大貫妙子が、いま来ている
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■じつは、大貫妙子さんのレコードを持ってなかったので、今回再プレスされたレコード『ミニヨン』を買った。大貫さんにとっては「遠いむかし土に埋めてしまった封印レコード」なんだそうだが、ぼくは大好きなんだ。彼女の名曲『横顔』と『突然の贈りもの』が初収録されたレコードだからね。
で、さっそくプレーヤーに乗せて聴いてみた。う〜む。CDとは、確かに「音が違う」。でも、それが本当に「いい音」なのかどうかが自信はない。 ただ、この写真のような感じではあるな。音の輪郭を強調させたCDに対して、変にイコライザーをいじってない(人工的・作為的でない)耳に心地よい音がしたことは確かだ。
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これを機会に、ぼくが持っている彼女のCDを集めて写真を撮ったのだが、どうしても見つからないCDがあった。「ここのずっと下の方」や「ここ」で取り上げた『Live Beutiful Songs』だ。事あるごとにCD棚から取り出して、何度も何度も聴いてきたCDなのに、こういう時に限って何故か見つからないように出来ているんだね。
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■いま、大貫妙子が来ている。
それは間違いない!
きっかけは、アメリカ人スティーヴ君(32歳)だ。昨年の8月、大貫妙子の伝説の名盤レコード『SUNSHOWER』を求めて来日し、都内中古レコード店を廻っていたスティーヴ君。遂にお宝レコードを手に入れたのでした。
その彼が今年の2月に再来日し、なんと! 大貫妙子さんのコンサートを観たあと、憧れの彼女と対面したというのだ。(まだまだ続く)
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■YouTubeによって、海外の若い音楽好きに再発見され、日本でも懐メロとしてではなく、いまの若者たちのココロに響いた「ジャパニーズ・シティ・ポップ」とは、どういう音楽なのか?
『レコードコレクターズ / 2018 3月号』(特集:シティ・ポップ 1973 - 1979 日本国内だけでなく海外でも高まる再評価熱の源泉と、その本質を探る)によると、「おおまかな意識として ”ソウルやジャズのエッセンスを取り入れた日本語ポップス” という括りはあるものの ”こうでなくてはいけない” という明確な定義はない」と、松永良平氏は書いている(31ページ) でも、なんか違うな。
同誌38ページで、渡辺亨氏はこう書いている。
70〜80年代のシティ・ポップとは、主に はっぴいえんど 〜 キャラメル・ママ 〜 ティンパン・アレー や元サディスティック・ミカ・バンド周辺のミュージシャンが、プロデュースや作曲、演奏等で関わっていたメロウで洗練されたポップ・ミュージック、さらには16ビートが取り入れられた歌謡曲。
これは正しい。ただ、坂本龍一が抜けている。特に、大貫妙子のレコードでの、坂本龍一の楽曲アレンジは、本当に素晴らしい。(まだ続く)
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■萩原健太著『70年代シティポップ クロニクル』(Pヴァイン)は面白い。ぼくより2つ上で 1956年生まれの萩原健太氏自身が個人的に体験した「あの奇跡的な5年間」を一冊にまとめた本だ。「まえがき」にはこう書かれている。
ポップ・ミュージックの歴史を振り返ってみると、やけに密度の濃い5年間というものが随所に存在する。たとえば、エルヴィス・プレスリーが地元メンフィスでローカル・デビューを飾った 54年からロックンロールという新種の若者音楽がシーンに定着した 58年まで。
あるいはボブ・ディラン、ビートルズ、ビーチ・ボーイズなどがデビューを飾った 62年から、かれらがそれぞれ『ブロンド・オン・ブロンド』『リヴォルヴァー』『ペット・サウンズ』という、デビュー時のシンプルな味から大きく成長した傑作を作り上げてしまった 66年まで。
もちろん日本のポップシーンにもそれがあった。たぶん海外同様、時を隔てていくつか存在するのだろうが。1956年生まれのぼくがリアルタイムに体験した最強の5年間といえば 70年代前半。71〜75年という時期だ。
当時の日本のポップ・シーンは、本当に刺激的だった。すさまじいスピードで様々な形で融合し、交換し、競い合い、あるいは反発し合いながら、シーンを活性化させていた。(p7〜8)
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■『70年代シティポップクロニクル』で取り上げられたアルバムは、15枚。
『風街ろまん』はっぴえんど 『大瀧詠一』大瀧詠一
『摩天楼のヒロイン』南佳孝 『扉の冬』吉田美奈子
『Barbecue』ブレッド&バター 『サンセット・ギャング』久保田麻琴
『MISSLIM』荒井由実 『黒船』サディスティック・ミカ・バンド
『HORO』小坂忠 『SONGS』シュガーベイブ
『バンドワゴン』鈴木茂 『センチメンタル・シティ・ロマンス』
『火の玉ボーイ』ムーンライダーズ 『泰安旅行』細野晴臣
『熱い胸さわぎ』サザン・オールスターズ
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■この本で大貫妙子に関する記述があるのは、『SONGS』シュガーベイブ の項だ。ただ、ほとんどは山下達郎についての話に占められている。萩原健太さんが渋谷ヤマハで店頭ライブの準備をしているまだ若かりし頃の山下達郎を目撃し、そのやたら突っ張って、神経がピリピリしている様子の描写がリアルで、なるほどそうだったのかと思わせる。
(以降「その2」へ続く)
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