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2015年3月13日 (金)

『シンドローム』佐藤哲也(福音館書店 ボクラノSF):その2

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『シンドローム』佐藤哲也(福音館書店:ボクラノSF)を読んでいる。何か、この主人公の男子高校生が一人語りする文章が不穏で変。まだ70ページ。

ちなみに、福音館書店の「ボクラノSFシリーズ」は、全巻揃えて持っているのだ。北野勇作『どろんころんど』はもちろんのこと。これ、自慢デス。

『シンドローム』佐藤哲也(福音館)を、ただ今読み終わった。これは怖い。本当にリアルで怖い。でも、いや、面白かった。SFと言うよりも、モダンホラーだな。イメージとしては『ボラード病』と『突変』と、キングの『霧』を足して3で割って「迷妄」をまぶした感じの小説だった。いまここの小説だ。

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■この「ボクラノSFシリーズ」の前巻、『どろんころんど』北野勇作・著が発刊されたのが、2010年8月10日。ほぼ5年ぶりの新刊だ。

「もうお忘れでしょうか? 嘘のような話ですが、実は、続いていました! そして、まだ続きます。」

って、笑ってしまったよ。ほんと。

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■上の写真をクリックして、裏表紙の帯に書かれた文章を読んでみて欲しい。本文でいうと、154ページだ。

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髪が風に吹かれている。川原の光をにじませている。

ぼくは久保田の顎を見つめる。

ぼくは久保田の手を見つめる。

ぼくは久保田の頬を見つめる。

ぼくは久保田の見つめている。

ぼくはまぶしさを感じている。

久保田の隣で、ぼくはサンドイッチを手にしている。

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直前の緊張感でドキドキの後におとずれた至福の時間。

読みながら、主人公の気持と完全にシンクロしてしまった。

■この小説は、男子高校生の「一人称一視点」(そうでないと、この小説は成立しない)で語られてゆくのだが、この男子高校生、変にまじめで、妙に冷静で、ふつうの男子高校生の数倍は「自意識過剰」なのだ。

て言うか、ぼくが高校生だった頃は「迷妄」といっても「エロ」がその全てだったし、同じ1958年生まれ(でも、早生まれだから学年は1つ上)の東野圭吾『あの頃ぼくらはアホでした』(集英社)や、みうらじゅん『人生エロエロ』を読んでみても、ぼくとあまり変わらない「おばか」な高校生だったぞ。

最近の男子高校生は、あまり「エロ」くないのか? よくわからない。

それにしても、彼の語り口はじつに不穏で、頭でっかちで、読んでいて何とも居心地が悪い。

例えば、以下のような文章。

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 ぼくはどちらかと言えば精神的な人間で、精神的であることを好み、精神的でなければならないと考え、非精神的な状態には嫌悪をおぼえたので、平岩のように非精神的な期待や願望をあからさまに外へ出すことはできなかったが、それでもときには精神的な領域の外へ感情があふれて、平岩のように非精神的とは言えないまでも、必ずしも精神的であるとは言い切れないところで不可解な反応をすることがある。

それは言わば精神の外周に出現する暗黒の領域に属していて、そこに現れる感情にいちいち説明はついていない。暗黒の領域に踏み込んで、手探りをしながらあえて説明を求めれば、晴れ上がった自意識や、いやしい根性を見つけ出すことになるだろう。

だからそんなことは絶対にしてはならない、とぼくは思った。説明を求めるようなことはしてはならない、とぼくは自分に言い聞かせた。だからぼくは自分の精神の外周で、ただ暗い震えだけを感じていた。気をつけなければならない、と暗黒の領域が警告を発していた。気をつけなければならない、とぼくは頭の中で繰り返した。(18〜19ページ)

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(まだまだ続く)

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