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2014年8月

2014年8月19日 (火)

『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(その3)「映画」と「漫画」・今月のこの1曲「人生は風車」カルトーラ

■このところ、外来小児科学会のWSの準備で(配布資料を誠意作成中なのだ)ブログの記事を書いている余裕がない。というのは半分本当で、あとの半分は更新が億劫になってきていることによるみたい。すみません。

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■ 映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は本当に面白かった。主演の峯田和伸がとにかく良かった。何とも情けない奴なんだけれども、どこか可愛い。憎めない。そして今どき呆れるほどの「純」なココロの持ち主。

彼が惚れる「ちはる」役の黒川芽以もよかった。ちょっと太めで垢抜けない新垣結衣って感じが、長野出身の「ちはる」にピッタリだ。それから、峯田の敵役、松田龍平。こういう、とことん嫌な奴をやらせたら最高に上手いな。

監督は三浦大輔。演劇界の鬼才初の監督作品となった訳だが、案外手堅くオーソドックスな画作りが成されていた。引きの画像が多かったし、カット割りも自然で、妙なこだわりは感じなかった。すごく好印象。

ただ、小林薫が缶ビールを飲むシーンが2つ続くところ。時間帯はまったく異なるのに、カットが変わっても缶ビールの動きが「完全に一致」していたのは見事だった。

■映画があまりに面白かったので、原作の漫画を「ブックオフ」巡りをして10巻全部そろえた。漫画も面白い。実によく出来ている。映画は、原作の「5巻の半分」で終わっているのだね。マンガはまだあと半分続く。

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ただ、マンガの主人公と映画の峯田和伸とでは、ずいぶん感じが違う。

例えば、マンガの「第1巻」79ページ下段の画。映画でも同じシーンがある。しかも2度も登場する。峯田のアップ。マンガと違って、峯田は峯田だ。どんなに情けなくともカッコイイしカワイイ。

DAIGO みたいだけれど、もっと垂れ目で、メガネをかけると生瀬勝久に似てきて、モヒカンになったら所ジョージにも見える。でも峯田は峯田だ。

宇多丸が映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を語る
YouTube: 宇多丸が映画『ボーイズ・オン・ザ・ラン』を語る


マンガと映画の違いに関しては、宇多丸さんがラジオで語っていて、なるほどなと思った。原作を先に読んでいると、どうしてもそう感じてしまうかも。

あと、銀杏BOYZ 峯田和伸が歌う主題歌がめちゃくちゃイイぞ!

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★【今月のこの一曲】カルトーラ 『人生は風車』

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■ずっと探していて、8月の初めに松本の「ほんやらどお」でようやく入手できた名盤『カルトーラ ”人生は風車〜沈黙のバラ”』カルトーラが65歳と68歳時の録音。何ていい声なんだ。艶があって若々しくて。聞き惚れてしまうよ。

Cartola e seu Pai - O Mundo é um Moinho
YouTube: Cartola e seu Pai - O Mundo é um Moinho


■これでようやく「古いサンビスタたち」の歌声・演奏を記録した貴重なCDが4枚そろったのだ。

2014年8月12日 (火)

伊那のパパズ絵本ライヴ(その108)下伊那郡喬木村「椋鳩十記念図書館」

■8月10日(日)午前10:30 より、下伊那郡喬木村「椋鳩十記念図書館」で絵本を読んできた。この日は、喬木村「こども夏まつり・全村読書の日」ということで、図書館周辺では多くの催し物が行われたのだ。

台風が刻々と近づく中だというのに、思いのほかたくさんの親子連れが見に来てくれてうれしかったな。ただ、伊東パパと宮脇パパは欠席で、北原、倉科、坂本の3人だけで頑張ったのでした。カメラを忘れたので写真はなしです。スミマセン。

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          <本日のメニュー>

1)『はじめまして』新沢としひこ(ひさかたチャイルド)

2)『はなびがあがりますよ』のむらさやか・文、折茂恭子・絵(こどものとも年少版/2014/8月号)→北原

3)『ねこガム』きむらよしお(福音館書店) →坂本

4)『うちのおばけ』谷口國博・文、村上康成・絵(世界文化社) →全員

5)『うみじじい』菅瞭三・作(こどものとも/1999/8月号) →倉科

6)『かごからとびだした』(アリス館)

7)『へいわってすてきだね』安里有生・詩、長谷川義史・絵(ブロンズ新社)→北原

8)『さんまいのおふだ』水沢謙一・文、梶山俊夫・絵(福音館書店)→坂本

9)『うんこしりとり』tupera tupera(白泉社)

10)『おとん』『おかん』平田昌広・文、平田景・絵(大日本図書)→倉科

11)『ふうせん』(アリス館)

12)『世界中のこどもたちが』新沢としひこ(ポプラ社)

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■この日はめずらしく、読もうと思って持ってきた絵本が坂本さんとバッティングしてしまった。『はなびがあがりますよ』だ。そしたら、倉科さんも「おなじ絵本」をバッグから出したのでビックリ!

坂本さん曰く。「この絵本、評判がいいんですよ!」 ですって。

 

2014年8月 6日 (水)

『母に欲す』→ 映画『ハッシュ!』と『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(その2)

■芝居『母に欲す』に出演していた片岡礼子さんと、銀杏BOYZ・峯田和伸のことがもっと知りたくなって、TSUTAYAで映画のDVDを借りてきて見たんだ。『ハッシュ!』と『ボーイズ・オン・ザ・ラン』。どっちもすっごく面白かった。こんな映画が出ていたなんて、ぜんぜん知らなかったよ。

『ハッシュ!』は、仲良し男子2人組に女がひとり絡むという、フランス映画『冒険者たち』『突然炎のごとく』、藤田敏八監督作品『八月の濡れた砂』など、よくある青春映画のデフォルト設定(『そこのみにて光輝く』も、この設定のひねり版だった。)のようでいて、ところがどっこい、ぜんぜん違うぞというビックリ仰天の映画だった。

と言うのも、仲良し男子2人組(田辺誠一・高橋和也)は、ゲイの恋人同士で同棲しており、片岡礼子が演じるのは歯科技工士なのだが、30歳にしてすでに人生を諦め切っちゃったかのような刹那的で日々ただただ惰性で生きている孤独な女だからだ。これで彼女と彼らにどういう映画的接点ができるというのか?

そこがこの映画の見どころなワケです。

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■『母に欲す』では、田口トモロヲがいない夫婦の寝室で片岡礼子が一人ベッドに腰掛けタバコをふかす場面があった。『ハッシュ!』に彼女が初めて登場するシーンでもタバコを吸っていた。『母に欲す』で峯田和伸が暮らす東京のボロアパートとそっくり同じ汚い部屋で。彼女の圧倒的な孤独がにじみ出ていたな。

そういえば、高橋和也が勤めるペット・ショップの店長、斉藤洋介が密かに狙っている常連客の深浦加奈子さんは、宮沢章夫『ヒネミの商人』の片岡礼子の役を初演時に演じた女優さんだ。

映画の山場は、兄夫婦が上京して来て田辺誠一のマンションで一同が会するシーン。橋口亮輔監督は固定カメラによる異様な長回しで、まるで舞台中継かのように見せる。緊張感あふれる場面だ。片岡礼子がいい。対する秋野暢子も凄い。

秋野暢子が病院の公衆電話から田辺誠一に電話をかけるシーン。サンダルをぬいで裸足の角質化した踵を親指と人差し指でつまむ。妙に印象に残っているのだが、こういう中年女性の何気ない仕草に生活感がリアルに表れている。

家族会議で啖呵を切った秋野暢子だったが、彼女の主張した家族の絆、「家」を引き継いで行くことの重み、血のつながりを、秋野自身がいとも簡単に捨て去ってしまうことになる。皮肉なものだ。

人間はひとりでは生きてゆけない。

マイノリティのゲイ・コミュニティの中ではさらに、カップルを維持することは難しい。結局は一人で生きて行かねばならぬ宿命を高橋和也はイヤと言うほど感じている。年を取ればなおさらだ。ましてや自分の子孫を残すことなんて考えてみたこともなかった。喧嘩してすねた高橋和也が、冷蔵庫からでっかいハーゲンダッツのアイスクリームを出してきて、一人で抱えてスプーンでむしゃむしゃ食べるシーンが可笑しい。

しかし、田辺誠一は違った。優柔不断な彼は関係性を断ち切れない。それは彼の欠点ではあるのだが、逆に片岡礼子を受け入れる寛大さとなり、「新しい家族のかたち」を生み出す原動力となるのだった。

いや、凄い映画だな。

橋口亮輔監督は、リリー・フランキーが主演した『ぐるりのこと』で有名になった人だが、ぼくは『ハッシュ!』で初めて見た。他の作品もぜひ見てみたいぞ。

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