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2013年10月20日 (日)

アキ・カウリスマキ と 小津安二郎『青春放課後』

■先日の「蓼科高原映画祭」で、NHKアナウンサーの渡辺俊雄さんが言ってたのだが、NHKの過去に放送された番組を保存する「アーカイブス・センター」が埼玉の川口市にあって、ただ、1960年代前半に制作された番組の多くは保存されていないのだという。当時ビデオテープはものすごく高価だったから、ビデオのまま保存することは不可能だったのだ。

 

香川京子さんが出演した、NHK大河ドラマ第一作「花の生涯」(1963)も、その第1話だけが残っているのみ。しかも、フイルムに落としての保存。

だから、渡辺俊雄さんはダメもとで「アーカイブス・センター」に訊いてみたんですって。小津安二郎が死ぬ前の最後に脚本を執筆した、NHKドラマ『青春放課後』(1963)が保管されてないか? ってね。

 

そしたら何と! 奇蹟的にテープ(フィルム?)が残っていた。で、デジタル・リファインして今回約50年ぶりで放送となったのだそうです。(10月14日の午前9時〜10時半。BSプレミアムにて放送。)

 

いやぁ。見ましたよ。面白かった。ドラマの設定、台詞まわし、それに音楽が小津映画そのもの。

映像はね、ぜんぜん期待してなかった。でも、ニコニコ笑う宮口精二がタバコを吹かしながら動いているだけで感動してしまったぞ。あと、佐田啓二ね。いいなぁ。

ドラマは思いのほか大胆な展開で正直驚いた。設定は『秋日和』といっしょ。大学時代の死んだ親友の未亡人と一人娘を、おじさんたちがあれこれ心配するっていう話だ。

 

ただ、その娘役の小林千登勢が、えっ!? って言うくらいぶっ飛んでいる。

『彼岸花』の山本富士子とも『秋日和』の司葉子とも『秋刀魚の味』の岩下志麻ともぜんぜん違う。

婚期を逃した20代後半の独身女性とはいえ、バーのカウンターで佐田啓二と賭けダイスをして飲み比べ、酔っ払って六本木界隈へ誘惑し、しまいには佐田啓二の手を引っ張って、赤坂の旅館へと自ら率先してしけ込むのだ。NHKで「この設定」許されたのか?

さらに驚くのは、当時京都の芸子だった小林千登勢の母親と、北竜二も宮口精二も関係があった。ということは、小林千登勢の本当の父親は誰? っていう話なのだ。いいのか? こんな話。NHKで、1963年に放送して。ビックリだな。

 

 

■あの時、茅野市民館で観た、立川志らく「シネマ落語」。『素晴らしき哉、人生!』を、実は恥ずかしながら映画で見たことがなかった。だから、あわてて伊那の「TSUTAYA」へ走って借りてきたのだ。誕生日月だったので、50円だった。ついでに、たまたま目にとまったアキカウリスマキ監督作品『ル・アーヴルの靴みがき』も借りてきた。

 

『素晴らしき哉、人生!』は、かのフランク・キャプラ監督作品だったのか! 『スミス都へ行く』はDVDで持ってるぞ。

それにしても、この映画ではなかなかカットがかからない。思いの外「長回し」なのだ。だから、主演のジェイムス・スチュワートが、まるで「リーガルハイ」の「こみかど弁護士」みたいに、長いセリフを噛まずにまくし立てている。ここは見どころか。

後半で初めて姿を見せる「天使」が、全く天使っぽくない出で立ちで笑ってしまった。クリスマス・イヴの晩、絶望して自殺しようとする主人公に、彼は「主人公が存在しなかった世界」を見せる。ここからラストまでの畳みかけるような展開が実に素晴らしい。感動した。

全篇130分に及ぶ長い映画を、立川志らく師は映画のエッセンスをぎゅっと濃縮して見事な「シネマ落語」に仕上げていることを、実際の映画を見終わってから思い知らされた。志らく師、凄いな。

 

■で、続けて『ル・アーヴルの靴みがき』を見たのだが、これがまたよかった!

見終わってみれば、『素晴らしき哉 人生』と同じテイストの映画ではないか。

虐げられた、でも日々の暮らしを大切にしている貧民街の市居の人々が主な登場人物だ。あと、犬と。

Aki Kaurismaki on Ozu
YouTube: Aki Kaurismaki on Ozu

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