しろくま通信: 映画『サウダーヂ』を、赤石商店の蔵のミニシアターで観た！やっぱ凄いな、この映画

■今週の水曜日の午後は休診にしてるので映画を見に行った。妻は美容院の予約が入っていたから別行動。それにしても驚いたな。平日の午後２時開演なのに、満席！　若者やオーガニック系・夫婦、よく訳の分からないオジサン等々が、どこかしこから湧いてきていた。まぁ、俺だって何処からか「わいてきた」得体の知れないオジサンなワケだけれど。みな地元民なのかな？　駐車場の車は松本ナンバーか、諏訪ナンバーだった。（以下は、その日のツイートより。一部改変あり）

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空族プレゼンツ、映画『サウダーヂ』富田克也監督作品（2011年）を、東春近の民泊「赤石商店」の蔵の中のミニシアターで観てきた。予想とぜんぜん違った映画だったけど、うん。面白かった。先に『バンコクナイツ』を見ちゃっていたからね、両方出ている人が多いからさ、なんか懐かしい感じがしたんだよ。

続き）『サウダーヂ』だけに出ていた人で、笑っちゃったんだけど、宮台真司。それから「鉄割アルバトロスケット」の中で一番妙な役者さんが、危ないバーのマスター役で出ていた。そうそう中島朋人さん。中島兄弟の兄ちゃんのほう。

それからラストシーンに、文科省の「ゆとり教育」推し進めた、寺脇研氏が刑事役で出演しています。これは、なんだかな。だな。

少し前に甲府の「桜座」へ、姜泰煥（カン・テーファン）のアルトサックスを聴きに行ってきたばかりなので、映画に何度も登場した甲府の盛り場のシーン。そう、ビジネス・ホテル「ドーミー・イン」のあたりね。リアルに場末感があふれていて、しみじみしてしまったよ。

続き）あ、そういえば、あの甲府の商店街アーケード。NHKBSドラマ『奇跡の人』のロケでも使われていたな。峯田和伸くんと麻生久美子が抱き合う重要シーンだった。第７話だったっけ。

続き）なんかね、映画の登場人物がみんな、ショボくれてて、どーにも情けない奴ばかりなんだよ。閉塞しきって窒息しそうな地方都市で、みな「沈没組」を気取っている。日本なのにね、外国みたいだった。甲府市が。ラッパーの彼。田我流くん。なんだ、牯林街の主人公を気取るんじゃなかったのかよ！

続き）驚いたのは、「赤石商店」の蔵のミニシアターが予想外に本格的シアターであったこと。スクリーンは20数年前に「中劇シネサロン」で見た画面よりも大きかったのだ。ブルーレイで画像はクリア。音響も蔵だからちょっとこもるけど、そこそこ良かったよ。ぼくは２階席で見ました。

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■念願かなって今回初めて見た「この映画」は、一度見ただけでは語ることができないように出来ている。そう思った。後から思い返せば、あ、あのシーンにはこんな意味が込められていたんだって判る編集カット割りだからね。だから、２時間47分という、とにかく長い映画なんだけど、ぜひもう一度見たいんだ。

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■主人公１（土方＝土建屋の土木作業員：精司）が働く土建屋は、社長のオヤジとその息子、それに川瀬陽太がいるだけで、あとは派遣のビンちゃんとラッパーの猛のみという、地元の零細業者だ。映画では土方現場での作業の様子を丁寧に描いて行くのだが、映画が進行するにつれて仕事がなくなり、どんどん仕事の現場がショボくなってゆく。

重機も壊れて動かない河川敷　→　道路に鹿が飛び出してくる山奥（オオクワガタもいる！）→　墓場の造成。　そして、地元民の自分たちには絶対に回ってこない現場として、巨大イオンモールの建設予定地の広大な空地が映し出される。その敷地の端で、絶望的なため息をつく精司とビンちゃん。このシーンは切なかったなぁ。

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■この、土方の精司が、映画の終盤、自暴自棄になりそうな現状をギリギリ我慢した状態で、街に出るんだよ。甲府の商店街へ。現実と幻想が入り交じって、結局はラリっているからワケ分からないのだけれど。

精司は甲府商店街の車道左端をスクリーン左から右へと、ゆっくり歩いてゆく。カメラも彼を追って移動撮影。いっぱいの人で賑わう甲府商店街。暴走族のシャコタン・アメ車が爆音あげて３台ゆっくりと通り過ぎる。続いてバイクの一団がスタート。精司がタバコをくわえると、歩道に佇んでいた黒服が、さっとライターの火を差し出す。大音量で流れるBGMは、BOØWYの『わがままジュリエット』だ。

すべて、ワンシーン・ワンカットで撮影され、流れるように進行する。まるで『ポンヌフの恋人』ラストの花火のシーンみたいに、なんともゴージャスでバブリーじゃないか。ここはほんとカッコよかったなあ！

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このシーンと対をなすシーンが、映画の序盤に登場する。主人公２（ラッパーの猛：田我流くんが演じているんだが、彼はよかったなぁ！）が、先輩との付き合いで厭々行ったタイ人スナックからの帰り道。やはり画面左から右へと、シャッターが下りた人気のない商店街を一人、ブツブツ言いながらゆっくりと歩いてゆく。怨みの独り言は、いつしか即興のラップになってゆく。このシーンもめちゃくちゃゾクゾクしたよ。

■この猛ひきいるヒップホップ・グループと、日系ブラジル人のラップチームの抗争が、映画『牯林街少年殺人事件』に登場する台湾の不良少年グループみたいに、映画のメインで描かれるのかと想像していたのだけれど、そうじゃなかったな。

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■「ネタバレあり」だけれど、映画に関する豊富なスチール写真と、詳細なストーリー紹介が載っているサイト「What's Entertainment?」

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■日系ブラジル人が多く住む山王団地。父親が日系ブラジル人で母親はフィリピン人、そして日本で生まれた娘がふたり。家族4人キッチンで食事をしながら、ブラジルへ帰るかフィリピンへ行くか話し合うシーンが延々と続く。仲間は不況で次々と解雇され、仕方なくブラジルへ帰って行く。帰っても大変だ。『セントラルステーション』というブラジル映画を見たことがあるが、ブラジルの田舎は想像を絶するものがある。

「ここよりほかの場所」の「楽園」へと夢見てはるばるやって来た、この日本。でも、現実は「楽園」でもなんでもなかったのだ。

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■「ここよりほかの場所」の「楽園」を夢見ているのは、土方の精司もいっしょだ。彼はねんごろのホステスとタイで暮らしたいと思っている。そして、映画は『バンコクナイツ』へと続いてゆくのだった。

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■この映画は、公開当初から絶賛の嵐だった。特に、ヒップホップ関連で「宇多丸さん」それから、菊地成孔氏。宇多丸さんの評価は、今でも YouTube で聴くことができるのだけれど、菊地成孔さんの文章は、現在「彼の日記」からはアクセスできないし、先月出たばかりの菊地氏の映画批評本『菊地成孔の欧米休憩タイム』には収録されていないんだな。

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■いろいろ検索してみて見つけた興味深いサイト。それは西部邁先生のテレビ番組(TOKYO MX )『西部ゼミナール』。

YouTube: 問題作サウダーヂをどう観るか西部邁ゼミ 2011年11月5日放送