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2011年4月13日 (水)

「村上春樹ランを語る」が面白い

『Number Do 100人が語る RUN! / ランニング特集第2弾』(文藝春秋)を読んでいる。これは面白い! 先週の土曜日の夜は、伊那中央病院小児一時救急の当番だったので、この雑誌を読もうと持って行ったのだが、忙しくてぜんぜん読む暇がなかった。


同日、成人の一時救急担当で来ていた、林整形外科の林篤先生に「先生、こんな雑誌あるんですよ!」って見せたら、「北原先生、もしかして東京マラソン本気で出るつもりなの?」と訊かれてしまった。いや、それは無理というものでしょう。だって、諏訪湖ハーフマラソンどころか、10km レースにすらエントリーしたことないし、ましてや完走したこともないのだから。

でも、滝小児科の滝芳樹先生は「長野マラソン」に出場して完走してるし、あの「ハワイ・マウイ・マラソン」も完走してるんだって。全くぜんぜんかなわないよな、滝先生には。


■ところで、この雑誌で一番に読ませる記事は、何と言ってもランニングに関する「村上春樹ロングインタビュー」だ。ぼくが気に入った箇所を少しだけ引用させていただこう。


(インタビュアー)まずは、この本『走ることについて語るときに僕の語ること』のことからお聞きしたいのですが、僕自身ひとりのランナーとして、うんうんと納得しながら読む一方で、どこか語りにくそうにしている雰囲気も感じたんですね(中略)ひょっとして春樹さんもランニングを言語化するときに、それに似たことを感じていたのかなとも思ったんですが。

(村上)「そこまでは考えていないけれど、ただ語りにくいなというところはあります。走ることを文章で表現するのはそんなに簡単じゃない。分からないことが多すぎるから。音楽のことや食べもののことを言語化することも難しいんだけど、それは馴れればできるんですよ。メタファーを使って表現を置き換えていって、その落差によって情報を立ち上げる。たとえば、牡蠣フライがどれだけおいしいかというのは説明できるわけ。音楽なら、マーラーのシンフォニーのどこがどう面白いかというのは、文章でそれなりに表せるわけです。僕は文章を書く人間だから、普通の人よりはある程度うまくそういうことができます」(p19〜20)

「もちろんアナログレコードの収集は続けているんだけど、最近はランニング用にCDをよく買うようになりました。ブックオフの250円均一のコーナーとかに行くと、けっこうおもしろいものがあって、そういう捨て値コーナーとかで iPod 用のマテリアルを見つけるのが楽しいんです。半日かけて選んだりしていると、『本を売るならブックオフ』というメロディが耳について離れなくなっちゃうんだ。情けないことに(苦笑)」(24ページ)

「僕が走りながらいつも考えるのは、他人との勝ち負けはどうでもいいけれど、自分との勝ち負けはすごく大事だということ。走っているとき、つらいときにどうやってそれを克服できるかというと、自分には負けたくないということしかないんです。昨日の自分よりはもうすこしましな自分でありたいという姿勢。それはすごく大事なことだと思う。」(27ページ)


■ところで、村上氏が「牡蠣フライ」についてなら、いくらでも語れると豪語していたのは、決して嘘ではなかった。いま、たまたま手元に『村上春樹・雑文集』(新潮社)があって、同時並行で読んでいるのだが、この本の巻頭に載せられた文章がまさにその「牡蠣フライ」に関して詳細に書かれた『自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)』だったからだ。

村上春樹氏は、決して嘘はつかない。そうなんだな。美味しそうな牡蠣フライが今すぐ食いたくなったぼくは、そのことに気付いて、ちょっとうれしくなった。

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