『魂にふれる』若松英輔と、林明子『ひよこさん』の密接な関連
■昨年の春のこと。とある日曜日の午後。われわれ「伊那のパパズ」の4人(宮脇さんは仕事で欠席)は、絵本作家で長野県在住の林明子さんとお会いする機会を得た。ほんと、夢のようなひと時だった。
メンバーの一員である「南信こどものとも社」の坂本さんは、福音館書店勤務時代から林明子さんや旦那さんの征矢清さんと親交があったので、熱烈な「林明子ファン」であることを自認する僕ら(倉科、伊東、宮脇、北原)は、かねてから「ぜひ一度、林明子さんにお会いしたいなぁ」などと、絶対にかなうことのない夢物語のつもりで、よく語り合っていたのでした。
そんな僕らの願いを不憫に思ったのか、坂本さんは林明子さんと連絡を取り、林さんの承諾を得て面会の日時をセッティングしてくれたという訳だ。
ほんと、信じられなかったなぁ。
だって、林明子さんて、僕らにとっては、リビング・レジェンド(生きる伝説)だったんだから。実際、1993年『まほうのえのぐ』1994年の『でてこいでてこい』以降、18年間も彼女の新作絵本は出版されることがなかったのだ。(ただし、征矢かおるさんの童話『なないろ山のひみつ』2002年出版、の挿画を描いている)
体調を悪くされているとか、ご主人の具合が悪いらしいとか聞いていたから、もしかしたら、もう二度と「新しい林明子の絵本」を手にすることはできないのかもしれないと、ほとんど、あきらめかけていたからね。
■その日、林明子さんはご自宅で「われら4人」を歓待してくださった。
美味しいケーキと、みたらし団子(男性だから、甘いものが嫌いかもって思って、買ってきてくれたんだって)を用意して、挽きたてのコーヒーを入れてくれたのだった。
ただ、コーヒーカップは何故か「6人分」がテーブルに用意されていたのだ。その場には、われわれ伊那のパパズ4人と林明子さんの「5人」しか居ないのにね。
そしたら、林さんは最初に入れた一杯を部屋の一隅に置かれた小さな飾り棚の上に置いたのだ。ぼくがお土産に持って行った「小亀まんじゅう」といっしょに。そこには、征矢清さんの遺影と位牌が安置されていた。仏壇じゃなくて、さりげなくすっきりと部屋に溶け込んでいたので、ぼくはぜんぜん気が付かなかった。
林さんは、自分ではそれほどコーヒーは飲まないけれど、こうして毎日、征矢さんにはコーヒーを入れてあげるのだそうだ。
■超緊張した僕らを前にして、林明子さんはぜんぜん飾らない、じつに気さくな感じで対応して下さった。なんていい人なんだろうって思った。
お元気そうで、著者近影の写真よりもずっと、もっと実物は若々しくきれいな方だった。(次回につづく)
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