■亀和田さんはミーハーだ。
テレビに出るのが好きだし、テレビを見るのも好き。
そして、アイドルが好き。
亀和田さんが「週刊文春」誌上で連載する「テレビ評」に、何時になったら『あまちゃん』が取り上げられるのかって、やきもきしてたら、しばらく前にようやく載った。やっぱりなぁ、亀和田さん能年玲奈が可愛くてしかたないのだ。
この週の週刊文春は凄かったな。亀和田さんの他に、小林信彦御大も、みうらじゅん氏も『あまちゃん』を語っていたからだ。
そしたら、毎日新聞夕刊でアイドル評論家(いや、今や能年評論家)中森明夫氏と『あまちゃん対談』なんてしてるし。
■亀和田さんの名前は、ずいぶんと前から知っていた。本も買った。
『ホンコンフラワーの博物誌』亀和田武(本の雑誌社)だ。
そうか、あの頃『本の雑誌』を読んでいて、亀和田さんの名前を覚えたのか。
■ところで、亀和田さんの新作『夢でまた逢えたら』(光文社)の評判がやたらいいので気になって、本屋さんで探したが見つからず、結局アマゾンで入手した。
読み出したら止まらない。面白い!
さすが、文章のキレが違う。めちゃくちゃ巧い。傑作だ。
導入の「漫才ブーム直前。四谷ホワイトで遭遇した寡黙な芸人」がまずは読ませる。印象的な場面は、中野神明小学校の3年生に転校してきた亀和田少年がクラスで出会った2人の少女のうちの地味な方、市川さんと春草の繁る土手で「市川さんの父親自家製の梅酒」を飲む場面だ。
なんか、映画の1シーンみたいに、ぼくの心に刻印されてしまったよ。
それから、かつての『笑っていいとも!』タモリの「テレフォンショッキング」みたいに、次から次へと僕の大好きな(ちょっとマイナーな著名人たち)が連想ゲームみたいに登場してくるのだ。いや、まいったなぁ。
亀和田さんは(かつて〜今も)知り合いだった人々のことを、親愛の情を込めて懐かしくしみじみと語っているのだよ。
高信太郎、ビートたけし、ナンシー関、佐野洋子。
ナンシー関がテーブルに彼女の名刺をばらまく場面がカッコイイったらない。それから、佐野洋子さんの別れた夫、広瀬郁氏のデザイン事務所に、コピーライターとしてあの芹沢俊介氏が務めていて、ヨーコさんに
「セリザワさんってマジメでさあ。一緒にいても、退屈でおもしろくないのよ。ギャグいっても、つまらないし。マジメな人って、あたし苦手」と言わせる。
当時若手では吉本隆明の一番弟子といわれ、いまも教育や文芸評論の分野で活躍している芹沢俊介さんも、ヨーコさんにかかると散々である。
あはは! 笑ったなぁ。
『ミッドナイト in 六本木』の頃の話では、森田健作に、若くして亡くなったショコタンの父親、中川勝彦が絡む。そしてドクター荒井。4代目桂三木助に、松野頼久のダークさ加減。館ひろしがCMタイムにいきなり司会席にやってきて、ピンクレディのミイちゃんを口説き始めたこと。スゲー世界だなぁ。
それから、亀和田さんが何故『本の雑誌』に連載していたのかずっと不思議だったのだが、そうだったのか! 亀和田さんは、目黒考二氏の会社の後輩だったんだ。知らなかったなぁ。
あと、嵐山光三郎氏の忠告。国立駅南口にある深夜ジャズ喫茶 → 国分寺駅南口にあったジャズ・バー「ピーター・キャット」と村上春樹のこと。同時期に国分寺駅北口にあったジャズ喫茶「モダン」に、亀和田さんは高校生のころ入り浸りで、午前中から行って弁当食ってても、ウエイトレスのお姉さんは優しく黙認してくれて、どうも後になって思うと、彼女は『海炭市叙景』の佐藤泰志の奥さんだったかも? っていう話とか。しみじみ読ませるなぁ。
千駄ヶ谷に移転したからの「ピーター・キャット」の話は、シュートアロー氏の『東京ジャズメモリー』(文芸社)に詳しい。
ジャズつながりで、マイク・モラスキー『ジャズ喫茶論』は前に読んだし、片岡義男氏がデビューする前に、あの『マイナス・ゼロ』を書いたSF作家、広瀬正氏からテナー・サックスの手解きを受けていたこと。ビックリだよ。
堺屋太一の女子プロレス好きにも驚いた。横山剣がメジャーになる前から亀和田さんはずっと押していたこと、さすがだ。マンガの神様、手塚治虫氏との会話。ゴジラ松井秀喜の哀愁。デーモン小暮の素顔。鈴木いづみが阿部薫に左足の小指を切断された時の話を佐藤愛子としている「週刊微笑」の記事。
ナンシー関に「この間、亀和田武さんに会ったら、やっぱり裕木奈江好きだって言ってたもの。とことん一緒に堕ちてみたい、田舎の温泉宿に恋の逃避行して住みついて、裕木奈江が仲居になって自分が下足番やれたらいい、だって(笑)。」って言われてるし。山崎ハコも林美雄の名前も出てくるし。
沖縄コザにあったライブハウスのオーナー、カッチャンこと川満勝弘氏のこと。五つの赤い風船の歌「まぼろしのつばさとともに」を彷彿とさせるような、1969年、避暑地の別荘にかくまったアメリカ脱走兵の話。あと「噂の真相」の元編集長、岡留安則氏はいま那覇に住んでるんだ。
ラストは、最近落語評論家として売り出し中の広瀬和生さんの話。彼の本は3〜4冊持ってるよ。
なんかなぁ。亀和田さんがしみじみ羨ましいなぁ。こんなにも素敵な人たちと知り合いでさ。
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