演劇のネット配信は、なぜダメなのか?
■先日、面白い「 note 」の文章を Twitter で教えてもらった。
なるほどなあ。自宅リビングだと周りに雑音が多すぎて、お芝居に意識を集中できないから、緊張感が維持できないのか。
「劇場の空間は、否が応でも僕と日常を切り離してくる。」
ただ、著者も言ってるけど、じゃあ何故「映画」ならスマホで見ても見た気がするのか? それに、この方は役者さんだから、観客としてよりもステージ上から客席を見ている立場にあるはずなのに、その視点がまったくない。どうしてだろう?
僕も、保育園で「絵本の読み聞かせ」をし、准看護学校で小児科の講義をし、講演会の講師としての経験も多々ある。で、そのつど聴衆の心を如何につかみ取るかで四苦八苦し、外した(スベった)時の、あの波が引いていく感じの怖ろしさを何度も体験した。大切なのは、劇場という閉鎖空間に閉じ込められたステージ上の役者と、客席に座っている観客とが、互いに呼応して醸し出す、あの独特な「その場の空気」なのではないか?
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■以下は、『長野医報4月号』の特集「お芝居大好き」の「前文」としてぼくが書いた文章です。実際に載ったのは、この短縮版でちょっと(ずいぶん?)違います。ご了承ください。
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今や映画は、映画館へわざわざ足を運ばなくても、WOWOW、レンタルDVD、ネット配信で、自宅のリビングや外出先のスマホでも見ることができます。もちろん巨大スクリーンで大音響のもと観たほうがいい映画(スターウォーズ・シリーズとか)はありますが、小さな液晶画面でもそれなりに満足してしまうものです。
ところが、お芝居は違います。テレビの「劇場中継」を60V型の液晶大画面で眺めても全く観た気がしない。何故でしょうか? 理由は簡単です。「そこ」に自分が「いなかった」からです。
先日、劇作家・前川知大さんのツイートを読んで「はっ!」としました。
「昨日来た姪(高1)は演劇を観るのがまだ二回目。アニメや映画で育ってきて、演劇はどう思ったかと聞くと。干渉可能性が怖いと。つまり立ち上がって叫べば芝居を壊せるという事実が恐ろしく、客席で緊張するのだと言う。よく客が入って芝居は完成すると言うが、そのことを本質的に理解してるのだな。」
演劇というのは、ステージ上の役者とフロアの観客とが「共犯関係」にある芸術なんですね。劇場というその場限りの閉鎖空間に「いま・ここ」で役者と観客が息を合わせ(同時に息を吸い、同時に息を吐く)その「一体感」を感じることができる。それが「お芝居」なのです。紀元前5世紀のギリシャで生まれた演劇が、2020年を迎えヴァーチャル技術全盛の現在でも未だ途絶えないという不思議は、まさに「そこ」にあるのだと思います。
一人芝居の極意は落語です。さらに日本の伝統芸能には能や歌舞伎があります。海外には、シェークスピアの演劇やワーグナーのオペラがあるし、劇団四季のミュージカルや宝塚歌劇の語りきれない魅力もあるでしょう。松本には「まつもと市民芸術館」があって、隔年で「信州まつもと大歌舞伎」が開催され、串田和美芸術監督のもと、日本中の演劇人注目の的となっています。
もちろん自ら役者としてステージ上で大活躍する人もいます。よく言われますよね『○○と役者は三日やったらやめられない』と。さて、どんなお芝居好きが登場するのでしょうか。
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■先日の昼休み、日テレ『ヒルナンデス』を見ていたら、落語家の「柳亭こみち」さんが出ていた。
早稲田を出て、英語学習で有名な出版社「アルク」に就職した彼女が、なぜそのキャリアを捨ててまで落語家の道を選んだのか?
「たまたま入った寄席(新宿末廣亭)で、初めて落語を聴いたんです。ビックリしました! たった1人でその場の空気を支配し、観客の心を鷲づかみしている。冴えないオジサンが1人ただしゃべっているだけなのに、聞いていて目の前にその風景がありありと浮かんでくる。落語って凄いな! そう思ったんです。」
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柳亭こみち師は、学生時代に熱烈な演劇ファンだったのだそうだ。そんな彼女が、究極の「一人芝居」である日本の古典芸能「落語」に出会った。その時に体験した落語家が、柳家小三治だったんですね。以後、彼女は小三治師の「おっかけ」女子となる。
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■新型コロナ禍による緊急事態宣言によって、寄席は閉鎖され、地方の落語会もことごとく中止となった。 Twitter でフォローしている落語家さんはみな、3月からは全くの収入ゼロの日々が続いている。そこで、過去の高座の映像をネットにアップする落語家さんも何人か出てきた。
YouTube: 【重大発表】落語家・春風亭一之輔から皆様にお知らせ【緊急事態】
春風亭一之輔さんは、YouTube でなんと! 毎晩「十夜連続公演」をライブ配信で続けている。画面右横に次々と聴視者のコメントが流れてゆく。なるほど双方向で呼応してはいる。でも、何かが決定的に違う。
やはり、落語でネット配信は無理なんじゃないか。映像をやめて「音声のみ」なら、まだあるかもしれない。だって昔から
落語はラジオで聴いてたし、レコードやCDで聴いてきた。見えないほうが想像力がかき立てられるからね。落語のDVDはたくさん買って随分と持ってはいるけど、ほとんど見ないな。だって、面白くないもの。寝る前にCDで聴いていたほうがよっぽど臨場感がある。
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ただ、それを言っちゃあおしまいだよなあ。
すみませんでした。
一之輔。良いですね。家元談志の次に好きです。ミドリブタ氏と学生時代一緒に遊んでいた人が知人です。では。
投稿: アート | 2020年4月29日 (水) 11:11
アートさん、ごめんなさい!
コメントに気づかずにいました。
読んでくださってありがとうございます。
林美雄氏とお知り合いなのですか?
それは凄いな。
投稿: | 2020年5月31日 (日) 01:16