

■名盤『つづれおり』B面3曲目にさりげなく収録されている「この曲」は、レコードで聴いていた時には僕はほとんど聞き流していた。まぁ、主にA面がターンテーブルにのってたし、B面は1曲目の「君の友だち」しか聴かなかったからなぁ。バック・コーラスで、ジェイムス・テイラーとジョニ・ミッチェルが仲良くハモってるっていうのにね。

ぼくがあらためて「この曲」のよさに気づかされたのが、当時まったく無名だった、ノルウェーのおばちゃんジャズ歌手インゲル・マリエ・グンナシェンが歌ったヴァージョンを、たまたま聴いた時だった。なんていい曲なんだ! 

はじめて大好きな彼と結ばれた夜。幸せの絶頂にあるはずの女の子。でもその瞬間、明日の朝には彼に捨てられてしまうかもしれない不安がよぎるのだった。

こんなにもデリケートでガラス細工みたいな女の子の心の内を「歌詞」に表現したのは、じつはキャロル・キングではない。彼女は曲だけを先に作ったのであって、詩を後から付けたのは、当時彼女の夫だったジェリー・ゴフィン。男なのに、なんで切ない女心が分かるのだ?

■「この曲」は、1960年に黒人ガールズ・グループの「ザ・シュレルズ」が歌って、ゴフィンキングのコンビで作詞作曲した曲の中で、初めて「全米ベスト1」を獲得した記念すべき一曲となった。


YouTube: THE SHIRELLES - Will You Still Love Me Tomorrow [ 60's Video In NEW STEREO ].mp4



YouTube には、さらにいろんなカヴァーが登録されている。有名所では、エイミー・ワインハウスとか、ノラ・ジョーンズとか。

でも、ぼく個人的には「ザ・シュレルズ」のリード・ヴォーカルの娘が「この曲、すっごくイモっぽい(  too country )から歌うのやだ!」って言ってた、そのままの野暮ったさで素朴に唱っている、インゲル・マリエ・グンナシェンのカヴァーが一番いいんじゃないかと思う。

■ただ、この人の次に出たCDも買ってはみたのだけれど、結局「この曲」だけだったな。よかったのは。


YouTube: 桑名正博 will you Love Me Tomorrow.


こんなのも見つけた。Char のギターソロが渋いぞ。

■ところで、「この曲」が誕生した時の印象的なエピソードを、たしか内田樹先生がブログに書いていたはずなんだけど、検索したら見つかりました。これです。

「シープヘッド・ベイの夜明け」。これは何度読んでもジーンとくる話だなあ。

■それから、内田センセイと師匠の大瀧詠一氏がこだわった「鼻濁音」だけれど、もう一人、ものすごく「鼻濁音にウルサイ」人がいて、そのことは『落語家論』(ちくま文庫)に詳しく書かれているのだが、そうです。その方こそ、柳家小三治師匠なのでした。

2015年9月13日 (日)

アート・ペッパー『おもいでの夏』(その2)

■前回の続き■

『ザ・トリップ』で、ぼくが一番好きな演奏は、A面2曲目に収録された「A SONG FOR RICHARD」だ。いまでもよく聴いている。これです。ジョージ・ケイブルスのピアノソロも実に美しい。


YouTube: A Song for Richard ART PEPPER


そして、この曲に続くのが、ウディ・ショウの名曲「スウィート・ラヴ・オブ・マイン」。エルヴィン・ジョーンズの控えめでありながら、全員をぐいぐいプッシュしてゆくドラミングが、とにかく素晴らしい。


YouTube: Sweet Love of Mine ART PEPPER

・このレコードが発売された年の 1977年4月に、アート・ペッパーは初来日した。

ただし、麻薬使用の問題から入国が危ぶまれたために、事前に宣伝されることもなく、カル・ジェイダー(vib)セクステットの特別ゲストとして、彼はひっそり来日したのだった。

しかし、どこかで噂を聞きつけた日本のファンは、公演初日の 1977年4月5日、東京芝の郵便貯金ホールに大挙して押しかけ、アート・ペッパーの登場を今か今かと待ち構えていたのだ。以下は『アート・ペッパー・メモリアル・コレクション Vol.1(ライヴ・イン山形)』(トリオ・レコード)の、油井正一氏のライナーノーツ(1983年3月24日記)冒頭部分です。

 1977年4月5日(火)はおそらくアート・ペッパーにとって生涯忘れ得ぬ夜だったと思う。カル・ジェイダー(vib) 六重奏団のゲスト・プレイヤーとして初めて日本のステージに立った夜である。芝の郵便貯金ホールでのことだった。

第二部に入ってジェイダーが「アート・ペッパー!」と紹介し、ペッパーが下手から白蝋のような顔で登場すると、客席は興奮のるつぼと化した。マイクの前まで歩み寄っても拍手は収まらず、ペッパーはなすところなく立ちつくした。

「おじぎをして拍手のおさまるのを待った。少なくとも5分間はそのまま立っていたと思う。何ともいえないすばらしい思いに浸っていた。あんなことは初めてだった。あとでローリー(妻)にきいたが、彼女は客席にいて観客の暖かな愛をひしひしと感じ、子供のように泣いてしまったという。僕の期待は裏切られなかったのだ。日本は僕を裏切らなかった。本当に僕は受け入れられたのだ。(中略)生きていてよかった、と僕は思った」(自伝『ストレート・ライフ』p469/ スイング・ジャーナル社刊)

■この時の演奏を、なんとTBSラジオが録音していたのだ。そして、1989年に『ART PEPPER  First Live In Japan』として発売された。聴いてみると、アート・ペッパーが舞台に登場したとたん、本当に割れんばかりの拍手が起こる。1曲目の「チェロキー」の演奏が終わった直後、客席から「うぉ〜〜!」と怒濤のような歓声と拍手が湧き起こる瞬間は、何度聴いてもゾクゾクする。

残念ながらYouTube には、この時の「チェロキー」の演奏はアップされていない。でも、CD5曲目に収録された「ストレート・ライフ」はあったぞ。


YouTube: Art Pepper Tokyo Debut -Straight Life-

■このCDのオリジナル日本盤のライナーノーツを書いているのが、『再会』ほか、ペッパー復帰後数々のレコーディングを手がけた石原康行氏だ。以下引用。

(前略)ペッパーとの7回のレコーディング・セッションの機会を持った私の個人的なエネルギーは何であったかと考えた。それは、1977年4月5日、アート・ペッパーが初めて日本を訪れ(カル・ジェイダーのゲストとして)あの会場を圧倒したファンの万雷の様な拍手でありペッパーのプレイであったことを再び想い出すことが出来た。そのライヴコンサートの演奏がこのアルバム「アート・ペッパー・ファースト・ライヴ・イン・ジャパン」の総べてなのである。(中略)

彼が代表的な白人アルト奏者として名声を受けていながら麻薬禍に浸り、監獄生活など波乱な人生を送っていただけに東京で聴くことが出来るとは夢にも想っていなかった。それだけに強烈な印象であり喜びでもあった。(中略)

現実的にはゲスト・プレイヤーが同行するとは聞いていたがペッパーが参加することは当日まで知らされていなかった(多分入国の問題などで)し、4月5日の当日の郵便貯金ホールは主であるカル・ジェイダーへの期待より、申し訳ないがゲストのペッパーに会場の聴衆は注目していたと云っても過言ではなかった。

第一部のカルのスケジュールが終了、第二部に入ってゲスト登場となる。そしてMCのペッパーの紹介に竜巻の様な拍手が会場をゆるがせると上手より、ペッパーがアルトを持ってステージの人となった。

決して健康とは云えない顔色から永い闘病生活の影が消えていないし、ペッパー自身も不安な面があったのではないかと思われる様な陰影があった。だが会場の拍手によりペッパーの顔が一瞬赤みを生み、日本のファンの歓迎を意外と感じた様であった。この日から彼は日本のファンに対して限りない愛着を持ったと後日話してくれ、以後この感激をペッパーは心の中に永く持ち続けることになったのである。(1989年12月26日 石原康行)

■油井正一氏と石原氏とで、アート・ペッパーが舞台の下手から登場したか上手からか違っているぞ(笑)。

ところで、石原氏によるアメリカでのレコーディングの現地コーディネーターを務めたのが、大村麻利子さん。ぼくには懐かしい名前だ。1971年ころだったか、中学生になってラジオの深夜放送を聴き始めた。当時よく聴いていたのが、TBSラジオ「パック・イン・ミュージック」火曜日の愛川欽也だ。

いまは「radiko」のネット・ラジオでクリアーな安定した音で聞けるが、当時TBSラジオを信州高遠で聞くのは必死だった。ラジオを954hz にチューニングして雑音まみれの微かな電波を拾っていた。夜11時くらいからだったか、TBSラジオで『麻利子産業株式会社』という不思議な番組を放送していて、DJを担当していたのが、大村麻利子さんだ。落ち着いた大人の雰囲気の彼女の声が実に魅力的で、一気に引き込まれたものだ。

ところが、それから間もなく番組は終了してしまう。大村麻利子さんがアメリカへ行ってしまったからだった。

■日本のファンのために、初来日の翌年、今度は自己のカルテットでアート・ペッパーは再来日する。彼の体調は芳しくなく、日本全国を廻る旅公演のタイトなスケジュール(21日間で、19公演)に疲労は重なるばかりだったが、それでも、行く先々で最高の歓迎を受け、気力だけで乗り切った。

この時の日本最終公演が山形で、やはり地元のラジオ局が録音した音源がレコード化(VOL.1 VOL.2 の2枚)されている。この「VOL.2」のほうに、「おもいでの夏」が再び収録されているのだ。

現在『ART PEPPER LIVE IN JAPAN』として、2枚組CDで出ている。

アート・ペッパーは快調に飛ばしているし、小さめの会場のためか、客席との一体感もアットホームな感じでいいのだが、個人的には、ミルチョ・レビエフのピアノがちょっと品がなくてどうしても好きになれないのだよなぁ。



2015年9月12日 (土)

今月のもう一曲。アート・ペッパー『おもいでの夏』

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■これは以前にも書いたような気がするが、ぼくがこの40年近く、一番多く何度も何度も繰り返し聴いてきたジャズレコードが、アート・ペッパー『ザ・トリップ』(コンテンポラリー)なんです。(ちなみに、最もよく聴いたフォークのレコードは、加川良『親愛なるQに捧ぐ』)

とにかく、生まれて初めて買ったジャズレコードだったから、大学1年生の学生宿舎で、暑い暑い夏だったか、来る日も来る日も「このレコード」を繰り返し聴いていたんだ。なにせジャズ素人でしょ、1回聴いただけじゃぜんぜん理解できなかったからね。しかも、当時2500円も払って購入したレコード。もったいないじゃない。だから、A面B面、何度も何度もレコードをひっくり返して聴きましたよ。で、だんだんと「ジャズの魅力」に取り憑かれていったのです。

どうして「このレコード」を買おうと思ったのか?

たしか、FM東京だか、NHKFMだったかのジャズ番組で、本多俊夫氏(アルトサックス奏者の本多俊之氏のお父さん)が紹介していたのを聴いたのだ。この時、ぴーんと僕の琴線に触れたのが、ミッシェル・ルグランの「おもいでの夏」だった。これです。


YouTube: The Summer Knows ART PEPPER

■この曲を収録するにあたって、アート・ペッパーはこう言っている。

「おもいでの夏」は偉大な作曲家、ミシェル・ルグランの曲だ。これに彼が付けたコードも素晴らしい。イントロのEフラット・マイナーの1小節、続くAフラット・マイナーの1小節あたりは最高だ。ここの繰り返しは、マイルス・デイビスのような感じで、物悲しく、寂しい雰囲気がよく出ている。そしてメロディに入るが、これがこの上なく美しい。

私はバラードを演奏するのが好きだからね。エルヴィンのワイヤー・ブラッシュも信じられないほど非の打ちどころがないんだ。(『THE TRIP』ライナーノーツより)

■アート・ファーマーの「おもいでの夏」も、なかなかに渋くていいぞ。これだ。


YouTube: Art Farmer / The Summer Knows

■ファースト・ネームが同じ、アート・ファーマー(tp) とアート・ペッパー(as) だが、案外共演したレコードは少ない。名盤『ザ・トリップ』を録音する (1976年9月15日&16日) のわずか1月半前に、ロサンゼルスの同じスタジオで収録された2人の貴重な共演盤が、『オン・ザ・ロード』アート・ファーマー(1976年7月26日28日&8月16日録音)だ。


YouTube: Art Farmer - Hampton Hawes Duet 1976 ~ My Funny Valentine

・YouTube では、残念ながら、ピアノのハンプトン・ホースとアート・ファーマーのデュオしか見つからなかった。



2015年9月 4日 (金)

今月のこの1曲。CRYSTAL GREEN『 FEEL LIKE MAKIN' LOVE 』

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■このところのBGMは、もっぱら クリスタル・グリーンの『レインボー』だ。このCDが録音された1976年5月15日というのは、超人気バンド「Stuff」も「STEPS」も、まだ誕生する前のはなし。それなのに、EAST WIND レーベルの日本人プロデューサーが「これは!」と見込んだ、ニューヨークの実力派スタジオ・ミュージシャンを集めて録音し日本で発売したレコードが「これ」なのだった。

参加ミュージシャンが凄い。マイケル・ブレッカー(ts)に、コーネル・デュプリー(g)、エリック・ゲイル(g)、ゴードン・エドワーズ(b)、スティーヴ・ガッド(ds)、ラルフ・マクドナルド(per)、ウィル・ブールウェア(key)。

アルバムの最後に収録されているのが、ロバータ・フラックが 1974年に全米チャート1位のミリオン・セラーを記録した名曲「FEEL LIKE MAKIN' LOVE(愛のためいき)」だ。


YouTube: Feel Like Makin' Love / M. Brecker S. Gadd C. Dupree

昨日、テルメで久々に走っていたら、iPod から流れてきたのが、またしても「FEEL LIKE MAKIN' LOVE」。歌っていたのは、マリーナ・ショウ。 本家のダイアナ・ロスよりも、ファンキーで楽しい。


YouTube: Marlena Shaw - Feel Like Makin' Love

最近、松尾潔氏の本や『新R&B入門』といった本を読みながら、1990年代以降の「R&B」を勉強しているところなのだけれど、近ごろ来日して再び大きな注目を集めている、ディアンジェロが2000年に出した傑作『Voodoo』を聴いていたら、なんと、また「FEEL LIKE MAKIN' LOVE」の登場と相成った。これだ。


YouTube: D'angelo - Feel Like Makin' Love

■TBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』のゲストに、松尾潔氏が登場した回を聴いたのだが、その中で菊地成孔氏が「R&Bって、結局は房中音楽だからね」みたいなことを確か言っていたけど、なるほどなぁって思ってしまう1曲。




2015年7月31日 (金)

今月のこの3曲。 細野晴臣『三時の子守歌』と『熱帯夜』


YouTube: Ronny Jordan -Off the record -"Keep your head up"

・あっという間に7月が終わってしまう。おっと、そういえば「今月のこの1曲」がまだだったのだ。当初、ミシェル・ルグラン『ロシュフォールの恋人たち』のサウンドトラック盤を入手したので、今月は「You Must Believe In Spring」Bill Evans Trio にしようって、決めていたのだけれど、連日体温なみ(36.0℃)の猛暑が続く中で、春の哀しい曲の話はないよな。

でも、8月になっちゃうし、コルトレーンの「マイ・フェイヴァリット・シングス」では、ありきたりだし。そう悩みながら、テルメに行って iPod のイヤホンを付けたら、最初に流れてきた曲が、ロニー・ジョーダンの『Keep Your Head Up 』だったのだ。橋本徹監修の「ULTIMATE Free Soul / Blue Note 」の「CD3」6曲目に収録されている。

橋本氏の解説を読むと、こう書かれていた。

ロニー・ジョーダンは、90年代初頭のアシッド・ジャズ期にマイルス・デイヴィスの「So What」やタニア・マリアの「Come With Me」のカヴァーをクラブ・ヒットさせ、コートニー・パインらとともに、レア・グルーヴ〜クラブ・ミュージック世代のジャズ・アーティストとして人気を集めたギタリスト。ヴォーカルにフェイ・シンプソンを迎えたブラックネス薫るこのR&Bナンバーは、2001年の『Off The Record』に収録。

プロデュースはジェイムス・ボイザー&ヴィクター・デュプレ。ジェイムス・ボイザーは J・ディラやクエストラヴらとプロデュース・チーム、ソウルクリエイリアンズを結成した人物で、ブラック・ミュージック史に残るディアンジェロ2000年の金字塔『Voodoo』も彼らが手がけている。ビート・メイキングや空間構築のセンスやメロウネスは、彼とネオ・ソウル〜ネオ・フィリーの雄であるヴィクター・デュプレのセンスによるところが大きいだろう。

ロニーは残念ながら、2014年1月にこの世を去っている。

ロニー・ジョーダンのことは正直知らなかったのだ。案外聴きやすい「懐かしい」ギター・サウンドだな。そう、ウエス・モンゴメリーみたいな感じなのだ。

ウエスが CTI レーベルで出した『夢のカリフォルニア』を、1990年代〜2000年代でやったら「こうなる!」的な、ギター演奏なのだ。そこがいい。めちゃくちゃいい。どうにも面倒臭そうでアンニュイなヴォーカルのバックで、リフを繰り返すロニー・ジョーダン。その演奏のB級加減がたまらない。

ここで「この曲」を何度も聴いていたら、すっかり気に入ってしまい、結局アマゾンで中古盤を購入することになってしまった。近々届く予定です。

■ただ、ここ連日の猛暑を乗り切るべく、先だって伊那の平安堂で入手した『トロピカル・ダンディ』細野晴臣を日中はリピートしてずっと聴いてトロピカル気分に浸っている。ブルー・スペック盤は、確かに音がいい! しかも、ティン・パン・アレイ名義のレコードから細野さんの曲が4曲、ボーナス・トラックとして追加収録されているのだ。「北京ダック」とか大好きな曲がいっぱいあるけど、以前からよく知っていた「お気に入り」の曲が、『三時の子守歌』なのだ。

ぼくが最初に聴いたのは、アン・サリー。だから、オリジナルよりも「こっち」のほうが好き!


YouTube: 「三時の子守唄」聴き比べ♪ 細野晴臣~アン・サリー~西岡恭蔵

それから、やっぱりコレでしょう。「熱帯夜」


YouTube: Haruomi Hosono - Nettaiya (Tropical Night)


2015年6月13日 (土)

今月のこの1曲。 クラムボン『Folklore』

■クラムボンのCDを集め出したのは、じつは最近のことだ。

彼らの周辺ミュージシャンは昔から好きで、おおはた雄一とか、ハナレグミとか、最近では「スーパー・バター・ドッグ」のキーボードだった、レキシとか。

で、デビュー盤からあらためて聴いてきたのだが、当初より完成された3人の完璧な音楽性に圧倒されながらも、3人の要はやはり、ミトくんですかね。彼はホント凄い。

そんなミトくんが作詞・作曲した「Folklore(フォークロア)」。

ぼくは「この曲」が特別好きだ。

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何かが変わってゆくような そんな気がした あと少しで

何ごともなく消えてゆく 6月6号 あと少しで あと少しで

気持がすぅっと軽くなる そんな気分さ あと少しで あと少しで

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季節外れの台風一過。景色のすべてが一掃される瞬間を捉えた歌だ。

 


YouTube: Folklore / クラムボン


YouTube: Clammbon - Re-Folklore

■このPVが撮影されたスタジオは、山梨県北杜市小淵沢にある「星と虹レコーディング・スタジオ」に違いない。あの「世界中のこどもたちが」も、ここで収録された。

場所は、中央道小淵沢インターを降りて右折し、鉢巻き道路へ向かって上っていって、「キースヘリング美術館」のちょうど反対側を少し入ったところに、「八ヶ岳 星と虹歯科診療所」っていう歯医者さんがあって、先生は藤森義昭先生っていうんだけど、趣味が高じてプロのミュージシャンでもあるんだ。そうか、北海道は礼文島の出身だったのか。それに、あの「ジム・オルーク」とも親交があるらしいぞ。で、1978年に歯科診療所に併設してアルム(大屋根)の家を建て、その2階を「レコーディング・スタジオ」にしてしまったのだった。

東京から車で2時間の距離で、大自然の別世界の中、ミュージシャンが泊まり込み合宿で集中してレコーディングできる穴場として、昔から「知る人ぞ知る」スタジオだったのだ。クラムボンも4作目の『id』からずっと使ってきた。

最近では、レコーディング機材も一新され、ここでのレコーディングを希望するミュージシャンはあとをたたないっていう噂だ。

ぼくは一度だけ、その藤森先生にお目に掛かったことがある。

今から20年くらい前かな。

当時ぼくは富士見高原病院小児科に勤務していて、循環器内科医長だった岩村先生がアフター・アワーのジャム・セッションでジャズピアノを弾くというので、原村で家具工房を開いていた出戸明さんの、お兄さんが富山から原村に移り住んで、弟さんの工房の隣にオープンした森の喫茶店「Song Of The Bird」に行ったのだった。

その夜、地元に住むいろんなミュージシャンが次々に登場して音楽を披露した。

「カントリー・キッチン」の次男の方も来ていて、ウッド・ベースを弾いていた。そうして、小淵沢から鉢巻き道路をはるばるやって来たのが、藤森先生だったのだ。先生はたしか、歌を唄った。クラプトンだかニール・ヤングだったか、よく憶えていないけれど、澄んだいい声で、しみじみ聞き入ってしまった。

2015年5月24日 (日)

今月のこの1曲。ジェイムス・テイラー「How Sweet It Is」

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ジェイムス・テイラーのレコード『ゴリラ』を買ったのは、高校2年生の時だった。1975年だ。このレコードはほんとよく聴いたなぁ。大好きなんだ。

A面1曲目「MEXICO」4曲目「WANDERING」5曲目「GORILLA」それから、B面2曲目の「I WAS A FOOL TO CARE」と、3曲目「LIGHTHOUSE」が、特にお気に入りだった。もともと日本のフォーク少年だったから、アコースティックな楽曲がよかったのだ。

A面3曲目に収録された「HOW SWEET IT IS TO BE LOVED BY YOU」は、派手でコテコテのR&Bだったから、当時イマイチその良さがわからなかったのだが、「この曲」はシングルカットされてスマッシュ・ヒットを飛ばし、同年のビルボード・ヒット・チャートでは5位を獲得している。

2枚あとに出た「JT」に収録された「ハンディ・マン」もそうだけど、ジェイムス・テイラーは「こういう曲」のカヴァーがほんと上手い。


YouTube: James Taylor - How sweet it is (to be loved by you)

オリジナルは、マービン・ゲイの「これ」


YouTube: Marvin Gaye - How Sweet It Is (To Be Loved by You)

■土曜日の午前中、NHKFMでゴンチチがナビゲートする「世界の快適音楽セレクション」の選曲を担当している、渡辺亨氏が出したディスク・ガイド本『音楽の架け橋』(シンコーミュージック)でも取り上げられている。(65ページ)

■音楽評論家・天辰保文氏の「ここの文章」がめちゃくちゃいい!

さとなおさんも、むかし「このレコード」を紹介していたな。

■ぼくも以前、カーリー・サイモン『イントゥ・ホワイト』の記事で取り上げたことがある。

 さらに、「ここ」を下の方へスクロールして行くと、『オクトーバー・ロード』の紹介記事もあります。

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 (写真をクリックすると、もう少し大きくなります)

ノー天気でお気楽なこの曲は、聴いていて何とも気持ちいいのだが、そのもとは、ミディアム・スローのテンポと、弾むようなシャッフル・リズムにある。ドラム・ソロのところで分かるのだが、「タタタ、タタタ、タタタ、タタタ」という「三連符」で出来ているんだ。

同じく「シャッフル・ビート」で超有名な曲が「これ」だ。


YouTube: Stevie Wonder - Isn't She Lovely

■「ウン・パ、タタタ・ンパ」というリズムになると、これは「ドドンパ」です。

日本で一時期流行した謎のリズム「ドドンパ」に関しては、『踊る昭和歌謡:リズムからみる体臭音楽』輪島裕介(NHK出版新書)の中で、その成立の由来が詳しく調べられている。

■シャッフルやドドンパとはぜんぜん関係はないんだけれど、最近お気に入りで毎日聴いている曲がこれ。

ファレル・ウイリアムスと「Daft Punk」が、2014年にグラミー賞を取った「Get Lucky」を、フランスの女性歌手ハイリーン・ギルがカヴァーして歌っているのだが、この歌声、なかなかに心地よいのだ。


YouTube: Get Lucky (Bonus Track - 2014) - Hyleen Gil

本家、ファレル・ウイリアムスの歌声がこちら。リズムは、往年の1980年代ディスコ・ミュージックの感じだな。

 


YouTube: Daft Punk - Get Lucky (Full Video)



2015年3月31日 (火)

今月のこの2曲。バート・バカラック『 恋の面影 / The Look of Love』〜『幸せはパリで』

■3月。斉藤由貴の「卒業」をこよなく愛する僕としては、はなはだ遺憾ではあるのだが、ずっと気になっていた「彼女のスタンダード集」は買わずに、なぜか「原田知世の新譜」のほうに手が伸びてしまったのだった。先日の伊那の平安堂CD売り場でのことだ。

しかし、その判断に間違いはなかった。 こいつはイイ!!

選曲がシブイじゃないか。1曲目のビートルズ「夢の人」。ぼくはこの曲を知らなかった。いい曲だな。あと、レナード・コーエン、メロディ・ガルドー、マルコス・ヴァーリと、通好みの選曲が続くのだ。

ただ、個人的に一番グッと来たのが、9曲目に収録されていた、ダスティ・スプリングフィールドが唄ってヒットした、映画『ダブル・オー・セヴン カジノ・ロワイヤル』のテーマ曲、バート・バカラックが作曲した『 恋の面影 / The Look of Love』だ。オリジナルはこれ。

Dusty Springfield - The Look of Love
YouTube: Dusty Springfield - The Look of Love

ぼくが「この曲」を初めて聴いたのは、たしか中学1年の12月だった。1971年のことだ。

この年末、ぼくが自分で2番目(初めて買ったのは、ドイツ・グラモフォン・レーベルでカラヤンが指揮したベルリンフィル『新世界より』)に買ったLPレコードが、CBSソニー『ギフト・パック・シリーズ』(2枚組 3000円)の中の『映画音楽ベスト・ヒット集』だった。この「シリーズ」に関しては、『僕の音盤青春記 1971-1976』牧野良幸(音楽出版社)の26ページ〜28ページに詳しい。

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『映画音楽ベスト・ヒット集』の1枚目B面のラストに収録されていたのが、アンドレ・コステラネッツ管弦楽団の演奏する「恋の面影」だったのだ。このレコードは、さんざん聴いたなあ。

当時、映画の評判は散々だったが、この主題歌だけは印象に残った。哀愁に満ちた旋律。大人の女性の官能的で隠微な雰囲気の歌詞。なんてませた中坊だったんだ!

ちなみに、このレコードのB面「5曲目」に入っていたのが、同じくバカラック作曲の『幸せはパリで』だった。演奏は、パーシー・フェイス・オーケストラ。映画は未だに見たことない。ジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーブが主演した『The April Fools』だ。

この曲は、ディオンヌ・ワーイックが唄ってヒットした。

これまた印象的な旋律の名曲。

大好きなんだ。

これだ。

Dionne Warwick - The April Fools - 1969
YouTube: Dionne Warwick - The April Fools - 1969

ただ、個人的には、このオリジナル・ヴァージョンよりも、アール・クルーがギターを弾いた「この曲」に思い入れがあるんだな。これです。

Burt Bacharach / Earl Klugh ~ The April Fools
YouTube: Burt Bacharach / Earl Klugh ~ The April Fools

というワケで、4月1日になりましたね。

小説『シンドローム』の主人公の「切ない片思い」を、ずっと未だに引きずったままでいるので、今月は「この曲」を選曲させていただきました。


2015年3月 8日 (日)

先月のこの1曲。アン・バートン「Love is a Necessary Evil」と、『シンドローム』佐藤哲也(福音館)その1

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■ずいぶんとご無沙汰の更新になってしまった。

さらには、1月も、2月も「今月のこの1曲」をアップし忘れてしまったことに気がついた。ダメじゃん。ごめんなさい。

という訳で、もう3月ですので、「先月のこの1曲」であります。

Love Is A Necessary Evil (1974) - Ann Burton
YouTube: Love Is A Necessary Evil (1974) - Ann Burton

■アン・バートン『BY MYSELF ALONE』は、ぼくが大学生になった 1977年の5月に、東京の西小山に住んでいた兄のマンションへ行って借りてきた「ジャズのレコード」10枚の中の1枚だった。うん、あれからずいぶんと聴いたぞ。自分で買い直して、盤が擦り切れるほどにね。

中でもお気に入りは、A面4曲目の「Love Is A Necessary Evil」だ。

このレコードは、アン・バートン2度目の来日時(1974年)に日本で録音されたもので、バック・ミュージシャンは全員が日本人という布陣。ピアノは、佐藤允彦と小川俊彦の二人で、「この曲」をボサノバ・タッチの軽妙なアレンジで聴かせるのは佐藤允彦のほうだ。

「この曲」は、A面3曲目に入っている「May I Come In」と同じく、マーヴィン・フィッシャー(曲)ジャック・シーガル(詞)のコンビによる小粋で洒落たリリックの唄で、ブロッサム・ディアリーが 1964年にキャピタルから出した『MAY I COME IN』に2曲とも収録されているが、雰囲気はぜんぜん違う。ぼくは断然アン・バートンだな。

それにしても「歌詞」が面白い。

Love is a necessary evil 
A very contrary hereditary evil
Can't live with it, can't live without it
Can't do a doggone thing about it

You want the pleasure, you've got to take the pain

Cause love is a necessary evil
An evolutionary, interplanetary evil
Your heart's pounding, you get excited
Play with a flame and you're ignited, 
Time out for crying here comes a load of rain

「A very contrary hereditary evil」(矛盾だらけで、遺伝的な悪)

An evolutionary, interplanetary evil」(進化論的な古代からの長い時間と、惑星間ほども距離がある宇宙空間的広がりを持つ悪。てな感じの意味か?)

「うまいことを言うものだ。ほんと、そうだよなぁ。」レコードを何遍も聴きながら、「LOVE」が何たるものかまだぜんぜん判っていない当時のぼくは、うんうんと感心して独りごちた。

つい先日CDで再発されたので、このところよくまた聴いているのだが、ちょうど『シンドローム』佐藤哲也(福音館書店・ボクラノSF)を読んでいて、自意識過剰ぎみな主人公(男子高校生)の思考回路と「この曲」とが絶妙にシンクロして、不思議で懐かしい、そしてほろ苦い気持を追体験したのだった。(つづく)


2014年12月30日 (火)

今月のこの1曲。Judy Bridgewater 『Never Let Me Go』

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カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(早川書房)を読んだのは、もう随分と前なのだけれど、ずっと気になっていることがあって、このブログでも何回か取り上げたことがある。

小説の主人公、キャシー・H が何度も何度も聴くカセット・テープに収録された曲、Judy Bridgewater 『Never Let Me Go』のことだ。

(その1)「2006/11/15 の日記」と、11/23、11/25の日記。

(その2)今月のこの一曲『'Cause We've Been Together』アン・サリー

・ポイントは2つ。

1)ジャズ・スタンダードの『Never Let Me Go』とは、どうも違う曲らしい。

2)「この小説」が出版される少し前のこと。村上春樹氏が東京でカズオ・イシグロ氏と会った際に、スタンダードの『Never Let Me Go』が収録された JAZZのCDをカズオ・イシグロ氏にプレゼントしたらしいのだが、「そのジャズCD」が何だったか不明であること。

ところが最近、思いも寄らぬところから事実が判明した。

なんと! 村上春樹氏ご本人が「その種明かし」を季刊誌『考える人』(2013年秋号)誌上においてしてくれたのだ。現在、その全文は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』小澤征爾・村上春樹(新潮文庫)のラストに、文庫版ボーナス・トラックとして『厚木からの長い道のり』というタイトルで収録されている。

ネタバレになるので、「そのCD」が何だったか興味のある人は「この文庫」に直接当たって下さい。

もう一つ。『わたしを離さないで』は、2010年にイギリスで映画化されていて「予告編」は公開前に見た。原作を読んでイメージした寄宿学校「ヘールシャム」や、ノーフォーク海岸の映像が、ほぼイメージどおりだったので驚いた。で、逆にちょっと怖くなったのだ。

だから、この映画は見なかった。

でも、「この曲」のことを、映画ではどう処理したのか、ずっと疑問だったので、このあいだ TSUTAYA から借りてきて見たんだ。映画は原作に忠実に作られており、主人公たち3人の切ない思いが映像からストレートに伝わってきて、想像以上にとてもよかった。

ところで、このジュディ・ブリッジウォーターの「Never Let Me Go」は、実際には存在しない歌手の小説の中だけの架空の楽曲だが、映画では案外軽く扱われていて残念だったけれど、ちゃんと2度ほど流れた。いかにもそれらしいレコードジャケットも映画用に作られている。

これだ。

Judy Bridgewater - Never Let Me Go
YouTube: Judy Bridgewater - Never Let Me Go

小説では、以下のように書かれている。

 テープに戻りましょう。ジュディ・ブリッジウォーターの『夜に聞く歌』でした。レコーディングが1956年。もともとはLPレコードだったようですが、わたしが持っていたのはカセット版で、ジャケットの写真もLPジャケットのそれを縮小したものだと思います。

写真のジュディは、紫色のサテンのドレスを着ています。こういうふうに肩を剥き出しにするのが当時の流行だったのでしょうか。ジュディはバーのスツールにすわっていて、上半身だけが見えています。(中略)

このジャケットで気になるのは、ジュディの両肘がカウンターにあって、一方の手に、火のついたタバコがあることです。販売会でこのテープを見つけたときから、なんとなく人目にさらすのがはばかられたのは、このタバコのせいでした。(p106) -- 中略 --

スローで、ミッドナイトで、アメリカン。「ネバーレットミーゴー……オー、ベイビー、ベイビー……わたしを離さないで……」このリフレインが何度も繰り返されます。わたしは十一歳で、それまで音楽などあまり聞いたことありませんでしたが、この曲にはなぜか惹かれました。いつでもすぐ聞けるように、必ずこの曲の頭までテープを巻き戻しておきました。(『わたしを離さないで』p110)

確かに「スローで、ミッドナイトで、アメリカン」そのものなんだが、メロディはよくあるチープなR&Bって感じで、歌も妙にセクシーなだけでぜんぜん上手くないし、主人公が何度も何度も繰り返し聴いて心ときめかす楽曲とはとても思えないんだよなぁ。

ぼくが小説を読みながらイメージした「この曲」は、キース・ジャレットの「Standars, Vol.2」B面1曲目に収録された「Never Let Me Go」だった。これです。

Keith Jarrett Trio - Never Let Me Go
YouTube: Keith Jarrett Trio - Never Let Me Go

ちなみに、村上春樹氏はどうもキース・ジャレットが嫌いらしい。

ヴォーカル入りだと、やはりアイリーン・クラールかな。

Irene Kral - Never Let Me Go
YouTube: Irene Kral - Never Let Me Go



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