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2018年6月

2018年6月28日 (木)

今月のこの一曲『ユニコーン』作詞:友部正人、作曲:原田郁子


YouTube: 原田郁子fujirock08

■3年くらい前の6月(2015/06/13)に、クラムボンの「Folklore(フォークロア)」を取り上げた。6月に台風がやって来る歌だったからね。

以前から、6月は鬼門で、いろいろと厄介なことが起きてきた。確か、そのちょうど1年前(2014年の6月7日)体調を崩し伊那中央病院に2週間入院することになるのだった。慢性硬膜下血腫だった。転倒を繰り返す、老人の病気じゃん。ほんと恥ずかしい。どこで転んだか、よく覚えていないのだ。

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■クラムボン「フォークロア」に関して書いた、その約1ヵ月後の 2015年の7月5日、このとき初めて、2007年から毎年この時期に南箕輪村の酒店「叶屋」で開催されている「友部正人ライブ」に参加したんだ。そのとき、彼が歌ってくれたのが、この「ユニコーン」だった。なんていい曲なんだ。なんていい歌詞なんだ。マジで泣いてしまったよ。

 友部正人を知ったのは、ぼくが中学2年生の時だ。1972年のことだ。フォークソングがブームだった。吉田拓郎のレコードは無視したが、泉谷しげる『春夏秋冬』、加川良『親愛なるQに捧ぐ』と買って、特に加川良はそれこそ毎日毎日レコードがすり切れるほど聴いた。フォークギターも買ってもらって、フィンガー・ピッキング奏法とか一生懸命練習した。

そして、1973年に入ってから新宿のレコード店「アカネヤ」で入手したレコードが、友部正人『にんじん』(URC) だ。加川良とはぜんぜん違う友部の歌声は衝撃的だった。特に『乾杯』って曲。1972年2月に、日本国民全員がテレビの前に釘付けとなった、あの「あさま山荘事件」を唄ったトーキング・ブルース(加川良「下宿屋」や、海援隊「母に捧げるバラード」みたいに、唄わない歌のこと)だ。キーが外れた彼の歌声は正直下手だ。だけど、14歳の中2男子のココロには真っ直ぐ突き刺さったのだ。そう、一本道の「中央線」みたいにね。

■最近読んだネット記事によると、人間は14歳の時に聴いた音楽が、その人の一生に、ずっと強い影響を与え続けるのだそうだ。ほんとその通りだと思う。あの頃信じたものは、みんな「ほんもの」なんだよ。絶対にそうさ!

なにも音楽だけに限らないぞ。ぼくの場合、TBSラジオ・アナウンサー林美雄の深夜放送「パックイン・ミュージック」の影響は絶大だった。

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(写真をクリックすると、もう少し大きくなります)

■そうさ! 60歳になろうとしているというのに、未だに中坊だった14歳の自分を抱えているのさ。それが「ユニコーン」なんじゃないかな? 

君から生まれた ぼくは

ユニコーンだよ

若い涙は

強い角になったよ

君から生まれて

孤独を知ったよ

音のない世界で

■Twitter より。

南箕輪村の叶屋酒店での友部正人ライヴ。今年で11年目だって。毎年6月末にこうして目の前で友部さんに歌ってもらえる贅沢を噛みしめている。ラス前の「一本道」「反復」そしてアンコールで「遠来」と「夕日は昇る」を歌ってくれたよ。来年もまた来てくれるって。

続き)叶屋店主の倉田さんが、開演前にリクエスト曲を募って回っていたので、ぼくは「ユニコーン」をリクエストした。友部正人さんの詩にクラムボンの原田郁子さんが曲を付け彼女がソロで歌っている。大好きなんだこの曲。CDも買った。ただ、初めて聴いたのは3年前のここ叶屋で、友部さんが歌ってくれたんだよ。

続き)前半で友部さんが歌ってくれたのは「ぼくは君を探しに来たんだ」「ある日ぼくらはおいしそうなお菓子を見つけた」「いっぱい飲み屋の唄」「歯車とスモークド・サーモン」「夜よ、明けるな」「朝は詩人」「ダチョウのダック」「地獄のレストラン」あとは忘れちゃった。

続き)後半で友部さんが歌ってくれたのは「誰もぼくの絵を描けないだろう」「マオリの女」「老人の時間 若者の時間」「小林ケンタロウの回鍋肉」そして、歌ってくれましたよ「ユニコーン」。泣いちゃったな。

続き)あ、いま思い出した。最初の頃に「待ちあわせ」と「けらいのひとりもいない王様」も歌ってくれたな、友部正人さん。

メモしていたワケじゃないから、ものすごく不正確なのだけれど、あと「日暮の子供たちの手を引いて」「船長坂」「ブルース」も歌ってくれた。「ブルックリンからの帰り道」もだっけ?

友部正人に関して書いた過去の記事(2016)

友部正人に関して書いた過去の記事(2017)その1

友部正人に関して書いた過去の記事(2017)その2

2018年6月18日 (月)

若い人たちの力は凄いな! 木ノ下歌舞伎『三番叟/娘道成寺』を観て思ったことなど

■昨日、まつもと市民芸術館小ホールで「木ノ下歌舞伎」舞踊公演『三番叟(SAMBASO )・娘道成寺』を観てきた。素晴らしかった。圧倒された。演劇は「ことば」よりまず「身体」の表現なのだ。

2年前に同じ劇場で観た『勧進帳』で、初めて木ノ下歌舞伎を知ったのだが、いやいや凄い演劇集団だな。


YouTube: 信州・まつもと大歌舞伎関連公演/木ノ下歌舞伎 舞踊公演/主宰:木ノ下さんコメント

■「娘道成寺」。指の爪の先まで神経が行き届いて完璧にコントロールされていた。無駄な動作が全くなかった。そして、なんと美しい筋肉であることよ! 60分間、長唄(これは生演奏ではなくて録音だった)の伴奏に耳を傾けつつ、たった一人で踊る。60分間も、一人だけで、観客を厭きさせることなくステージを務めることなんて、本当にできるのか?

ところが! 出来たんだね、これが。観客は、その一瞬一瞬を見逃すまいと、最後まで舞台上の小さなダンサーの一挙手一投足に注目し続けたのだ。正直、たいへんな緊張感だった。だって終演後、どっと疲れたもの。

彼女が舞台に登場した当初は、まるで転形劇場『水の駅』の役者さんみたいに、超スローモーションでほとんど動かない。一重で細長のダンサーの眼は、じっと正面を見つめ動かない。ああ、和的な顔だ。どことなく、安藤サクラに似ている。そう思った。

BGMで流される「長唄」。一生懸命その意味を理解しようと聴いたのだけれど、ほとんど意味不明だった。次々と「花」が語られたかと思ったら、いきなり「山」の話題に変わる。どこが「娘道成寺」なんだ!

■でも舞台後半、フランス人形のドレスみたいな真っ赤な衣装が、まるでトイレットペーパーみたいに舞台下手から巻き取られる。残ったのは、銀色のテカテカ光沢も艶めかしい爬虫類の皮膚の衣装だ。そう、彼女は大蛇に変身したんだね。

しかし、これから怨念のパワー爆発ダンスが始まるかと思ったら、そうじゃなかったんだよ。彼女の背中から上腕に伸びる筋肉。その、うねるような動きは、間違いなく「へび」だ。そう、楳図かずお『へび少女』の動作。でも、不思議と激しくはない。怒りとか怨みとか、そうじゃあないんだ。

「かなしみ」かな。バカな男にだまされ、それでもついて行って、最後にまた裏切られる。その感情は、たぶん怒りよりも悲しみ(哀しみ)だったのだ。ああ、もう一度見てみたい。

■きたまりさんは、てっきり「モダン・ダンサー」なのだとばかり思っていたのだが、いろいろ検索してみたら、彼女は「山海塾」岩下徹さんに師事したこともあったのだ。なるほどそうか! だから「和」なんだ。土方巽、田中泯、山海塾、大駱駝鑑。たぶん、彼女の踊りには脈々と続いてきた「舞踏」の伝統があったのか。

それにしても、圧倒的な踊りだった。

作家で歌舞伎にも詳しい松井今朝子さんの評がよいな。

ぼくの右側、通路を挟んで2メートルちょっとしか離れていない席で、中村七之助さんが彼女の舞台を涼よかな風情で微動だにせず観ていたが、彼はいったい、どう感じたのだろうか? すっごく興味深いぞ。 (まだまだ続く)

■演じられた順番は逆になってしまったが「三番叟(さんばそう)」も凄かった!

こちらの演目も何度目かの再演だそうだが、演者3人(ダンサー)・音楽・振付・衣装・演出、すべてが刷新されていた。前回演じられた写真を見ると、応援団の学ランを着た男性3人が手に白いボンボンを持っている。大きなダルマを持った写真もあった。

今回は、舞台上にサッカーかバスケットボール試合会場の「ロッカールーム」が設置されていて、演者の3人は客席後方から「おめでとうございます! おめでとうございます!」と笑顔を振りまきながら登場する。私服の大学生たちといった風情だ。

彼らが舞台に上がると、それぞれ徐に着替え始める。サッカー・ワールドカップ「サムライ・ブルー」を思わせる鮮やかな青のユニフォーム。着替え終わった彼らは、ベンチに座って真っ赤なナイキのシューズを履き、ゆっくりと靴紐を結ぶ。

舞台が暗転すると、スピーカーから地響きの如きダンス・ビートが「ズンズン」鳴り響く。まるで、渋谷あたりの「クラブ」に紛れ込んでしまったかのようだ(行ったことないけど)。

まず最初に踊る(舞う)のは「翁」役の坂口涼太郎くんだ。2年前のこの同じステージで観た『勧進帳』で、富樫左衛門を快演(怪演)した彼ではないか! 舞台俳優なのに踊れるのか? 踊れた!

強烈なビートに乗せて、坂口君は低音で唸るように意味不明の呪文を発する。不気味だ。次に登場したのが内海正考。ヒョロリと背が高く、手足が異様に長い。どことなくアンガールズ田中を思わせる。ところが、身体反応は素晴らしい。キレキレのダンスを披露してくれた。

そして最後に登場したのが北尾亘。3人の中で一番小さい彼が、最もダイナミックなダンスを演じた。ああ、彼が振付師だったんだな。「GOD」と書かれた黒いキャップを被り、手には鈴を持っている。

3人が踊り終わると、音楽が不意に止む。静寂。呆気にとられ、ちょっと置いてけぼりを食った観客の気分を代弁する演者たち。「なんか、ぜんぜん伝わってないんじゃね?」

怒った坂口君。この責任の全ては、振付師の北尾亘にあるとばかり、突然北尾の頭をピシャリと叩く。じつにいい音がした。吉本興業のベテラン漫才師でも、これほどの絶妙のタイミングで、ツッコミがボケを叩くことはなかなかにできないぞ。

さて、仕切り直し。演者たちが客席後方の音響担当者に向かって「あれ、いってよ!」と要求。新たなビートが鳴り出すと、今度はマイク片手にラップで語り出す。いつしか青色の上着を脱ぎ捨てた3人。白のアンダーウエアーの背中には「GOD」の黒い文字。

その3人が並ぶと、背丈が「大・中・小」だ。なんだかそれだけで「松竹梅」的にお目出度い。その「大中小」が同時に同じ振付で踊り出す。おおぉっ! 凄いな。完璧にシンクロしている。どれだけ練習したんだ。見ていてとにかく気持ちがいい! 踊りはどんどん盛り上がり、熱狂的なダンスが次々と繰り出される。EXILEの、縦に並んでグルグル回るヤツまで披露された。

いつしか客席右前方から手拍子が始まる。まるで、リオのカーニバル会場みたいな祝祭空間になっていたよ。ビートはサンバじゃなかったけれど、三番叟(さんばそう)だからな。

 

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