「映画おたく」少女なのか? 橋本愛。
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■今年の「小津安二郎記念蓼科高原映画祭」は、第20回記念の節目を迎え盛大に行われた。ぼくは、9月23日(土)の夕方、茅野市民館で上映された『秋刀魚の味』(1962)と、翌24日(日)の『バースデーカード』(2016)の2本を見てきた。以下は当日のツイートから(一部改変あり)。
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今日は、茅野市民会館で小津の遺作『秋刀魚の味』を見てきた。上映前に、主演の岩下志麻さんが素敵な真っ赤のドレスでステージに登壇して映画に関するトーク。有名な巻き尺のシーンとか、アイロンがけの場面とか。颯爽としていて、よく声が通ってカッコよかったなあ。佐田啓二のアパートがある駅。池上線の石川台だったね。
岩下さんは言った。「小津先生は、映画のフレーム内に必ず紅いモノをアクセントに置いたのね。それから小道具の食器とか、九谷、古伊万里。みんなホンモノ。小津先生が行きつけの小料理屋から持ってきて使っていたわ。」
『秋刀魚の味』といえば、岸田今日子がママの「トリスバー」。加東大介と笠智衆がカウンターに並んでいる。笠「けど、負けてよかったじゃぁないか」 加東「そうですかねぇ? う〜ん。そうかも知れねえなぁ。バカな野郎が威張らなくなっただけでもね」
続き)『秋刀魚の味』で使われている映画音楽は、広末涼子が出ているサントリーのCM「のんある気分」で、ロバート秋山が金の斧を持って池の中から登場するシーンに転用されている。斉藤高順作曲の「燕来軒のポルカ」だ。
でも、デジタル・リマスター版の映画って、どうなんだろう。劇場で映画館で古い昔の映画をずいぶんと見てきたけれど、あの雨が降り、左右上下に微妙にブレるフイルムの加減、ぷちぷち言う音声。自宅リビングで寝転びながら見るなら、デジタル・リマスター版のほうが、確かにいいのだけれど。難しいね。
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第20回小津安二郎記念蓼科高原映画祭最終日。今日は茅野市民館で、諏訪・茅野・富士見でロケされた映画『バースデーカード』を観る。上映終了後、主演の橋本愛、吉田康弘監督が舞台挨拶。前から4列目の席だったから、スクリーン見上げて肩凝ったけど、愛ちゃんはよく見えた。顔ちっちぇー。やっぱりキレイだなぁ。
映画『バースデーカード』に主演した橋本愛の役名は「紀子」だ。映画の冒頭と後半の大切なシーンで、彼女自身が自分の名前の由来を説明している。ところで「紀子」って、原節子が小津安二郎監督作品『晩春』『麦秋』『東京物語』の3本で演じた役名だ。名字は平山だったり間宮だったり変わるけど、名前はみな「紀子」。その事に、橋本愛さんも監督も触れなかったのが残念。
橋本愛。先週の日曜日に茅野市市民館での壇上トーク。いろいろと発見があった。彼女はまず「映画」を監督で観る。気に入ったら、その監督作品ばかりを見続ける。そのことを彼女は「勝手に個人映画祭」と呼んでいた。面白い娘だなぁ。
続き)映画『バースデイカード』に関して、橋本愛は脚本を読んで「ダメ出し」をしたらしい。
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■映画『バースデーカード』。不治の病のおかされた母親(宮崎あおい)は、10歳になった娘に約束します。毎年「バースデーカード」を彼女に送ると。娘が11歳の誕生日を迎えた日、すでに母親はこの世にいません。リビングに笑顔の写真があるのみ。
けれどもこの日、お父さん(ユースケ・サンタマリア)は、母親から彼女宛の「バースデーカード」を取り出したのです。それから毎年、彼女の誕生日に母親からの「バースデーカード」が届きました。その内容は毎回違っていて、おいしいクッキーの作り方とか、上手なキスの仕方とか、ちょうど「スパイ大作戦」の冒頭、フェルプス君に当局から指令が来て、メンバーがその任務を苦労のすえ達成するみたいな展開になります。
中学生時代の「紀子」を演じた子が、橋本愛に雰囲気がそっくりで驚きです。高校生になった17歳の紀子から橋本愛の登場です。この年の母からの指令は、母親の生まれ故郷「小豆島」へ渡って、彼女の同級生たちと「タイムカプセル」を掘り起こすこと。
小豆島では、母親の親友だった木村多江が待っていて、橋本愛を歓待します。木村多江には不登校の中学生の女の子がいて、母娘の関係はギクシャクしています。最初は橋本愛を無視していた娘は、彼女が大好きなバンド「GOING STEADY」と「銀杏BOYZ」のCDを、ある朝、橋本愛に聴かせるのでした。
次のシーン。その娘の自転車を借りて、島の細い道を駆け下りる橋本愛。BGMは、峯田和伸の絶叫が爆音で流れます。ここは「この映画」の中で、最も気持ちがいいシーンだったな。このあと、宮崎あおいと木村多江の当時の確執と友情の回復が語られるのだが、それは映画を見て下さい。
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■さて、19歳の誕生日がやってきます。もちろん、母親からの「バースデーカード」が届きました。しかし、橋本愛は「カード」を開封しようとはしません。どうしてだ? と訝る父親に、彼女は言うのです。「私、イヤなの! おかあさんの思い通りに生かされて行くのが」
正確なセリフを憶えていないのだけれど、「ここ」の部分に関して、橋本愛は監督に意見したのだそうだ。当初のシナリオでは、彼女は素直にずっと「指令」に従っていた。でも、それって嘘じゃない? 彼女の人生は母親のものではなくて、彼女自身の人生でしょ。と。
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吉田康弘監督は、彼女の意見を取り入れ脚本を書き換えたという。確かに、この19歳のエピソードが加わったことで、映画が薄っぺらいものではなくなったように思う。
吉田監督は、撮影中のエピソードとしてこんなことを紹介した。
宮崎あおいと子役の「紀子」の撮影現場に、自分の出演シーンはないにも関わらず、橋本愛は何度も通っては、じっと宮崎あおいの演技を見学していた。普通、役者さんはそういうことをしないから驚いたと。
橋本愛は言った。「宮崎あおいさんと共演するシーンは一回しかなかったので、その現場だけで母娘を演じたら嘘になってしまうと思って、宮崎さんが子役の娘と演じる母娘のシーンを一緒に体験することで、母娘の関係をイメージしようと思ったのです」
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