NHK 朝ドラ『まれ』は、どうして面白くなっていかないのか?
■NHK朝の連続テレビ小説のファンだ。
あの傑作『ちりとてちん』以降、だいたいフォローしてきた。
中でも、『カーネーション』と『あまちゃん』の2本は、名作と言ってよいと思う。脚本家と演出家そして役者さんたちのタッグが、ほんとうに上手く噛み合っていた。いや、直近の『花子とアン』と『マッサン』だって、なかなか強かに練られた脚本で、最後まで緊張感が途切れることなく毎日楽しみにしていたものだ。
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ところがどうだ。今シーズンの『まれ』は。
能登編も横浜編も、渋くてイイ役者さんをたくさん使っているにも関わらず、なんだか画面がいつもワサワサと、とっ散らかっていて落ち着きがない。この人、このシーンに必要なの? って感じの人ばかりいて、その脇役の役者さんたちが、いっこうにメイン・ストーリーと噛み合ってこないのだ。
例えば、門脇麦。彼女は今週になってようやく表舞台に出てきたのだが、ぼく個人的には「こういう使われ方」をするために、彼女はキャスティングされたのかと思うと、ものすごく残念でならない。たぶん、彼女の役割は『ちりとてちん』で言えば「貫地谷しほり」の小浜での親友、ジュンちゃん(宮嶋麻衣)に相当するのだろうが、だとしたら、今週の展開はあまりにその場しのぎの場当たり的すぎて、今後の発展は何も期待できないのではないか? 予想では、来週から画面から消え去って、今後登場の機会は「三つ子」でも生んだ時しかないものと思われる。
キャストが使い捨てなんだな。初めのころ登場した田中泯と田中裕子の息子夫婦(池内博之)だって、反省して東京へ帰ったきり、その後はぜんぜん登場してこない。
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つまりね、脚本家の思いつきで、その度に登場人物たちが人形のようにただ動かされているだけなので、見ていて血の通った生身の人間としてのリアリティが全く感じられないのだ。たぶん、脚本家は「それまでの朝ドラの定石」を踏襲する振りをして、ことごとくオフ・ビート的にワザと外しているのかな。
これって、『純と愛』と同じだ。『純と愛』もずっと見ていたが、あれは本当に凄かった。主人公を次々と不幸が襲うのだ。母親(森下愛子)は若年性アルツハイマーで、父親(武田鉄矢)は溺れて死ぬ。就職したホテルの同僚(黒木華)は腹黒で、兄ちゃん(速水もこみち)は根なし草のフリーター。夫である風間俊介の家族はみな病気持ち且つサイキックの持ち主。
主人公が次に務めた大阪の簡易宿屋は火事で全焼し、宮古島で新に始めるプチ・ホテルも、オープン前に台風の襲来でボロボロになってしまう。風間俊介は脳腫瘍に冒され、結局、最終回まで昏睡状態のまま目覚めることなく終わった。毎朝暗い気持ちにさせられながらも、最後まで見てしまったという、めちゃくちゃな朝ドラだった。
『まれ』を見ていて思うのは、『純と愛』を見ていた時とおんなじ。あれじゃぁ役者さんたちが可哀想だ。
(もう少し続く)
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