『アバター』(つづき)
■3Dに関しての感想の追加。
3D映像というと、ディズニーランドやユニバーサル・スタジオで
アトラクションとして上映されているものしか見たことなかったので、
所詮「こども騙し」に過ぎないのではないかと思っていた。
実際、『アバター』が始まって、無重力の宇宙船の中で、主人公が長い
人工冬眠から目覚めるシーンで、観客は「おっ、飛び出て見えるじゃん」と
うれしくなるのだけれど、すぐに慣れちゃって「実写場面」の3Dは
どうでもよくなってしまうのだ。
ところが、CGで描かれる「惑星パンドラ」の世界は、3Dが目に馴染むに従って、
逆にどんどんリアリティが増してくるのだ。CGの変な人工的立体感じゃなくなる
とでも言うか。観客はいつしか映画を見ているのではなくて、惑星パンドラを
体験している気分になる。この映画のすごいところは、まずその点にあると思う。
■惑星「パンドラ」と先住民「ナヴィ族」の設定は、
いろいろなところで言われているように既視感が付きまとう。
ナヴィ族はネイティブ・アメリカンそのものだし、その中へ
入っていって通過儀礼をパスし受け入れられる主人公は
『ダンス・ウイズ・ウルブス』のケビン・コスナーだ。
ヒロインが翼竜に乗って自由に空を飛ぶシーンや、巨大な飛行船艦が登場する空中戦、
それに、牛のしっぽのような触手同士をつなげる場面など、『風の谷のナウシカ』を
直ちに想起させた。さらに『天空の城ラピュタ』や『もののけ姫』的な設定も出てきて
宮崎駿の世界をリスペクトしながら上手く取り入れているのだ。
この既視感を、監督は意識的に狙っていたのではないか? そのほうが、こどもから
年寄りまで、世界中のいろんな民族の人々が安心して納得して映画の世界に没入できるから。
■昔から、人類が好む物語構造には「定型」があると言われている。
幼い子供が好む絵本のストーリーにも「定型」があって、児童文学研究者の
瀬田貞二氏は、それを「行きて帰りし物語」であると看破した。
さらに、世界各地に伝わる伝説や神話を長年調査してきたジョーゼフ・キャンベルは
それらに「共通して」みられる特徴(物語構造)をもっているということを発見した。
それがまさに「行きて帰りし物語」なのだった。
1)出立
2)イニシエーション(通過儀礼)
3)帰還
当時 UCLA の学生だったジョージ・ルーカスが、
ジョーゼフ・キャンベル先生の授業を受けていて、この神話構造を学び、
この物語構造をそのまま使って『スターウォーズ』を作ったのは有名な話。
詳しくは、以下の本を参照下さい
『17歳のための世界と日本の見方』 松岡正剛(春秋社)p61~78
『物語論で読む村上春樹と宮崎駿』 大塚英志(角川oneテーマ21)p50~
『幼い子の文学』 瀬田貞二 (中公新書 563)
『神話の力』 ジョーゼフ・キャンベル+ビル・モイヤーズ(早川書房)
■いくつか読んだ映画の感想の中で、これは、と思ったのは以下のブログ。
いかん、『ブラッド・メリディアン』126ページで止まったままだった。
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