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2013年3月21日 (木)

ドキュメンタリー映画『演劇1』『演劇2』(その2)

■劇団青年団の芝居は一度も観たことがないのだ。


でも、いや、だからむしろ、この映画を見終わって猛烈に青年団の芝居が観たくなった。映画の中で繰り返し繰り返し、ほとんど平田オリザが1人の女優をネチネチと単にいじめているとしか思えない稽古がエンドレスで続いていた『東京ノート』の「あの場面」。実際のお芝居の中で通して観ると、どんな流れの中で登場するシーンなんだろうか? 気になって仕方ないじゃないか。

案外、お芝居も平田オリザのことも何にも知らない人が「この映画」を観たら、一気にハマるような気がするな。ただ、何の予備知識もなくて 5時間42分という時間を映画館の硬い椅子に捧げる勇気がある人は、そうはいないと思うけれど。


■ぼくが厚生連富士見高原病院に勤務していた時に、堀辰雄の『風立ちぬ』のことを調べていて、富士見町図書館でたまたま『平田オリザ戯曲集(その1)』を見つけて読んでみた。「S高原から」と「東京ノート」が収録されていた。

「風立ちぬ。いざ、生きめやも」の「めやも」の本当の意味に関して、とある高原の結核療養所で入院患者たちが他愛もない会話するという、大げさな舞台装置も、劇的展開も何もない静かな演劇。舞台に登場する俳優は、小さな声でぼそぼそ話すので会話がよく聞き取れない。しかも喋る役者が客席に背を向けているし、同時にセリフはかぶるし。

そういう情報だけはずいぶんと前から知ってはいたんだ。


だから、ぼくは映画が始まってビックリ仰天した。

『ヤルタ会談』の稽古をする青年団の役者さん、メチャクチャ大きな声で、しかも大げさな動作。ぜんぜん小津安二郎の映画みたいじゃないじゃん。しかも、次の場面(『冒険王』の稽古シーン)に登場したのは、最近テレビでよく見る、髭モジャで怪しげなトルコ人かモロッコ人みたいな役者さん、古舘寛治じゃないか!

最近では、モバゲーのCMや、明治チョコレートのCMに、嵐の松本潤と、新井浩文と出ている。

そういえば、阿部寛主演のドラマ『ゴーイングマイホーム』には、新井浩文も古舘寛治も出ていたな。古舘は、やはり怪しげな「クーナ研究家」錦織役でね。この人、ぼくのイメージでは最も「青年団の役者」からは遠い人だ。


■青年団の役者さんで、テレビで見たことがある人がもう一人いた。志賀廣太郎だ。NHK朝ドラ『純と愛』で、館ひろしのホテル総支配人役だった人。彼は確かに「青年団的」ではあるな。彼は『演劇1』のラストで、おいしい役をもらっている。ここは見どころだ。


■すっごく長い映画だから、見ていて絶対に途中で厭きると思っていたんだ。でも、予想外に厭きなかった。

それは、ちょうど小津安二郎の映画で突如挿入される「風景シーン」と同じ感じで、井の頭線「東大駒場前」商店街の佇まいや、地下道のホームレス。それに、鳥取県の田舎で一人田んぼで鎌を持ち、手で稲を黙々と刈っていく爺ちゃん。あと、大阪駅の出入口のガラス戸を、丁寧に丁寧に拭き続ける清掃員のおじさん。そんなシーンが「箸休め」のように挿入されるのだ。

これがいいんだな。

特に猫がよく登場する。想田監督は、たぶんメチャクチャ猫好きなんじゃないか? だって、パリに行ってまで猫撮ってるし。

映画にはたくさんの猫が登場するが、最も印象的な猫は、まるで朝青龍みたいな貫禄で駒場近辺を闊歩する、白い野良猫だ。その自信に満ちたふてぶてしさたるや、ヤクザのボスだね。


それから、映画の途中で突然「音声」が途切れることが何回もあった。ぼくはてっきり、会場のスピーカーにトラブルがあったんじゃないかと勘違いしたのだが、そうじゃなくて監督が意図的に音声をオフしたんだそうだ。

これが効いてたな。だって、観ていて突然「えっ!?」ってビックリするじゃん。沈黙は案外効くな。目が醒める。(さらに、もっと続く予定。)

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