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2012年1月21日 (土)

あぁ、芥川賞を取らない「いしいしんじ」さんは凄いな。


YouTube: 「よんとも」いしいしんじさん&豊崎由美さんトークイベント


■この、トヨザキ社長と「いしいしんじ」氏との年末の京都での対談は、ものすごく面白い。いしいさんて、こういう声してたのか。それにしても早口だな。


何よりも驚くのは、いしいさん話が面白すぎる! 話が上手すぎることだ。あと、作家と読者の関係のとらえかた。そうなんだよなぁ。煙がたなびく感じなんだなぁ。作家の感じ方と読者の感じ方の違いの感覚を、じつにうまく例えている。


いしいさんが高校生の時にアメリカ留学した話が、まずは面白い。日本人が一人もいないアメリカ中西部の田舎、チャールストンに行った時の話。本当はシカゴに迎えに来てくれている人がいなくて、7時間待っても関係者は来なくて、しかたなくカウンターに行って黒人のオバチャンに訊いたら、郵便飛行機が飛ぶから、あんた郵便物になれば乗れるわよ、って。


すごい話だよなぁ。英語もろくに喋れない高校生が、日本を旅立ち17時間。ようやくシカゴに着いたかと思ったら、このありさま。で、さらに面白いのは、リチャード・ブローティガンの訳者として名高い藤本和子さんが当時、いしい青年が郵便物として到着した町、シャンペーンに住んでいたということ。高校生の彼は、アメリカ中西部イリノイ州の田舎を舞台にしたレイ・ブラッドベリやシャーウッド・アンダーソンの『ワインズバーグ・オハイオ』に感動していたんだって。そう、今でいえば佐藤泰志の『海炭市叙景』(小学館文庫)は、文庫解説の川本三郎氏によれば『ワインズバーグ・オハイオ』の日本版なのだという。気になるではないか。


■それから、ぼくの好きな小説『みずうみ』について語るうちに、いしいさんが実はその昔に読んだ『ドリトル先生と秘密の湖』から、ぜんぜん気付かずに『みずうみ』を書くことになったことを、ただいま、トヨザキ社長と対談しながら発見した場面が見物だ。

■NHKBS2『週刊ブックレビュー』の、宮崎での公開収録のはなしが面白い。司会は児玉清さんで、その少し前に娘さんを癌で亡くしたばかりだった。いしいさんも、松本の丸の内病院で奥さんが妊娠5ヵ月で死産したばかりだった。放送では、そうしたお互いの個人的な事情は一切話さなかった。


いしいしんじさんが紹介した一冊は『さりながら』フィリップ・フォレスト著・澤田直訳(白水社)

「この小説は、ある種の悲しみは絶対に乗り越えることができないことを書いてますよね。じゃ、それはどうすればいいのか、ということを児玉さんと延々とこう話をして、じゃ、乗り越えられない悲しみをどうすればいいのかということを、二人で探っていった感じがあるんですけど、結論が出たんですよ。」


「それは何かと言ったら、忘れないことだ。その出来事を。すごく大切にすることだ。それしかない」(開始1時間15分ぐらい)このあたりの会話はほんと深いぞ。

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