件(くだん)が登場する漫画
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漫画に描かれた、件(くだん)を集めている。
「下駄屋に生まれたというくだんのために、僕らは一家総出で岩国に出向いた。もちろん買い取るためだ。」(津原泰水『11 / eleven』河出文庫 11ページ)という、印象的な書き出しで始まる短篇小説を完全漫画化した『五色の舟』近藤ようこ(KADOKAWA)を最近読んで感銘をうけたからだ。
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件(くだん)のことなら知っている。
からだが牛で、顔だけ人間の浅ましい化け物。
牛から生まれて三日にして死し、その間に人間の言葉で、未来の凶福を予言する。
歴史に残る大凶事の前兆として生まれ、数々の予言をし、凶事が終われば死ぬとも言われている。
漫画家 とり・みき氏による解説:「依って件(くだん)の地獄行き」
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『虹ヶ原ホログラフ』浅野いにお(太田出版)138ページにも登場する。これは、うちの長男に教わった。
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ずいぶんと昔に、確か「少年マガジン」で小松左京『くだんのはは』を、石森章太郎が漫画にしたのを読んだ。膿と血で汚れた包帯と洗面器の絵がリアルに記憶されていて、図書館で検索したら『漫画家たちの戦争:未来の戦争』(金の星社)に収録されていることが判った。これです。(写真をクリックすると、もう少し大きくなります)
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■『漫画家たちの戦争 / 未来の戦争』(金の星社)に収録されていたのは、「くだんのはは」石森章太郎、「落雷」星野之宣、「地上(うえ)」山上たつひこ、「飛ぶ教室」ひらまつつとむ、「百鬼夜行」諸星大二郎、「THE WORLD WAR 3 地球 THE END」松本零士、「山の彼方の空紅く」手塚治虫、「ある日…」藤子・F・不二雄。
みな大変な力作で、読み応えがあった。
石ノ森章太郎の「くだんのはは」には、憶えていたとおりの「膿と血で汚れた包帯で山盛りの洗面器」が描いてあった。ただ、この「くだん」は「頭が牛で体は人間」だった。そりゃそうだろう。「くだんのはは」は「人間」なんだから。
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■中でもいちばん驚いたのは、手塚治虫『山の彼方の空紅く』だ。1982年にマイナーな漫画雑誌に発表された「この漫画」は、今から33年も前に描かれたのに、沖縄普天間基地の辺野古移転反対運動を予言したかのような漫画だ。これは凄いぞ。ただし、「くだん」は出てこないけどね。
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