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2014年12月 7日 (日)

佐々木昭一郎『さすらい』と、ピーター・フォンダの『イージーライダー』

■録画しておいたNHKアーカイヴス「佐々木昭一郎特集」を、少しずつ見ている。初めて通しで見た『夢の島少女』は、思いのほかエロくて驚いた。ただ、感想を語るにはもう2〜3回見ないと言葉にできないような気がしている。

こちらも初めて見たのだが『さすらい』(1971)は面白かった。すごく気に入っている。これはいいな。

■常に無表情で淡々とした主人公の青年が北海道の孤児院から上京して来て、渋谷で映画の看板屋に就職する。その後、ふらふらと東北を旅して廻るのだ。いろいろな人たちと出会う。看板描きの職人、歌い手を目指すフォーク青年(友川かずき、遠藤賢司)「いもうと」みたいな中学生の少女(栗田ひろみ)サーカスのブランコ乗り(キグレ・サーカス)アングラ旅芸人一座(はみだし劇場)、氷屋、三沢米軍基地近くに住み、渡米を夢見るジャズ歌手(笠井紀美子)などなど。でも、結局なにも起こらない。

彼はただ、「ここ」ではない「ほか」の場所、「ここ」ではない「ほか」の人を求めて旅に出るのだ。

あぁ、わかるよ。すっごくわかる。だって、俺も「そう」だったから。

オープニング。海岸の画面下から、ふいに青年がひょこっと現れる。なんか変。そこから『遠くへ行きたい』みたいな映像が続く。でも、どことなくユーモラスで、妙に軽い。深刻なようでいてぜんぜん暗くない。不思議な乾いた感触が心地よいのだ。ラストシーン。青年は浜辺に棒を一本立ててから再び夕日が沈む海に戻って行く。見ていてすごく「すがすがしい」ラストだ。

ドラマに何度も挿入されるBGMの影響があるのかもしれない。バーズ「イージーライダーのバラッド」。これだ。

The Byrds / Ballad of Easy Rider
YouTube: The Byrds / Ballad of Easy Rider

JASRAC からの通告のため、歌詞を削除しました(2019/08/06)

■で、ふと思ったのだが「この曲」がエンディングで流れる(こちらは、ロジャー・マッギンのソロ・ヴァージョン)映画『イージーライダー』を、今までちゃんと見たことがなかったんじゃないかと。アメリカン・ニューシネマの傑作なのに、何故か映画館でもビデオでも見た記憶がない。

町山智浩さんの『映画の見方がわかる本』は読んでいたから、この映画の知識はあった。本に書かれた内容は、「町山智浩の映画塾!」予習編・復習編でほぼ語り尽くされている。これだ。

町山智浩の映画塾! イージー・ライダー <予習編> 【WOWOW】#83
YouTube: 町山智浩の映画塾! イージー・ライダー <予習編> 【WOWOW】#83

■で、TSUTAYAに行って借りてきたんだ、ブルーレイ・ディスク。返却日の深夜にようやく見たのだが、いや実に面白かった。それにしても、デニス・ホッパー、若いなあ。1969年の公開作。

スタントマンのピーター・フォンダとデニス・ホッパーの2人組が、メキシコで仕入れたコカインを金持ちのぼんぼんに売りつけ、儲けた金を改造バイクのガソリン・タンクに隠して、LAからニューオーリンズまで気ままなツーリングの旅を続ける。途中、インディアンを妻とした子だくさんの白人や、ヒッピー・コミュニティのリーダー、アル中弁護士(ジャック・ニコルソン)など、いろんな人たちと出会うというお話し。

ラストの、ヘリコプターによる空撮。これ、『夢の島少女』のラストカット。あの、ヘリコプター空撮による驚異的な長回しのヒントになったんじゃないか? 『さすらい』(1971)も、この映画から大きなインスピレーションを受けているように思った。音楽の使い方とか。

ドラマ『紅い花』のオープニングで使われたドノバンといい、佐々木昭一郎は「川の歌」というか「川の流れ」へのこだわりを、ずっと持ち続けた人だったんだなあ。

■渋谷の街中にたびたび登場した、巨大なモノクロの少女のヌード写真。あの少女はやはり、栗田ひろみ本人だ。

『創るということ』佐々木昭一郎(青土社)で、佐々木氏は『さすらい』の主人公「ヒロシ」に関してこんなふうに言っている。

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『さすらい』はヒロシって主人公がよかったね。このヒロシはオートバイをいたずらしているとこ見つけたんだけど、今は静かに実生活者として横浜で生きている。彫金師になって、奥さんもらって。必ず年に一回電話して、ぼくに会いに来るんだ。「どうしてますか」って、世間話して帰っていく。

ヒロシに会うのは救いだね。(中略)

ヒロシも、彼は実生活ではサンダース・ホーム出身なんだ。で、ハーフでどこかに捨てられてひきとられて、セント・ジョセフっていう横浜の学校に通って、英語が非常に達者でね、日本語もよくできて、学習能力も抜群で、感性がそういうわけだから周囲がなんとなく違うなってことを感じながら生きてるんだ。

ぼくらにはそんなこと言わないけれど、だから孤独っていうのも顔によく出てたし、少年期特有の反抗心も、その反対の優しさも出てたしね。(『創るということ』p117〜p120)

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あ、渋谷道玄坂、百軒店の入り口だ。右手に「道頓堀劇場」。成人映画の看板を運ぶ2人。ずいぶんと昔の渋谷。佐々木昭一郎『さすらい』を見ている。



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