« 『バッド・モンキーズ』マット・ラフ(文藝春秋) | メイン | パパズ絵本ライヴ(その60)美篶小学校親子文庫 »

2009年12月14日 (月)

『支援から共生への道』田中康雄(慶応義塾大学出版会)

■昨日の日曜日は、朝9時から午後4時まで、1〜6歳の子供と積み残した喘息の小中学生、合計90人弱に新型インフルエンザ・ワクチンのまとめ接種を行った。予約した後にインフルエンザにかかっちゃった子もいて、キャンセルが出たこともあるが、途中で無駄な患者さん待ちの時間がたくさんできてしまった。もう少しタイトに時間あたりの接種数を増やしても大丈夫なんじゃないだろうか? あと、予診票・カルテ・母子手帳と3カ所に同じこと(ワクチンのメーカー名や製造番号、接種日時、署名印など)を僕が書き込まなくてはならなくて、これが案外時間がかかる。事務スタッフに代行してもらうとかできないものか?


『支援から共生への道』田中康雄(慶応義塾大学出版会)読了。

これは素晴らしい本だ。田中康雄先生って、本当にいい先生だなぁ。まじめで正直で、すっごく謙虚で、でも患者さんのためにはメチャクチャ一生懸命。同じように日々子供たちと接していながら、いつも一段高い所から子供たちを見下しているような小児科医としては、反省させられる事ばかりが書かれている。専門用語を極力使わず、誰が読んでも平易で分かりやすいエッセイだから、1日2日でサッと読めてしまうのだが、何気に「大切な事」が宝石のように散りばめられているので、何度も読み返す必要がある本だ。値段は高いけど買って損はないと思うよ。

この本の帯には、こんなことが書かれている。


「僕に何ができるだろう」と自問自答する児童精神科医が診察室を出て、
教育・福祉関係者とのつながりを広げていく、数々のエピソード。

発達障害への「僕」のまなざしと希望


■ぼくも一度だけ、伊那で田中康雄先生に直接お会いしたことがある。たぶん日本で一番人気のある児童精神科医だから、ものすごく忙しい先生で、週末は全国各地を講演して回っている。去年の5月に伊那へ来て頂いて講演してもらった時も、先生は土曜日の未明に札幌の自宅を出て、新千歳空港から羽田→浜松町→新宿(特急あずさ)→岡谷→(飯田線)伊那へと、午後3時前ようやく会場の「いなっせ」に到着した。この日は講演終了後直ちにタクシーで中央道を塩尻に向かい、特急しなので名古屋へ出て、翌日の講演会場である福井へ行くとのことだった。田中先生のことを待っている人がいれば、どんなに忙しくても何処へでも出向いて行く。本当に真面目で、情熱的で、一生懸命な人だ。

このエネルギーの源は、いったい何なんだろう? ぼくはずっと不思議だったのだが、この本を読んで少しだけ分かったような気がする。田中先生は演劇青年だった。同じく児童精神科医の山登敬之くんと共通していて面白い。田中先生は高校時代に演劇部所属で、大学時代はステージには上がらずに、東由多加・主宰「東京キッドブラザーズ」の芝居を見続けてきたという。


僕にとってのその劇団の魅力は、「脱出の果てに、ユートピアまでたどり着くことができるかもしれないのだ。もし、<私>からさえも脱出して<私達>の世界に旅立ち『共同体』を創り出すことができさえすれば」という意志(それは、今や幻想でしかないのですが)の存在でした。僕は結局<脱出>できないまま幻想から脱却し、共同体を諦め、医師への道を選択しました。その劇団が声高に謳っていた「人と人が手をつなげば、そこには新しい地平線ができる」という世迷い言だけは脳裏に残して(p12)


そう、田中先生は明日への「希望」を信じているのだ。人を信じること。人と共生すること。ただただ人の話を聴くこと。それから、そっと「その人」に寄り添って、焦らずにじっと待つこと。患児とその家族の立場になって、彼らの気持ちに共感すること。なぜ、それができるのか? それは「希望」があるからに違いない。


 

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.dcnblog.jp/t/trackback/463039/22588245

『支援から共生への道』田中康雄(慶応義塾大学出版会)を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

Powered by Six Apart

最近のトラックバック