想田和弘監督作品・観察映画『演劇1』『演劇2』を観てきた
■3月17日(日)電車に乗って松本まで行き、まつもと市民芸術館「小ホール」で、ドキュメンタリー映画『演劇1』『演劇2』を観てきた。
午前10時前に家を出て、映画の上映開始が午後2時。1と2の間に10分間の休憩を挟んで、映画が終了したのは午後7時55分だった。上映時間5時間42分という、想像を絶する体力勝負の大長編を覚悟して見に来た観客はさすがに少なく、30人にも満たなかった。
でも、ぼくを含めたぶん全員が予想外に笑い、驚き、思わぬ発見をし、感心して、心底面白がり、共感したんじゃないか? この長時間、全く退屈することなく、まんじりともせずにね。いいものを見させてもらったなぁ。ぼくは大満足で劇場を後にした。駅前でラーメンと餃子を食って、夜9時過ぎの電車に乗って岡谷で乗り換え、家に帰り着いたら午後10時半をまわっていた。
■この映画を見てみようと思ったのは、いくつかの偶然が重なったからだ。自分にとっての大切なものとの出会いは、たいていは同じような偶然を装った「必然」がお膳立てしてきたように思う。いつだってそうだったからね。
最初に読んだのは「さとなおさんのブログ」でだった。「おっ!?」って思ったんだ。
で、映画の被写体が「平田オリザと青年団」だったことが、その次の理由。じつは僕が「芝居好き」だった期間は短くて、30年前の数年間だった。わざわざ東京まで行って追っかけた劇団はたったのふたつ。
太田省吾の『状況劇場』と、串田和美、吉田日出子の『自由劇場』だ。大好きだったんだ。あの頃。
あと、松本演劇フェスティバルなどで「ブリキの自発団」「プロジェクト・ナビ」「善人会議」の六角精児、「劇団離風霊船」高橋克実主演の『ゴジラ』、竹内銃一郎の『あの大鴉、さえも』も観た。
でも、劇団「青年団」の出世作『S高原から』と『東京ノート』は、すごく興味があったにも係わらずその舞台を観ることはかなわなかった。いや、観に行くパワーが、その頃(今から17年前)のぼくには、すでになかったのだ。たぶん。
そういう訳で、平田オリザと劇団青年団は「憧れつつも諦めてしまった対象」として、ぼくの中ではずっと心残りだったワケだ。その舞台を一度も観たことがない「矛盾するファン」としてね。
そして3番目の理由に、ドキュメンタリー映画監督の想田和弘氏への関心がある。ここ1〜2年で登場した若手論客の中で、突出しているのが、中島岳志氏と、この想田和弘氏だと僕はしみじみ感じていたからね。
だから、中島岳志氏と想田和弘氏のツイートをフォローしている。
特に、ここずっと「TPP」が如何に日本にとってトンデモ条項であるのか、必死でツイートし続ける想田和弘氏には感動すら覚えた。さすが、「元」東大新聞の編集長だ。
■ある日、ツイッターを眺めていたら、想田和弘氏が「松本シネマ・セレクト」が『演劇1』『演劇2』を上映することをリツイートしてたのね。あ、もしかして、これは運命かな? って、思ったワケさ。だから、松本まで観に行ったんだ。それは、決して僕が主体的に観に行ってやったんではなくて、僕は「映画」に呼ばれて観に行ったんだな。ここは、やっぱり重要だ。
■『演劇1』『演劇2』の関係は、たぶん一般的には「正篇」「続篇」を思い浮かべるのではないか。要するに、時系列的に並べられていると。
でも、それは間違いだ。この2本の映画は「正篇」「続篇」ではなくて、「side A」「side B」の違いなんだね。だから、時間軸的には『演劇2』の方が「古い映像」だったりする。
想田和弘氏が興味を持った「平田オリザ」という被写体に密着し撮影したのは、2008年7月〜2009年3月までの期間で、まだ民主党政権が誕生する前のこと。撮影日数はのべ60日、撮影時間は 307時間にもおよんだ。さらに2年間の編集作業を経て、計4年間の時間を費やして、5時間42分にまで「なんとか」短縮し完成したのが「この映画」なワケで、観客もそれなりの覚悟をもって、この映画に対峙する必要があるのだな。(もう少し続く)
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