映画『まぼろしの市街戦』
■先日のツイートより。一部改変あり
予約注文してあった映画『まぼろしの市街戦』4Kデジタル修復版 Blu-ray が届いたので久々に見て驚いた! ラストが違うのだ。それと、中学生で見たと記憶していたが、淀川長治の『日曜洋画劇場』で放映されたのは 1974年だから、高校1年だったのか。何か鮮烈なイメージが僕の心に刻印された映画だった。
映画館では観た記憶はない。でもその後もテレビの深夜映画劇場とかで何度か目にした。東京12チャンネルだったか。だから、今回も日本語吹き替えで字幕は消して見たのだ。ところが、テレビ放映ではカットされたシーンが幾つもあって、そこは急にフランス語になってしまう。だから字幕はあったほうがよい。
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なぜこの映画が気に入ったのか判った。まだ小学生(いや中学生?)だった頃見てショックを受けた海外テレビドラマ『プリズナー No.6』に登場する、あの「村」と雰囲気がそっくりだったからだ。数字でしか呼ばれないあの村の住人達と、映画に登場する精神病院の入院患者たちが同じだと思ったのかな。何か諦めにも似た住人達の雰囲気が。
ウィキで調べたら『プリズナー No.6』は 1967年制作で『まぼろしの市街戦』の公開後だ。ということは、パトリック・マクグーハンは「この映画」を観ているんじゃないか? って想像してしまう。あと、NHKで放映されたのが1969年だから、やっぱ小学生だったんだ。
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■この映画を愛する映画人は多い。面白いのは、そのほぼ全員が、初見は映画館ではなく、淀川長治が解説していた『日曜映画劇場』(1974年11月17日放映)か、その後に東京12チャンネルの午後の洋画劇場もしくは深夜ワクで何度も再放送されたものを見ていることだ。ということは、必然的に世代が近い(当時中学生〜高校生)ことになる。
例えば、生涯のベスト10にも入れている町山智浩さんは 1962年生まれ。ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏は 1963年の早生まれ。映画監督の瀬々敬久氏が 1960年の生まれ。ついでに僕は 1958年生まれだ。
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瀬々監督が、前リンク先の対談で言及していた本は、岩井俊二(1963年1月24日生まれ)『トラッシュバスケット・シアター』(メディアファクトリー)。そう言えば、単行本を昔中古(95円税別)で買って持っていたことを思い出し、先ほど納戸から出してきて読んでみた。p19〜p26。岩井監督もやはり仙台で過ごした子供の頃にテレビで日曜日の正午から放送されていた「サンデー映画劇場」で「この映画」で見たと書いている。
ただ、妙に記憶に残っているのにタイトルもわからない気がかりな映画だったと。
ずっと気になっていたが、大学時代、映画好きの友人がこの謎を解決してくれた。この話を聞くや否や彼は声を震わせてこう言ったのである。
「そ…それは…『まぼろしの市街戦』だあぁぁぁぁ!(中略)僕が一番観たい映画なんだよ、それはぁあああああっ!」(同書 21ページより)
岩井監督は「サンデー映画劇場」で見て、未だにタイトルが判らなくて気になっている「もう一本の映画」のことも続いて書いている。その映画には『まぼろしの市街戦』と同じく「サーカスの綱渡りの少女」が登場する。その金髪の少女に妻子ある青年将校が恋をし、二人は逃避行に…… という映画だ。
ぼくは見たことがない。気になって調べて見たら、スウェーデン映画『みじかくも美しく燃え』
という映画が見つかった。このタイトルは聞いたことがあるな。
■ところで『まぼろしの市街戦』Blu-rayディスクで見てみると、初見時の感動をもう一度っていう期待が大きすぎたのか、案外たんたんと見終わってしまった。当時テレビで見た印象的なラストの後に「なんと」続きがあったとは! でも、あれは蛇足だったんじゃないかな。
そう言えば『プリズナー No.6』も Blu-ray が出てすぐ買って、 NHKで放映された「日本語吹き替え版」で見たのだが、やっぱり期待していたほどのインパクトはなかった。思い入れが強過ぎると、往々にしてよくある現象だ。
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■今回の Blu-rayディスクには、ボーナス映像として「綱渡りの少女」役のジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド(おばあちゃんになっても凜々しい!)インタビューと、先達て亡くなった撮影監督のピエール・ロム インタビューが収録されている。ピエール・ロムの話でビックリしたのは「主演のアラン・ベイツが撮影途中で足首を骨折してしまい、以降の撮影に難渋した。彼が立っているシーンをよく見てみてごらん。たいてい片足で立っているから」と言っていること。
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■それから、今回初めて町山智浩さんの「映画有料解説」(税込216円)をダウンロードして聴いてみた。なんと1時間も『まぼろしの市街戦』について熱く語っている。面白かったのは、フィリップ・ド・ブロカ監督は、バスター・キートン、ハロルド・ロイドと、ジャッキー・チェン『プロジェクトA』『スパルタンX』を結ぶ、代役無しのアクション・コメディーの名手として紹介している点だ。
スピルバーグほか、たくさんの映画監督が「この映画」の影響を受けていると。それから「すべてが逆」になっていること。さすが、じつに深い。映画を見たあとに、ぜひ聴いてみて欲しい。
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