『コルバトントリ』山下澄人(文藝春秋)を読む
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■写真は、最近読んだ本をいくつか集めてみました。『海街diary (1)〜(6)』(小学館)は、映画を見終わったら読もうと思って、ブックオフをあちこち巡って集めておいたのだ。で、このあいだ、伊那旭座2でようやく映画を見たのでした。
原作のマンガを読むと、この原作自体が小津安二郎の映画をかなり意識していることがわかる。火葬場の煙突をみなで見上げるシーンは、マンガに描かれているのだ。映画のセリフも、原作にかなり忠実。
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伊那の「旭座2」で上映中の『海街diary』を観てきた。予想以上によかった。すっごくよかった。あの小林信彦氏が絶賛するのも肯ける。広瀬すずがいい。夏帆もよかった。『みんな!エスパーだよ!』から注目していたのだ。あとレキシ。いい味だしてたな。ただ堤真一はぜんぜん小児科医っぽくないぞ。(9月22日)
鎌倉が舞台なのに、映像がぜんぜん小津安二郎的じゃないんだ。そこにまず驚いた。確かに、葬式のシーンに始まって、祖母の七回忌を挟んでラストはまた葬式。火葬場の煙突の煙を皆で見上げるシーンもある。なのにぜんぜん「小津」してない。
『麦秋』のラスト。藤沢の鵠沼海岸での原節子と三宅邦子が海辺を歩くシーン。二人は、白いシャツとロングスカートだ。それに対して『海街diary』の四姉妹は、黒の喪服。これは是枝監督のアンサーなのかなって、ちょっと思った。
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小津監督作品では、大変珍しいクレーン撮影。
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■『倫理21』柄谷行人(平凡社ライブラリー)に関するツイート
『倫理21』柄谷行人(平凡社ライブラリー)読了。1999年に出た本だが、いま読んでこそ意味があると思った。2003年5月に書かれたライブラリー版へのあとがきには、こう書かれている。
「しかし、私はいずれ戦争があり、そのとき、日本人は、第二次大戦の代償として得た認識と倫理性を放棄してしまうことになるだろう、という予感をもっていました。そして、その選択が誤りであることをあらためて手ひどく思い知らされる目に会うだろう、と。
私の懸念は的中しつつあります。しかし、私は、日本の動向に関しても、世界の動向に関しても、けっして悲観的ではありません。
21世紀には、環境問題をはじめとして、人類が直面せねばならない深刻な問題があります。かつてないような悲惨な事態が生じると私は思います。それを止めることはたぶんできません。にもかかわらず、私は未来にかんして楽観的なのです。その意味で、『倫理21』は「希望」の書である、と私は考えています。」
柄谷行人『倫理21』208ページ(平凡社ライブラリー)より
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■続いて、『医者をめざす君へ』山田倫太郎・著(東洋経済新報社)に関するツイートから。
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伊那の平安堂書店に平積みされていた『医者をめざす君へ』山田倫太郎・著(東洋経済新報社)¥900+税を購入。24時間テレビで見て感動したからね。著者は長野県上伊那郡箕輪町在住の中学生。最重度の先天性心疾患を抱え、度重なる手術と入退院を繰り返しながらも、目一杯明るく生きる。
彼は本当に文章が上手い。字もきれいだ。通院している長野県立こども病院循環器科の主治医、安河内先生へのリスペクトが尋常じゃないな。笑っちゃうくらい。いや、ぼくも小児科医になりたての頃、安河内先生には尋常ではないくらい本当にお世話になっているので、倫太郎君の言うとおりだよほんと。
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■そうして、『コルバトントリ』。
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『コルバトントリ』山下澄人(文藝春秋)を読む。まいったな、これは。なるほど、保坂和志氏好みなワケだ。この小説は音読したほうが沁みる。大友良英さんのラジオ番組に飴屋法水氏が出た回で、戯曲化された「この小説」の台本を飴屋氏が朗読したんだけど、関西ネイティヴじゃないのに「ずん」と来たんだ。
「コルバトントリ」っていうのは、フィンランドにある山の名前で、サンタクロースが住んでいるんだそうだ。生きている人が死んでいて、死んでいる人は何故か生きているような勘違いをしている。そういう小説だった。「ええか。お前も死なへんねん。誰も死なへん。死なんでええんや」103ページより。
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