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2019年9月

2019年9月12日 (木)

映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

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■最初に、先だってからツイートしてきたものを再録します(一部改変あり)

映画『ニューヨーク公共図書館』を塩尻市の「東座」で観てきた。3時間25分のドキュメンタリー。途中休憩あり。噂に違わず面白かった。何やかや言ってもアメリカの民主主義は「当たり前」なのが凄いな。「図書館は本の置き場ではない。図書館とは人」「図書館は民主主義の柱。図書館は雲の中の虹」
 
 
続き)映画の冒頭、図書館司書が電話で「ユニコーンについて教えて欲しい」という市民に答えている。言わば『人力Google』だ。「中世のある僧がこんなことを書いています。男は外見はオオカミだが、心にユニコーンを飼っている」(ちょっと違うかも?)このシーンから一気に映画に引き込まれていった。
 
 
続き)エルヴィス・コステロの公演インタビューでは、彼の父親(ジャズ歌手)が『天使のハンマー』を歌うビデオが流れた。親子でホントそっくり! あと、コステロが鉄の女サッチャーをケチョンケチョンにけなしていて痛快。(映画ではモノクロ映像で、YouTube とは違う時の演奏だった)
 
 
 
 
続き)アメリカにも「歴史改ざん教科書」問題があったとは驚いた。奴隷をアフリカから働くために移民してきたと記載されていたという。子供たちに奴隷制も公民権運動のことも正しい歴史をきちんと伝えて行かなければならないと、黒人文化研究図書館長は力説する。
 
 
 
 
追補)映画『ニューヨーク公共図書館』。 何でも直ちに検索できるこのネット時代に、図書館なんて存在意義あるの?と思う人はいるだろう。ところが NYPL(ニューヨーク公共図書館)はそれを逆手に取って活動を進める。ネット民はむしろ孤立している。彼らが実際に集まって情報交換する場所を図書館が提供しようと。
 
 
追補)それから、映画を観ていてニューヨークに行った気分になれるのもいい。ぼくは行ったことないけれど。場面のつなぎに必ず街の風景がカットインされていて、○○番街○○丁目という標識がアップで映る。で、ここはハーレムかとか、チャイナタウンかとか何となく分かるのだ。
 

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追補)視覚障害者のための「点字・録音本図書館」で『ロリータ』で有名なウラジミール・ナバコフ『マルゴ』の録音本収録場面。役者志望の青年ボランティアが、感情を込めて「濡れ場」を朗読する。思わず照れてしまって直ちにカット。取り直し。ちょっと笑った。
 
 
追補)ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』の読書会のシーンもよかったな。もうろくしたジジババばかりの読書会だけど、ちゃんと作品を読み込んで来ていて、みな適確な発言をしている。なんてハイブロウなんだ、ニューヨークは。
 
 
追補)ニューヨーク市民の 1/3 が未だにネットにアクセスできないという。このため、NYPLは期限付きだが無料でポータブルWiFi を貸し出している。
 
後半、若き詩人でラッパーのマイルズ・ホッジスが自らの詩をステージ上で暗唱する場面。フロアで赤ん坊が大泣きしている。でも詩人はラップを続ける。その赤ん坊の親も退出しない。他の観客もブーイングもなく真剣に聴き続けている。ニューヨーカーは日本人と較べてなんと寛大なんだ!
 
 
あと、ニューヨークにおける初期のユダヤ人コミュニティが「デリカテッセン」を中心に築かれたという話も面白かったな。
 
 
追補)『利己的な遺伝子』リチャード・ドーキンス博士の講演「アメリカ国民の20%が無宗教で一番多いのに、政治家はキリスト教原理主義者の顔色ばかり伺っている」と怒っていた。「マクロの宇宙もミクロの細胞も突き詰めれば科学的にも詩的にもいっしょだ」とも。
 
 
追補)18世紀のアフリカ・セネガルでムスリムが革命を起こした話。それから、あのマルクスが共和党のリンカーンに奴隷制が労働者の権利を迫害していると手紙を送ったという話。いずれも初めて聞くことばかりで、興味はつきない。
 
 
追補)印象的だったシーン。SF『火星シリーズ』で有名なウイリアム・バロウズの直筆書簡をチェックしている人。詩人イエーツの書簡も NYPL本館に保存されている。それが無料でアクセスできるのだ。凄いぜ! 写真アーカイヴも豊富だ。テーマごとに分類されていて、アンディ・ウォーホルはその写真を何度も盗んだとのこと。
 
 
映画『ニューヨーク公共図書館』を検索していたら発見したサイト。hatenanews.com/articles/2019/ 対談者は「図書館は民主主義の柱」って言うのはどうよ? と発言をしているが違うだろ。ホームレスでもブラックでもメキシコ人の移民でも、アメリカ国民なら誰でも NYPL が収集した知的財産に無料でアクセスできて当然。アメリカ市民はその権利がある。その権利を守り維持してゆくのがニューヨーク公共図書館の義務であるという決意であり心意気なんじゃないのか。それこそ「民主主義」でしょ。
 
 
 
『未来をつくる図書館』菅谷明子著(岩波新書)読了。映画『ニューヨーク公共図書館』に映っていた、そのほぼ全てに関して、この本の中では既に詳しく解説されていた。映画ではよく分からなかった寄付金収集方法も詳細に載っている。2003年刊行で16年前の本だが、図書館のデジタル化に関する記載も映画と同じだ。その情報は、決して古びていない。驚いたな。
 
■映画を観た人は「この本」は必読の書だ。映画のパンフレットよりも断然分かりやすい。あのシーンはこういう意味があったのか! と読みながらいちいち合点がいくのだから。
 
■とにかく長い映画なので、1回しか観てないから記憶違いもたぶん多いと思う。でも、この映画は本当に面白かった! 観察映画の巨匠フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー映画は、今回初体験だった。彼のことを師匠と仰ぐ想田和弘監督の『演劇1』『演劇2』は観た。どちらも、とにかくナレーションも文字テロップも BGMも何もない観客にははなはだ不親切な映画なワケだが、そのためか、逆に観客は真剣にスクリーンを注目せざろう得なくなり、画面に集中することができるのだ。
 
 
映画『ニューヨーク公共図書館』では、頻回に「スタッフ・ミーティング」の場面が繰り返されるのだが、映画では何の解説・テロップっもないから、いったい誰が図書館長なのかが分からない。パンフレットを買って見て、あ、あの饒舌なオジサンが館長さんだったのか! と、初めて分かった。そういう映画なのだ。
 
「ユニコーン」の検索を図書館司書に依頼する男性に続いて、自分のルーツを調べている中年の太った女性が登場する。彼女の祖先は、いったいヨーロッパ大陸の何処から来たのか? すると、図書館司書はいとも簡単にこう言うのだ。「たぶん判ると思いますよ。その人がアメリカに上陸した年月が判れば、当時の移民登録台帳を確認すれば、彼がどの船に乗って来たか判るから、その船が何処から出港したか、たぶん判ります」と。
 
 
ビックリですよね。図書館司書がそこまで調べてくれるとは!
 
図書館の使命はそれだけではありません。失業者のための就職ガイダンスが無料で開催されていて、しかも! 履歴書の書き方から、面接時における対応の仕方まで講師が指導してくれる。「とにかく、大きな声でハキハキと答えましょう!」ってね。
 
 
■大切なことは、NYPL を運営しているのが、ニューヨーク市ではなくて、NPO法人であることだ。図書館の運営資金の半分は、確かにニューヨーク市から貰ってはいるが、あとの半分は、理解ある個人〜法人の寄付金に寄っているということが重要なのだ。
 
だからこそ、時の政府に忖度することなく、右も左も平等に資料を収集し、それを市民に公開している。このことは、本当に重要だと思う。
 
映画の中で、ハーレム135丁目にある『黒人文化研究図書館』の館長が確かこう言っていた(違うかもしれない。ごめんなさい)「赤狩り激しかったころの共和党元代議士○○氏が、当図書館を訪れて公民権運動に関する資料を見て苦虫を噛みつぶしたような顔をした。でも歴史の真実は、未来の子供たちのためにちゃんと保存されて行かなければならない」と。
 
 
 
 

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