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2010年4月

2010年4月 2日 (金)

ロバの音楽座 高遠ゆかしコンサート

■もう1週間も前の話だが、
先週の土曜日午後4時から、高遠町福祉センター「やますそ」で
「ロバの音楽座 高遠ゆかしコンサート」があって、家族で聴きに行ってきた。

いやぁ、よかった。


初めて聴いたのだが、もろ好みの音楽だった。
ま、予想はしてたんだけどね。想像以上だったな。


もともと「ハンバートハンバート」とか、「亀工房」とかが好きなんだ。

アコースティックにこだわり、
どこか懐かしい、古い昔の童謡のような心地よい響きがあって、
はるか遠い大陸から、はるばる吹いてくる「風の音」を奏でるグループ。
中世ヨーロッパからアジア中近東までカバーする、
ワールドワイドで無国籍な、不思議な音楽、不思議な楽器たち。
子供から大人まで楽しめて、守備範囲がじつに広い。


まさに「そのまんまの音楽」だったのだ、「ロバの音楽座」。


じつは、妻も子供らもそれほど興味はなかった。それをぼくが(ちょっとだけ遠慮しながらも)半ば無理矢理連れて行ったのだ。会場となった高遠福祉センターは、立派なステージがあるのだけれど、この日は緞帳が下りたままで、ステージの前に、客席と同じ高さで、ちょうど人形劇の舞台のような彼らの小さな舞台装置が設定されていた。


その前にはゴザがひかれ、僕らが絵本の読み聞かせをする時のように、小さな乳幼児を抱っこした若い夫婦や元気な子供たちが靴を脱いで座った。ぼくもその中に混じりたかったのだけれど、多感な年頃の息子たちが「嫌だ」と言ったので、仕方なくゴザ席の後ろに並べられたパイプ椅子に座ることになったのだった。会場は思いの外たくさんの聴衆で満たされ、何とも和やかないい雰囲気だったよ。


舞台の前には、音を拾うスタンドマイクが2本だけ。
彼らの楽器にはアンプは接続されておらず、ほぼ「ナマ音」だった。


最初は音がやや小さくて戸惑ったけれども、
聴き進むうちに「その音」がなんとも心地よくなっていったのだ。

驚いたのは、彼らのアンサンブルとハーモニーが完璧だったこと。


一発撮りのライヴなのに、楽器演奏を誰も間違わない。もちろん、楽譜はなし。なにも見ない。
それなのに、メンバー4人は完璧なアンサンブルを奏でるのだ。これにはたまげた。
プロって、凄いな! 感動した。


例えば、前日の金曜日に「いなっせ」7Fで、ぼくが一人でギターを弾きながら絵本を読んだ時には、もう、人様には聞かせられないような稚拙な演奏、歌声で、この日わざわざ集まってくれた聴衆に対して申し訳なく思ってしまったものだ。まぁ、入場料は取ってなかったけれどね。


そこには、アマチュアだから許されて当然だっていう「甘え」があった。
ところが、プロは違う。


たとえ田舎の会場で、子供ら相手とはいっても、
彼らは決して手を抜かない。
どんな場所、状況でも、つねに最高のパフォーマンスをみせることだけに
心をくだいているのだ。


すっごいなぁ。


■そらからもう1つ驚いたことがある。

男性2人の声が、本当に澄んで「いい声」だったことだ。
男女4人の混声合唱が、聴いていて何とも気持ちよいのだよ。
完璧なハーモニー。


あと、いろいろと知らない珍しい楽器がいっぱい登場して面白かった。
ぜんぜん楽器じゃない「新聞紙」が突如リズム楽器となったり、
ボール紙が不思議な笛に変身したり。おもしろいなぁ。


彼らは、全国の「親子劇場」を廻っているから、
子供らの扱いがじつに上手い。

そうは言っても、高遠の子供らは「引っ込み思案」だから
なかなか大変なんじゃないかなって、ぼくは一人で心配していたのだが、
全くの取り越し苦労だったね。


意外にも、高遠の子供たちは実に積極的だったのだ。
最初に手を挙げてステージに立った子は、高遠小学校低学年の生徒さんで
将来の夢は、なんと「俳優」になることだと言った。
そうかそうか。


アフリカのマサイ族の男たちみたいに、ずっとジャンプさせられた高遠第一保育園年長さんの彼もよかった。

高遠の子ら、やるじゃん!


昔、田山花袋が歌に詠んだ、
「行きかう子らの 美しきまち」そのものじゃん、
ぼくは一人、密かに感動していたのであった。


■「ロバの音楽座」のことは、名前だけは知っていた。全国各地で活動する「親子劇場」のためのプログラム集にいつも載っていたからね。ぼくは「伊那親子劇場」が年間スケジュールを決めるためのアンケートに、何年も続けて「ロバの音楽座」希望! 
と書き続けてきたのだ。でも、ギャラが高かったためか? 僕ら家族が入会中には「ロバの音楽座」が伊那へやってくることは適わなかった。


息子たちも成長し、数年前に「伊那親子劇場」は脱会してしまった。
でも、今回思いがけず「ロバの音楽座」のステージを観ることができ、本当にうれしかった。


ステージの最初、メンバー4人が会場後方から行列で楽器を吹き鳴らしながら登場した曲がよかったな。チンドン屋さんみたいで。たしか「裸の王様の行進」っていう曲だったと思う。そして、次に演奏された曲がめちゃくちゃよかった。なんていいいメロディ、印象的な歌詞なんだろう! コンサート終了後、CDを買うときにメンバーの「大宮まふみ」さんに訊いたら、「プレゼント」っていう曲で、今回持ってきたCDには未収録なんだそうだ。残念。


3曲目は「風が」という曲だった。

風が吹く 風が吹くよ スイカの電車 通り過ぎる 風が吹く 赤いベンチ 昼寝している 風が吹くよ


ぼくは、この曲を聴きながら
カザフスタン、ウズベキスタン、アフガニスタン
の風景を思い浮かべていた。


『よあけ』で有名な絵本作家 ユリ・シュルヴィッツはユダヤ人で、
第二次世界大戦中はナチス侵攻のためポーランドからトルキスタンへの移住を余儀なくされた。食べるものもない毎日。いつも空腹を抱えた家族。そんな中、彼の父親は家族のために食料を得るべく市場へ出かけてゆく。ところが……『おとうさんのちず』(あすなろ書房)より。

そこにはただ、風が吹いているだけなのだ。
砂漠を吹き抜ける「風の音楽」。

それが、彼ら「ロバの音楽座」が目指す音楽に違いない。
ぼくはそう確信した。

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