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2021年4月

2021年4月18日 (日)

『日本再生のための「プランB」』兪炳匡(ゆう へいきょう)集英社新書

■この本、ものすごく面白かったのに、世間ではまったく話題になっていない。ネット上でもあんまりだ。なんだ、誰も読んでないのか?

以下、ツイッターで呟いた感想を編集して再録。

 
もうね、日本は「日の出る国」なんて威張っている場合ではないのだよ。とうの昔に隣国の韓国や台湾、そして中国にも追い抜かれていたのに、誰も気づかない。今や先進国どころか、アフリカか南米(そう言ったら彼らに失礼だけど)並みの後進国(いや後退国か)の政府首脳部の指導のもと破局へと一直線。
この本の「第1章:なぜ『プランA』は日本で失敗するリスクが高いか」を読むと、誰もが僕と同じ(上記のような)つぶやきをするのではないかな。
 
 
『日本再生のための「プランB」医療経済学による所得倍増計画』兪炳匡(ゆう・へいきょう:医療経済学者・医師。神奈川県立保健福祉大学イノベーション政策研究センター教授)英社新書。まだ半分だけれど、これ「地方再生」のための切り札なんじゃないか?特に第3章は必読だ。伊那市の白鳥市長さんにこそ読んで欲しい。
 
 
あ、2021年3月22日発行の集英社新書です。経済関係の本では『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室』中野剛志(KKベストセラーズ)以来の画期的な本だ。富と人材の東京への流出(漏れ)を防げるのは、地方自治体を含む「非」営利組織なのだな。
 
 
『日本再生のための「プランB」』(集英社新書)p127に載っている「バケツの図」がとても分かりやすい。ダム建設とか巨大公共事業は大手ゼネコンが関わるのでバケツの穴から富は地方から東京へ流出する。

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ところが非営利組織は、事業収入を「組織外の株主」に配当することは禁じられているので、非営利部門の収益は東京へ流出することなく地元内に還元・循環し、さらには増収をもたらすのだ。
この事実は、福島の除染作業の問題とか、東北地方の復興事業とかとも密接に関わっていると思うぞ。MMTは政治で動かせるので、どこにお金を出すかだ。それは、地方行政の公務員増員、保健所を中心とした保健予防衛生事業、医療・介護部門、そして大学での基礎研究、教員を増員して小学級教育の実現。
 
それから、演劇・映画・文学・音楽など文化活動への援助こそが必要だ。そういうことを、もっともっと政治家さんたちに理解して欲しい。自民党の人たちは無理だろうけど、野党の人たちには分かって欲しいな。
 
つまり、一言でいえば「大阪維新」が大阪府内で推し進めてきた政治行政と真逆の地方行政を行うことなんじゃないかな。

 『日本再生のための「プランB」 医療経済学による所得倍増計画 』兪 炳匡(集英社新書)読了した。第4章がまた、途轍もなくぶっ飛んでて、あはは!たまげました。面白かったなあ。もっと評判になってよいはずなのに、誰も読んでないの?
 
 
地方行政で一番問題なのは、お金と住民が東京へどんどん流出していることだ。地元からの転出を減らし、首都圏から地方への移住組(Iターン)を増やすべく魅力ある「田舎暮らし」をプレゼンすること。
 
 
そこで著者が提案したのは「物々交換」だ。Iターンしてきた移住家族に、彼らが提供できる(文化人文学的な)仕事と対等の報酬として、地元農協がお米や野菜を提供すれば、移住した彼らの食費は相当軽減されるのだ。消費税もかからないし。
 
 
著者は、薬を使わずに早期治療&健康予防の医療活動として「演劇」に注目している。患者も治療者もいっしょになって舞台に立ち、それぞれが「他者」を演じることで理解を深めることができるのだ。
 
 
ぼくはこの部分を読みながら、あれ? どこかで聞いたことがある話だぞ? そう思った。あ、なんだ。若月俊一院長が、佐久総合病院に赴任して、無知な農民の健康教育のために始めた病院スタッフによる演劇と同じじゃん。アメリカ仕込みじゃないよ。長野県では脈々と受け継がれているのですよ!
 
 
 
 
 
 

2021年4月 7日 (水)

熊本在住の男女2人ユニット「flexlife」がイイぞ!(その2)

■怒濤の連続連夜更新だ!!

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(写真をクリックするとデッカくなります。)

■むかしから「男女二人のペアユニット」が好きだ。

ハンバートハンバートは20年以上前からファンだし、羊毛とおはなも大好き。千葉はなさんは乳がんで亡くなってしまったけれど。最近では、NHK総合『あさイチ!』近江さん登場の最終回にナマ出演ナマ演奏を披露した「T字路's」も、お気に入りだ。

ちょっと思い出してみると、このユニット形態は伝統的なものがあるな。ヒデとロザンナ、チェリッシュ、ダカーポ、赤い鳥だった紙風船。それに、トワエモア。あ、それから地元の伊那市高遠町には「亀工房」前澤夫妻がいるぞ!

■東京は下北沢あたりを根城に、地道な音楽活動を続けていた「flexlife」が何故、いまは熊本で生活しているのか?

大倉健さんと青木里枝さんは、結婚したあとしばらく音楽活動を休止していた。男の子(勘太郎クン)が生まれて、子育てに専念していたからだ。そこへあの、2011年3月11日がやって来る。福島第一原発はメルトダウンした。

彼らは子供を抱えて逃げた。東京からずっとずっと西へ。そうして九州は熊本の田舎に辿り着いたのだった。熊本県宇城市豊野町。(現在は熊本市内へ転居)

そしたら今度は、2016年(平成28年)4月14日。熊本地震が発生。ほんと大変だったんだね。

熊本には、ぼくが個人的に注目している人たちが他にも住んでいる。詩人の伊藤比呂美さんと、坂口恭平さんだ。

彼らが熊本へ移住した後に作ったCD『Wild Cat Blues』を(ごめんやはり中古で)購入して聞いてみた。驚いた! それまでの、アーバンでポップでソウルフルで格好いい音楽はそこにはなかったのだ。正直がっかりした。

■たとえば、ハンバートハンバートの新譜を購入すると、ぼくは処置室に置いてあるラジカセで診療時間中ずっとリピートして延々と聴いている。看護師さんたちはさぞや迷惑してるに違いないのだが、そこは院長の特権で、とにかく繰り返し繰り返し聴き続けるのだ。数週間から1ヵ月近く同じCDを聴き続けることもあるよ。

そうすると、噛めば噛むほど味が出る「スルメ」みたいに、聞き込んで初めて「その曲」のよさが分かってくることが多いのだ。

flexlifeのCD『Wild Cat Blues』も、そんなふうに繰り返し聴いた。地味な曲ばかりだ。演奏もシンプル。ぜんぜんソウルじゃない。でも、10回くらい聴いたあとかな、突然「ことば」がズシンと僕の心の奥底に響いたのだ。その曲は「ノスタルジア」。歌詞を引用すると、JASRACが突然やって来てブログを削除してやるぞ!と脅してくるのだが、すみません、以下引用です。


YouTube: flexlife ノスタルジア

泣いたり 笑ったり

そんな風に過ぎてく日々が

いつまでも続くだろう

そんな風に思っていた

■「あっ!」これって、「コロナ以前」のぼくらが当たり前に過ごしていた生活じゃん!

そう思ったら、涙が流れてきたのだ。それから「らんなうぇい」


YouTube: らんなうぇい。from Wild Cat Blues

"あの日" から らんなうぇい。 出口探す人よ

"あの日" から ふぁらうぇい。 歌ってよ Boy Friend!

負け犬だと 指さされても

おそれていい 逃げ出していい。

君は君のため。らんなうぇい。

たぶん直接は、放射能から逃げ出した時の歌なのだろうけど、いま思うともっともっと大きな大切なことを言っていたんだね。学校で陰湿な「いじめ」を受けている子供たち。夫からのDVに悩まされている妻たち。ブラック企業の犠牲になっている若者たち。生真面目すぎて会社に尽くしてきたがために鬱病になってしまった企業戦士たち。

そうさ、現状から逃げ出していいんだよ。そう、君のために。

それから「時計仕掛けのステップ」も不思議な歌だ。自発的には一切行動できないで、ただ操り人形のように人生が国家から制御された、ジョージ・オーウェル『1984』か、テリー・ギリアム『未来世紀ブラジル』のような世界。 でも、


YouTube: BE THE VOICE LIVE///WGT farewell party

(1時間21分後あたりになって、リモートで登場します!)

踊ろ 踊ろ 時計仕掛けのステップで

踊ろ 踊ろ Rock Stedy, Samba, New Orlens

すきな服 すきな色 すきな様に着飾って

いざ進め! 時計仕掛けでも

ぼくはこの曲を聴いて、小坂忠の名作「機関車」を思い出したよ。 

あと、タイトル曲の『Wild Cat Blues』。ドラムスとピアノが入ってくる瞬間が、いつ聴いてもじつに気持ちイイ! なんだろう。凄く疾走感がある曲だ。ちょっと、クラムボンの演奏を彷彿とさせる。「せーの」で一発録音したというライヴ感、臨場感のなせるワザか。


YouTube: flexlife wild cat blues

でも、なんて言うかな。「地べたにしっかり足が着いている」演奏なんだ。東京にいた時は「重力に逆らって遊んで」ふわふわと漂っていたのに、ぜんぜん逆で、プリミティブでシンプルで、力強い音楽が出来上がっていたことに、ちょっと感動してしまったのだ。

これはイイぞ!

■ぜひ一度、生ライヴで聴いてみたいものだが、熊本は遠いなあ。

でも、FDAが熊本空港から名古屋小牧空港に飛んでいるので、時間的にはそれどかからない。名古屋→岐阜→信州ライヴ・ツアーとか、いつの日かできるといいなあ。

(おしまい)

2021年4月 5日 (月)

熊本在住の男女2人ユニット「flexlife」がイイ!(その1)


YouTube: 夢で逢えたら( 大瀧詠一/吉田美奈子)・yume de aetara ( minako yoshida/ eiichi ohtaki ) by flexlife

■前々回かな、吉田美奈子の「ラスト・ステップ」を取り上げた時に、YouTube で発見した「flexlife」。

いまや世界中で大注目の「ジャパニーズ・シティポップ」を次々とカヴァーして、YouTube にどんどんアップしている。ヴォーカルは、青木里枝、ギターは大倉健の男女2人組だ。別姓だが、夫婦みたい。ハンバートハンバートといっしょだね。

まったく知らなかったミュージシャンだが、ウィキで調べると 1998年のデビュー。結成23年じゃないか!

ということは、ハンバートハンバートより古いのか?


YouTube: エイリアンズ(キリンジ)/Aliens(Kirinji)covered by flexlife


YouTube: ルビーの指環 (寺尾聡) × THE ROLLING STONES ( MISS YOU ) COVERED BY FLEXLIFE

■彼らのCDを聴いてみたくなって、ほんと、すまぬ。Amazon で安かった中古盤をまずは購入した。『メロウグルーヴ』(フレックスライフ)だ。

カヴァーではなくて彼らのオリジナル曲。これがめちゃくちゃ良かった! ネオ・ソウルって言うの? ふわふわと漂うような浮遊感がじつに気持ちイイのだ。アコースティックだけれど、ハンバートハンバートや、羊毛とおはなみたいな「フォーク」じゃない。R&Bだ。グルーヴ感っていうヤツ? リズムがね、黒いんだよ。でも、T字路's ほど真っ黒じゃあない。例えば、こんな曲。

 ・


YouTube: flex life / 寝ても醒めても (flex life : Nete mo samete mo)

■このPV。凄いよね。まるでウッドストックだ。1970年代初め。まだヒッピーが日本各地に集団で住んでいた頃の感じだ。モノクロだし。長野県でも入笠山の麓に集落を作っていた。青木さんは、スーパーフライがデビューするずっと前に「ほぼ同じ衣装」で歌っていたのか!

ちょっと癖になる歌い方だよね。エリカ・パドゥみたいな、松倉如子のような不思議な響きがある。

エレピを弾く大倉さん(若いぞ!!)は痩せていて、中川ひろたかじゃなくて、まるで「松尾スズキ」だ。あはは!

彼らのオリジナルは、基本ギターの大倉健:作曲、ヴォーカルの青木里枝:作詞で出来ている。大倉のお洒落なメロディセンスに先ずは驚くが、ここで注目したいのは、青木里枝の「言葉」の感覚だ。

愛が途切れる音がする

夜毎悪魔が囁いた

光と闇 月と太陽

混ざりあうわけがない

(中略)

寝ても醒めても頭の中はおとぎ話ねあなたは

夢から醒めた日々の世界は多くを語りかける

寝ても醒めても疑いや嘘、憎しみは続く

重力に逆らって遊ぶ

「寝ても醒めても」

夢紡ぎ歩く二人 何処を目指すのだろう

行く宛て など何もない 長い道

照りつける太陽

揺れる蜃気楼

広がる砂丘に つづく足あと

二人探してる 霧の向こうの”それいゆ”

見失わないように あぁ 歩いていく

「それいゆ」

■なんかね、文学的なんだ。詞がね。アーバンでポップなメロディに被さって、寺山修司みたいな、1960年代末の雰囲気むんむんの言葉たちが綴られてゆくのだ。彼女は、自らの名前のローマ字表記を「Rie Aoqi」と書いていて、これってもしかして、早世したジャズ評論家「間章(Aquirax Aida)」の影響を受けているのではないか?

これは僕の想像でしかないのだけれど、きっと彼女は「大島渚」の映画が好きに違いないし、漫画は永島慎二の『フーテン』と『黄色い涙』がお気に入りだと思うぞ。僕よりずっと若いはずなのにね、何故か60年代のレトロ趣味。不思議だ。

(その2)に続く!


YouTube: 日曜日よりの使者(ザ・ハイロウズ・THE HIGH-LOWS)covered by flexlife

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