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2010年10月23日 (土)

『愛おしい骨』キャロル・オコンネル(創元推理文庫)読了

■キャロル・オコンネルの小説を初めて読んだのは、あれは何時のことだったか?

憶えているぞ。『マロリーの神託』(竹書房文庫・1994年)だ。16年も前のはなしだ。
たしか、ニフティのフォーラム「FADV」に、絶対的信頼をおくスマイリーさんと小太郎さんの好意的な感想が載ったので読んでみたのだった。

最初、すっごく読みにくかった。うねうね、くねくねした文章のリズム。それに、場面ごとにいちいち視点が変わるのが実に鬱陶しい。三人称じゃなくて、場面ごの一人称なのね。ネコの視点まであった。慣れるまで苦労したことを憶えている。でも、霊媒師とか妖しげな人々が次々と登場してきて、知らないうちに物語にのめり込んでいたな。それから、主人公のキャシー・マロリーがめちゃくちゃ格好いいのだ。いまで言えば「ミレニアム・シリーズ」のリスベット・サランデルにそっくり! ストリート・チルドレンでありながら、天才的なコンピュータ・ハッカー。しかも、氷のように冷たい絶世の美女ときている。


次に読んだのは『クリスマスに少女は還る』だった。導入部、やっぱり読みにくい。これは訳者のせいではなくて、原作者の文章が「こういう書き方」なんだね。異端、異形、フリークス。ホラー映画が大好きだった語り手。それはそのまま著者の好みでもあった。


■しばらく前から読んでいた『愛おしい骨』キャロル・オコンネル(創元推理文庫)を、一昨日の夜遅く漸く読み終わった。


読み始めて物語に入り込むまでに、やっぱり時間がかかった。その独特の語り口を思い出すのに手間取ったからだ。でも逆に、この秋の夜長を幾晩も幾晩も、少しずつ少しずつ楽しみながら読み終わった。こういう読書もいいな。面白かったし、十分に満足した。そうか、そうだったのか。ぼくの予想はすべて外されたよ。残念!

ただ、世間で大騒ぎするほどの傑作とまでは思わなかったな。はっきり好き・嫌いが分かれる小説だと思う。ぼくは、好きだ。


サンフランシスコからさらに北へ行った崖の上にたつスモール・タウン「コヴェントリー」。海岸から少し離れただけで、町の背後には広大な森が広がっている。住民の反対で、未だに電話局の携帯中継基地がないので、21世紀のいまでも「圏外」だ。


でも、コヴェントリーは「よそ者」を拒まない。他の土地ではとても生きていけないような、心にも体にも傷を持つ人々が集まって住み着くのだった。例えば、主人公オーレンの家の家政婦ハンナ。天才少年にして、14歳でカリフォルニア大学に入学した、左の頬に傷のあるウイリアム・スワン。黒髪の安いカツラが寂しいフリー・ライターのフェリス・モンティ。それに、隣家の住人、辣腕弁護士のアンディ・ウインストンと、アル中となって心を閉ざしてしまったその妻セアラ・ウインストン。そして母の美しさを受け継ぐ一人娘の鳥類学者イザベル・ウインストン。でも、性格はかなり激しい。


みな、それぞれに心と体を病み、20年前の事件を「それぞれが知る真実」として「秘密」を抱えたまま生きてきた人々だ。


さらには、コヴェントリーにずっと住む「変な」人々もいる。主人公オーレンの父親は、その昔ポニーテールの判事だった。息子を失ったいまは、死んだ愛犬を剝製にして残し、夜な夜な夢遊病者となって彷徨い歩く。20年前、ピンク・フラミンゴにも例えられた足長美人(かつては)のホテル支配人メイビス・ハーディ。何を考えているのかちっとも分からない凡庸な地元保安官ケイブル・バビット。コヴェントリーの住人は決して近づかない図書館の司書をしている、怪物女メイビス・ハーディ。御約束の霊媒師、アリス・フライデーと「こっくりさん」も登場する。


小説の雰囲気は、出てくる人がみな怪しくて、変な人ばかりだった、あの『熱海の捜査官』みたいな感じか。ということは「熱海」の本家であるところの『ツイン・ピークス』(ぼくは見てない)の雰囲気なワケね。


■弟のジョシアが森へ行って帰ってこなかった「あの日」から20年が経って、兄の主人公オーレンは生まれ故郷のコヴェントリーに帰ってくる。街へ来たオーレンを最初に待っていたのは、イザベル・ウインストンの強烈な膝蹴りだった!


こうしてストーリーを説明しても、何だかワケわかんないでしょ。


それでいいんです。かなり読者を選ぶミステリーだと思うけれど、
ぼくはけっこう好き!


映画になればいいな、そう思う。ぼくのイメージだと、監督はティム・バートンで、主人公のオーレンはジョニー・デップ。ということは、その弟役はレオナルド・デカプリオだな。そうして彼の父親役をピーター・フォンダ(むしろ、お父ちゃんのヘンリー・フォンダのほうが適役か?)。隣人のイザベル・ウインストン、もしくはその母セアラ・ウインストン役は、ニコール・キッドマンだ。アンディ・ウインストン役は、ジャック・ニコルソンで、ウイリアム・スワン役は『サイコ』で主演した(若かりし頃の)アンソニー・パーキンス。そんな感じかな。マッチョな怪女メイビス・ハーディは、やっぱりマツコ・デラックスか。家政婦ハンナ役は誰? 市原悦子でないことだけは間違いない(^^;;

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