こんどは、『緑のさる』山下澄人(平凡社)を読む
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『コルバトントリ』に続いて、『緑のさる』山下澄人(平凡社)読了。結局ワケわからないんだけれど、すごく面白かった! なんだかこの人、癖になるぞ。もっと読みたい。あと、装幀が渋くて好き。 (23:19 - 2015年10月20日)
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■『緑のさる』は、山下澄人さんのデビュー作だ。この本でいきなり「野間文芸新人賞」を受賞した。取った山下さんはもちろん凄いが、賞をあげた人もえらい。だって、こんな小説読んだことないもん。
ところで、作家の保坂和志氏と山下さんの関係って、なんなのか? やっぱり、師匠と弟子の関係なのかな? そのヒントは、この本が出た当時に京都で行われた、保坂和志 × 山下澄人 対談にあった。
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ここで、保坂さんが言っている「高瀬がぶん」さんのブログ「極楽ランドスケープ」の、・「山下くんのこと」それから、「やっぱり気になるので今日はこれ」「生きていたり死んでいたり」を読むと、2008年夏のとある日、「突然ですが、劇団 FICTION の芝居を、保坂和志さんにぜひ見に来ていただきたいのです」という一通のメールが、保坂氏のサイト管理人である高瀬がぶん氏のもとに届いたのがそもそもの始まりだったようだ。
がぶん氏のブログに書いてある、劇団 FICTION 公演『しんせかい』を観に行ったときのことを、保坂和志氏は『遠い触覚』(河出書房新社)の、p48〜p55 で詳細に語っている。ただ、山下澄人さんに小説を書くよう進言したのは残念ながら保坂和志氏ではない。同じ舞台を見に来ていた平凡社の編集者から「小説、書いてみませんか?」と言われて、この『緑のさる』を書いたのだという。
■ 山下澄人インタビュー「見るに値しない人なんかいない」 ■
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■『プレーンソング』保坂和志(中公文庫)は、保坂さんのデビュー作だ。
保坂和志の「いちファン」であった山下澄人は、ひょんなことから『緑のさる』を執筆することに。でもやはり、保坂氏の本を読まなかったら、決して自分は小説なんて書かなかっただろうという思いと、大好きな保坂和志への感謝とリスペクトを込めて、自らのデビュー作『緑のさる』の50ページから51ページにかけて、場面のリアリティを示すためにこんなことを書いている。
文庫本を一冊引き抜いた。表紙と頭の何ページかがどこかに引っかかっていたのか、ビリッと破けた。開いてみた。
という文章に続いて、『プレーンソング』保坂和志(中公文庫)の 32ページの初めから終わりまで、そのまま転載されているのだった。
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■『緑のさる』を読んでいて、山下さんはきっと「色の付いた夢」を見る人なんだろうなぁと思った。「青いテント」「赤シャツ」「黄色いヤッケ」。ただ、総天然色カラーの夢なんじゃなくて、そう、矢沢永吉がやっているサントリー・プレミアムビールのCMみたいに、黒白ベースの画面に「その一点のみカラー」になっているイメージ。そんな気がする。
それから、『コルバトントリ』を読んだ感想として以前に書いた、
「生きている人が死んでいて、死んでいる人は何故か生きているような勘違いをしている。そういう小説だった」
は、『緑のさる』でも「そのまま」有効だった。
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