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2013年9月15日 (日)

『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト(早川書房)

 

■イギリスのSF作家、クリストファー・プリーストの新作『夢幻諸島から』古沢嘉通=訳(早川書房)を読了した。8月24日から読み始めて、少しずつ、ゆっくりと味わいながら読んだ。じわじわと来る独特の面白さ。堪能したなぁ。

 

『限りなき夏』の中から、後半の「ドリーム・アーキペラゴ」のシリーズも再読。(以下、ツイートから)

 

■クリストファー・プリーストの新作『夢幻諸島から』古沢嘉通・訳(早川書房)を読んでいる。今はまだ、52ページだ。でも、何かもう堪らなくなって、『限りなき夏』クリストファー・プリースト(国書刊行会)の p179から始まる『火葬』をまた読み始めたところ。いろいろ想い出してきて気分悪いぞ。

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■クリストファー・プリースト『夢幻諸島から』(早川書房)を漸く読み終わった。なんか、くらくらする。時間がかかったのは、少しずつゆっくり読んでたことと、途中で『限りなき夏』(国書刊行会)から「赤道の時」「火葬」「奇跡の石塚」「ディスチャージ」も再読していたため。

 

■■こちらは、「牧眞司氏の紹介文」。ネタバレなしで、これだけ詳しく内容紹介ができるとは、さすがだなあ。ぼくにはとても無理。

 

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 ■続き)『夢幻諸島から』の読み方として、ぼくがオススメしたいことは、個人名が出てきたらメモ用紙に書き出して、そのページを記載していくこと。人によっては7〜8つの話に登場するので、後半に行くに従って「このメモ」が便利に使える。

 

■続き)「この本」ほど、他の人の読後感想・解説が気になる本はないんじゃないか? 早速いま検索している訳だけれど、「この方」の解説が、なるほどスルドイと思う。

 

■■■ この本は、ドリーム・アーキペラゴ(夢幻諸島)の点在する島々と島の住民に関する「ガイドブック」であるから当然なのだが、読み終わって確かに、すっごく行ってみたくなった。旅してみたくなったのだ。

フェリーに乗って島めぐりをしながら、美術館でドリッド・バーサーストの代表的な絵画を見て廻ったり、「トンネルくぐり」も是非体験したい。ちょっと怖いけれど、シーヴル島に立つ「黒い塔」も見てみたいな。

不思議だな。時空がひん曲がった変な世界を舞台とした幻想小説なのに、妙にリアリティがあるんだよ。スライムが潜む、赤道直下のジャングル。極地に近いフィヨルドの暗く寒々とした風景。

 

■当初、以前に読んだ『限りなき夏』の中の「アーキペラゴ・シリーズ」も、この『夢幻諸島から』に収録されているものと勘違いしていた。でも違った。ただ、『限りなき夏』の「火葬」は、p41「ジェイム・オーブラック」の後日談だし、「赤道の時」は「リーヴァー」(p311)と並置できる話だ。あと、「奇跡の石塚(ケルン)」も「死せる塔/ガラス」(p316)の後日談で、トームの兄夫婦の子供が主人公の話だ。

それぞれの島の紹介の最後には必ず「脱走兵保護法」の適用の有無が載っているが、なぜ脱走兵が重要かと言うと、それは『限りなき夏』のラストに収録された「ディスチャージ」を読めば分かるようにできている。

 

という訳で、『夢幻諸島から』を読んで気に入った人は、『限りなき夏』も是非読むべきだと思うぞ。

 

 

■■ぼくは、プリーストの『魔法』をハードカバーで読んでビックリ仰天した時からのファンなのだが、『逆転世界』とか『魔法』とか『奇術師』みたいに、最後で「あっ!」と驚く展開をこの小説『夢幻諸島から』に期待すると、肩すかしを食らうことになります。そこは注意点ですかね。

変な話、大事なネタは最初の「序文」で全て明かされているのだ。読み始めの時には「何をワケ分からん、まどろっこしい奥歯に物が挟まったような表現しかしないんだろう?」って思ったのだけれど、いやいや、読了後にもう一度最初の「序文」を読んでみると、「なるほどそのとおり!」と納得してしまうのだから奇妙なものだ。

 

よく、プリーストのことを「語り/騙り」の作家と言うが、ぼくは「この本」に載っている「36個の話」それぞれ一つ一つは、書いた人にとっては嘘偽りのない紛れのない真実が書かれていると思った。

だって、われわれが住む「この現実世界」だって、人それぞれ感じている世界観はぜんぜん違うし(毎日ツイッターのタイムラインを眺めていると、つくづくそう思う)人間同士の関係性だって、お互いに感じていることは違う。そういうものだ。ちょうど、黒澤明の映画『羅生門』と同じで、結局は何が真実かなんてどうでもよくなってしまうのだな。

 

そんなようなことを、読み終わってしみじみと考えています。(おわり)

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