伝説の佐々木昭一郎が還ってきた。
■以前、松尾スズキ氏の初期エッセイを集中的に読んで感想を書いたことがあった。
師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その1)
師匠とその弟子の関係は連鎖して行く(その2)
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(その2)にある、松尾氏が「那智チャコ・パック」の常連投稿者であったというくだり。本人自身が書いた文章を見つけた。『永遠の10分遅刻』松尾スズキ(ロッキング・オン)138ページ「私の文章ルーツ、私の演劇ルーツ ---- 松尾少年と野沢那智」(初出不明)だ。以下引用。
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もう二十年になりましょうか。
私だって子供だった時期がありまして。
野沢那智の声のファンだったんですね私は。そう、子供の頃から「声」というものに興味があったんです。(中略)
さて、その野沢那智が同じく声優の白石冬美と一緒にやっていた『パック・イン・ミュージック』という深夜の人気ラジオ番組に、中学高校と私はせっせと手紙を投稿しておったのです。葉書ではなく手紙です。
何しろその番組はリスナーのお便りをおもしろければ10分でも20分でも、野沢那智がいろんな声色で読み続けてくれるというもので、だから葉書では当然分量が足りないということで、レポート用紙にボールペンでびっしり5、6枚。私は「北九州の黒タイツ」というペンネームで随分読んでもらったものでした。
足が毛深いから黒タイツ。ラジオの前に齧り付き、大ファンである声の達人に10分も自分の作品を読んでもらっている時間、それはまさに至福の時でした。
読んでもらったのは、泥酔して他人のうちの庭で寝込んだ兄の話、毛深さに悩んで脱毛ワックスを使った話、エトセトラ。うれしかったな本当に。
漫画家になるのを夢見てデザインの学校に行き、絵の勉強こそすれ、小説も大して読まなかった私が何で今文筆の仕事を生業にできているのか、考えてみるとティーンエイジャーの頃、私はラジオで自然と文章修行をしていたのかもしれません。一月に一本は書いていましたから。
(中略)
野沢那智は今はなき「薔薇座」の座長でした。で、当然芝居に関するエピソードが中心になってくると。それらは、今思うと赤面したくなるほどマバユイものでしたが、九州の田舎町で育ち文化的情報にもうとかった私の演劇への興味は、実はそんなところから育まれていったものだったのです。(中略)
*野沢那智さんはよく三茶で見かけるんだけど、どーしても声かけられないんだよね。恐れ多くて。みなさんにもいるでしょ。そんな人。
(『永遠の10分遅刻』p138〜141)
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(追記)ところで、「この本」のラストに収録された、NHKラジオドラマ『祈りきれない夜の歌』の脚本を読んだのだが、たまげてしまった。松尾スズキって、天才なんじゃないか? 以下、今朝(2014/10/16)のツイートから。
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松尾スズキ『永遠の10分遅刻』(ロッキング・オン)より、NHKラジオドラマ脚本『祈りきれない夜の歌』を読む。ラストで異様な感動を覚えた。これは凄いな。障碍児の出てくる話では『時には懺悔を』打海文三(角川文庫)に匹敵するデキだ。ネットでドラマ版も聴いた。ほぼそのまま放送されたんだ。
続き)『祈りきれない夜の歌』は、先月NHKで再放送のあった『君が僕の息子について教えてくれたこと』(11月24日午前10時から NHK総合で再々放送予定)に登場した『自閉症の僕が跳びはねる理由』を書いた東田直樹君とも密接に通じるものがある。
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■「このラジオドラマ」は、2001年3月3日に放送された。NHK名古屋放送局の制作。「ニコ動」にファイルがあって、ネット上でいまも聴くことができる。
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■佐々木昭一郎・著『創るということ』の【増補新版】が、平安堂書店の新刊コーナーにあったので、びっくりして即購入した。2種類の旧版は以前から読んでみたかったのだが図書館にはなく、古本でも高値が付いていて入手困難だったのだ。
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佐々木昭一郎氏も、最初はNHKで「ラジオドラマ」を作って認められた人だ。
■これも以前に書いたものだけれど、是枝裕和監督が、佐々木昭一郎の映像を初めて見た時のはなし。
・『物語論 17人の創作者が語る物語が紡がれていく過程』木村俊介(講談社現代新書)に載っていた「是枝裕和」インタビュー(2012/12/30)
・『紅い花』つげ義春・原作、佐々木昭一郎・演出(2013/01/06)
■その、伝説の佐々木昭一郎が還ってきた。
20年ぶりの新作『ミンヨン 倍音の法則』が、先週土曜日から「岩波ホール」で公開されているのだ。
さらには、11月には「NHKBSプレミアム」で、佐々木昭一郎初期の代表作が一挙放送される! これは必見! 必録画だ。
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■検索していたら、「日曜日はテレビを消せ」の「佐々木昭一郎アーカイブス」を見つけた。リンクが切れてしまっているものもあるが、これはすごく貴重な資料集だ。
それから、ホッタタカシさんのブログ「スローリィ・ステップの怠惰な冒険」の
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