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2010年4月12日 (月)

井上ひさし氏 死去

■今日の信濃毎日新聞夕刊7面に「笑いと奇跡生む舞台」と題して、井上ひさし氏の死を惜しむ印象的な追悼記事が載った。匿名の記事にしては珍しく、書いた記者の井上氏に対する気持ちが切々と伝わってくる名文だった。少しだけ引用する。



 浅草のストリップ劇場、フランス座で台本を書いたのがスタートだった。以来、テレビの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の台本をはじめ、小説や評論でも一流の仕事を積み重ねたが、最もこだわり情熱を傾けたのは舞台、しかも喜劇だった。「なぜ舞台なのか」と尋ねたことがある。

 「俳優、スタッフ、観客のすべてが最も良い部分をささげ合う。全員が見えない糸でつながり一期一会の時を共有する。素晴らしい舞台は、そうした奇跡を起こすのです。逆に奇跡が起こるとは思えないような原稿は、初日が迫っていても破り捨てなくてはならない」

 「なぜ喜劇なのか」という問いにはこう答えた。「人は泣きながら生まれてくる。生きる苦しみは最初から人の内部に備わっている。でも笑いは違います。人と触れ合って初めて生まれる。みんなで作り出すのが笑いです。難しいけれど、最も普遍的で大事だと思う」

 小学5年のとき終戦を迎えた。「自分の命は天皇陛下のものではなく。自分のものと実感した。開放感に満たされた」。世の中の価値観が一変する瞬間を見た衝撃が創作の原点にある。

 東北の小さな村が独立を宣言する小説「吉里吉里人」で、国家とは何か、言葉とは何かを問うた。舞台「夢の裂け目」など東京裁判3部作では戦争責任に切り込んだ。常に庶民の側から戦争を見つめた。「言葉は無力です、最初は。でも誰かが声をあげなければ、何も変わらない」。言葉の力を信じ続けた。(後略)

 「2010年4月12日(月)信濃毎日新聞夕刊7面より」


ぼくは井上さんの小説はあまり読んでない。『モッキンポット氏の後始末』『青葉繁れる』くらいか?『ブンとフン』は未読。ぼくにとっては、やっぱり劇作家としての井上氏がまず一番だな。

『きらめく星座』は、たしか時期を変え、キャストも変わって2回観た。大好きな舞台だ。劇中で、宮澤賢治の「星めぐりの歌」を初めて聴いた。それから役者「すまけい」を発見したのも、この芝居だったなぁ。


謹んでご冥福をお祈りいたします。

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