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2010年3月26日 (金)

『赤ちゃんと絵本をひらいたら』(追補)

■医師会関係の会合が続き、忙しい毎日だ。今日は学術講演会の座長。


3月3日の午後、発達障害児の母子通所施設「小鳩園」で、
お母さん方に「子供の言葉の発達」について話をさせていただいたのだが、
その時のネタ本『ことばの贈りもの』松岡享子(東京子ども図書館)と
『子どもとことば』岡本夏木(岩波新書)の2冊を園長先生に預けてきた。
その本が、今日返ってきたのだ。


最近よく、赤ちゃんへの「語りかけ」や「読み聞かせ」の重要性が強調されるが、
おかあさんやおとうさんが、ただ一方的に赤ちゃんに語りかけていれば
赤ちゃんの言葉が生まれるという訳ではない。

そうじゃないんだな。


むしろ、おかあさん、おとうさんに必要なことは、
「赤ちゃんの語りかけ」に耳を傾けることなのだ。

『ことばの贈りもの』松岡享子(東京子ども図書館)p19〜20には、こんなふうに書かれている。

 講演のあと、ハリディ氏(しろくま註:子どもの言語習得に関して研究しているイギリスの言語学者)とことばを交わす機会があったので、「子どものことばを育てる上で、何が一番大切だとお考えになりますか」と、たずねてみました。すると、言下にかえってきたのは「子どものいうことをよく聞くことです」という答えでした。

 この答えは、私の耳に新鮮に響きました。というのは、それまでに私が耳にしていたのは、もっぱらおとなが子どもに話しかけることの大切さだったからです。保育者のあいだでは、それを「ことばかけ」と呼んでいたようでした。しかし、ハリディ氏は、こちらからことばをかけるより、向こうのいうことに耳を傾ける方が大切だといわれるのです。

「子どものいうことを聞く」といっても、赤ん坊であれば、ことばでいうわけではないでしょう。しぐさ、表情、顔色、声色など、ことばでないもので訴えているものを、しっかり受けとめるということでしょう。それらさまざまなサインに込められた意味を、おとなが理解し、それに合った対応をすれば、子どもは「通じた」という喜びを味わい、相手に対する信頼感を深めるばかりでなく、コミュニケーションへの意欲もわくでしょう。そのために自分が用いる手段 ---- ことばも、ことばでないものも ---- への信頼も強まるでしょう。


■『赤ちゃんと絵本をひらいたら』でも、最後の座談会のパートで、榊原洋一先生と佐々木宏子先生が「そのこと」の重要性に言及している。親と赤ちゃんとが対等の立場で「いっしょに絵本を読みあう」という、双方向に関わり合うことが人間としてのコミュニケーションの基礎となるのだと。


ブックスタートという活動は、絵本を仲介として、おかあさん、おとうさん、保健師さん、図書館司書さん、そして市民ボランティアさんらがみんなで、「赤ちゃんが発する信号」をキャッチする初めての貴重な体験の「場」になっているのだと思う。むしろ周りの大人たちが、真ん中にいる「赤ちゃん」からパワーをもらっているのだ。


一人でも多くの方々に「ブックスタート」の意義を理解して欲しいと、あらためて思った次第です。(おわり)

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