『ハヤ号セイ川をいく』フィリパ・ピアス著(講談社青い鳥文庫)読了
■『ハヤ号セイ川をいく』フィリパ・ピアス・著、足沢良子・訳、E=アーディゾニ・絵(講談社青い鳥文庫)を読んだ。これ、面白かったなぁ。
読みながら感じたのだが、視覚的イメージにすごく長けている小説なのだな。ぼくも、この小説の中で一番好きなシーンは「coxさん」と同じく、急行列車が通り過ぎるアーチ型石橋の下の川からカヌーに乗った主人公が列車のデッキに立つ彼女を見上げるシーンだ。ここはいいなぁ。
その次に好きな場面は、主人公のデイビッドが停留所でもない道端で、彼の父親(モス氏)が運転するバスを強引に停めて乗り込むところと、その後の展開。この父親の息子に対する態度がすばらしいんだ。何ていうか、自分の息子のことを絶対的に信頼しているのだよ。 あと、デイビッドとアダムがコドリング邸の屋根裏から秘密のドアを通り抜け屋根の上に出て、セイ川の流れとその周辺の風景をしみじみと見渡すシーンもいい。
この小説を読んでいて、ずっと感じていた不思議な「既視感」があった。
この「セイ川」の風景、以前にどこかで見たことがあるぞって。
そうして思い出したのが、冒頭の「この写真」だ。
1994年2月22日に、イギリスのケンブリッジで撮られたもの。ケム川の畔、笑顔で佇むのがぼくの妻。じつはこの時、彼女はインフルエンザに罹患していて 39℃の発熱があった。従姉妹の旦那さんがケンブリッジ大学に留学していたので、従姉妹のお母さんといっしょにはるばる渡英したその翌日からの熱発。(ぼくは日本で留守番だった)
従姉妹夫婦のアパートメントで2日間、観光もできずにただただベッドで寝ていた妻が、それでもと従姉妹夫婦が住むケンブリッジで撮った写真がコレなのだった。
背後に流れる川が「ケム川」。その川に架かる橋、という意味で「ケンブリッジ」なんだね。ほとんど流れがなくて、まるで松本城のお堀みたいだ。
■ところで、この小説の作者フィリパ・ピアスの代表作『トムは真夜中の庭で』(岩波少年文庫)を読むと、8ページにイングランド東北部の地図が載っている。ケム川を遡ってケムブリッジから上流へ南に行くと、フィリパ・ピアスが生まれ育ったグレート・シェルフォドに至る。この村が『ハヤ号セイ川をいく』の舞台であり、『トムは真夜中の庭で』の「あのお屋敷」が建つ場所なのだった。
それから、この地図をもう少し詳しく見てみると、右上、北海に出っ張った半島状の岬がある。ここにあの、カズオ・イシグロの傑作『私を離さないで』で「紛失物置き場」となった、あのノーフォーク海岸があるのだよ。
■以下はTwitter から。
・昨日の夜の伊那中央病院小児一次救急当番。夜7時から9時まで結局一人も来なかった。こんなこと初めて。ひまだったので、ブックオフで入手したフィリパ・ピアス『ハヤ号セイ川をいく』を読み始める。「冒険と友情の世界が展開する児童文学の名作」とのことで面白そう!
2011年2月26日 09:20:44JST webから
・NHK朝の連続テレビ小説『てっぱん』。いよいよ佳境だなあ。今日もボロボロ泣かされた。この後いったいどう決着をつけるんだ? 「週刊文春」今週号 p109 で、青木るえかさんも面白いっていってたよ『てっぱん』。
2011年3月5日 08:06:29JST webから
『ハヤ号セイ川をいく』フィリパ・ピアス(講談社青い鳥文庫)3/4まで読み進む。う〜む、こちらも佳境に入った。夏休み、カヌー、少年2人、友情、冒険、暗号解読、宝探し、謎のライバル。こいつは実によく出来た小説だ。面白いぞ! さて、この本を読み終わったら、いよいよアーサー・ランサムだ。
2011年3月6日 00:46:01JST webから
先ほど『ハヤ号セイ川をいく』を読了。これは面白かったなあ。イギリス児童文学恐るべし! ミステリーとしても実によく出来ていて、宝物が見付かりそうで見付からず最後までハラハラドキドキ。しかもBoy meets Girl の物語でもあってp402が泣ける。宮崎駿はなぜ映画化しないのか?
2011年3月7日 00:49:49JST webから
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