『空白の五マイル』(つづき)
■ぼくが、チベット・ツアンポー大峡谷のことを知ったのは、実はつい最近のことだ。
NHKBSハイビジョン特集で「天空の一本道」を見て、チベット高原の東の外れ、インド国境に近いあたりに「それ」はあるらしいと知った。車道もない峡谷沿いのジャラサ村から片道3日かけてポメ(波密)の町まで駄馬のキャラバンを組んで、夏の間だけ年に数度買い出しに行くという話だった。
番組の主人公はキャラバン隊のリーダーで、帰りは奥さんに頼まれた2槽式の電気洗濯機を一人で背負って、谷を抜け断崖絶壁に刻まれた細い一本道で歩けなくなった馬に鞭振りながら4,000m級の峠を越えて行く。その圧倒的な映像に目を見張ったものだが、こういうサイトもあって、後でちょっと複雑な気持ちになったのだ。
■ヤル・ツアンポーは、チベットの西の外れに位置する聖山カイラスに源を発し、ヒマラヤ山脈の北側を西から東へチベット高原を横切り、首都ラサの南を通過して、ヒマラヤ山脈東端に位置する高峰ナムチャバルワ(7782m)の周囲をぐるっと 270度迂回して(ここが世界最大のツアンポー大峡谷なワケです)今度は南に向きを変えて流れ、インドのアッサム地方を再び西に戻り、最後はバングラデシュからインド洋に注ぐという、全長2,900km におよぶアジア有数の大河だ。
標高4000m のチベット高原から 1500mくらいのアッサム地方まで、河はツアンポー大峡谷で一気にその高度を下げることになる。(つづく)
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